英雄と美姫の物語   作:ながしながされ

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早くも再開ですか。


前回のあらすじ
ナーベラル「エ•ランテルついた!冒険者になった!うぅっモモンガ様…」

今回は視点を分ける為、モモンガさんの一人称視点となっております。


五話『再会』モモンガ視点ver

 俺は新たな住居となったカルネ村にある一軒家の中を物色していた。

 

 

「へぇ〜食器とかも全部手作りでしかも木製だ!一つ一つ若干形が違う。」

 

 

 俺が元いた世界では、木々はかなり減っていき、木製のものはかなり少なくなっていた。だからこの世界で見る木製の食器など考えたこともない。見るもの全てが新鮮で刺激を受ける。

 お風呂は流石になかったが、贅沢にも綺麗な水は生活する分なら充分なほど使える。

 ナザリックもこの世界にあれば、あの大浴場に入れたのか。入ってみたかったな──と考えないでもなかったが、それよりもふとしたことに気付く。

 

 ナザリック…か。本当に転移したのは俺だけなのか。もしかしたらナザリックもNPC達も転移していて、俺がまだ見かけていないだけではないのか。

 そうするとNPC達は今何をしている?変わらないまま、あそこでただ立っているだけでこちらが何も言わなければ、置物と変わらないようにその場で微動だにしないのか、もしくは──突飛な考えかもしれないが、各々が自我を持ち自分の考えで行動ができるのだろうか。

 答えの出ない疑問に首を振る。

 

 今はそんなことを考えても仕方ない。もしナザリックがあるのであれば、やはり情報収集が最優先だ。

 となるとモモンと名乗っている今の状態では、名前を聞いただけでは、ナザリックの者たちも俺に気がつかないかもしれない。

 

 

──ただ今から、実は違う名前でーす。と村人たちに言うのもおかしいしなぁ。モモンガって名前もこの世界にモモンガって名前の動物いるかもしれないしなぁ。よし!どこかのタイミングでアインズ・ウール・ゴウンと名乗ろう。

 

 アインズ・ウール・ゴウンであればナインズ・オウン・ゴール(9人の自殺点)のアナグラムだから、流石に同じ名前の人物や物は無いだろう。

 しかし問題は名乗るタイミングだ。鎧を着ている時はモモンと名乗って、アンデッドの時にアインズと名乗ればいいだろうけど、そもそもアンデッドの姿で名前を名乗る場面なんてあるのか?

 まぁなるようになるだろうから、それはその時に考えよう。

 

──外を見ると太陽はまだ出てきていないようだが、空は少し白んできている。

 そういえばここからエ・ランテルってどのくらいの距離があるのだろうか。地図は渡されたから道はわかるはずだが、距離まではわからない。別に遠くても上位転移(グレーターテレポーテーション)を使えばすぐだろう。──しかしそれよりも歩いてこの世界をもっと見たい。転移した先に誰かいて、それを見られるわけにもいかない。

 

 

「よし!じゃあ出発しよう!」

 

 

 決意を新たに、自分に気合を入れる。

──少し早いかもしれないけれど、早く着く分には問題ない。それよりも日没前には着きたい。向こう行ったら宿も探さないといけないし、街も探索したい。それよりも先に冒険者の登録をしなくちゃか?色々やることはあるな。その前にモモンになって、っと。

 

 

「行ってきまーす」

 

 

 誰に言ったわけでも無いが家を出る時の癖で、誰もいない家に向かって出発の挨拶をする。村を出てからはもらった地図を見ながらエ・ランテルの方向へと歩き出す。

──にしても、こんなに自然がたくさんある。蝶々や小鳥たちも飛んでいて、本当に異世界に来たんだな。昨日見た星空もまるで宝石箱のようだったし、ブループラネットさんもいればすごく感動して、早口で色々教えてくれたんだろうな〜。

 その光景を想像し、笑みが溢れる──顔は動かないが。

 自然を楽しみながら歩いていると、草むらの方からカサカサと何かが動く音が聞こえてくる。

 

 

「おっ?モンスターか?? ──なんだ、ただのゴブリンとオーガか」

 

 

 できればもうちょい骨のあるやつに出てきて欲しいな──俺骨だし。

 グレートソードを手に取り、ゴブリンとオーガを倒していく。その死体を見にいくが、ドロップアイテムもないので、つまらなそうに再び歩き始める。

 

 そのまましばらく歩き続けたが、出てくるモンスターはあまり変わらない。襲われている人も見えないので、あの時のたっちさんみたいにかっこよく助けに行くこともできない。

 うん、思ってたより面白くない。自然は綺麗だけど、モンスターたちが弱すぎる。強すぎても良くないけど、この世界の人たちはどう思ってるんだろうか。

 まず思い浮かぶ人物が、ガゼフ・ストロノーフ。彼は死をも恐れず、村人たちの安寧の為、己が剣となり村を守るために戦っていた評価の高い人間だが、強さでいえばユグドラシルの初心者プレイヤークラスだろう。そして、スレイン法国の特殊部隊の者たちも特段強くはない。個で見ればガゼフ以下だ。

