英雄と美姫の物語   作:ながしながされ

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オーバーロードのアニメを何年か振りに見たら、ナーベラルって以外と人間と友好的な態度取れてるんですね笑
特にリイジーと出会った時とかは一応頭とか下げてて、ビックリしました。カルマ値-400だから実はアインズ様よりかは悪に寄ってないし、結構社交性はあるのかもしれませんね。

前回のあらすじ
アインズ様「ナーベラルの着物!それとメイド服!!」




十一話『伝説VS伝説』

 モモンとナーベ──チーム漆黒がアダマンタイト級冒険者となった次の日、その噂は市民達にも知れ渡った。

 それに関して市民からは、エ・ランテルにもついにアダマンタイト級冒険者が誕生したことを喜ぶ声が上がっていた。

 その一方で、「モモンとナーベはその器ではない」といった声もあり、本当にアダマンタイト級の実力があるのか疑う者もいた。

 さらに、「昇格のスピードがあまりに早すぎる」「金を積んだのではないか」といった疑念も生まれていた。

 

 この話題はエ・ランテル全体を巻き込み、元々冒険者に興味のなかった市民たちでさえ、その噂で持ちきりとなっていた。

 

 もちろんモモンは祝宴会の時からその噂がされているのを知っており、名声を稼ぐのが目的であれば、まずは有名になることが最も優先だと考えているので、悪評であろうと何であろうと、市民達がその話題をする事に関しては、むしろありがたいと思っていた。

 

 そして件の漆黒の2人は今、冒険者組合に来ている。モモンは普段の鎧は着ておらず、未だに壊れているという設定なので今は人間の姿だ。短剣──ダガーを2本身につけて、服装はナーベと似たような格好をしている。

 周りの冒険者達は、モモンの鎧がないからなのか、もしくはアダマンタイトに関する噂話をしているのかは定かではないが、モモンとナーベをチラチラ見ながら小さな声で話し合っている。

 もう慣れたものなので、モモンはそんな事は気にしないまま受付嬢に話しかける。

 

 

「今日の依頼はあるか?」

 

 

「申し訳ございません。アダマンタイト級冒険者への依頼はございません」

 

 

「そうか」

 

 

 モモンは勉強した(全然してない)とはいえ、未だに依頼書は読めないので受付嬢に聞くのだが、どうやら依頼はないらしい。

 それもそのはず、昨日までこのエ・ランテルにはアダマンタイト級は愚か、オリハルコン級の冒険者すらいないのだ。それが昨日の今日でいきなり依頼が入るとは思えない。

 

 しかしこの状況はマズい。

 通常、アダマンタイト級冒険者は十分な資金を持っているものだが、急激に昇格したモモンたちには、その蓄えがない。

 現在の所持金は昨日の事件で得た報酬とンフィーレアからの依頼料のみ。ナーベのデスナイト討伐料も含めれば悪くはないが、その金はあくまでもナーベ個人のものだ。

 今後このまま半年以上依頼が入らなければ、資金が尽きる可能性がある。節約しようにも、アダマンタイト級として、世間からの目があり、宿代をケチることもできない。なのでモモンとナーベは黄金の輝き亭の1番高い部屋で寝泊まりをして、食事も自然と最高級のものを選ばざるを得ないのだ。

 

 これらのこと事があり、更なる金が必要なのだが今までエ・ランテルにアダマンタイト級冒険者がいなかったという事は、裏を返せばエ・ランテルでは必要なかったという事だ。それすなわち、今後すぐに依頼が入る可能性がかなり低いという事に直結する。

 その考えに至ったモモンは、受付嬢にアインザックを呼ぶよう頼む。

 

 

「私がどうかしたのかね?」

 

 

 後ろから声をかけられる。どうやらアインザックは外に行っていて、今組合に来たところらしい。これ幸い、とモモンはアインザックにお願いをする。

 

 

「アインザック組合長。私達はアダマンタイト級冒険者となりましたが、冒険者になったのはつい3日前です。まだ冒険者稼業もよく理解できていないので、それを知るためにもアダマンタイトより下のランクの依頼をしたいのですが」

 

 

「ああ、何だそんなことか。別に構わんよ」

 

 

 モモンはアインザックがあまりにもあっけらかんと言うので少し拍子抜けしてしまう。別にアダマンタイト級冒険者だからと言って、アダマンタイトの依頼しか出来ない、というわけではなく自身より下のランクでもできるようだ。

 ただし──とアインザックは続ける。

 

 

「君達が下のランクの依頼をやることは構わないのだが、それをしてしまった事によって他の冒険者達から恨まれる事もある。人気な依頼とかは特にそうだ。それと、下のランクの護衛の依頼だけは受けない方がいい。もし一度でも受けてしまえば、その噂を知った者たちが、下のランクの依頼料で君たちに護衛を頼んでくることがある。アイツの護衛はやったのに、俺のはやらないのか、とね」

 

 

 なるほどなあ。

 モモンは納得する。確かに護衛の依頼であれば、依頼主を守ることが仕事だ。仮に何も起きなかったとしても、高ランクと低ランクでは安心度が変わる。

 逆に討伐依頼であれば、高ランクだろうが低ランクだろうが、討伐さえできれば何でも良いのだ。アインザックはそういう事を言っているのだろう。

 つまり、下のランクの依頼はできるが、それなりに自分で依頼を判断しながら受けた方が良さそうだ。

 ただそこら辺に関しては、そもそも文字が読めないので、受付嬢に全て任せてしまえば問題はないはずだ。

 

 

「教えていただきありがとうございます」

 

 

 モモンはアインザックに礼を言って、受付嬢に下のランクで自分達にピッタリな依頼を見繕ってくれ、とお願いする。

 

 

