アインズはナーベラルの自身に対する考え方を変えようと、別角度から攻めてみることを思いついた。
「ナーベラル」
「はっ!」
「深きお考えゲームでもしようか」
「ふ、深きお考えゲーム…ですか?」
「そうだ。これからルールを説明する」
「はい」
「この深きお考えゲームは、私が何を考えているのか、というのをナーベラルに当ててもらう」
「はい」
「そして、そのゲームが始まったら、私はアインズでもモモンでもなく、そうだな…ナーベラルの部下ということにしよう」
「ぶ、部下ですか!?」
「そうだ。そのゲーム中の時は私を部下だと思ってくれ」
「ぶ、部下…アインズ様が部下…。ですが、そのような不敬なことは──」
「まて、これは私の深きお考えがあるのだ」
「深きお考えが!?な、なるほど…。そういうことであれば、かしこまりました」
「うんうん。それで、そのゲームが始まったら、部下である私がナーベラルに『こういう時、アインズは何をお考えなのですか?』と問いかける」
「はい」
「そしたらナーベラルは私に、『アインズ様はこういう時は、こんなことを考えている』というのを教えてくれないか?」
「はい。ですが、私如きではアインズ様のお考えの全てなど──」
「いや、全てではなくて良い。ナーベラルが考える、アインズの考えはきっとこうじゃないか、というのを喋って欲しい」
「か、かしこまりました。しかし、アインズ様。その深きお考えゲームをする際に当たって、私はアインズ様を何とお呼びすれば?」
「あー、確かにそうか。アインズとかモモンだと、いつも通りで部下っぽくないか。うーーーん。じゃあ、悟、でいいんじゃないか?」
「悟様ですね」
「『様』をつけるな。部下に対して『様』は流石につけないだろう?まあ、『さん』をつけるくらいなら許すが」
「では、悟さん」
「…………すまん、もう一度言ってもらえるか?」
「悟さん」
「………………」
「悟さん?どうされましたか?」
「…………やめておこう」
「…?かしこまりました。それではお名前はいかがなさいますか?」
「うーん。ナーベラルから何か良い案はないか?これなら呼びやすい、みたいな」
「では、月光はいかがでしょう?」
「月光!?なんかかっこいいなそれ」
「はい。アインズ様は、暗闇でも光を照らして下さった御方であります故、月光が良いかと愚考します」
「月光か…悪くない。そんな名前のメンバーがいればブループラネットさんと仲が良さそうだな」
「左様ですか。それでは、ゲーム中はアインズ様を月光とお呼び致します」
「じゃあゲームを始める前に、少し部下っぽく接してみてくれ」
「わかったわ」
「おお、新鮮だな」
「そう?」
「何か私に命令を出してみてくれ」
「それは別に構わないけれど…月光、どうしてあなたは私に敬語を使わないの?私の部下でしょう?」
「あ、そうか。すまな──すみません。ナーベラル様」
「まあ、許してあげるわ。今後も敬語を使いなさい」
「はいっ!ナーベラル様!」
「う、うん。で、ではそろそろゲームを始めない?」
「はっ!それではゲームを始めます!アインズが──」
「待って!!」
「あぁ、はい。ど、どうしました?」
「なぜ『様』を付けないの?私の部下なのでしょ?私の部下なら、私が最も敬愛するアインズ様を呼び捨てにするなど言語両断よ」
「あ、ああ、そ、そうですね。申し訳ございませんでした」
m(_ _)m
「あ、いえ!!!頭をお上げくださいアインズ様!」
「いや、私はアインズではなく──」
「だから『様』を付けなさい!──じゃなくて、えっと、と、とにかく、私如きに頭をお下げになられないで下さい!」
「あ、そ、そうか、す、すまない」
「敬語で喋りなさい」
「え?ああ、そうか、じゃなくて──す、すみません」
「頭を下げないでください!」
「え、えっと、ナーベラル、じゃない、ナーベラル様、すみませんでした」
「あ……いえ、その…ご、ごめんなさい。アインズ様」
「あれ俺って月光じゃ…」
「あ、げ、月光?も、申し訳ございませんでした。月光」
「あれ?待て、一旦待ってくれ」
「わかった…りました」
「うん、何でも良いから一旦聞いてくれ」
「どうしたの?月光?」
「お互い混乱しすぎだ…」
「…そうですね」
「えっとまず、私は何をするんだったか?月光だよな?アインズではなく」
「アインズ『様』よ」
「ああ、そう、アインズ様ね。それで、ナーベラルがアインズ様をやるんだったよな?」
「え?何を言っているの?アインズ様は月光でしょう?」
「ん?私が月光をやって、アインズ様もやるのか…?」
「そうよ。ただ、あなたは月光よ」
「……??訳がわからんぞ。ちょっとゲームのことは忘れてくれ」
「かしこまりました。えっと……アインズ様…?月光…?」
「月光も忘れろ。良い名前だったが、混乱してしまう」
「で、では何とお呼びすればよろしいのでしょうか?……さ、悟さん?」
「え?悟さん…?あれ、悟さんも私がやる予定だったか?」
「は、はい。そうです」
「あれ?そうだったか?悟さんはなんか恥ずかしいから辞めたんじゃなかったか?」
「悟さんが恥ずかしいと仰ったのですか?」
「悟さんが言ったのではなく、私がそう言ったのだ…?」
「…?では、悟さんはどなたなのでしょうか?」
「それは…私だ」
「…?アインズ様はどなたですか?」
「私だ」
「…?月光は?」
「私です」
「…?申し訳ございません。私には何を仰られているのか分かりません」
「そうだな…今日はよく分からないからモモンガと呼んでくれ」
「モモンガ様」
「うん。じゃあ、これで終わりにしよう」
「かしこまりました──しかし、アインズ様の深きお考えとは一体何だったのでしょうか?もしかしてこれがアインズ様の深きお考え…?」
「あー、多分そうだな。アインズ様は深きお考えとやらがすごく凄いからな」
「なるほど!流石はモモンガ様です!」