俺は勘が良い   作:slow quick slow

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この話だけが長いだけなので次からはめっちゃ短くなると思います。

見づらいと思います。そこは申し訳ないです。


前日譚

 

 

 

 

 

 

 

サイド6。中立コロニー群であり、戦火が比較的少なかったコロニー。

ジオン公国による独立宣言により開戦された戦争、通称『一年戦争』により、一部サイドやそのコロニーは戦火の渦中に巻き込まれたが、このサイド6は中立を謳っていたため、直接的な戦火はなかったと言える。

 

とはいえ、戦後の処理としては芳しくはなかった。ジオンが勝ったとして、コロニーの景気がよくなる訳でもないし、戦争により住処を失った人々は難民として他コロニーに雪崩込んできた。

結果、コロニー内の一部地域を除き……いや、コロニー全体の治安は著しく低下した。難民は不法建築を初め、非合法な商売、詐欺、闇バイトetc……まぁ、なんだ。犯罪が当たり前になりつつある。

 

そして、軍による民間に対してのMS(モビルスーツ)の払い下げ。これがいけなかった。規制を施しているとはいえ元が戦争の兵器、歴史を振り替えりゃ重機が祖先なんだけどさ。

んで軍警察はその規制を無くした状態であんな簡単に人を殺せちまう、しかも居住区にとっちゃデカすぎるモノを導入したってことだから、たちまち出動なんてすれば物の1つや2つ……物で済めばよかったな。家の1軒や2軒なんて壊れるのも普通だった。周りなんてお構い無し。電柱も平気で折っては電線は引きちぎっていく。不憫だわ。それで出てくるのは心無い謝礼とはした金程度で、家や損害の補填なんて無し。果てには、軍警察自体の態度も悪いときた。

まぁ、被害者以外からすれば、鎮圧出来たってことで特に何も思わない。強いて言えば軍警察に対して嫌悪感を抱く事くらいか?

 

こんな感じでコロニーの治安は悪くなり、稼ぐ為の裏バイトも徐々に流行りだしている状態だ。正直モビルスーツなんて物がなければまだ良かったのかもなぁ……なんて思う時もある。

 

だが、俺はそれ以上にラッキーだとも思っている。規制すると人はその隙間を潜り抜けようとするものだ。

 

 

 

 


 

 

 

 

_UC.0084年_

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃ当たり!比較的大型デブリが多いな」

 

『よし、んじゃ隠密にね。何かあったら言って。それまで輸送機のメインエンジンは切っておくよ』

 

「了解。頼むぜハロさんよ」

 

[おかのした!おかのした!]

 

最近になって出来たデブリ宙域の一角。漂ってきた大型のデブリが俺をワクワクさせてくれる。

どうか良いものが眠ってますように!ガンキャノンでも、ザクでも、ドムでも、なんなら腕1本だろうが武器だけだろうが構わない。予備パーツが多い方がいいし、高値で取引も出来る、融通の利く取引材料にもなる。それがジャンク品としてのMSの今だ。

俺の住むサイド6で行われている非合法な賭け試合『クランバトル』はそれほど裏では白熱している遊びだ。軍警察が介入してくるおよそ5分の間に相手の頭部を破壊することで勝ちとなる。それ以外のルールは無いに等しい。

今回は掘り出し物を探しにね、来ていますよ。前のバトルの時点でそれなりに消費してしまったからな。宝探しと思えば楽しいもんよ。とはいえ、今回はかなり勘が利く気がする。何かあるのかもしれない。期待しようか!

 

『それにしても、アラキの勘は良く当たるよね』

 

「野生の勘かなんかなのかねぇ?まぁそのおかげで俺とカイトはウハウハなんだけどな?」

 

『それはそうだね』

 

[そういうこった!そういうこった!]

 

『なんかネタ古いよねこのハロ』

 

「ネタなんて廃れても面白けりゃ良いんだよ。なぁハロ?」

 

[そうだ!そうだ!]

