英雄と美姫の物語   作:ながしながされ

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申し訳ございません。三話の編集をして気付いたのですが、魔封じの水晶回収してましたね。ここで使うために回収させてないつもりだったのですが、何をとち狂ったのか回収する文章入れてました。
これからこの話を改訂するのは流石に難しいので、回収してなかったことにしてください。大変申し訳ございませんでした。

誰でもミスをする。この私だってそうだ──アインズ様

前回のあらすじ
モモン「ご飯食べた!美味しかった!ナデナデ」


九話『伝説の始まり』

 半蔵からの報告を聞いたアインズは思考を巡らせていた。

 

 魔封じの水晶だと?中に何が入っているかわからない以上、迂闊に行動はできない。第十位階魔法の攻撃に特化した魔法でも入っていれば、アンデッドに戻っても多少なりとも被害は食らう。

 そういえばあのカルネ村の時も、隊長みたいなやつが魔封じの水晶を持っていたな。あれは、スレイン法国の陽光聖典だったっけ。…あれ?そういえばあの魔封じの水晶どうしたんだっけ。…あれ?まさか!?あそこに忘れてきた!?!?報告にあったクレマンティーヌは元漆黒聖典、カルネ村を襲った奴らは陽光聖典、同じスレイン法国の特殊部隊だ。そして、あの時の魔封じの水晶の行方はわからない。でも陽光聖典はガゼフに任せたはずだ。脱走したか釈放でもされたか、可能性の一つではあるけど、その可能性は高い。くそ!ガゼフめ!!いや元々俺が忘れたのが悪い、その責任を彼に擦りつけるのは理不尽というものか。

 

 自分が犯した失態に気づき苛立つ。まだあの時の魔封じの水晶だと決めつけるのは時期尚早かもしれないのだが、それはそれで警戒しなくてはいけない対象が増える。もし違う魔封じの水晶であった場合──もう一つあることになってしまう。

 

 それを確認するためにリイジーを呼ぶ。

 

 

「リイジー・バレアレ、お前に問う。魔封じの水晶というのを知っているか?知っているならどの程度の価値があるものか、教えてもらおう。」

 

 

 たくさんあるのなら報告の魔封じの水晶とカルネ村のは別の可能性があるが、珍しいものなら同一の可能性が高い。

 リイジーは自分が知っていることの全てを答え、その話によると

 

 魔封じの水晶については知っているが、今まで生で見た事はなく、もしあるのならとてつもない価値のあるものである。御伽噺によく登場していて、神が持つマジックアイテムの一つである。人間では作成する事はできず、今ある魔封じの水晶の全ては御伽噺や神話の時代の遺物である。

 

 つまり忘れた魔封じの水晶だ。神話の時代の遺物なのであれば、それを1週間経たずして二つ見ることなどあり得ないだろう。リイジーが何歳なのかはわからないが、少なくとも60歳は超えているはずだ。そんな人物が今まで見たことがないと言うほどのレア物なのだ。

 

 せっかく警戒して使われないようにしたはずなのに、結局使われてしまうとは。しかし後悔はもっと後でするべきだ。今はあの魔封じの水晶が何なのかを見極めるまではこの場を動くことはできない。

 

 モモンは半蔵に監視を続けるよう命令する。

 魔封じの水晶には特に警戒するよう伝え、監視対象はどの程度のレベルかも聞いておく。

 取るに足らない──半蔵が報告した言葉だ。

 つまりは魔封じの水晶だけ警戒すれば、この時間はなんとかなるはずだ。

 

 モモンが考えをまとめていると、リイジーが尋ねてくる。

 

 

「なぜ魔封じの水晶について聞いたのじゃ?それよりも孫はまだ見つからないのか?」

 

 

「ンフィーレアは今墓地にいることがわかっている。しかしその犯人が魔封じの水晶を持っているのだ。中身がわからない以上、今手出しをするべきではない。場合によってはンフィーレアだけ助けて、この街を捨てるしかない。」

 

 

 リイジーは驚愕する。孫を攫った連中が魔封じの水晶を持っていることに、ではなく神話の領域のマジックアイテムなら街一つくらい瞬く間に消え去ることもあるにも関わらず、孫だけは助けると言ってのけた目の前の冒険者にだ。

 

 街が消え去ろうと、可愛い孫だけでも生き残るのであればこれ以上望むことはない──とリイジーはただただモモンとナーベに感謝の意を述べる。

 

 その後、モモンは外で待たせているハムスケに会いに行く。

 

