えんじょいマスター腐れ風味   作:桂剥き

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お話ししましょー

 □ 王国 とある場所 洞窟前 

 

 Q1 所属国家と名前は?

 A1 無所属! トリノベ!

 

 Q2 あの洞窟の死体は?

 A2 そこのおじょーさん攫おうとしてたやつら。俺まで殺しにかかってきたんで返り討ちにした。

 

 Q3 誘拐事件との関連は?

 A3 なんだそれ知らん! 大体犯罪する気がねぇ!!

 

 Q4 【大死霊】ですよね?

 A4 そうだが別に犯罪歴はねえ! アンデッドに使ってんのも大体悪人とかモンスター!

 

 などなど……

 

 【へぶん騎士団】のやつらから質問が出るわ出るわ。

 面倒だが、まあ誤解されて指名手配ってのも嫌なんで真面目に答えてやっている。

 答えるたびに新人(らしい)の野郎どもがなんか頭抱えてるのが納得いかんがな。

 

 「聞かれりゃ答えるわこれくらい」

 「あの状況で聞けというのは無理でしょう……」

 「そうだな……」

 

 新人のうち一人の口から弱弱しく漏れ出た言葉に、黄金鎧のやつは深く頷いていた。

 

 えー。不本意なんだけど。

 

 その後質問が途切れたのをきっかけに、俺は軽く伸びをした。

 

 質問は終わりなんかね? 

 

 「さて誘拐の疑いとやらは晴れたってことでいーんだよな?」

 「貴殿が事件の犯人でないことは分かった、だが詳しく聞きたいことはまだあるのだ」

 

 黄金鎧のやつが首で前に出るよう促すと、あのおじょーさんがゆっくりと前に進み出た。

 その目は酷く泳いでおり、こっちが目を合わせようとした途端頭を下げてしまう。

 

 なんか怖がられてんのかね? 我恩人ぞ?

 

 「彼女が攫われかけた時の状況を補足して欲しいのだ」

 「補足……なに? 覚えとらんの?」

 「ああ、彼女は攫われる前後の記憶が曖昧でな……、毒か何かで麻痺させられていたようだ」

 「うええ、毒とかひっでーことしてたんだなあいつら」

 

 そう言って肩をすくめると、騎士団のやつらから冷てー目を向けられた。

 

 なによ? お前が言うなってか?

    

 「助けられてからは貴殿と死体を見ただけ、しかも目は反らしていたという」

 「んでその後は俺が死体を仕舞ったから、誘拐した奴の顔とかが分かんなかったのか」

 「ああ。」

 

 ふぅん、補足の話か……それなら。

 

 俺のエンブリオを展開し、黒く染まった地面から白い椅子がいくつも浮かび上がる。

 その椅子の一つをおじょーさんに勧め、俺は別の一つににどっかり座った。

 

 「一応、長くなるかもしれんから、疲れんようにどーぞ」

 「この椅子は……?」

 

 遠慮だろうか? おじょーさんの声が震えている。

 

 「モンスターとかの骨で作った特製の椅子。ちょいと硬いがまあ座り心地は悪くないんでどう?」

 「え……遠慮しておきます」

 「あらま、んじゃあんたらどう?」

 「遠慮する」

 

 騎士のやつらにもおじょーさんにも断られるとか……

 鑢掛けとか頑張ったんだけどなぁ。

 

 ビミョーにへこんだ心を何とか切り替えて、俺は騎士たちに顔を向けると、おじょーさんが攫われかけてた時の事を喋ることにした。

 

 ◇

 

 あれは俺が旅の途中、このあたりの森の薄暗い道を進んでいた時の事。

 夕日がまだ少しだけ山の向こうにあるくらいの時間だったな。

 

 そんな時間に移動してたのは【大死霊】のジョブ特性の一つに種族がアンデッドに変更されるってのがあって、アンデッドは日光の下だと弱体化しちまうからだ。

 

 日の射さねえ時間になったら、日が昇るまでにとっとと動かなきゃなんねー。

 