 

このハロも掘り出し物。中の機器類やメモリーは無事だったから、外装を新品に取り替えて使っている。たぶんだけど、元の持ち主は相当な旧世紀のオタクだったらしい。かくいう俺たちもこのハロのおかげでハマってるんだが。

 

さてさて、急いで戦艦の残骸やらを除けないとな。実を言うとここは既に軍警察の巡回コースにビッタリ入ってるんだよな。急がないと軍警察の視察が入られてお宝が無くなっちまう。

連邦の戦艦があるってことはもしかしたらガンキャノンや………あの『赤い彗星』のシャア・アズナブルが乗っていた連邦の初期に開発されてたとされるMS『ガンダム』があるかもしれない。

なんでガンダムがあるかもって?風の噂じゃ、シャアの乗っていたガンダムは2号機らしく、それで応援に来た1号機と交戦したらしい。もしかすれば、その交戦した1号機が改修されてたり、別に保管されている3号機があったとしてもおかしくないだろ?

 

「ハロ、めぼしいものはあったか?」

 

[特に無し。特に無し]

 

「むぅ……勘が外れたか……?」

 

『予定時間はあと少し……ギリギリまで攻める?』

 

「今までそれなりに勘頼りだったんだ。これで外れとか、今後は気を付けないといけないだろ。それに、もしあったらそれこそ悔やまれるぞ」

 

『そうだね……確かに信頼性が落ちると怖いなぁ。でも僕達に軍警察に対抗できる戦力なんてないよ?見つけても手放さないと……』

 

そうなんだよなぁ。でもさぁ、勘が悪くなったとなったら自信無くすぜ。本当にあったとかだったらそれ以上に。今回は今までで2番目位の勘だってのに…

 

「今回は多少無理する。俺の勘が間違えだったら今後に支障も出るし」

 

『はいはい、わかったよ』

 

[無理でこじ開ける!無理でこじ開ける!]

 

すまん。俺にも流石に意地があるからさ、「今度奢るわ」

 

『期待しとくよ』

 

「ありゃ?声に出てたか」

 

『本当に最後まで心の中で謝れないよね』

 

「うっせ」

 

なんか気分悪いじゃんかよ。と、あんま長居出来ない…ある程度絞らないと。ここで勘が働いてくれれば良いんだけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「渋いな……ザクの腕程度か」

 

くっそ。勘が外れたか?取り敢えず戻んねぇと

ピピピピピ!!!

MS反応!まだ宙域到達時間より10分早いぞ!

 

『アラキ!軍警察じゃない!MSジャンク屋だ!』

 

「MSジャンク屋!?くそ…引くしかねぇ」

 

ジャンク屋にも種類がある。

輸送機にモビルワーカーを牽引して、モビルワーカーでジャンク品を漁る、昔からあるジャンク屋だ。

MSジャンク屋はMSを用いてジャンク品を収集するジャンク屋だ。重機の発展型だから使い方としては間違っていないとは思う。だが、本来一般使用は厳罰対象でだいたいのジャンク屋は従来通りモビルワーカーを使っている。

 

そしてMSジャンク屋は嫌われている。こいつら、モビルワーカーから物資を横取りする行為を高確率でやる。最悪の場合、辺りを独占する為に同業者を殺しにかかる。

今の時代、土木等で使われるMSには武装を使えないように規制をされているが、こいつらは違法なデバイスでそれを無効化しているか、一年戦争時の品を改修して使っている。

つまり、コイツらが来た場合は逃げるのが最善手なんだが……

 

「バレてるよなぁ……」

 

[貴様。貴様。見ているな?見ているな?]

 

『補足されてるよ。デブリを利用して軍警察が来るまで耐えるしかない。最悪今回は厳重注意を喰らうしかないね……』

 

MSパーツのジャンク品を持ち出すのは違法だが、それ以外はかなり寛容だ。最悪MSパーツを離してりゃ、マシンガン構えながら『絶対にMSパーツは持ち帰るなよ』と脅しに近い注意を受ける程度で済む。

それに今回はMSジャンク屋がいる観点から、被害判定にもなるだろうし、大丈夫…………だと思う。

 

[こんなデブリで大丈夫か?大丈夫か?]

