異国の風、遥かなる夢
豊後府内は、今日も活気に満ち溢れていた。
石畳の道を、様々な身なりの人々が行き交う。
商人の掛け声、職人の汗の孕む熱、子供たちの笑い声。
その中に、異国の風を纏った男たちがいた。
南蛮人。遠い海を越えてやってきた彼らは、珍しい品物や知識を持ち込み、府内の人々を魅了していた。
大友義鎮は、その光景を城の天守閣から眺めている。
父の跡を継ぎ、豊後の国主となった彼は、どこか心が満たされない日々を過ごしていた。それは、父も義母も弟も殺し、傅役であった入田丹後守に罪を着せ、処刑したからか。いや違う。あれは裏切り者たちだ。
欲は小さいわけではないが、ただ求めるだけではない、奇妙な好奇心を持ち、新しいものに興味津々だった。南蛮人との交流もその一つ。彼らの持つ世界、文化、そして何より、未知の知識に心を惹かれていた。
「殿、用意滞りなく整いましてございます」
時枝頼継の言葉に、義鎮は優しく微笑んだ。よく仕えてくれている家臣だ。
「左様か、通せ。どのような珍しい品を持って来たか、この目で確かめよう」
南蛮人との交流は、義鎮にとって大きな喜びだった。彼らから様々なことを学び、視野を広げることができた。世界は、自分が思っていたよりもずっと広い。そのことを、南蛮人との出会いが教えてくれた。
異文化との出会い、再び…
その日、南蛮人は一つの贈り物を持ってきた。それは、硝子でできた小さな瓶だった。
義鎮の側にいる頼継が受け取る。
「如何なものか?」
頼継が尋ねると、南蛮人は答えた。
「ローズウォーターというものでございます。花や香草を蒸留して作ったもので、体に付けると良い香りがします」
「香水のようなもの、であるかな」
頼継がそう呟きながら義鎮に手渡すと義鎮は興味津々で瓶の蓋を開けた。中には、甘く爽やかな香りが詰まっている、と思ったが、鋭い香りが鼻と目を突く。
「なるほど、面白い。」
あえてというべきか濁しつつ評すのは商人の前だからだ。
「頼継、お主も嗅いでみよ」
徐ろに義鎮は香水を手に取り、頼継に手渡す。頼継は少しだけ手の甲に付けてみた。それをまた、ゆっくり嗅ぐ。
「確かに良い香りだ。花の香りが華やかに感じられまする」
南蛮人は微笑んだ。そして義鎮に向き直り自信を持って言う。
「気に入っていただけましたか?この香水は、貴方の魅力をさらに引き立てることでしょう」
義鎮は苦笑を浮かべた。己だけが使っていても香りに慣れぬ者たちには、凡そ魅力的な香りではないだろう。
「そうか。では、大切に使わせてもらおう。それと、いくつか家中の女中らのために欲しい」
その日から、義鎮はローズウォーター、もといバラ水を愛用するようになった。とはいえ、商人や南蛮人と会する場合が専らである。
南蛮人との交流は、義鎮に新しい知識ももたらした。
彼らは、天文学や医学、航海術など、様々な分野に精通していた。義鎮は、彼らからこれらの知識を学び、自分の国を豊かにしたいと考えるようになった。
義鎮は南蛮人の学者を招き、天文学について教えてもらった。学者は、天球儀と呼ばれる道具を使って、星の動きを説明してくれた。
「この天球儀を使えば、星の位置を正確に知ることができます。そして、この星々は個にして全なのです。例えば、この十字のように結んだ線に並ぶ星は白鳥座と呼ばれます」
学者の言葉に、義鎮は感心した。
「なるほど、これは素晴らしい。」
義鎮は、新しい知識との出会いに素直に喜んだ。
南蛮人との交流は、義鎮に未来への希望を与えてくれる。
世界は広い。そして、未知の可能性に満ち溢れている。
南蛮人との出会いが、それを教えてくれた。
義鎮は、南蛮人から学んだ知識や技術を活かして、豊後の国をさらに発展させようと決意した。
「いつか、この国を世界の中心にしてみせる。」
義鎮の胸には、大きな希望が満ち溢れていた。それと同じくしてこの大名に大きな野望を抱かせた。
南蛮人との交流は、義鎮の人生に大きな影響を与えた。彼らとの出会いは、義鎮の視野を広げ、新しい知識や価値観を教えてくれた。南蛮人との交流を通じて、世界は一つではないことを知った。
義鎮は、南蛮人との交流を大切にし、彼らから様々なことを学んだ。そして、その知識や経験を活かして、豊後の国を豊かにしていくことを望んだ。民のため、大友のため、己のため。義鎮は尽きることのない夢を見た。終わることのない野望となる夢を。
義鎮の夢は、豊後を世界の中心にすることだけにとどまらなかった。彼は、世界に豊後のみならず日ノ本を示そうと腹中で思案するのであった。
国崩しって直撃したら痛いかな…