 

「ハムスケ、もしものことがあればリイジーを背に乗せて全速力でこのエ・ランテルから逃げろ。合図はシモベを寄越す」

 

 

「任せるでござるよ殿!このハムスケ、何が何でもエ・ランテルの外まで逃げてみせるでござる!」

 

 

 その言葉を無視してモモンは再び部屋に戻り、半蔵からの報告を待つ。

 

 少しすると半蔵からの報告が入る。

 

 

「偉大なる御方よ、アンデッドが街を襲い始めました。その際、魔封じの水晶も発動させております。出てきたのは威光の主天使(ドミニオンオーソリティ)でした。」

 

 

 何ということだ。

 

 モモンは頭を抱える。超位魔法以外なら何でも封じ込められる魔封じの水晶に入っていたのが威光の主天使(ドミニオンオーソリティ)で警戒に値しないものだったからだ。ならば別に今の戦士化状態のままで戦えるだろう。アンデッドに戻る必要もない。既に魔封じの水晶を使っているなら、これ以上の切り札があるとは考え辛い。

 

 

 街が襲われ始めて、警戒するべきものも無くなった。半蔵に首謀者から目を離すな、と命令しバレアレ家から出ていく。今から外に出ていけば、タイミング的にもちょうどいいだろう。

 

 

 

「よし。行くぞナーベ!この街に平和を取り戻すのだ!!」

 

 

 モモンがついに動き出し、ナーベもそれに続く。

 外に出ると既に、墓地からは逆方向に走って逃げる人達で溢れている。モモンはその惨状を見て、両手の拳を握りしめ、怒りに震える。

 

 

「ハムスケ!お前はリイジーを守れ!もしもの時は、わかっているな!」

 

 

 ハムスケもモモンのその雰囲気からか、任せるでござる殿!と気合の入った声で、力強く答える。

 走る人々とは逆方向に歩いていく二人。そこに焦りは見えない。

 建物の崩れる音、叫ぶ人々の声が聞こえてきて、さらに拳に力を入れる。

 少し遠くにアンデッドの大群がいるのが見える。それに囲まれ剣を振っている冒険者達も。何とか耐えてはいるみたいたが、限界だろう。しかしその冒険者の目は憎しみと悲しみに溢れている。

 

 それを見てモモンは叫び出す。

 

 

「はあああああ!!」

 

 

 モモンは駆け出し、剣を大地へ振り下ろす。

 ──轟音。地面がひび割れ、空気が震える。

 その瞬間、アンデッドの群れは、一瞬にして塵となって消えた。

 あたりに残ったのは、揺れる土煙と、静寂だけ。

 

 一撃だった。

 

 

  冒険者の一人が、震える声で呟く。

 

「あ、あなたは……いったい……」

 

「私は冒険者モモン。この街を守るために来た! 首謀者は墓地にいるはずだ。協力してくれ!」

 

 漆黒の鎧に身を包んだ戦士──モモンは、そう名乗り協力を求めてきた。だが、先ほどの一撃を見れば明らかだ。

 あれは、次元が違う。

 地面に剣を叩きつけただけで、こちらが数人がかりでようやく倒していたアンデッドが、一瞬で全滅したのだ。

 ……自分たちがついて行ったところで、足手まといになるだけだろう。

 

 

「しかしモモンさん。私たちではあなたのお役になど──」

 

 

 

「今は君たちのような勇敢な者が必要なのだ!その勇敢さを持つものが足手纏いになどなるわけが無いだろう!」

 

 

 モモンさんは最後まで言わせてくれない。

 あれ程の強さを持ちながら、自分達を勇敢だと、足手纏いになるわけがない、と言ってくれた御仁の言葉に励まされて、自分たちも付いて行くことに決める。

 

 しかしモモン様について行こうとした瞬間、叫び声が聞こえる。男の声だ。その叫び声のする方向を見ると、さっきまで一緒に戦っていた冒険者の一人が足を怪我したのか地面に倒れており、アンデッドの侵攻により崩された建物に今にも潰されようとしている。

 

 

「ナーベ!」

 

 

 モモン様の声が聞こえる。その瞬間、倒れてきていた建物は粉々になる。

何が起こったのかわからない。モモン様が声をかけた人物の方に目をやると、その人物は指をさすようにその建物の方を向いていて、魔法であの瓦礫を壊したのだと理解する。

 それよりも、今こんな状況下に置かれてもなお、その姿に目を惹かれる。

 