 

「デブリを利用すりゃアイツらも撃ってくるまいよ。宝箱や宝物に風穴開けるようなもん_」

 

 

ドドドドッ!!!

 

 

「嘘だろコイツっ…!!?ジャンク屋の風上にも置けねぇ野郎共だ!?」

 

なんとか避けれたが、やっぱコイツらは常識破り型破りでモビルスーツ乗りっていう肩書きに酔ってる奴らだわ。ジャンク屋をしてる身としてはコイツらと一緒にされたくねぇ!

 

『アラキ!大丈夫かい!』

 

「おう、戻れるかはわかんねぇけど今は無事だわ」

 

『北北東500m先にサラミスの残骸がある!そこに逃げ込むんだ!』

 

あのサラミス!って違うだろ逃げるんだからワクワクすんな!くそ頬叩きや!

 

「っ〜……よし、行くか」

 

[敵来たら教える、敵来たら教える]

 

「了解だ、頼りにしてるぜハロさんよ」

 

[任せろ!任せろ!]

 

デブリ宙域だから隠れ場所は多い。マシンガンもある程度耐えられる。

だが、一気に逃げる!何故って?その方が生きれるからだ!カッコ自論!ルート構築にデブリが多い場所を選んで行くってのが鉄則だがな。

 

ガスッ!!

「カスった___ッ!前いるかハロ?!!」

 

[おる!おる!]

 

「なら上にいく!」

 

あとは、直線上に敵を置かないこと!マシンガンで蜂の巣にされるぞ!因みに今のはマジで危なかった!!

 

「あとなんぼ!」

 

『150!』

 

「オッケィ!」

 

正直な所モビルワーカーでMSに勝てる要素は……無いってことは無い。でもこの状態は勝てない。遠距離武器で撃たれたら無理だよ。こちとら近接しかねぇんだぞ!

 

『あと50!』

 

「よしっ!ハロこっちこいっ!」

 

[了解!了解!]

 

「脱出!!!」

 

脱出レバーを引く。瞬間に座席と共に宇宙に放り出される俺とハロ。もちろん射出方向はサラミスの残骸だ。スーパーヒーロー着地だ!いっ……アークソクソクソ……

うお!?やっぱ蜂の巣にされたか!怖ぇ……爆風がここまで来たわ。

ミノフスキー粒子は無いから敵の無線をジャックしてみるか。

 

「ハロ、電波ジャック頼める?」

 

[おかのした!おかのした!]

 

あら、なーんて便利なんでしょ!便利過ぎない?このハロ。元の持ち主ってヤバかったりしない?まさか…電波ジャックで旧世紀のあんな動画()やこんな動画()を写そうとしたのか!?ってこんな時に何考えてんだ俺は…!

 

 

 

ザザッ…

 

『ちっ……たぶんやれてないっすね』

 

『生身ではそう長くない。放って先にお仲間をやりに行くぞ。ワーカー1機だけで来れるわけが無い』

 

ザザッ…

 

 

 

カイトの方に行くってことか……通信手段は無いんだよな。流石にハロにもその機能は搭載されて無い。

どうする?もうほぼ詰み状態だ。カイトがやられれば次は俺、俺が助かったとして軍警察に見つけてもらえるかと言われれば五分五分……クソッMSがあれば___

 

 

 

_キーン_

 

 

 

__耳鳴り……後ろ……?」

 

このサラミス……コンテナが付いてる?……いや、この大きさ的に……外付けのMSドックか!外装はボロボロだが穴は無い……不慮の事故で戦艦が爆発したのかしたのか?

