英雄と美姫の物語   作:ながしながされ

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今回はナーベラル視点です。

前回のあらすじ
モモンガ「ナーベラルのことは任せろ!悲報!ユグドラシルサ終!どこだここ!!」


二話『困惑のナーベラル』

──ここはどこ?

 ナーベラルは平野に立っていた。

 つい先程まで玉座の間で平伏していたはず──至高の御方、モモンガ様のご命令によって。

 近くにはプレアデスの姉妹たちもいたはず。

 執事のセバス様や、守護者統括のアルベド様もいたはず。

 しかし、彼らの姿はここにはない。いや彼らの姿がここにないのではない、ナーベラルが彼らの()()()()()()()のだ。

 ここは玉座の間でもなければ、ナザリックというわけでもない。第六階層に自然がある場所があるが、ここは第六階層でもない。忽然と消えた同僚、そして最も敬愛するべきモモンガ様もここにはいない。ここにあるのは足元に生えている草だけ。他には何もない、何かあるのかもしれないが、視界には映ってはいない。

 

 

「…モモンガ様?モモンガ様!!」

 

 

 あたりを見回しながら尊き御方の名前を叫ぶが、返事をするものは誰もいない。──まさか廃てられたのか。

 考えたくもない可能性が脳裏によぎるが、即座に頭を切り替える。

 

 

「モモンガ様が最後に仰ったご命令はひれ伏せだった。ならばモモンガ様にもう一度お会いし、御身の前でひれ伏さなくては」

 

 

 もし廃てられたのであれば、それはそれで自分の不徳の致すところ。もう一度お会いした際にお前はもう要らぬと、用済みだと仰って頂ければそのご命令に従うのみ。自害でもなんでもすればいい。正直胸が張り裂けそうで涙を流したくなるほどの悲壮感に襲われるが──御方がそのような決断をなされたのであれば躊躇うことなく命を断とう。

 

──とりあえずここにいては何も出来ない。歩みを進めるべく、足を出すが、なんとも歩き辛い。雨上がりなのだろうか、それとも土質?草原だからか──ともかく、このまま歩いたのでは、至高の御方に与えられたメイド服に泥を塗ることになる。

 ナーベラルはメイド服よりかは動きやすく、汚れても大丈夫であろう、ごく普通の旅人のような格好に服装を変える。

 これでよし。

 とにかく、どこかに移動しなくては。

 

 そのまま歩いていくと、霧がだんだん出てきて視界が悪くなっていく。すると前の方から何かが叫ぶ声が聞こえる。男の叫び声だろうか。

 

 それを聞いたからというわけではないが──進行方向だったので気にせず歩みを続ける。

 何かが見える。

 アンデッドだ。

 しかしモモンガ様ではない。

 デスナイトだ。

 そこにはデスナイトが立っており、その足元には()人間、それから出たであろう血溜まり。デスナイトを怯えるように眺めている男三人。

 

 ナーベラルが知る由はないが──この世界ではデスナイトは一国をも滅ぼすことができる伝説級アンデッドだ。その名の通りナイト(騎士)のような見た目であり、大きなタワーシールドとフランベルジュを持っていて、鎧も着ており、これだけを聞けば立派そうに聞こえるかもしれない──しかしアンデッドなのだ。ヘルムから見える顔は腐り落ちており、体もところどころから骨が見え、死臭がする。

 

 デスナイトは怯えている三人から顔を逸らし、ナーベラルの方を向く。

 

 

「ヴオオオオオ」

 

 

 声なのだろうか、それとも何かの音なのだろうか──分からない音をあげてこちらへとデスナイトが走ってくる。

 ナーベラルは慌てる様子もなくデスナイトへ向けて人差し指を突き出す。

 

 

魔法遅延化(ディレイマジック)雷撃(ライトニング)魔法最強化(マキシマイズマジック)龍雷(ドラゴンライトニング)

 

 

 指から出た龍の形をした電撃がデスナイトに直撃する。しかし少し足が少し止まっただけでまたこちらへ走り出してくる。が、もう一発──今度は普通の電撃──が走りデスナイトはその場に倒れる。