 何という美しさだろうか。

 

 真っ直ぐな漆黒の髪。

 切れ長の目。吸い込まれそうになる漆黒の瞳。

 それと相反して降り始めた雪のように、透き通った白い肌。

 どこを見ても美しいとしか言えない女性がその場に立っていた。

現実離れした美しさに目を奪われる。

 

 だが今はアンデッドをどうにかしないといけない、頭を振り、歩き始めたモモン様に自分達もついていく。

 

 それからのモモン様は圧巻だった。強大なアンデッドが出てこようと、来るもの来るものを叩き切って行き、自分達と同じように戦っていた冒険者や兵士を助けては、協力を要請して今ではその数は50人は超えている。

 

 もうすぐ首謀者がいるらしい墓地に着くぞ!このままいけば本当にこの街を救えるかもしれない!

 

 そんな思いも束の間、突然空が光り一本の光が見える。その光は街全体を照らし、夜であるはずが昼間よりも明るく神々しくすら思う。例えるなら神の矢だ。

 その光を認識した次の瞬間には爆風が起こり、吹き飛ばされそうになる。必死に踏ん張り飛ばされないようにする。

 爆風が止んだあと、その光が起こった方に目をやると、そこにあった建物はなく、元々何もない砂漠だったと言われても納得してしまう程の更地となっていた。また先の爆風で吹き飛ばされた冒険者達もいて、その姿の確認はしたくない。見ても良いものでないだろう。

 

 

「お、おい、あれ!!」

 

 

 近くにいる冒険者が指をさし、その方向を見る。

 そこには天使がいた。その姿は神々しいという言葉では足りず、直視を躊躇う程だ。これが神の姿なのかもしれないと思ってしまったが、無慈悲にもこの更地を作ったのはあそこで優雅に飛んでいる天使なのだろう。あれを止めなくてはいけない。

 

 そんな思いがあったのだが──本能が邪魔をする。

 止める?

 無理だ。

 できるわけが無い。

 神にも等しいあれをどうしろと?

 人間はただただ神のお遊びによって蹂躙されるだけだ。

 

 足が震え剣を持つ手に力が入らない。周りの連中も自分と似たような感じになっている。

 

 しかしその中で、全く芯がブレずに頼りになる男がここにはいた。

 

 

「これ以上はやらせんぞ!神のもとに帰れないのなら、私が送ってやろう!」

 

 

 モモン様の声だ。モモン様はこれを見てもなお、この街のために戦ってくれるのか。神と言ってもいいあれと対峙するつもりなのか。無理だ。いくらモモン様といえどあれには勝てない。既にモモン様のヘルムは割れ、片目が見えており肩もボロボロで、至る所には傷が見える。そんな状況でどうやって。

しかしモモン様は天使に向かって走り出す。

 

 

「行くぞナーベ!!うおおおお!」

 

 

 モモン様が剣を振るのと同時に天使は両断され、その両断された体はナーベ様の魔法によって完全に消滅する──ほんの一瞬だ。

 瞬きをすれば終わる、いや瞬きをしようと思った瞬間には終わっていたかもしれない。そのくらいの刹那だ。

 何をしたのか、どうやったのか、考えてもわからないが、ここにいる全員が感じたはず、理解したはず、興奮したはずだ。

 

──伝説がここにある。

 

 今、我々は伝説を目撃したのだ。本物の英雄を見たのだ。御伽噺でも神話でもなく、生きた伝説を、英雄の姿を、目の前で見ているのだ。

 

 

「アンデッドも天使も全て討ち滅ぼした!残るは墓地のみだ!続け!!」

 

 

 モモンは叫び声をあげて周りの冒険者達を扇動し、そのまま彼らを引き連れて墓地の前まで行く。

 墓地内の様子を見ると、人影があることに気付き、首謀者の一人であろう魔法詠唱者(マジックキャスター)の姿を確認する。半蔵の報告によれば名前はカジットだったはずだ。

 

 

「君たちはここで見ていてくれ。私が決着をつけてくる。」

 

 

 冒険者達にそう言い残し、カジットの前まで歩く。

 

 

「お主、どうやってここまで来た。それに後ろの奴らも。アンデッドの軍勢を退けたというのか?天使はどうした?」

 

 

 何かの儀式をしていたカジットはこちらに気づき、驚きを隠せないといった顔でモモンに話しかける。

 

 

「貴様に答える必要はない。が、ここまで来られたということはどういうことなのか、わかっているんじゃないのか?