「それでしたら、ミスリル級の依頼となってしまうのですが、エ・ランテルから別の都市に向かう街道にゴブリンの大群やオーガが出没しており、それの討伐もしくは駆逐という依頼が入っております」

 

 

 

「わかった。ではそれを引き受けよう」

 

 

 

「ありがとうございます。こちらはミスリル級への依頼ではあるのですが、実を言うとミスリルチーム単体では難しいと予想され、さらに2チーム共同の依頼となっていたのですが、引き受けてくれるチームがいなかったのです」

 

 

 酷い話だなあ。

 モモンは率直にそう思った。

 真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である、という言葉の通り、連携がうまく取れず、むしろ危険に晒されるのを避けるためとはいえ、それであれば時間は掛かってしまうが、事前にチームワークの確認をしてから依頼を受ければいいだけなのに、それすらせず放置するのは冒険者として怠慢と言えるだろう。

 

 モモンはそのゴブリンの大群やオーガが出没するところを教えてもらい、ナーベを連れて冒険者組合から出て、歩いていく。

 

 

「さて、ナーベ。私達は依頼にあった──」

 

 

「ナーベさんを解放しろ!!」

 

ドスッ

 

 な、何だ??

 モモンは冒険者組合から出た後、依頼の場所に向かう途中に、急に通行人から怒鳴られながら殴られてしまった。モモンはダメージは1ミリたりとも負っていないのだが、むしろダメージを負ったのは──

 

 

「うっぎゃああああ、腕があああ」

 

 

 殴った方の通行人である。

 モモンは何が起こったのかがさっぱりわからない。ただナーベに話しかけようとしたら、この有様だ。

 ナーベさんを解放しろって言われてもなあ。

 モモンはナーベをちらりと見ると──あ、やばい。

 彼女は既に剣を引き抜いていて、後は振り下ろすだけだった。

 

 

 

「待てナーベ!殺すな!!」

 

 

「はっ!」

 

 

 モモンに止められたナーベだが、特に悪びいれる様子はなく、男を睨みながら剣を止めて鞘に収める。

 危ない危ない。ただ殴られたってだけの理由で殺しちゃうところだった。ところでこの男は誰なんだ?

 モモンは腕を抑えながら突っ伏している男を見ながら考えていると、その男はモモンを睨みつけて、再び言い放つ。

 

 

「ナ、ナーベさんを解放しろ。変態め!無理矢理、メイド服なんか着せやがって」

 

 

 昨日のモモンの失言の被害者であった。

 あ〜これは俺の責任だな…しかし、どうしようか。こっちにも被害があった訳でもないし、むしろ怪我させちゃったし。この場合悪いのは俺になるのか?そうだとしたら説明しないとだけど、メイド服の件も言わないといけないのか?

 

 

「何をやっている!」

 

 

 前から小走りで兵士のような格好の男が走ってくる。その男はモモンの前で立ち止まり、話かけてくる。

 

 

「モ、モモン様!?コホン。失礼しました。私はこの地域の治安維持部隊の者なのですが、何やら騒ぎがするので来てみれば、一体何があったのですか?」

 

 

 どうやら本当に兵士のようだ。たまたま歩いていたらこの騒ぎがあって駆けつけて来てくれたのだろう。モモンはナーベのメイド服については触れないようにしながら話し始める。

 

 

「この男がいきなり『ナーベを解放しろ!』って殴りかかって来ましてね。私はこの通り何ともないのですが、殴った衝撃で腕だか手だかを折ってしまったようですね」

 

 

 兵士の男にそう伝えたが、イマイチピンと来ていなさそうだ。そんなアホな話があるのか、と言った表情で怪訝にモモンを見ている。

 モモンはその顔を見て、続けて説明しようとするが、殴りかかって来た男が喚き始める。

 

 

「違う!このモモンという男はナーベさんに無理矢理メイド服を着せて、夜な夜なナーベさんにいかがわしい事をさせているんだ!!しかも一晩中ずっとだ!!その証拠に2人が滞在している部屋の明かりはずっと明るいままなんだ!!」

 

 

 あー、メイド服のこと言われた。まあいいや。それはしょうがないとして、それよりもなぜ一晩中明かりが付けっぱなしなのをなぜ知っている?もしかしてこいつ俺たちの滞在している部屋を知っているのか…?つまり、ずっと俺たち、いやナーベをつけていた…?

 

 コイツ…ストーカーか?

 

 仮にストーカーだとしたら、モモンはその事には気が付かなかった。しかし、それもしょうがない事なのかもしれない。モモンとナーベはこのエ・ランテルに来て瞬く間に有名になってしまい、常に色んな人からの視線を浴びていた。中には2人に話しかけようとついてくる者たちも大勢いた。その中からストーカーを探すのは至難の業だったように思える。

 いや、言い訳か。

 モモンは結局自分が気付けなかったことが悪いと、結論づけた。

 

 兵士の男は、殴ってきた男の言い分を確かめるために、モモンではなくナーベに問いかける。もし先ほどの話が本当だとしたら、モモンに聞いたところではぐらかされるのがオチだからだろう。

 

 

「ナーベ様、それは本当なのですか?正直に答えて下さい」

 

 

 こうなってしまえば、モモンは何もすることができなくなってしまい、ナーベが下手な事を言わないように祈りながら、ナーベにアイコンタクトで、話してやれ、と伝える。

 ナーベは兵士の男を冷たい目で見ながら、話し始める。

 

 

「事実ではありません。私はモモンさ──んに、確かにメイド服を着るよう言われましたが、無理矢理ではありません。また、いかがわしい行為というのが何を指していらっしゃるのかは分かりませんが、私はモモンさんにご奉仕をさせて頂いただけです」

 

 

「そ、その、ご奉仕……というのは?」

 

 

「あ、あなたに言う必要はありません」

 

 

 ナーベは少し顔を赤くして兵士の男に言った。

 まじで勘弁してほしい。本当にいかがわしいことは何もしてないよ?