 おおー!とその場にいた男どもが感嘆の声をあげるが心底どうでも良い。助けてあげたとでも思っているのだろうか。それとも──敵意があるようならこの場で殺すか。

 しかしそんな度胸もなさそうだ。構う時間もない。

 ナーベラルは進み始める。

 

「ま、待ってください!ありがとうございました!おかげで助かりました。失礼ですがお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

 

 

 1人が尋ねてくる。価値のない下等生物(ゴミムシ)共に名前を名乗って何になるのか。いやしかし、ゴミはゴミでも一応は言語を介する知的生命体だ。少しは役に立つかもしれないが、本名を名乗るのは憚れる。

 この名前を呼んでいいのは、至高の御方とナザリックの者達だけだ。

 

 

「私はナーベです。モモ…いえナザリックを探しているのですが、何か知っていることはございますか?」

 

 

 突然振り向いたナーベラルの顔を見て、息を呑む男三人。

 気持ち悪い視線だ。

 

 

「あ、あぁナーベさんですね。命を助けていただきありがとうございます。えっとそのナザリックっていうのは何ですか?」

 

 

 聞いた男は何も知らないようだ。

質問に質問で返すとは、これだから無能は無能なのだ。少しの役にも立たない。一応知的生命体だと思っていたのは勘違いだったか。

 ナーベラルは再び歩き始める。

 

「あ、あの!もしかしたらエ・ランテルにいる人なら何か知ってる人がいるかもしれません。これから私たちもエ・ランテルへ行くのですが、もしよかったら一緒に行って聞いてみませんか?冒険者ならいろんな情報を持ってると思うので聞いてみますよ」

 

 

 その()()()()()にいる()()()()()()とやらならナザリックについて知っているらしい。

 なぜすぐ言わないのか。いやゴミには仕方がないのかもしれない。むしろゴミでノロマとはいえ、少しは役に立つことをほんの少しだけ評価してやるべきなのかもしれない。

 

 

「わかりました。ところでその()()()()()()とは何ですか?」

 

 

 聞き慣れない単語について尋ねてみる。3人は顔を見合わせ、びっくりしたような表情をしている。

 さっさと言えばいいものを──ノロマが。

 

 

「ナーベさんは冒険者ではないのですね。ナーベさんほどの実力があれば最低でもミスリル、恐らくですが既にアダマンタイト級冒険者の実力はあると思います。エ・ランテルに着いたら冒険者として登録してみてはいかがですか?あ、申し遅れました。私冒険者組合で冒険者ランクの審査をしております、ラカロ・パルネラと申します。私が組合に戻ってナーベさんが冒険者として登録して頂ければ、先ほど申し上げた通り最低でもミスリルをお約束します。実は今日も冒険者チームのランク昇格としてこのカッツェ平野に来て実戦を見ていたのですが、まさかデスナイトが現れ──」

 

 

 話が長すぎるので、ほとんどを聞き流す。

 

 

「──それではエ・ランテルへと向かいましょう。遺体は残念ながらカッツェ平野では連れて帰ることができません。負のエネルギーが高くて運んでいる最中にアンデッド化する可能性もありますし、お墓に埋めた後にアンデッド化ということもあります。残念ですが、遺品だけ持ち帰りましょう。」

 

 

 他の2人に向かって申し訳なさそうにラカロは言った。2人もわかっているようでギリギリ人間の形がある死体から遺品を回収しこの場を後にした。

 

 エ・ランテルへと向かう途中、ラカロはいろんなことを勝手に喋っていた。

 普通は第三位階魔法で一流なのに第五位階魔法を使えるのはもはや英雄の域だ──とか、途中で出てきたアンデッドを剣で倒した際には魔法詠唱者(マジックキャスター)は普通肉弾戦ではまず勝てない──とか。

 

 そのどうでもいい話のほぼ全てを聞き流しながらエ・ランテルへと向かう。




行き当たりばったりで書いてるのでこの先の展開がどうなるのかドキドキしますね!!

Q.なんでナーベラルはわざわざディレイマジックを使って、普通にライトニングを放たなかったのか?

A.そっちの方が一撃で倒してるように見えるでしょ。
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