それと、お仲間の刺突武器を持った、クレマンティーヌ?というやつはどこに行ったんだ?姿が見えないが、恥ずかしくて隠れているのか?」

 

 

 モモンの放った言葉で、クレマンティーヌは姿を現す。その姿は怯えているような、恐怖しているような、そんな顔持ちだ。

 

 

「お、お前があの天使を滅ぼしたって?」

 

 

 クレマンティーヌは震えながら聞く。彼女はわかっているのだ。あの天使を倒してここまで来たということは、自分が敵う相手ではないと。だがそんな現実は受け入れられず、嘘であってくれという思いを込めて──モモンに尋ねる。

 

 

「そう言ったつもりだったが、わからなかったか?天使もアンデッドも全て倒して来た。」

 

 

 一縷の望みも消え去り、クレマンティーヌは自分の何かが壊れていくのを感じる。そんな化け物がいてしまえばどこに逃げても同じだろう。ならばせめて、殺せる方に賭けるしかない。

 

 

「アハ、アハハハハ、アハハハ…クソッ!!クソッッ!!死ねええええ!!」

 

 

 いきなり笑い始めたかと思えば今度は殺意むき出しで、一気にこちらまで来る。かなり速い。人間にしては、だが。

 モモンはクレマンティーヌの刺突攻撃を素手で掴む。そのスティレットはクレマンティーヌがどんなに力をいれてもびくともしない。

 

 

「クソがああ!!」

 

 

 更にもう片方のスティレットを割れたヘルムから見える瞳に向かって刺そうとするが、こちらも刺さる前に素手で掴まれる。すると、スティレットから突然炎が出てきて、これなら少しは、と考えるのだが当然ながらモモンは無傷だ。それを見たクレマンティーヌは完全に壊れる。

 

 

「え、嘘。何で。アハハ、アハハハハ。お月様が綺麗ね〜。」

 

 

 え、、怖っ!

いきなり笑って、いきなり襲ってくるだけでおかしいのに、今度は月が綺麗とか言って、流石に色々と支離滅裂すぎるだろ!!

 

 そして、理解してしまった。

 

 この事件の首謀者は二人ではない、カジットただ一人だ、と。

 

 クレマンティーヌはあんな精神状態なので、こんなことを引き起こせるわけがない。スレイン法国ではなまじっか強いので漆黒聖典にいたが、精神を理由にクビにされたのだろう。そしてクビにされた後、カジットはその精神性につけ込み、ずっと利用していたのだ。本来であれば、月が綺麗だと思えるような綺麗な心の持ち主のはずだったのに。つまりはクレマンティーヌもこの事件の被害者と言える。

 

 せめてもの情けにモモンは──彼女の首を刎ね飛ばす

 そしてカジットの方に向く。

 

 

「カジット!この外道が!街をアンデッドで襲うだけでは飽き足らず、精神に問題があるだけの純粋な人間を利用したな!!許される事ではない!貴様の命を持って償え!」

 

 

 これは正義ロールで別にそこまで怒ってはいないのだが、本心でもある。彼女が月が綺麗と言った時は、とても澄んだ瞳をしていた。元々は純粋な子だったのだろう。それをカジットがあんな風にしてしまったのだ。許していいはずがない。

 そんな思いでモモンはカジットを糾弾する。

 

 

「…は?お主何を言っておる?」

 

 

 カジットは何を言われているのかわからないといった表情だ。

 

 

「ふっ。外道ここに極まれりだな。自分がやったことを理解していないとは、それとも知らばっくれているのか?どちらにせよ、クズである事には代わりはない!ナーベ!他の雑魚共を片付けろ!」

 

 

 ナーベは返事をして、カジットの周りの奴らを魔法で一掃する。カジットは防御していたので、ダメージは負わなかった。

 

 

「ふん、バカか。」

 

 

「バカ?それはあなたのようなゴミムシでしょう?それとも自己紹介かしら?私はモモンさんの指示に従って雑魚共を片付けただけよ」

 

 

 ナーベが言い終わるや否や、モモンはカジットに突っ込んでいく。カジットは何かを天に掲げようと手を挙げるのだが、モモンはその腕を切り飛ばす。その痛みで声にならない声をあげながらカジットは地面に突っ伏する。

 

 

「他の冒険者も見ている事だ。少し生ぬるいが、その痛みをもって純粋な人間を弄んだ罰としよう。では、死ね!」

 

 

 倒れているカジットの頭に思いっきり剣を突き刺す。そしてその剣を抜き、ンフィーレアを迎えに行く。

 