 とりあえず兵士はナーベの言い分を信じてくれたようなのだが、ご奉仕とやらをどっちの意味で捉えたのかはわからない。

 兵士の男はモモンの方を向く。

 

 

「分かりました。ではモモンさんは被害者という事で──」

 

 

「違う!!!ナーベさん!俺ですよ!正直に言って下さい!!モモンに無理矢理言わされてるんでしょ!」

 

 

 兵士は再びナーベの方を向く。

 

 

「ナーベ様、この男性はお知り合いで──」

 

 

「知りません。こんな下等生物(ウジムシ)

 

 

 ナーベの言葉を聞いて、殴って来た男はその場で涙を溢れさせて、泣き崩れてしまう。それでもまだナーベに訴えかける。

 

 

「ナーベさん、ほらカッツェ平野で!俺がナーベさんに魔法の師事を仰ぎたいって言ったら悩んでくれていたじゃないですか!!」

 

 

「知らないと言っているでしょう?私はお前なんかと会ったことすらないわ」

 

 

 ナーベは今にも殺しにかかりそうな目で男にそう言った。

 モモンもこんな男は知らないので、その事を兵士に伝え、とりあえずはただのストーカーによる、逆恨みという事でその男は兵士に連れて行かれた。

 ナーベと2人になったモモンは彼女に話しかける。

 

 

「すまないな、ナーベ。あの男に気付いてやれなかった」

 

 

「モモンさ──んが謝る必要などございません。それより、宜しかったのですか?あの男を生かしておいて」

 

 

 モモンはナーベから物騒な事を聞かれる。モモンはそれに対して、自分の本心を伝える。

 

 

「あの男か?まあ、殴られたとは言え、こちらに被害は無かったが──絶対に許さん。あの男にはお前のストーカーをした事を死を持って償わせる」

 

 

 モモンは怒り心頭だった。

 被害は無かったとはいえ、ナーベのストーカーをしていたのだ。生かしておく訳にはいかない。あの男は今は弱かったからいいものの、今後強くなれば再びナーベのストーカーをする可能性もある。モモンとナーベでも対処しきれないほどの強者になるとは考え辛いが、この世界にはタレントや武技もある。早めに芽は摘んでおくべきだ。

 

 

「分かりました。では何故先程は逃がしたのでしょうか?」

 

 

「今は人目が多すぎる。せっかくここまで得た名声も人を殺したとあれば一瞬で地に落ちてしまう。こういうのは崩れる時は一瞬なんだ」

 

 

 ナーベはモモンの言葉に納得し、2人は依頼に向かっている最中だったので、この場を後にする。

 

 モモンは先程の件で、少しだけ怒りを露わにしながらエ・ランテルから出て行き、ゴブリンとオーガが出没するという街道までもうすぐの所まで来た。すると、どこから現れたのか1人の男がモモンに話しかけてくる。

 

 

「よお、お前が噂のモモンか。近くで見ても強そうには見えねえな」

 

 

 モモンは話しかけて来た男が誰だかは知らないが、どこか喧嘩腰っぽい態度なので、タダでさえイラついていた感情が更に高まってくる。

 しかしいくらイラついているからと言って、ここでいきなり男に襲いかかるような事はしない。敵対するようであれば迷いなくこの場で殺してしまうが。

 ここは人気(ひとけ)もない。

 好都合だ。

 まあ害がないのであれば、そこら辺を飛ぶ虫程度くらいにしか思わないので、やはりなるべくは襲いかかりたくはない。穏便にできるならそれに越した事はないだろう。

 モモンは1度落ち着いた後、なるべく苛立ちを見せないように男に言った。

 

 

「いかにも、私はアダマンタイト級冒険者、漆黒のモモンですが」

 

 

「ケッ、嫌味ったらしい野郎だぜ」

 

 

 男はモモンのアダマンタイト級冒険者という言葉に眉を顰め、悪態をついてくるが、別にこれは敵対という程でもない。モモンは自分の実力が疑う者もいるという事は知っている。目の前の男もそういう類のものなのだろう。

 しかし、だからといって、この男の目的がわからない。そもそもモモンに会うのが目的だったのだろうか、それともたまたま気に入らない人物がいたから文句でも言いに来ただけなのだろうか。

 モモンはそれを確認する。

 

 

「あなたは何をしにここに?」

 

 

「あの依頼受けたらしいじゃねえか。それでどんな風にアダマンタイト級冒険者様は戦うのか気になってな。何なら助けてやってもいいぜ」

 

 

 あの依頼、というのはモモンとナーベが引き受けた依頼の事を言っているのだろう。

 うーん?俺が目的?だとしたら俺に会うために来たのだとして、何をしたいんだ?

 悪態をつきに来ただけならまだ可愛いが、この態度だとやはりこちらを害しに来たのか?──いや、いくらムカついていて八つ当たりをしたいからと言っても、無理矢理殺す口実を作るべきではない。

 

 モモンはなるべく平静になるよう務めるが、隣にいるナーベはそうもいかなかった。

 

 

「おい人間。この場で死にたいの?」

 

 

 ナーベは物凄い殺気を放ち、まるで餌の前で待てをされている犬のように今にも殺しにかかりそうだ。やれ、と一言言えば喜んでこの男を殺してしまうだろう。

 だが、よく耐えたナーベ。

 モモンは心の中でナーベが殺さずに我慢していることを褒める。いつもであれば、ナーベはあんな事は言わずにすぐさま行動に移していただろうが、先程モモンに注意されたばかりなので、耐えているのだろう。明日だったら恐らく殺していた。

 しかしナーベにそんな事を言われた男はビビるどころか反抗をする。

 

 

「ナーベと言ったか?へっ!金魚のフンが。第五位階だか何だか知らねえが、聞いたぜ?お前モモンとメイド姿でプレイを楽しんでんだってな!ハッハッハ」

 