 

──となると、もしかしたらあれがこの世界の最強クラスなんじゃないか?ガゼフは戦士長って言ってたし、相当位の高い役職のはず。スレイン法国の方も特殊部隊とか言ってたし、本気でガゼフを殺したいのなら、もっとレベル差の開いた、それこそレベル100でも連れてくればいい。

 もっと言えば、スレイン法国の取った作戦。話によれば、近隣の村々を襲ってガゼフを誘き寄せてそこを狙ったらしいが、そもそもそんな回りくどい作戦などしなくてもやりようはいくらでもあるはずだ。転移して時間止めて魔法でも使えば一瞬で終わらせることができる。

 それでもあの作戦をしたということは、殺すつもりではあるがそこまで本気でもなかったのか、それともあれがスレイン法国の最大戦力級なのか。

 

 こっちも今考えても仕方ないか。

 それにしても、遠いな。日が昇る前に出たのに、もうそろそろ夕方になるぞ。まだ着かないのか?最悪魔法でも使って移動するか?

 そう考えていると、人工物が見えてくる。街だ、その入り口には門があり、おそらくあれがエ・ランテルだろう。

 魔法を使わなくて良かったとホッとし、そのまま門に向かうと門番から話しかけられる。

 

 

「身分証のご提示をお願いします。」

 

 

 身分証は持っていないが昨日ガゼフに書いてもらった紙を見せると、王国戦士長と書いてある文字に驚いたのか、少し目を見開きその紙の内容を読む。彼が一読した後。

 

 

「はい、確認しました。入って大丈夫です。」

 

 

 許可も降りたので、街の中へと入って行き、冒険者登録するにはどこへ行けばいいのかを門番に聞く。その案内された場所に歩きながら見慣れない街並みを眺めていると冒険者組合へと着く。中に入ると、俺の格好が珍しいのか──ヒソヒソとこちらをチラチラ窺いながら話をしている連中がいる。

 どうやらフルプレートの鎧を着ている人は滅多にいないみたいだが、特に何をしてくるわけでもないので、そのまま受付に行き、冒険者になりたい旨を伝え、先程門番に見せた紙を渡し、受付嬢は確認する。

 

 

「組合長を呼んできますので、こちらでお待ちください」

 

 

 席を離れて裏の方へと消える。周りのヒソヒソ話はまだ止まないが特に絡んでくるわけでもないので、無視しながら待つこと数分。

 

 

「おお、君がモモンくんだね。待っていたよ。私はエ・ランテルの冒険者組合の組合長プルトン・アインザックという」

 

 

 アインザックは手を出し、握手の体制をとる。俺はその手を握りながら自己紹介する。

 

 

「よろしくお願いします。組合長。既にご存知のようですが、私はモモンと申します」

 

 

 アインザックは頷き、実はちょうど数時間前にガゼフの遣いがきて、俺のことを紹介し、来たらよろしく伝えてくれと頼まれていたらしい。あの男らしいな──と思っていると、アインザックは説明のため二階に来てくれと言い、その言葉に従う。

 

 

「どうぞかけてくれ。」

 

 

 椅子を手で案内され、言葉通りにする。それを見た後アインザックは説明を始める。

 

 

「じゃあまず初めに、君は戦士長殿の推薦もあり(シルバー)級冒険者として認めよう。戦士長殿の推薦なので、本当はもっと高いランクにしてやりたいが、まだ実績がないためこれで勘弁して欲しい。」

 

 

 アインザックは申し訳なさそうに言いながら、冒険者プレートを差し出す。──構いませんよ、と返してアインザックはホッとしたように笑い、説明を続ける。

 それは冒険者のルールや組合のルール、モンスターの討伐についてなどについてだった。。一通り説明を受けた後──期待しているぞ、と言われアインザックは部屋を出ていく。

 俺は渡されたプレートに目をやり、部屋で一人呟く。

 

 

「いやぁ、まさかランクも飛び級出来るなんて戦士長様々じゃないか!もしかしたら冒険者始めていきなり飛び級で始まるなんて、俺だけかもしれないぞ!」

 

 

 少しだけ浮かれながら、その後部屋を出ていく。

 一階に行き、周りをキョロキョロ見渡した後に依頼らしきものが貼ってある掲示板を見る──が何も読めん。別に今日依頼を受けるつもりはないから、読めないのは後で考えればいいだろう。

 今日のところはこのまま宿を探して、宿が取れたら街でも散策するか…って俺、金持ってなくね?ユグドラシル金貨は流通してないって村で確認したし、最悪換金するしかないか…?