 

いや、今はそんな事どうでもいい。中にMSが入っていれば……どうにかなる。してみせる。

 

「あってくれよ……」

 

[願掛け、願掛け]

 

「んなもんどこにすんだよ。ここか、緊急用のハッチは」

 

暗っ。当たり前だよな……取り敢えずヘッドライトを付けて。これかな?端末は……生きてる。

 

「予備電力があるな。ドックを起動、ライト点灯っと」

 

これで全貌……が…………これは……!?

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「大丈夫かな……モビルワーカーの反応は消失……直前に脱出レバーの反応があったから逃げれたんだろうけど。まさか僕の方を探してるのかも……」

 

主電源も切っておく方がいいかもしれない。

 

「!来たっ…」

 

付近に熱源……やっぱり僕狙いか。行き来をするには輸送機が必要だから、モビルワーカーを破壊した今、狙われるのは当たり前か。電源を切ろう。

 

「バレませんように……」

 

一応中型デブリの中に入ってはいるけど、平気で撃ってくるだろうから安心はできない。撃たれても動かないようにしないといけないから運だよ。動こうとすれば直ぐにバレる。

 

ドドドドッ!!!

 

 

「!!」

 

デブリの扉が破壊された!来るのか……?

 

 

ガシャン…ガシャン…ガシャン

 

 

グポンッ…!

 

ザクっ…マシンガンにシュツルム・ファウスト持ちか…

 

ドドドドッ!!!

 

 

ドドドッ!!

 

 

ドドドドッ!!!

 

 

辺りを一面を壊す気だ……やられる……っ。

 

 

ガチャッ……

 

 

っ…覚悟はしてたけど、やっぱり死にたくないよ…っアラキ…ッ

 

 

 

 

 

ドゴォォォン!!!

 

 

 

 

 

ッ!!?なんだ、今の爆発音は!ザクが外に出ていく……マブに何かあったのか……?

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「見つかったか?」

 

『見つからないですわ。デブリの中に隠れてるかもですかね?』

 

「ちっ、余計な手間増やさせやがって……多少商品が消えてもいい。輸送機を完全に仕留めろ。ここは俺達が占領するんだからな」

 

『了解!』

 

面倒なことをさせやがる……だが、ここをモノにできればこんな生活とはおさらばだ。あるもん売って売って売りまくって大金を稼ぐ。夢へ一直線……グフフフ……その前に先に入っている野良鼠共を排除しなければ……ここの資材は一切渡すものか…!

その為にMSまで投入したのだからな!

 

「私はサラミスに隠れた奴を殺る。いいな?残らず破壊しろよ?」

 

『わかってますって。そんなに信用にならないですかねぇ?』

 

「前回のバトルは撃ち漏らしで負けかけたのだがな?」

 

『そ、それはただの見間違いですよ!』

 

「それが失敗に繋がる!しっかりとやれぃ!」

 

『わ、わかりましたぁ!!』

 

全く……ん?後方から熱源だと?くっ、もうMSを見つけてきたとでもいうのか。

 

「っ…こっちにくるか!いいだろう相手になってやる。ザクだろうがドムだろうが相手になって_」

 

 

 

 

ドキュゥゥン!!!!

 

 

 

 

ジュワァァァ……!!

 

「ぐぉぉ!!?バカな!?び、ビーム兵器だとっ…!?まさか、サラミスに連邦の機体が付いていたとでも言うのか!」

 

ガンキャノンか?それとも軽キャノンかッ………………なんだ、あのシルエットは……いや、見覚えがある……あ、あれは赤い彗星のっ……!!

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ありゃ、一応頭狙いだったんだけど」

 

[スコープ使え、スコープ使え]

 

「急いで撃ったんだからスコープもクソもあるか!だいたいオートアシストが旧式なんだよ。一年戦争時のまんまだろこれ」

 

大方、鹵獲したザクを解析してそれを移植した感じか。今のザクでも日々のアップデートで最適化されているんだから、現状この機体は性能を持て余してる状態だ。こんなんでコイツぶん回してた赤い彗星ってヤバい……いや、時代の流れか?