 

 おい、どこまで有名なんだよその話…

 モモンは昨日の発言を知っている者が今日だけで2人も絡んできた事に驚きを隠せない。しかも皆勘違いをしている。勘違いさせるような発言をしてしまったモモンが悪いのだが、ここまで絡まれてしまうと流石に嫌になってくる。

 目の前の男は今度はモモンに向かって更に喋り始める。

 

 

「なんだ?それともこの女のご奉仕とやらで、アダマンタイトになれたのか?それなら俺にも今夜貸してくれよ。チーム内で──」

 

 

 その男は途中で喋らなくなった。いや、喋れなくなったというほうが正しいだろう。男の発言を看過できなくなったモモンは、その人外な身体能力を全て使って、思いっきり顔面を殴ったのだ。ナーベにあんな事を言う奴は、ストーカー男と同じで絶対に許せない。許してはならない。

 その男は殴られた衝撃でその場で倒れ、モモンはそれを見る。

 意識はない。

 立ち上がれもしない。

 呼吸もない。

 そして、()()()()

 残念ながら男はモモンの一発のパンチにより即死だった。首から上が飛んでいってしまったのである。

 

 

「クソ野郎が」

 

 

 モモンは殺してもこの死体に対して未だに怒りが収まらず、そんな言葉を吐いた。そしてその死体を見ていると、首に冒険者プレートが掛かっているのがわかり、それを手に取り確認する。

 

 

「ミスリルプレートの冒険者を殺してしまったのか。しかしまあ、仕方がないだろう。ナーベに醜い欲を持って接する奴など全員殺すべきだ。それよりこの死体の方が問題だな」

 

 

「何か有効活用されてみては?」

 

 

 モモンは独り言を言っていたつもりだったが、どこか嬉しそうな顔をしているナーベが反応し、モモンに提案する。

 

 

「それもそうだな。そういえば、あのカジットとか言う男は死体をアンデッドに変えていたし、デスナイトにこの死体をゾンビにでも変えてもらうか?それでデスナイトとゾンビを依頼の場所に向かわせて、代わりに依頼をやってもらうとしよう」

 

 

 モモンは嫉妬マスクで顔を隠し、手にはガントレットをつけてアンデッドの姿に戻る。デスナイトであれば、スクワイアゾンビに変えてくれたはずだ。

 ただ、死体を変えることができるかどうかまではよく知らないし、頭もないのにゾンビになるのかどうかもよく知らない。どっちもユグドラシルにはない要素なのだ。だからこそ実験する意味があると言える。

 

 

「試してみる価値はあるな。中位アンデッド作成、デスナイト」

 

 

 モモンが発動させたスキルは死体に乗り移り、姿が変わっていき、デスナイトに変化した。

 

 

「え?そもそも死体に乗り移るのか?気持ち悪っ」

 

 

「流石はアインズ様です!」

 

 

 モモンの気持ちなど知る由もないナーベはモモンではなくアインズを称賛する。もしかしてナーベの中ではアンデッドの姿がアインズだと思っているのだろうか?

 モモンと呼べと伝えた後、少し予想とは違ったが、当初の予定通りデスナイトにゴブリンとオーガの討伐を命令する。

 

 

「この先にいるゴブリンとオーガを1匹残らず殺せ。ただしアンデッドにはさせるな。ああ、それと──それが終わったら今度はエ・ランテルに行ってナーベをストーカーした男を絶対に何があっても殺してこい。邪魔する奴らがいればそいつらも殺して構わん。それさえ終われば後は好きにしていい」

 

 

 ついでにストーカー男のことも任せておく。デスナイトに任せれば、直接手を下す手間も省けて良いだろう。

 その後にストーカー男の特徴や外見などをなるべく詳しく教えて、命令をだすと、デスナイトは声なのだが、何なのだかわからない音で返事をした後に走って行く。

 半蔵のように命令には従うのだなと確認して、モモンは再び魔法を発動させていつもの冒険者モモンの格好に戻る。

 そしてさっき思い出した半蔵をここに呼び出す。

 

 

「半蔵」

 

 

「はっ。御身の前に」

 

 

 半蔵は即座に現れる。しかし何食わぬ顔なのが少しイラつく。

 

 

「貴様はナーベがストーカーされていたのを知っていたのか?」

 

 

「は、はい」

 

 

「何故報告しなかった?」

 

 

「ご、ご命令は、ナーベラル様の、身辺警護でした故──」

 

 

「愚か者が────ッ!!!」

 

 

 モモンは半蔵が何故報告しなかったのか、納得する理由があれば怒らないつもりではいたのだが、返ってきた言葉は、身辺警護だからナーベラルを守ることしかしません──と言われているような口ぶりだった。モモンはそれもあって更に怒りが収まらなくなる。

 

 

「守るのがお前の仕事とは言ったが、何故そんな怪しい動きをしている者がいるのに報告しなかった?あのストーカーが貴様より強者だった場合はどうするつもりだったんだ?言ってみろ」

 

 

「そ、その場合は、ご報告をしていたかと」

 

 

「じゃあつまり貴様は、相手がお前より絶対に格下だという確証を持っていた訳だな?強者による隠蔽など一切ないという確証が。それを教えてくれ」

 

 

「そ、それは、その──」

 

 

「どうした?言えないのか」

 

 

「も、申し訳ございません!!」

 

 

 半蔵はこれでもかという程、頭を地面につけて謝罪をする。しかし、 モモンの怒りはあまり収まらない。収まらないのだが、これ以上半蔵を責めるのはやめる。

 そもそもモモン自身はストーカーの存在に気が付けていなかったのだ。それを気付かせるのが半蔵の役目といえば、それはそうなのだが、確かに半蔵の言う通り、ナーベを守れとは言ったが、怪しい者がいたら報告しろとまでは命令はしていない。責任は多少なりとも自分にもあるのだ。