 考えがまとまらないまま、とりあえず外に出る。

 

 街の景色を眺めながら考えていると、少し遠くから走ってこちらへ向かって来る──ある一人に目が留まる。

 一瞬、人違いか?ありえるのか?と考えたが見間違えるはずがない。毎日のように見てきて、友人が娘のようだと言っていた、やることが無くなったユグドラシルでああでもない、こうでもないと悩んで、一人でもそれなりに楽しむことができていたのは──あの子がいたからだ。

 

 それがなければ、ただ習慣としてログインしてナザリックの維持だけして新情報はないか確認するだけの作業となっていただろう。ギルメンのいないナザリックで、もう誰かを強くする為にクエストに行くことも、アイテムオークションで目ぼしいものを見つけることも、すでに完成されている装備の改造を考えることもなかった。

 それら全ての宝物のような思い出と時間をくれた子の──名前が口から出てくる。

 

 

「ナーベラル?」

 

 

 足が自然と吸い寄せられる。なぜここにいるのか、動くことができたのか、そういった疑問が浮かぶことなどない。もう会えないと思っていた、もう悩む事もできないと思っていた、友人からの頼み事はもうこの世にはないのだと、この世界に自分と同じようにいるかもしれない、それはただの甘い夢だと思って()

──これらは全てもう過去のことだ。今こうして現実に彼女がいる。俺はその事実に感動と興奮を隠せないでいる。

 

ポワーン

 

──しかし感情は一気に抑制される。不思議な感覚だ。先ほどの感動も興奮も喜びも、今は鳴りを潜めている。恐らくアンデッドの特性によるものだと推察するが、感情が抑制されたことにやや不快感を覚える──それでも足が止まることはない。

 

 

「モモンガ様!!」

 

 

 彼女は声を上げ、目の前で立ち止まる。同じようにして、こちらの足も止まる。彼女を近くで見て、やはりそうだ、と確信するが顔はいつも見ていたお淑やかそうで真面目にただ真っ直ぐのみを見つめていた顔とは違い、今は目を大きく開け、涙を堪えているのか、きゅっと唇を結び、両手はこれでもかというほど硬く握りしめられている。

 ナーベラル以外のNPCが周りにいないのを見ると、恐らく俺と同じように転移し、周りに知っている人もおらず、転移してからずっと一人で不安だったのだろう。その様子を見ると一度は抑制された感情が戻ってきて──思わず彼女を抱きしめる。

 

ポワーン

 

 またもや抑制され、そういえばまだ挨拶をしていなかったな──と思い至り声をかける。

 

 

 

「ナーベラル、ただいま。」

 

 

 その声に反応し彼女は応える。

 

 

「モ、モモンガ様ぁぁ」

 

 

 ナーベラルは泣いてしまったのか、涙ぐんだ声で俺を呼び、恐る恐る手を後ろに回してくる。

 ああ、ナーベラルは喋るとこんな声だったのか。明らかに場違いな感想を抱くが、その声はナーベラルが普段通りであれば聞くことがなかったであろう声だ。出会って早々泣かせてしまったことに後悔を覚える。どうすればよかったかはわからない。ただ泣かせたくはなかった。初めて見た外で行動しているナーベラルなのに、泣いているなんて──心の中でごめんと謝罪をする。

 

 そうしていると周りに人だかりが出来ていることに気付く。

 それはそうだ、まだ明るいし、大通りっぽい道だし。少し恥ずかしくなり、体を離そうとするがその前にナーベラルは俺を呼びながらさっきより強く抱きしめてくる。

 

 

「モモっ…ンガ様ぁ…」

 

 

 さっきよりも泣いており、彼女は嗚咽をもらす。もはや自分が恥ずかしいとかどうでもよくなり──どうにか彼女に泣き止んで欲しい泣いて欲しくない。その思いでいつものようにナーベラルの頭を撫でる。一瞬声が止むが、そのあとからは彼女の泣き声はどんどん大きくなり、泣きじゃくる子供のような声を上げはじめる。それを見ているとこちらも涙は出ないが泣きそうになる。

 

ポワーン

 

 ただもう俺にできることはないなと思い、彼女が落ち着くまでそのまま頭を撫でてやる。

 

 しばらくすると、ようやく少し落ち着きはじめたようで、ナーベラルの方から体を離し、

 

 

「──モモンガ様、おかえりなさいませ!」

 

 

 目にいっぱいの涙を浮かべながら、これ以上ない笑顔で帰りを歓迎してくれた。その顔はこの世に比肩しうるものはないと確信するほど、美しかった。

 

ポワーン




感動の再会ですね!良かった良かった!
アンデッド特性で感情が何度抑制されたところでその感情は何度でも蘇る。

てかこんなに早く再会させるならなんのために別々に転移させたんだか。
書き始める前に考えてた展開とまったく違う展開になってしまって驚きです。

今回の新情報として
二式炎雷さんがユグドラシルをプレイしていたのは5年ちょっとで、その後の7年程はモモンガさんがナーベラルの面倒を見ていました。予測ですけど、たっちさんの引退多分早いと思うんですよね。勝ち組だし。5年以上同じゲームできるのかな?って感じです。
しかも新しいゲームも台頭してきて、完全上位互換ゲームも多分出てるだろうから、ユグドラシル衰退期に入ったくらいで引退してるんじゃないのかなと予想してます。

ここら辺の設定について、もし原作で言及されていたらこの小説ではこのように変更されてると認識してください。

次回はこれのナーベラル視点です。
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