 

「まさか……本当に乗れるとは思わなかったな。それより、アイツらをどうするかだ」

 

[構わん行け!構わん行け!]

 

「それって殺れってことか?MS戦闘はクランバトルしてっから良いが……あくまで頭潰しだからな。下手したら死ぬけど、故意に殺るのとは違うだろっ」

 

殺し合いとクランバトルを一緒にされたら困るよハロ……人を殺すって覚悟がいるんだよ。俺はそんな狂人じゃないし、なりたくもない。だが、もしやらないといけないなら……

 

「……俺に、コイツが扱えるかわからない。だが、やる以上は扱えてみせる!お前の力を見せてみろ……ガンダム!!」

 

殺ってるさ。生きる為に。ま、最大限無力化で済ますけどな!

 

 

ギュオオオ!!!

 

 

ぐぉ!!この加速力ッ軽キャノン以上だッ!そうだよな、キャノンは支援と砲撃戦術なのに対して、コイツは白兵戦を想定しているんだから、機動性に関しては上だよな…!

 

「ジャイアント・バズ装備のリック・ドムか。相方は……まだ居ないな。今の内が吉か!」

 

マブが来る前に無力化させる!

 

[スコープ!スコープ!]

ガチャガチャッ!!!

 

「わかった!わかったから落ち着けっ!!」

 

コイツ……1回外したからって強調してきやがる!嫌味かッ!使うけどッ…!!

狙いはできれば頭っ!当たってくれよ!

 

 

ドキュゥゥン!!!!

 

 

ちっ、やっぱ避けるか。初心者なわけないもんな……おっと、バズには当たってやらね。いや、ここでバルカンだ!

 

 

バババババッ!!!!!

 

 

ジャイアントバズのロケット弾を爆発させれば視界が埋まる。それは俺もだが____そこか!ビームサーベル!

 

「左腕取った!」

 

[ライト!ライト!]

 

「ん___ッ!!」

 

メガ粒子砲!?ジェネレータ出力的に目眩しの閃光ライト程度しか出なかったはず……いや、ジェネレータを取り替えたのか。

今回はギリッギリ避けれたが、迂闊に近づけないな。白兵戦の方が無力化が簡単なんだが……いや、バルカンで破壊すれば良いのでは?

 

「その為には隙作りだな……」

 

[ぶっ壊せ!ぶっ壊せ!]

 

戦場になると口悪くなるのなんなんですかねこのハロ……。

後退したドムのジャイアント・バズを避けつつ、ビームライフルで徐々に焼いていく。アシストが中途半端なせいで頭に当てずらい……ある程度MSに慣れたらマニュアルの方がやりやすいんだよなぁ。

そろそろマブが来る頃か。軍警察の巡回も近い……手短に終わらせたいところ。

 

「__来たな」

 

勘がそう伝えてくる。この感覚、慣れたけど不思議には変わらない。方向は__

 

「上からか」[上だ!上だ!]

 

そんな攻撃…効かねぇよ!!ザクマシンガンなんぞに今更当たってやる義理もない。とはいえ、これで合流か。面倒だな……。とりあえず動く事は忘れちゃいけない。

 

「どう攻めるか……」

 

[弱いやつ潰す?弱いやつ潰す?]

 

弱いヤツ……ザクか?まぁわりかし命中精度は高くはなかったが……にしても潰すか。良いな、この機動性ならいけなくはない。

攻撃手段を奪えばたちまち動かなくなるだろうし、内蔵武器もない。注意はサイドスカートにあるシュツルム・ファウストか。

 

「よろしい、潰そうかね!」

 

[潰せ!潰せ!]