 だもんで手に《騎乗》効果のあるアクセサリーを握り締めて、俺が持ってるアンデッドの中から足のはえーやつに跨って、時たま出会うモンスターどもを回避しながら進んでた。

 

 ここら辺のモンスターはあんまりレベルも高くないから倒してもなぁってな考えからだったんだが、そんな俺のアンデッドが急にその時足を止めたんだ。

 

 なんだなんだ? 暴走か? ってな感じにちょいと焦ったが、そいつが見てる先に目をやってみたら理由が分かった。

 《隠蔽》かなんかのスキルによって見づらくなってる何人かの人影が、人間背負って動いてやがった。

 

 まあその背負われてた人間がおじょーさんなんだが、その時は人影としか分かんなかったな。

 んで、とりあえずモンスターに乗ったままそいつらの目の前に割り込んでやったわけだ。

 

 連中、一瞬動きを止めやがったから一応何してんのか聞いてやったんだ。

 

 モンスターだったらアレだが、犯罪者運んでるティアンとかマスターだったら面倒なことになると思ったからな。

 だけどよ、そいつら何も言わねーでこっちにナイフ投げてきやがんの。 

 

 ニ、三本俺に刺さったんだがまあ、相手のレベルが低かったんで大したダメージにはならなくってよ。

 んだけど、それってこっちを殺ろーってこったろ?

 

 んだからまあ、殺ったわな。

 

 どう殺ったかは勘弁してくれや、あんま関係ねーだろーし、企業秘密ってやつよ。

 

 んでな、鉈でそいつらにトドメさしてる途中だ、地面に転がってたおじょーさんを見つけてよ。

 そういやずっと動かなかったなってんで敵じゃねえなって思ってな。 

 薬でも使うか? って思ってたところでおじょーさんが起きてきたからよ、声掛けたわけだ。

 

 あとはまあ、怖がってたおじょーさんに敵じゃねえって言って。

 死体転がってたから貰うぞー? って全部エンブリオの中に入れて。

 んでからおじょーさんを住んでるところの近くまで送ってやったくれーだな。

 

 ああ後、この洞窟はそんときおじょーさんに、人目の付かないとこねえか聞いたら教えてくれたんだよ。

 

 ありがとなおじょーさん!

 

 また目ぇ見てくれねえのな……

 

 ◇

 

 「ってな感じだな、とりあえずあいつらはたまたま遭っただけだわ」

 「…………」

 

 話し終わったあと、金色鎧の奴は顎に十字架を当てて考え込んでいる。

 おじょーさんは目ぇ伏せてるし、新人どもはおじょーさんになんか同情っぽい目向けたり、なんかひそひそ喋ってやがったり、頭抱えたり。

 

 なんか反応微妙だがなんかまずい事でもしたかね?

 まあ情報っていう程の情報もないんでしょうがねえか。

 

 「動揺も無くいきなり命を狙ってきた……と」

 「そーだな、ありゃ食い詰めの初犯とかじゃないだろーな、変わったジョブのやつもいたし」

 

 初めての強盗だの盗賊だのだったら、もう少し動揺が見えるもんだ。

 手だの声だのが震えてたり、息が荒かったり。

 やめりゃぁいいのにと哀れんだ事が何回あったか。

 

 「変わったジョブ?」

 「ここ王国なのに二人くらい【忍者】がいたんだよ」

 

 おじょーさんを下がらせ、エンブリオから解体するつもりだった死体を出現させる。

 

 おじょーさん以外の騎士と黄金鎧が近づいて来たのを見計らって、死体の顔に指をさした。 

 ジョブもリソースも抜けてるが、その死体の顔つきは天地系のそれだから、まあでたらめじゃねえってのは分かんだろ。

 

 合わせて、そいつが持ってた装備品も取り出して並べた。

 

 「AGI系の装備と〈隠蔽〉効果のアクセサリ、武器は短剣とあと小刀に……なんか体のいろんなとこにクナイとか隠してたな」 

 「王国内だけの誘拐犯と言うわけではなさそうだな」

 「誘拐した後の流し先持ってるやつらなんだろうな、まあカルディナかね?」  

 

 【忍者】は王国から遠くはなれた天地のジョブ、そいつらが王国に来て誘拐なんぞをしてる?

