英雄と美姫の物語   作:ながしながされ

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会話(十二話)『ボランティア』

 モモンとナーベは街に出て、崩れてしまった建物の瓦礫の撤去作業やら掃除やらを手伝っていた。

 

 

「モモン様!ナーベ様!本当に助かります…ありがとうございます」

 

 

 言ったのは、エ・ランテルでもそれなりに人気だった酒場の店主だ。彼の酒場自体は無事だったのだが、酒を貯蔵する倉庫は墓地に近かったということもあり一部が崩れてしまったのだ。

 モモンとナーベはそれらの瓦礫を撤去しつつ、無事な酒を探している。

 

 

「ナーベ。あまり人間と敵対するなよ?」

 

 

「はっ!かしこまりました。お任せくださいモモンさん」

 

 

 モモンがナーベに耳打ちすると、自信溢れる返答だったので、これなら大丈夫かもしれない、とモモンは少し安心する。

 すると突然、店主が瓦礫の下から何かを見つけたのか、大声を上げた。

 

 

「あ!あった!!」

 

 

 店主は酒瓶を掲げ、嬉しそうな表情でこちらを向き、駆け寄ってくる。

 

 

「モモン様、ナーベ様!見つかりました!!」

 

 

 何が見たかったのかといえば、彼が1番安否を心配していた、この王国でかなりの高額とされる酒で、それさえ無事であれば他の酒などどうでもいいと言わせるほど、彼にとって大切な酒である。

 

 

「見つかって良かったですね」

 

 

「えぇホントに。お2人には感謝しております」

 

 

「いえいえ。私たちは瓦礫を撤去していただけで、最終的に見つけたのはあなたです。我々は何もしていませんよ」

 

 

「そんな事はありません!瓦礫をここまで撤去していただいたからこそ見つけることが出来たのです。そもそもこの酒は──」

 

 

 店主はその酒について語り始める。

 かなり長くなりそうなので、モモンはそれを聞き流しつつ、作業を進める。

 すると何故か、店主の話は「この酒にピッタリなのはナーベ様です!」とか言い始め、今度はその酒を飲んでもらうなら美しいナーベしかいない、と言い始める。

 何を隠そうこの店主、ナーベの大ファンだ。

 モモンとナーベがエ・ランテルに来てからまだ日にちは浅いので、大ファンなどと呼んでもいいのかはわからないが、彼は若い頃、魔法詠唱者(マジックキャスター)を志していた1人だったという。

 だがこの王国では魔法詠唱者(マジックキャスター)はあまり重要視されない国柄であり、かつ、帝国のように魔法学園のようなものもなく、独学で第二位階の魔法を1つだけ使えるようになったところで、自分の才能のなさに気が付き諦めてしまったのだと言う。

 だが情熱だけは今なお燻り続けており、今度は優秀な魔法詠唱者(マジックキャスター)を見つけては、その人のファンになるという、少し方向性は違うのだが、立派な魔法マニアであった。

 そんな彼が第五位階魔法を使えるナーベという冒険者を知ってしまえば、ファンになるのも頷けるだろう。

 

 それに先の店主の話を聞いていれば、かなりの酒マニアでもあり、高額な酒とナーベが同時に揃ってしまえば、その口は止まらない。

 

 

「──なので、どうでしょうかナーベ様!このお酒を──」

 

 

「黙れ下等生物(ナメクジ)

 

 

 おい!ナーベ、さっきの自信はどこに行った!?人をナメクジ呼ばわりしちゃいけないだろ!ほら、店主だってポカーンって口を開けてるじゃないか!!

 

 モモンは唐突に発せられたナーベのナメクジ発言に、必死にフォローを考える。こんなところで、実は美姫と呼ばれるナーベは人間をゴミクズにしか思っていないなんて噂されるのは真平ごめん被りたい。

 

 どうしよう。そういえば、さっき店主はこの酒は夜に飲んだ方がいい、みたいな話をしていたはずだ。だったら──

 

 

「の、()()()()()()って言ったんだよな?な!ナーベ!」

 

 

 非常に無理がある。

 そう思いながらモモンは恐る恐る店主の顔を見ると──満面の笑みであった。

 

 

「おぉ!流石はナーベ様です!!そうなんですよ!でしたら今夜9時にお店をお2人だけの貸切と致しますので、どうでしょうか?こんなにも手伝って頂いた事ですし、このお酒をお2人にご馳走させていただきます!」

 

 

 店主はそう言って、非常にご機嫌になっている。

 盲目的なファンで助かった…。

 モモンは胸を撫で下ろし、瓦礫の撤去作業を再開した。

 

 

 そしてボランティアも終わって、夜の9時、モモンとナーベは例の酒を飲みに行く。

 

 

「いいか、ナーベ。今度こそ気をつけるんだぞ?」

 

 

「も、申し訳ございませんでした」

 

 

 申し訳なさそうにするナーベにモモンはそれ以上は言わず、酒場に入り、例の酒を飲む事にした。

 他にも色々と料理を食べさせてくれて「もし、この酒場に来たら全部無料にする」と言われ、モモンはそれを断ろうとするのだが、ナーベが「当然です」と言い始め、店主はその代わりにモモンとナーベのサインをねだってきた。

 文字はロクに書けないが、それでもモモンとナーベは自分の名前くらいは書けるように勉強はしたので、それを皮紙に書いてやると、「では今日からここは漆黒のお2人御用達の酒場という事ですね!」と店主はテンションを上げ、酒場の入り口にデカデカと「アダマンタイト級冒険者漆黒のモモンとナーベ立ち寄り所」と貼られてしまった。

 断ろうかとも思ったのだが、これは言わば広告のようなものであり、名声を高める上では非常に効果的だと考えたモモンは、何も言う事はしなかった。

 

 そして次の日以降、その張り紙を見た人々がその酒場に入るようになり、モモンとナーベもたまに顔を出しに行ったりしたおかげもあってか、他の店からも「金を払うからあの張り紙をさせて欲しい」と言われるようになる。

 モモンはこれをお金を稼ぐチャンスと考え、同時に知名度も上げられるので、契約期間を設けるなどして、その張り紙をする許可を出した。

 そのおかげもあってか、あれ程の被害が出たというのに、エ・ランテルの経済はかなり回っている。

 

 それにモモンとナーベもかなりお金が稼げたので、Win-Winというやつだろう。

 

 

「あの時ナーベラルがナメクジと言った時はどうしようかと思ったが、まさかこんな事になるとはな」

 

 

「これもアインズ様の類稀なる深謀が故かと存じます」

 

 

「いや、こうなるとは考えていなかったさ。こういうのを棚からぼたもち、と言うんだったか?ナーベラルのおかげといえばおかげなのかもな」

 

 

「はっ!ありがたき幸せです」

 

 

 そう言ってナーベラルは嬉しそうな顔をした後、真剣な眼差しでアインズに提案をする。

 

 

「では明日からは、より人間どもをナメクジと呼ぶ事に致します!」

 

 

「絶対やめてくれ!」

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