 モモンは半蔵にこれからはしっかりと報告しろと伝えると、ナーベが少し震えながら話しかけてくる。

 

 

「モ、モモンさん?」

 

 

「ん?どうしたナーベ」

 

 

「も、申し訳ございませんでした…」

 

 

 ナーベはその場で震えながら頭を下げるが、モモンは何に対して謝られているのかがわからない。

 

 

「どうしてお前が謝る?」

 

 

「本来であれば、私が気が付かなくてはならない事。にも関わらず、私は気付くことができませんでした。どうか、お許しを」

 

 

「いや、私も気付かなかったのだ。お前に責任はない。むしろ責任は全て私にある。半蔵にはああは言ったが、そもそも私が半蔵にそう命令していなかったせいだ。すまない」

 

 

 モモンは謝るが、ナーベは納得していなさそうだ。

 はあ、しょうがない。

 モモンは彼女に近づいて行き、そのまま頭を撫でてやる。まさか撫でられるとは思っていなかったのかナーベは少し上擦った声になる。

 

 

「モ、モモンさん!?」

 

 

 ナーベは恐らく、自分がストーカーされていたことにすら気付けなかったことで、モモンはそれに対して怒ると思っていたのだろう。

 でも実際には違う。モモンの怒りはナーベをストーカーした男に対してであって、ナーベが気付かなかったことではない。そもそも彼女は被害者なのだ。ナーベはストーカー男に対してああは言ったが、ナーベも1人の女性だ。もしかしたら少しは怖いという思いもあったかも──いや絶対無いな。

 とにかくナーベがどうであれ、あの男に対しての怒りはあるが、ナーベへの怒りは皆無だ。

 だからモモンは怒りはない、という意思表示を込めて彼女の頭を撫でている。

 

 

「ナーベに悪いところなどない。強いてあげるとしたら、お前の美しさが男どもを魅了してしまった、というところだが。それを悪いとは言えないだろう?だから私はナーベを責めるような事などしない」

 

 

 モモンがそう言うとナーベは顔を俯かせてしまい、撫でている手が彼女の頭から離れる。そのまま、笑顔のナーベからお礼の言葉を貰った後、デスナイトを追いかけることにする。

 

 少し歩くとデスナイトは既に踵を返してこちらに走って来ている。恐らく終わってしまったのだろう。だとしたら別にデスナイトには用はないので、通り過ぎて行くデスナイトを横目に見ながらゴブリンやオーガを討伐できたか死体を確認をしに行く。すると大量の死体が見るも無惨な姿で転がっていた。デスナイトがゾンビにさせないために徹底的にやったのだろう。

 

 

「結構早く討伐できたな」

 

 

「これも一重にモモンさ──んが、お造りになられたデスナイトだからかと」

 

 

「そういうものなのか?」

 

 

「はい。そういうものでございます」

 

 

 なるほど──つまりどういう事だ?

 よくわからないが、ナーベは褒めたいだけなのだろう。

 モモンは死体が転がっている一帯をみて、目視ではゴブリンやオーガの生き残りはいないことを確認する。しかし本当に大丈夫なのだろうか。

 

 

「ゴブリンどもは本当に全滅させられたのか?」

 

 

 ナーベに聞いてもわからないかもしれないが、モモンはナーベに問いかけてみた。するとナーベは自信を持って答えてくれる。

 

 

「大丈夫かと。あのデスナイトはモモンさんに絶対の忠誠を誓っているはずなので、ご命令に逆らうような真似をして去って行くという事は無いと思います」

 

 

 そうなのか。こういうところはナーベの方が詳しいのだろう。NPCや召喚したモンスターなどは無条件で忠誠を誓ってくれているのだろうか?

 それもナーベに聞いてみる。

 

 

「絶対忠誠か。ナーベみたいなものなのか?」

 

 

「──いえ!!私の方がモモンさんに忠誠を誓っております!!」

 

 

 ナーベは食い気味に、しかもいつもよりも必死に言ってくる。

 ナーベが言うのであればそうなのであろう。確かに言われてみれば、ナーベはモモンを守るためと言って側からは絶対に離れないが、デスナイトは命令通りに、側から離れる事になってもお構いなしに去っていってしまった。つまり忠誠度で言えば1番高いのはナザリックのNPCで、その次が召喚したモンスターという順番なのかもしれない。

 

 とにかく、依頼は達成できたようなので、モモンとナーベはエ・ランテルに帰る事にする。

 そのまま歩いていると、エ・ランテルが見えてくるのだが、何やら騒がしい。1人の男性──恐らく門番──がモモンの所へ走りながら何かを叫んでいる。

 

 

「モモン様ーー!!!!」

 

 

 何か厄介ごとがあったようだ。

 モモンとナーベはその門番から話を聞こうと、少し早足で歩き、門番の男と会話できる距離まで来た。

 

 

「何かあったのですか?」

 

 

「ア、アンデッドです!そ、それも、非常に、きょ、強力な」

 

 

 門番の足はガタガタと震えている。ここまで走って来たから疲れてしまってこうなっている訳では無いだろう。顔もどう見ても怯えており、恐らくそのアンデッドとやらが原因のようなのだが──あ。違う。多分さっき命令をしたデスナイトだ。

 今はデスナイトになってしまったあの男と、ナーベのストーカーをした男に対しての怒りで、とにかくストーカー男を殺す事を最優先にしてしまった結果、こうなってしまったのかもしれない。

 ま、しょうがないでしょ。アダマンタイト級冒険者が大々的に人を殺す訳にもいかなかったんだから。

 モモンは心の中でそう言って、そのデスナイトに命令を出して止めようとするが、既に被害が出てしまったのなら、むしろモモンの功績にするべきだろうと考え、正義モードに入る。