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

デブリ宙域。

最近になり、サイド6付近(とはいえ現物を目視出来る範囲にはない)に出現し始めたこの場所で今、ルールすらない無法な争いが行われていた。

 

「頭より腕!」

 

『こ、コイツ速いです!?』

 

『馬鹿野郎!!迂闊に近づかれれば死ぬぞ!』

 

”グレイとブルーを基調に塗装されたガンダム”は、従来のザクを凌ぐ圧倒的なスピードで捕捉したザクに迫っていた。

ドムは直ぐさまに加勢に入ろうと、ジャイアント・バズを放ちながら、ザクの方に向かう。

ザクはというと、MAV戦術に関しては理解しているようで、ドムと合流するように動きながらザクマシンガンを撃っている。

しかし、相手はあのガンダム。圧倒的機動性によりひらり、またひらりと躱してきながら徐々に迫っている。

 

『り、リーダー!振り切れないっスよ!?』

 

ザクのパイロットである少年は怖気付いた声でドムのパイロットに呼びかける

 

『撃て!撃てなくなるまで撃ち続けるんだ!!さもなれば死ぬぞ!!』

 

『そんなぁ!!?』

 

ドムのパイロットによる喝入れに叫びながらもガンダムに照準を付けながらザクマシンガンを撃ち続ける。

 

「やっぱビームライフルより実弾だよなぁ!」

 

[躊躇すんな!躊躇すんな!]

 

「嫌だよ、俺は気持ちよく帰りたいの!」

 

ガンダムを動かしているアラキはというと、できる限りの無力化を行おうと白兵戦に持ち込もうとしていた。

クランバトルで死人はないことはない。頭部が破壊させる前にプロペラントタンクやバックパックに引火して機体が爆発するのはなんら不思議ではない。そもそも、非合法であり、参加者も殆どが難民等で構成されている為、保険なんてものも存在しないのだ。

だが、できれば死に試合は作らない方が良い。不幸な事故以外で死人が出て欲しくないと考えているのがこの甘ちゃん小僧なのである。理由は様々あるが、1番は後味が悪いということだと。

 

「そろそろドムと合流か!」

 

[めんどい!めんどい!]

 

「ここは一旦引く…が、足1本くらいは持っていくか」

 

ビームライフルを構え、撃つ。とはいえ、爆発が起きづらい下半身を狙いにしてる。

 

『うわぁぁっ!!??!!?』

 

見事命中。右脚を膝上に受け、片足を失うザク。これで機動性は落ちたはずであると思いながら距離をとる。

 

『ええぃ馬鹿者が!機体マトモに動けるか!』

 

『す、すみません、なんとか動きはします!』

 

『いいか、死にたくなければ俺に着いてこい』

 

『はいぃ!』

 

ザクとドムは同時に揃いながら移動を開始、ガンダムに向け突撃を始める。

 

「来たぞ……」

 

[もちつけ!もちつけ!]

 

「落ち着いてるさ、よし。行こうか」

 

ガンダムはビームライフルをリアスカートにマウント、シールドを背部バックパックにマウントし、両手で2本のビームサーベルを抜く。

完全に間合いに入り一網打尽にするようだ。

 

「赤い彗星も言ってた。〘当たらなければどうということはない〙ってな!」

 

2機に向かって機体を前進させる。

 

『こっちに来た!?』

 

『なにっ、いやいい!撃て!』

 

お互いに距離が近付いていく。ガンダムは近付く度に弾幕が強くなるが、ジャイアント・バズは時にバルカンで対応しながら、マシンガンを避けていく。

 

『当れェェェ!!』

 

『くそっこれがガンダムの力だとでも言うのか!』

 

「これは_避けれる」

 

どんどん近付いていき、そして

 

『む、無理だぁ!?』

 

ザクがバックを始め、動きを止める。それを見逃すはずもなく、ガンダムは更に加速する。

 

『なに!?まだ加速するのか!??』

 

ジャイアント・バズを捨てヒートサーベルを構えるが遅い。ガンダムは既にすれ違い、ザクに向けビームサーベルを構え__

 

『ヒッ』

 

___両腕を斬り飛ばした。

 

「一丁上がりぃ!!」

 

『ちぃ!』

 

舌打ちをしながらドムがガンダムへと向かうと同時にガンダムもドムへと向かう。

 

「後はテメェだけだ!」

 