 

 「天地……が何かしらの謀略をもって……というわけではないでしょうね」

 「ないな、いくら何でもお粗末だ」

 「密命なら使うやつのレベルが低すぎるし、誘拐が噂になってあんたらが来てるって時点でダメだろーしな」

 

 まあなんというか、でかい組織がデカい事やってるってわけでもなさそうだ。

 容赦はないけど俺に見つかってやられる当たりビミョーにへぼいっぽいしな。

 

 「【忍者】交じりの集団の人さらい、目的は金目当て? かどうかはしらんが、まだ何人かいるだろーな」

 

 あいつらおじょーさんをどっかに運ぼうとしてたが、流し先が国外なら流石に背負って進むなんて事は無いだろうーし、毒の効き目が短すぎる。

 

 つまりは一旦置いとく場所がここら辺のどっかにあるんだろうし、仮の拠点があるならフルメンバーで人さらいなんぞせずに何人かそっちで攫ったやつらの管理とかするやつもいるだろ。

 

 「まあ早い所、そいつらを山狩りとかで探すのをおすすめだな、帰ってこねえ部下がいるってなるとそのままどっかへ消えてもおかしくねえし」

 「そうだな。諸君! 一旦全隊と合流し、皆で探索だ」

 「はい!」

 「任せて下さい!」

 

 騎士のやつらがおじょーさんを連れ立ってここから離れていく。

 なんだか足取りが軽く見えるのは気のせいか? 

 

 「人攫い探しとそいつら捕まえんの、手伝ってやろーか?」

 

 歩き出す騎士たちを眺めつつ、まだ動かない黄金鎧にそう冗談で言ってみた。

 

 「ありがたいが、遠慮せざるを得まい。そちらとはティアンに対する考え方が違うようだからな」

 「まあなー」 

 「きっとそちらは命を気にされまいが、こちらとしてはなるべく命は獲らないスタンスなのでな。彼らを捕える時足並みが崩れてしまうだろう?」

 「まず息は合わねーわな。 こちとら悪人の死体が頂けるチャンスをみすみす逃す気もねえんでよ」

 

 理由付きで丁寧に断られたのなら俺の出る幕はねえ。

 あの騎士どもとは間違いなくギスるだろうし納得だ。

 

 元より冗談で言っただけなんで、テキトーに話は終わり! ってことにして手ぇひらひら振っとく。

 

 「んじゃ、まあがんばー」

 「ああ、ありがとう」

 

 黄金鎧が俺に背を向け、騎士のやつらが歩いて行く方へと進んで行く。

 

 「しかし不思議なものだ」

 

 さあて解体の続きだと洞窟の方に戻ろうとした俺の耳に、黄金鎧の小さな一言が聞こえてくる。  

 

 「遊戯派かと思ったが、あの女性は気遣って……」

 

 俺らの距離が遠ざかるにつれて、声が小さくなるせーか最後の言葉は聞こえなかった。

 うん、聞こえなかった。

 

 「俺は遊戯派、敵対ティアンはモンスター、そいつらの死体はアイテム……」

 

 ブツブツ呟きながら 俺は洞窟に消えた。




  お話を聞いた結果、騎士団はちゃんと情報を手に入れられました。
 ただし、疲れたようです。


 【大死霊】のマスター
 ・名前はトリノベ
 ・これでも犯罪はしていないし指名手配はされていない
 ・でもティアンに容赦はない
 ・彼は遊戯派

 【へぶん騎士団】の方々
 ・新人たちはなんというか価値観の違いに疲れている 
 ・黄金鎧の人はトリノベを騎士程嫌っているわけではない
 ・人攫いの情報を得たので探索に向かう予定

  人攫いたち
 ・【忍者】在籍
 ・べつに陰謀とかはない
 ・そんな強くもない

 
 お読みいただきありがとうございました!
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