 

 

「ア、アンデッドだと!?くそっっ!!この前の生き残りがまだいたのか!!そいつは今どこにいる!私がこの手で始末してやる!」

 

 

 結構な演技派である。

 モモンは考えたのだ。アンデッドが突然こんなところに湧くわけがないと。ならば、この前の事件のアンデッドの生き残りとしてしまった方がいいのでは無いのか、と。

 

 

「そ、それが、そのアンデッドは一直線に留置所に、む、向かって、迎撃しようとした者たちは皆、こ、殺されました。い、今はそこで、あ、暴れています」

 

 

 モモンはその震える門番の肩に手を置いて、

 

 

「よくここまで生き残って私に伝えてくれた。もう安心して良いぞ」

 

 

──と言い残して走ってエ・ランテルへと向かう。

 

 エ・ランテルに入って最初に思った事は──あのデスナイト、かなり派手にやったな、である。

 そこは地獄を具現化したようだった。血溜まりがそこらかしこにあり、建物にも血が飛び散っていて、血の匂いが鼻にこびりつく。

 そしてゾンビだ。デスナイトに殺されて、スクワイア・ゾンビにされてしまったのだろう。

 悲鳴すら聞こえてこない。聞こえるのはゾンビのうるさい呻き声だけ。見る者全てを殺しながら留置所に向かったのだろう。

 このままだと前回のアンデッド事件よりも被害が大きくなるかもしれない。これ以上やられてしまうと名声どころか人がいなくなってしまう可能性もあるので、急いでデスナイトの元に向かう。

 デスナイトの位置はわかるので、すぐに見つかるのだが…

 デスナイトの周りは血の海となっており、肉片やバラバラの人間が転がっている。そこにゾンビどもが群がっていて、見る人が見れば気絶ものだろう。

 好きにしろと命令はしたが、これはやり過ぎだ。

 というか、好きにさせると人を殺すのか?てか何故まだ消えていない…?死体を媒介にすると消えないのか、ルールが変わって消えない仕様になっているのか?

 まさか好きにさせると人を殺すのは予想外だったし、変えていないのも予想外だ。

 しかしそんなことを考えている暇はなく、このまま放っておくと瞬く間に1つの都市を壊滅させてしまいそうだ。

 

 モモンはデスナイトに短剣を向けて言い放つ。

 

 

「よくもやってくれたな!デスナイト!貴様は許せん!一騎打ちといこう!貴様がその剣を私に振り下ろしたとしても、その剣よりも早く私がお前に攻撃して、それが貴様の盾に塞がれようとも、私のもう1つの剣でお前の頭に叩き込んでやり、お前がふらついたところに更に叩き込む!!!」

 

 

 やけに長いセリフで不自然だが、これはデスナイトに命令を伝えているだけだ。

 

 

「さあ、かかってこい!」

 

 

 モモンはデスナイトに合図を出して、戦いが始まる。

 デスナイトはモモンガに向かって走ってきて、まさかの初めに仕掛けてくる。剣を振り上げながら、モモンの頭部を目掛けて振り下ろしてくるのだが、それよりも──モモンの剣の方が早い。モモンの剣はダガーであるから、その特性を生かして攻撃速度が早いのだ。しかし──その攻撃が当たる事は無かった。デスナイトの盾に弾かれたのである。

 それは一進一退の攻防のよう見えた。

 しかし、モモンはそれを──読んでいた。

 もう片方の剣が既にデスナイトの頭に叩き込まれているのだ。デスナイトはその攻撃を受けてフラつき、モモンがその隙を見逃すはずもない。

 

 モモンはもう一方の剣を頭に突き刺してやった。

 

 デスナイトはその攻撃により、消滅していく。ここに観客がいれば大いに湧いた事だろうが、観客と呼べるものはゾンビくらいしかいない。中にはこの戦いを見ていた人も僅かにはいるのかもしれないが、このゾンビだらけの中来るはずもないので、モモンはナーベと一緒にゾンビを一掃していく。

 これが割と大変だった。この世界の人間では、スクワイア・ゾンビですら倒す事は難しいようで、戦闘をした者は基本的にゾンビにされていて、それなら戦わないで逃げてくれよ、とモモンが思う程だ。

 

 ゾンビを全滅させるためにまたデスナイトを作り出したい気分にさせられたが、ハムスケにも協力してもらい、なんとかゾンビも全滅させる。その後モモンとナーベは組合に向かう。

 組合の中に入ると、早速アインザックが出て来て、かなり慌てている。いや、慌てているのはアインザックだけではなく、この組合にいる者全員だ。冒険者のある1人は頭を抱えながら震えており、またある者は腕で目を押さえて泣いていたりする。その姿は、普段は冒険者としてモンスターと対峙しているようには見えず、子供がお化けでも見たのかというような有様だ。

 アインザックはこちらを見つけて、少し安心したような顔にはなるが、やはり少し慌てたままモモンに話かける。

 

 

「モモンくん!ナーベ嬢!緊急事態だ!エ・ランテルに伝説級のアンデッドが出現してしまった。今はミスリル級の冒険者達に対処してもらっているのだが、彼らだけでは時間稼ぎが関の山だ。それにイグヴァルジくんの姿も見えない。頼む!!もう一度この街を救ってくれ!!!」

 

 

 アインザックは未だに、デスナイトが倒せていないと思っているようだ。だからこれ程慌てているのだろう。

 モモンはアインザックを安心させる為に、そのことを伝える。

 

 

「その伝説級のアンデッド?とやらは既に先程倒して来ました。奴にゾンビにされてしまった市民達も、ああなってしまっては人間に戻すこともできないので、心苦しい限りではありましたが、それらも既に全滅させています。私が使役している魔獣、ハム…森の賢王にアンデッドの生き残りがいないか、今エ・ランテル中を確認させています」