『ぬぉ!!!』

 

ドムのヒートサーベルとガンダムのビームサーベルがかち合う。とはいえ、ビームサーベルを2本持ちをしているガンダムはもう片方のビームサーベルでドムの頭部を斬り飛ばす。

 

『まだ終わらんッ!?』

 

「お見通しだよ!!」

 

腹部メガ粒子砲に光が出始めるが、ガンダムのバルカンにより、メガ粒子砲が破壊される。行き場の失ったエネルギーが爆発、ジェネレータが破壊されたようで機能を失うドム。

 

「ふぃー終わり終わ__

 

 

 

 

 

ピキリリリリンッ!!!!

 

 

 

 

 

__コイツッ!!!!ッ!」

 

 

 

『このっ……喰らえェェッ!!!』

 

ザクがサイドスカートにマウントしていたシュツルム・ファウスト、どうやら発射装置も兼ねいたらしく、それが発射される。それを発射する前に察知したアラキは”そのまま”ガンダムを右に避け、ビームライフルを構え撃つ。否、撃ってしまった。

 

ビームはシュツルム・ファウストにあたらず___

 

 

 

 

__え…あっ__

 

 

 

 

___吸い込まれるかのようにザクのコクピットへと撃ち込まれた。

 

「__ッ!!?!しまっ___」

 

不幸はまだ続く。シュツルム・ファウストの直線上、そこにはかち合っていたドムが漂っている。

人の死に気を取られていたアラキはシュツルム・ファウストの対処に遅れる。

 

 

 

 

__クソっ脱出しか…な、なんだ、ぎぁあぁ__

 

 

 

 

爆発と共に、アラキには叫びが聞こえた。

 

 

 

 


 

 

 

 

「__ッあ……ッは……ッ!!!?死ん…だ…?」

 

理解に苦しむ、いや理解したくない感覚に襲われる。死んだ……殺した……俺は……!!

なんで、聞こえた……叫び声……いや響いた……頭に、響いた。

気持ち悪い。頭がぐにゃりと捻じ曲げられた感覚……

胸が締め付けられる……

 

「__ぅグッ……ハっ……ハァッ……!!」

 

これが戦場なのか……?これが殺したときの感覚なのか……!?こんなのを毎回感じながら人は殺してるのか??こんなの、毎度毎度感じていたら狂うに決まってる……!

 

「ッ…………ハっ……く……忘れろっ……忘れろ!」

 

クソッ……頭にこびり付く。迂闊だった……やっぱ頭もきり取っておけばよかった!

サイドスカートから撃てるようにされてるなんて思わなかった……だいたいは手持ちでの使用が主だったから、サイドスカートにマウントされてるのも手に持つためと思ってた……

 

「クッソ……くそっ……こんな苦しいのか……!これに慣れろってか……っ」

 

戦場に立つってこんな思いなのか……______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[……………ろ!]

 

 

 

[お……!おき…!]

 

 

[起きろ!起きろ!]

 

_____ッはっ……!ハロ…っ」

 

[軍警察だ!軍警察だ!]

 

軍警察……?……………………しまったッ!宙域に入ってきているのか!!?

 

「戦闘から何分経った!!」

 

[13分、13分]

 

「そりゃもう来てるよな……っ」

 

まだ頭が痛む……だがやらねぇと。大丈夫……咄嗟の反応がなけりゃいける……筈だ……

 

[震えてるぞ、震えてるぞ]

 

「わかってる……わかってるよ。また殺してしまうかもしれないって怯えてる。なんなら降りてしまえば良い。良いんだろうけどさぁ……軍警察にコイツ渡したくないんだわ」

 

[なら潰す?潰す?]

