ポケモン不思議のダンジョン Drop of Mind 作:アヤ・ノア
どのシリーズにも属さない「オリジナル」のポケモン不思議のダンジョンとなっております。
主人公はアシマリの男の娘です。
この世界には、ポケモンしかいないんだよ――
Chapter 00
地球の異邦人 貴族令嬢と執事と出会う
-Verschiedene Leute-
ベシク街……それは、この世界のどこかにある、
それなりの規模とそれなりの自然がある街である。
そのベシク街の中心部から東にある郊外に建っている屋敷にて。
「異邦人ですって?」
「はい、お嬢様。非常に稀な確率ですが、この世界に別の世界の住人が現れる事があります」
ベシク街の貴族であるミミロップが、執事のメタグロスからある噂を聞いていた。
それは、異邦人……異なる世界から転移してきた住人である。
滅多にないためにミミロップは「あり得ないわ」と笑い飛ばしていたが、
執事の言葉で表情が変わる。
「……実は最近、このお屋敷の周りで異変が起きているそうです」
「え? マクベス、それは本当なの?」
「はい、お嬢様。例えば、本来はここに現れないはずのポケモンが現れたり、
突然、どこかに消えてしまったり……」
「まずいわ、早くそれを止めなきゃ!」
「お待ちください、お嬢様!」
ミミロップが行動に移そうとした時、誰かがドアを叩く音がした。
「……あれ、ノック? 誰が来たの?」
「私が見てきますね」
そう言ってマクベスが超能力でドアを開けると、そこにはアシマリがいた。
「あの、すみません……。ここは、どこですか?」
「ここは、私とお嬢様が住むお屋敷ですが……」
「もうマクベス、誰が来たの? あら? 貴方は……見た事がないわね」
ミミロップは、ここに来たアシマリを興味津々な様子で見つめていた。
「……キミは……?」
「そこの貴方、名を名乗りなさい」
「……ボクは……ハロルド……」
アシマリは、ハロルドと名乗った。
少女のような声をしているが、男性名なので♂だろう。
「ふーん。ハロルドっていうのね。私はコーディリア、この屋敷の主よ」
「その執事、マクベスでございます」
「え……。ポ、ポケモンが喋ってる!?」
コーディリアとマクベスが言葉を話している事に、ハロルドは驚き、慌てていた。
「何を慌てているの? そんなに私とマクベスが喋れるのが不思議なの?
っていうか、私に対して『キミ』はないでしょ?」
「じゃあ『あなた』?」
「コーディリアさん、と呼びなさい」
「はい……コーディリアさん……」
コーディリアの上から目線な態度に、ハロルドは少し嫌な表情になった。
マクベスはすぐにフォローに入る。
「お嬢様はあのような態度ですが、悪以外にはお優しい方ですので、
どうか不快にならぬようお願いいたします」
「分かったよ、マクベス」
「で、貴方はどこから来たの?」
「分からない……自分の名前以外は、何も思い出せない……。
気がつくと、自分の姿がアシマリになってて……」
「所謂記憶喪失というわけね。……でも貴方は、この世界にはいなかったはずだわ。
そこで私、ある可能性を察したの。この本を読みなさい」
そう言ってコーディリアは、古い本を取り出して開いた。
「異邦人。異なる世界からやってきた者。
バランスを崩さないため、ポケモンではない者は自身に相応しいポケモンの姿に変わる」
「コーディリアさん、もしかしてボクは異邦人なの?」
「……」
「お嬢様は貴方の発言からそう推測しました」
コーディリアは難しい顔をした。
どうやらハロルドは、別の世界からこの世界に来た異邦人らしい。
すると、コーディリアの表情が変わった。
「なら、どうして貴方が来たの?
ポケモンは失踪するし、異邦人は来るし、訳が分からないわ……!」
「コ、コーディリアさん!?」
コーディリアがパニックになりかけて慌てるハロルド。
マクベスは急いでコーディリアを宥める。
「落ち着いてください、お嬢様!」
マクベスは超能力を使い、無理矢理ながらもコーディリアの精神を安定させた。
「……ふう」
「うう、マクベス……何するのよ。ちょっと頭が痛いわ」
「お嬢様のためでございましたが……申し訳ありません」
マクベスは無理にコーディリアを落ち着かせた事を謝った。
ハロルドは何が起こったのか分からず、困惑する。
「な、なんでコーディリアさんがこうなったの?」
「それは、私から説明いたします」
そう言って、マクベスはハロルドに事情を話した。
「というわけで、お嬢様はこの異変を調査しようとしていたのです」
マクベスから事情を聞いたハロルドは、
コーディリアがパニックになりかけた理由をとりあえず納得した。
自分のような異邦人は、この世界では非常に稀な存在だ。
コーディリアが調べないのも無理はない、とハロルドは考えた。
「……でも、コーディリアさん」
「何よ」
「いきなり大きな事件を解決するんじゃなくて、小さな事件から解決しよう」
「私を信じないの? 私とマクベスは強いのよ?」
「いや、コーディリアさんとマクベスは最終進化形だから強いけど、ボクはまだレベルが低いよ。
だから、ボクにもできる依頼から始めた方がいいよ」
この二匹は最終進化形で能力が高いが、ハロルドはまだ未進化なので能力が低い。
そのため、ハロルドが行っても、足手まといになると彼は考えた。
「まったく、しょうがないわね。貴方の言う通りにするわ。
ただし、私に付き合っている、という事は忘れないでよね」
「うん、コーディリアさん」
「さあ行くわよ、ハロルド、マクベス。私達でこの世界を見ていきましょう!」
「かしこまりました、お嬢様」
(ボク一応、主人公なんだけどなぁ……)
こうして、ハロルド、コーディリア、マクベスは、この世界を知るための冒険の旅に出た。
彼らを待ち受けているのは、希望か、絶望か――
次回は初めての「仕事」となります。