 

 

 当たり前のように言い放つモモンに、アインザックは口を半開きにし、目は全開きにして固まっている。あまりの驚愕に頭が追いついていないようだが、伝えるべきことは伝えたので、本題に入ろうとする。しかしモモンの言葉を聞いた周りにいる冒険者達から話しかけられてしまい、モモンは言葉を飲み込む。

 

 

「モ、モモンさん、そ、それは本当なのですか?」

 

 

「ええ、本当ですよ。何なら見に行ってみるといい。あまり見たくはない光景だが、ゾンビとデスナイトの残骸があるはずだ」

 

 

 モモンがそう言うと、一斉に冒険者達はモモンに質問をし始める。

 

「俺の家族は無事なのか」「ゾンビが復活する可能性は?」「本当に全て倒しているのか?」など。

 

 モモンが答えようとすると、アインザックは少し平静を取り戻したみたいで、周りの冒険者達を止める。

 

 

「待て君たち。モモンくんが倒したというのであれば本当にそうなんだろう。ただ一つ聞かせてくれ。モモンくんが倒したのは伝説級のアンデッド、それもデスナイトということで間違いはないか?」

 

 

 モモンはそれを肯定して、アインザックはそれを確認させる為に、周りの冒険者に指示を出し、デスナイトを倒したところに向かわせる。

 そしてモモンは組合長室に連れて行かれ、更なる詳しい話を求めてくる。組合長室の中にはもう1人、アインザックと同じくらいの年齢の男もいた。

 その男の名前はテオ・ラケシルと言って、魔導士組合の組合長という話だ。モモンは自己紹介も済ませて、詳しい話──という程のことでもないのだが、モモンが何をしたのかを2人に話す。

 

 

「まず私達は依頼にあった街道に行って、ゴブリンとオーガを撃退しまして、それが終わり、ちょうどエ・ランテルに向かっていると、門番の方がこちらに走って来て、街が襲われていると聞いたものですので、デスナイトとゾンビを退治した、ということです」

 

 

 え?それでおしまい?

 みたいな顔をされるが、本当にそれでおしまいなのでこれ以上は何も言わない。そういえば──とモモンはデスナイトの元になった男の冒険者プレートを出す。

 アインザックはそれを確認して、誰の冒険者プレートなのかがわかったようだ。

 

 

「これはイグヴァルジくんの…そうか…。彼は先日モモンくんがアンデッドの軍勢を退いたことで英雄扱いされていたのを嫌っていたからな。それで今日またアンデッドが出現したことで、今度こそは自分が、と思って1人で討伐をしに行ってしまったのだろう。彼が英雄に憧れていた事は知っていたが、あまりにも無謀すぎだ」

 

 

 アインザックは悲しそうな声でそう言った。聞いてみると、そのイグなんとかというのは、モモンとナーベが来る前までは他のミスリル級の冒険者チームよりも数多く依頼をこなしており、アインザックもそれに感謝をしていたらしい。英雄という言葉が関わらなければ、結構いい人物だったとか。

 まあ、その英雄に憧れた奴があのデスナイトなのだが。

 アインザックは冒険者プレートをしまい、再びモモンに話しかける。

 

 

「先程モモンくんは依頼をこなした後だと言ったね?つまり今回の依頼料とデスナイトやゾンビの討伐料も支払わなくてはいけないのだが、すまない!」

 

 

 アインザックは頭を下げ、続ける。

 

 

「報酬は必ず支払うが、立て続けにここまで大きな事件が出てしまうと、モモンくんとナーベ嬢にまでお金支払う余裕がなくなってしまう。死んでしまった冒険者の遺族や、怪我をした冒険者にも組合から手当を出さなくてはならないのだ。本当にすまない」

 

 

 モモンはすぐにお金が必要という訳でもないし、そもそも前回のアンデッド事件もモモンが早めに動けばあれだけの被害は起こらなかったし、今回に関しては完全にモモンの責任なので、それに対しての異議申し立てはしない。むしろここでアダマンタイト級冒険者としての懐の広さを見せるべきだろう。

 

 

「もちろんですとも。私もナーベもお金が目当てでやっている訳ではありません。困っている人がいたら助けるのは当たり前、その思いで私達は冒険者をしているのです。頭を下げる必要などありません」

 

 

 モモンがそう言った後、アインザックは頭を上げるがもう一度、すまない、と言って頭を下げて謝罪する。そして、今後1週間くらいは依頼が受けられなくなるだろう、と伝えられる。理由としては、先程アインザックが言ったように冒険者組合は今かなり手一杯で、依頼を受けられてしまうと色々と仕事が増えてしまい、手が回らなくなってしまう──と説明された。

 モモンはそれに理解を示し、お互い話すことも無くなったので漆黒の2人は冒険者組合から出て行った。

 

 

 宿屋の部屋に入り、モモンはソファに腰をかける。その隣にナーベも座る。

 

 

「これでナーベラルのストーカー男も殺せたし、名声も高まって一石二鳥だったな」

 

 

「はい。流石はアインズ様です。今回の件でアインズ様のご活躍を疑う愚か者共にも、アインズ様のご威光を知らしめることができたでしょう。あの人間を殺したところからここまでお考えだったとは」

 

 

「ま、まあな」

 

 

 あれはカッとなって殺してしまっただけで、デスナイトがここまで暴れるのは予想外だったんだけど…ナーベラルからの尊敬の目に対して、何も考えていません!なんて言えない。

──いや、それでもしっかりと言うべきなのではないか?このままだと、俺に対する評価が上がっていく一方で、稀代の謀略家として今後も演じ続けなくてはならなくなる。ナーベラルに嘘を吐いていたくないし、ナーベラルだってそれを望まないだろう。