 

「しかない。レーダーからだと前方西南西方面……潰した後にカイトとドックを回収する。コンテナに見立てりゃある程度は誤魔化せる」

 

殺しは嫌なくせにMSに乗るのは辞めないなんて、つくづく馬鹿な話だな。ガキかよ。ガキだったわ。

ガキが一丁前に語ってて笑えてきたな。ガキなんだからガキらしく喚きながらやればいいって話か。

 

「フゥ……んじゃま、行きますかね。ビームサーベルはラックに戻して……」

 

行くか……いつも通り、頭潰せば良い。それだけ。俺にできない道理はない。

頭痛も胸の締め付けもだいぶ和らいだ。集中しろ。

 

敵は無力化しろ。

 

 

 

 


 

 

 

 

UC.0084年のある日。

 

軌道によって漂ってきたデブリ宙域により戦闘が勃発。軍警察のMS2機が詳細・所属共に不明のMSにより頭部を潰され、その後回収された。

その他にもザクとドムの残骸が発見され、MS同士の抗争が行われていたと推測される。

当時巡回に当たっていたパイロットの情報では、既に戦闘は終了しており、戦闘の光は起きていなかったという。

その為、デブリ宙域を巡回中に不意打ちを貰い、1機は頭部を損失。もう1機は少ない時間だがその不意打ちの機体を確認した後に頭部を損失。あっという間に両機は戦闘不能にされたという。

 

機体を確認したパイロットはその機体に酷く驚愕と共に恐怖したという。

 

『あれはまさに、亡霊だった。もう存在しないハズの機体だった』

 

これを機に、その存在は度々サイド6内で目撃されるようになる。

そして、このパイロットの発言とその機体色からこう呼称されるようになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰色のガンダム(グレイファントム)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、また亡霊が出たんだって。よくってほど現れないけど、たまにって言うほど現れないことはないよね」

 

「んー、あーそうだな。まぁ、亡霊も案外アグレッシブなんだろ」

 

電車の中。スマホに目を通している赤いショートヘアの少女と、何となく気怠そうにしている黒髪の少年は、それなりに抑え目な声量で会話をしている。

 

「なにその反応。でもガンダムかー。もっといっぱいあっても不思議じゃなくない?だって連邦が作ったんだよ?ジオンの……30倍だっけ?の国力差があったんだし」

 

「確かに、俺も思ってる。でも、ガンキャノンも同時開発されていたんだから数は少数だろうな」

 

「でも1機位は残っているでしょ」

 

電車が止まり、扉が開く。少女はスマホの記事のコメントに見入ってるようだ。

 

「そうだな。おい、着いたぞ」

 

「え、ちょ」

 

青年が電車から降りながら声をかけ、少女はその声を聞いた後に急いで電車から降りる。

 

「もうちょっと早く言っても良いじゃない。それこそ着く前に」

 

「言ってくれるだけありがたいと思って欲しいけどな?」

 

「んー……」

 

ムッとした顔で青年を見つめる少女。青年は呆れるなとため息を吐く。

 

「それより、行くぞマチュ」

 

「わかってますー。そういえばラキってたまに気分悪そうにしてるけど」

 

「寝不足なんだよ」

 

「また機械いじりでもしてたんでしょ」

 

「キショ、なんでわかるんだよ」

 

「ふふん、これでも長い付き合いだから!」

 

「誇られても困るんだよなぁ。根も葉もない噂が立つ俺の身にもなって欲しい」

 

「うるさーい私だって困ってるだから!違うって言ってるのに見せて見せてーって迫られるんだから!」

 

「ハイハイいいですよー被害妄想は」

 

「あ、この!」

 

 

 

彼女は今は知らない。この青年こそが先のガンダムの搭乗者ということを。

そして彼は、勘がなにやら訴えてくるということを鬱陶しく思いながら、どうか面倒ごとはよしてくれと投げ場のない願いを抱いていた。

 

しかし、運命というものはかくも非情なものか。彼の願いが叶うよりも彼の勘はよく当たる。

避けられない運命に、今日も気怠い身体を動かす。いつ来るとも知らないその日を待ちながら、日常を過ごしていく。

 

 

 





補足ですがラキはアラキのニックネームです。安直なニックネームですがご了承ください。

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