学マス世界に転生したV.Ⅱスネイルが月村手毬をプロデュースする話   作:雪浪夏鶏

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おいおい、また更新されたよ……ビジター
(意訳:思ったより筆が乗っちゃったので、不定期更新と言いましたがこのエピソードは連日で投稿します。以降はちゃんと不定期更新になる予定です。よろしくお願いします)


STEP2「N.I.A」
親密度11「決行(ALT)」


 

 

 アイドルがライブに向けて必死の訓練を行うトレーニングルーム──その中で、一人の青年が携帯ゲーム機を握りしめながら、アイドル活動とは何も関係ないロボットゲームに熱中していた。

 ヴェスパーⅠ、フロイト──かつて別世界で、そう呼ばれていた男。

 

「──このロシア名のプレイヤー、中々やるな」

 

 ゲーム機の画面を食い入るように見つめながら、フロイトは呟く。

 かつてのそれと比べれば、覚える事も単純な子供騙しに過ぎない──最初はそう甘く見積もっていたものの、いざ遊んでみれば思っていたより奥が深くて面白かった。

 対戦ゲームには、対戦ゲームなりの戦略性(セオリー)というものがある──それを一から学んでいく過程は、初心を思い出す事ができて中々どうして悪くないものだった。

 

 そして今、学ぶべき戦略性(セオリー)は全て頭の中に入っている。

 かつては戦闘で用いていた集中力を総動員させ、ゲームの対戦相手を追い詰めることに全霊を注ぐ。

 ガチャガチャと忙しなくボタンやらレバーやらを操作し、素人目から見ても凄まじいと分かる程の技量を惜しげなく披露し続ける。

 

「……今までこのゲームで戦った相手の中で、お前が一番強かった」

 

 結果、無事に勝利を収めてフロイトは対戦相手を讃えながら満面の笑みを浮かべるが──

 

「──何やっているの。もう、トレーニング開始の時間よ」

 

「あ……」

 

 いつのまにかトレーニングルームに訪れていたらしい、担当アイドルの賀陽燐羽に携帯ゲーム機を取り上げられてしまう。

 フロイトは少し物寂しそうな顔をしたが、どう考えても正しいのは彼女の方だ。

 フロイトは、諦めてゲーム機没収の罰を受け入れることにした。

 

「……そうだな、お前が正しい。この世界の俺はヴェスパーⅠではなく、ただのプロデューサー科の一生徒でしかない──しかし体は、闘争を求める。つい今までの熱を求めて、それとは似ても似つかない娯楽にかつての面影を感じてしまった」

 

「……よく分からないけど、以前はプロゲーマーか何かだったの?」

 

「まぁ……そんなところだな」

 

 賀陽燐羽の質問に対して、フロイトは適当な返事をする──ちゃんと説明したところで、理解してもらえるわけがない。

 元の世界とは、全く異なる世界へと連れてこられた事による絶望──ここには、彼のAC(生き甲斐)がなかった。

 AC(アーマード•コア)──各パーツや武装類の換装が極めて容易である人型戦闘兵器。

 それを自由気ままに動かしている時間こそが、フロイトにとっては何よりの至福だった。

 

 ありとあらゆる動き(パターン)を網羅し、純然たる殺し合いの可能性をただひたすらに追求し続ける──これまでずっとそうやって生きてきて、そしてこれからもそうやって生きていくのだろうと思っていた。

 死ぬ時もきっと、自分はACの操縦桿を握りしめていることだろう──だがしかし、現実とは読めないものだ。

 

 ACを動かすことしか脳がない自分が、突如としてACが存在しない世界に連れ去られてしまった──あれから毎日、寝ている間はACを動かしている夢を見てしまう。

 そして、これ以上あの黄金の日々を夢のままで終わらせるわけにはいかない。

 

(元の世界に戻るには、担当アイドルを一番星(プリマステラ)にまで導かなければならない──か)

 

 そのために、賀陽燐羽の力を借りる事にした。

 再び、ACが存在する元の世界へと戻るためにも──フロイトは、なんとしてでも勝たねばならなかった。

 

 

 ────────────

 

 

「………………状況は把握しました。フロイトの担当アイドルは賀陽燐羽──こうなれば、かえって好都合であると言えるでしょう」

 

 フリーズ状態から回復し、いつも通りの冷静さを装いながら言葉を絞り出すスネイル。

 ひとまず再起動したらしい彼の発言を聞いて、手毬は思わず聞き返した。

 

「かえって好都合って……どうして?」

 

「簡単な話です。まず、今後の日程の中で最も大きなものとして──N.I.Aへの出場があります。N.I.Aは他校のアイドル養成学校も参加し、ファンを奪い合う事に特化したイベント。H.I.F出場への布石としてこの上ない程有効であるためです」

 

 現状、初星学園内の活動で得られるファン層は全て取り入れることができたとスネイルは自負している。

 そのため、今度は学外へ──新しいファン層へとアプローチしていく必要があった。

 その手段として最も優れていると考えられるのが、N.I.Aと呼ばれるオーディションである。

 当然、多くの初星学園生がそのチャンスを狙っており──

 

「──そして、フロイトがN.I.Aに出場すると既に私は聞き及んでいます」

 

「……!じゃあ、燐羽も!」

 

「えぇ。彼の担当アイドルである賀陽燐羽が立ち塞がると考えて間違いないでしょう」

 

 ──その中には当然、スネイルたちがライバル視存在も含まれている。

 そしてスネイルの宿敵であるフロイトと、月村手毬の宿敵である賀陽燐羽が敵として同時に立ち塞がってくるこの状況を、スネイルは好機であると考えていた。

 

「かつての『SyngUp!』メンバー同士の戦いという筋書きは、話題としてとてもうってつけです──私の個人的な因縁を同時に潰す事もできる、という点でも好ましい。次のN.I.Aには全力で挑むことにしましょう」

 

 先ほどの冷静沈着を装っていた様子からは打って変わって、好戦的な笑みを浮かべるスネイル──フロイトとの直接対決の時を、心の底から楽しみにしているのだろう。

 それは、かつてのスネイルでは考えられない振る舞いであり──そして、月村手毬のプロデューサーとして何よりも相応しい振る舞いだった。

 

 

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