 それで失望されてもそれは仕方がないことなのでは無いだろうか。この先どんなに上手く演じていようとも、必ずボロがでる瞬間が来るはずだ。なら、その前に、今のうちに、言っておく必要がある。

 モモンは覚悟を決めて本当の事を話す。

 

 

「ナーベラル」

 

 

「はっ!」

 

 

「お前は『あの人間を殺した時からここまで考えていた』と言ったな?」

 

 

「はい」

 

 

「そこまでは私は考えてはいなかった。ただあの時に死体を有効活用する為にデスナイトを作ってみた、そのついでにお前をストーカーしていた男を殺すように命じただけだ。まさか私もあそこまでデスナイトが暴れるとは想定外だった」

 

 

「そ、そうなのですか?では何故、そもそもあの男を殺したのですか?」

 

 

 やっぱりそこ聞かれるよなあ〜。うん、でもやっぱり、嘘は吐きたくない。

 モモンは正直に話すことにする。

 

 

「あの男の発言が許せなかったんだ。お前を自分の欲望の為に利用しようとしていたんだぞ?弍式炎雷さんの娘同然であるお前に、そんなこと言った奴を許せるわけが無い!」

 

 

「つまり、アインズ様はついカッとなってあの人間を殺した、というでしょうか?

 

 

「…そ、そうだ。お前に散々人を殺すなと言っておきながら、いざ自分がその立場になると迷いなく殺してしまう────幻滅したか?」

 

 

 アインズは恐る恐るナーベラルに問いかける。アインズはナーベラルに何を言われても受け入れるつもりだ。例え彼女が自分から離れる事になってしまったとしても。

 しかし返ってくる言葉は想像とはかけ離れたものだった。

 

 

「幻滅などしようはずがございません。むしろあの人間はアインズ様御自らによって殺されたことを誇りに思うべきでしょう。アインズ様は生も死も司る、神をも凌駕した尊き存在でございます。そんなアインズ様によって(もたら)された死であれば、この上ない幸せでしょう」

 

 

 な、何を言っているんだ?

 アインズのナーベラルに対しての感想である。

 そもそもアインズは散々ナーベラルに人を殺すなと言っておきながら、自分はカッとなって何も考えずに殺してしまった、と言ったつもりだ。そしてその後の事は全て、棚からぼたもちだった、と伝えたつもりなのだが。何故かナーベラルはそんな事よりも、殺された人間は感謝するべきだ、とか幸せだろう、とか全然違う話にされている。

 もしかして話が通じていない…?

 

 

「ナ、ナーベラル?」

 

 

「はっ。いかがなさいましたか?」

 

 

「私は自分の事を棚に上げて、ナーベラルに人を殺すなと叱っていたんだぞ?」

 

 

「は、はい…?な、なるほど…?」

 

 

 ナーベラルは何も理解していなさそうな顔で、とりあえず頷いてる。

 

 

「いや、何か文句はないのか?何も考えずに人を殺したのだぞ?あの事件だって本当にたまたまだ。お前のよく言う、深きお考えとやらがあった訳ではなく、勝手にああなったんだ。それに対して何かないのか?」

 

 

 幻滅されるのが怖かったはずだったのだが、ナーベラルはそれに関して何も言ってこないので、アインズはむしろ幻滅させる方向に何故か会話を持っていってしまう。

 それでもナーベラルは特に何も思っていないような顔で、いつもように喋り始める。

 

 

「アインズ様自らがお決めになられた事です。私に文句などあろうはずがございません。たまたま、と仰るのであればそれで良いかと。ただ今回の件は、アインズ様がお望みになられた結果になったというのも事実でございます。何か問題があるのでしょうか…?」

 

 

 

「ええ…」

 

 

 思わずアインズの口から声が漏れてしまう。最早、ナーベラルが何を言っているのかが理解ができない。つまり、人を殺そうが殺すまいが自由にして良いし、考えなしに動いても結果が出たからいいでしょ、という事なのだろうか?ナーベラルであればそう考えていてもおかしくはない。

 結果が出ていなかったら?それを聞こうとするが、聞く前に答えはわかる。アインズ様がお決めになられた事です。異論はございません──とでも言うのだろう。

 というか、考えなしでもいいんかい!

 アインズは心の中で叫ぶが、未だに何も喋ってはいないので、ナーベラルは心配になったのか、深々と頭を下げて謝罪し始める。

 

 

 

「も、申し訳ございません!アインズ様。アインズ様の()()()()()を理解できぬ私をお許しください」

 

 

 …だからその深きお考えが無いって言ってるじゃん。

 しかしこれではっきりした。ナーベラルにとって大事なのは、アインズ自身の行動であり、しかもそれは『深きお考え』とやらがあってもなくても良いらしい。それに、アインズには常に『深きお考え』とやらがあると思っている節も見受けられる。

 

 これは…すぐにどうにかなる話ではなさそうだな。

 

 とりあえず、これ以上この話を続けたところでこのまま平行線になりそうなので、アインズは後で別の案を考えるとして、最近の日課である、朝まで会話に明け暮れるのだった。




イグなんとかさんは多分モモンを嫌がらせしたいだけで、ナーベに関しては特に何も思っていなさそうですよね。でもアインズ様からするとそんな事知ったこっちゃないんで、悲しい事件となってしまいました。

ちなみにですが、中位アンデッド作成はスキルなので死体をアンデッドにする魔法ではないため、絶対にアンデットの姿にならないといけません。

次回 『剣の高み』

最後に、皆様アンケートの投票誠にありがとうございました。アンケート結果では今のままがよい、というのが多数だったので、特に気にすることなく書くことにしました。ただやはり、原作と被るところはかなり端折って書かせていただきますし、違うところはなるべく詳しく書く、というスタイルなので、今後原作から離れていく展開となった際は、結果的に今のペースよりも遅くなってしまうこと、ご了承ください。
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