 ンフィーレアの頭にはマジックアイテムが付けられており、今は魔法の使用はできないので、巻物(スクロール)を使い、アイテムを鑑定する。少し欲しいなとは思うのだが、故意に依頼を失敗させる訳にもいかないので、またもや巻物(スクロール)を使い、そのマジックアイテムを壊す。

 失明しているみたいだが、魔法は今使えないし巻物(スクロール)ももったいないので、そのままにしておく。

 治すメリットもないだろう、むしろ自由に動かれてはこちらのマジックアイテムも使われるかもしれん。

 前髪で目が隠れてるんだし、同じようなものだろ。

 

 ンフィーレアを連れて、待たせている冒険者達のところに戻る。

 すると、モモン様ー!という声や、英雄だー!という声が聞こえてくる。その冒険者達にンフィーレアを任せて墓地から出ていくと、もう日が変わる時間だというのにたくさんの人々が出迎えてくれた。

 

 

「モモン様!皆に勝利を!」

 

 

 誰が言ったのかはわからないが、そんな言葉が聞こえてくる。

 名声を高めるという目的なんだ。これも必要なことだ。

 

モモンはグレートソードを高々と上げる。

 

 

「うおおおお!!!」

 

 

 モモンに続き、出迎えてくれた人々、ついて来てくれた冒険者達も雄叫びを上げる。モモンを讃える声もそこらかしこから聞こえてくる。

 

 誰が言ったか、この日からモモンはただの冒険者モモンでは無く、漆黒の英雄モモンと呼ばれ、ナーベも漆黒の美姫ナーベと呼ばれるようになる──最大限の敬意を込めて

 

 モモンとナーベはたくさんの人に囲まれながら、称賛や感謝の言葉を聞いている。

 

 

「モモンさん。少しよろしいでしょうか。」

 

 

 突然ナーベが話しかけてきて、どこか真剣そうな顔をしている。

 

 

「どうしたナーベ?」

 

 

「はい、モモンさん。そろそろ日付が変わります。」

 

 

 その言葉の真意はわからない。しかしナーベの顔は真剣そのものだ。何か非常に重要な何かがあるのかもしれない。

 

 

「そうだな、そろそろ日付が変わるな。それで、日付が変わると何かあるのか?」

 

 

 何か見通していることでもあるのだろうか。日付が変わると言ったか?

 つまり今日ではないといけないことが何かあるはずだ。それとも夜であることが大事なのか?明日の夜になってしまうと時間がかかり過ぎるとか、既に間に合わない状態になる、とかかもしれない。

 

とりあえずナーベの言葉を待とう。

 

 

「はい。今日はまだ、そ、その、頭を、撫でてもらっており、ません。」

 

 

────このタイミングで!?

 

 こんなに注目されている時に頭撫でなくちゃいけないのか!?確かに毎日でも撫でるって言ったけど、この状況だぞ!?!?

 

 ナーベにとっては何より大事な事なのかもしれないが、色んな人が見ているこの状況でそんな事するのは恥ずかしすぎる。

 

 

「ナーベ、今は皆からの注目もある。それに明日は依頼を受けないつもりだ。明日であればいつでも大丈夫だろうから、今日は我慢してくれないか?」

 

 

 ナーベは目に見えて落ち込み、顔を下げる。それでも、声を振り絞って言う。

 

 

「わ、かり、、ました、」

 

 

 その姿が居た堪れ無くて、可哀想で、悪いことをしたのは自分の方だという気持ちにさせられる。

 

 

「はぁ、ナーベ。少しだけだぞ。こっちに来い。」

 

 

 さっきまでシュンとしてた顔は、パッと花が咲いたかのように笑顔になる。

その姿を見て、これはしょうがなくだからな、と心の中で誰に言うでもない言い訳をする。

 

 

「モモンさん!!」

 

 

 ナーベは嬉しさからかモモンの名前を呼び、その声で一気に注目を浴びてしまうのだが、もうすでに諦めのついたモモンは既に頭を差し出しているナーベの頭をいつものように撫でる。

 

 それを見ていた周りの連中の歓声は、今日の中で1番大きかったとか。




今後どうしましょうかね…
伝説の始まりなんて大層なタイトルですが、今後伝説的な戦いが起こることはあるんですかねぇ…悩みどころです。

原作と同じく、死の宝珠はハムスケの口の中に突っ込んでます。

次回は祝宴会という名の祝勝会です。
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