ポケモン不思議のダンジョン Drop of Mind   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

コーディリアは毒から解放され、仲間達と共に新たな依頼に挑む。
村の近くに住み着いたベトベターの群れを退治するため、ハロルド達はヘドロ洞窟へ向かう。
洞窟内は悪臭に満ち、コーディリアはヘドロまみれになりながらも仲間の助けを受けて進む。
最奥で待ち受けるベトベターとベトベトンとの戦いが始まり、彼らは力を合わせて立ち向かう。
激闘の末、無事に依頼を達成し、報酬を手に入れた一行は探索者協会へ戻る。
彼らは温かい湯に浸かり、冒険の疲れを癒すのだった。


Chapter 13

 たすけてください

 

 Chapter 13

 名前なき依頼 首の宝珠は青く輝く

           -Unbekannte-

 

「はぁ……もうこんな依頼はこりごりだわ」

 ベトベターの依頼を受けたコーディリアは、嫌そうな表情で溜息をついた。

 身体はすっかり綺麗になっていたが、心はまだ綺麗ではなかった。

「お嬢様には辛かったでしょうね。何しろ、あんなに臭いところでしたから」

「次はもっと綺麗な場所で依頼を受けたいわ」

 コーディリアは愚痴を吐きながら、つながりオーブの依頼を探した。

 すると、ひらがなで書かれたこのような依頼を発見した。

 

 たすけてください

 

「……はあ?」

 依頼には、この文章しか書かれていなかったため、コーディリアは素っ頓狂な声を上げた。

「どうしたんだい?」

「一体、誰がこの依頼を出したのよ。胡散臭くて受ける気になれないわ」

 依頼人の姿もなく、詳細な依頼内容もなく。

 コーディリアはどうしても、この依頼を受けたがらないようだ。

「お嬢様、受けないのですか?」

「こういう細かい内容がない依頼、どうせ碌な依頼じゃないでしょ」

「確かにそうですね……。この依頼は、別の方に受けてもらいましょうか」

「待って!」

 コーディリアが頷こうとした時、ハロルドがコーディリアを止める。

「ハロルド、まさかこの依頼を受ける気なの?」

「まぁ……ね」

「やめなさいよ! 罠にかかったら知らないわよ!」

 ハロルドが依頼を受けようとしたと知ったコーディリアは、すぐに彼を止めに入る。

 しかし、ハロルドは首を横に振ってコーディリアの手を振り払った。

「罠だって分かったら、すぐに依頼を取り消せばいいよ。

 ボク、困っている人は放っておけないからね。それに、他の人がこんな依頼を受けると思う?」

「あ……!」

 ハロルドの一言でコーディリアは気付いた。

 こんな依頼を受ける人はまずいない、逆に言えばそれは他の探索者にも当てはまるという事だ。

 もしかすると、誰も依頼を受けないまま、依頼主は力尽きるかもしれない……。

「分かったわ。その依頼、受けます!」

 こうしてコーディリアは謎の依頼を受ける事にし、アーマルドに報告をした。

「よし、OK。

 一応、これが指定の地図だが……気を付けて進むんだぞ、何が起こるか分からないからな」

「はーい」

 こうして、ハロルド、コーディリア、マクベスは謎の依頼を受けるのであった。

 

「ここが、依頼人がいる場所?」

「私の屋敷より小さいし、ぼろっちいわね」

 三匹は、ボロボロの建物の前に立っていた。

 こんなところに行かせる依頼人は、やはり常人ではないようだ。

「……一体、誰がここにいるんだろうね」

「さあ……」

「実際に確かめてみるしかなさそうね。行くわよ、貴方達」

「かしこまりました、お嬢様」

 三匹は慎重な足並みで、ボロボロの建物の中に入っていった。

 

「誰もいない……?」

 建物の中には、ポケモンは誰一匹いなかった。

 あちこちは煤だらけで、蜘蛛の巣もたくさんある。

「何かあるのかしら……きゃあ!」

 コーディリアが一歩歩くと、突然、天井からガラスの破片が落ちてきた。

 何年も使われていないだろう建物、その天井が崩れないわけがなく、

 コーディリアは反応できずガラスが刺さり傷を負った。

「いたたたた……もうここはボロボロになっていたのね」

「ちょっと休んでいかない? コーディリアさん」

「休むわけないでしょ、ちょっとした傷だし、応急処置で十分でしょ」

 そう言うコーディリアは、少しだけではあるが意地を張っていた。

 ハロルドとマクベスは、彼女を心配するような眼で見た。

 マクベスはとりあえず、コーディリアに応急処置をした後、再び一行の前に立って歩いた。

 

「……意外に建物は小さかったね」

「ええ」

 建物は部屋が狭かったようで、三匹はすぐに奥に辿り着いた。

 その静かな部屋の中に、白と赤を基調とした体色の、一匹のポケモンが倒れていた。

 ポケモンの首には、青く輝く不思議な珠がついたペンダントがかかっている。

「これは、伝説のポケモン……」

「ラティアス……!」

 そう、この部屋には伝説のポケモン、ラティアスが倒れていたのだ。

「キミが……依頼主なんだね?」

「……」

 ハロルドがラティアスに声をかけるが、彼女はピクリとも動かなかった。

「待ってて、すぐにボクが助けてあげるから」

 ハロルドはそう言って、倒れたラティアスを運ぼうとすると、

 むくりとラティアスが起き上がった。

 そして、ハロルドにいきなりミストボールを放つ。

「うわっ!?」

「……敵ですか?」

「違うよ! ボクは敵じゃないよ!」

 ハロルドはラティアスに呼びかけるが、ラティアスは攻撃をやめない。

 どうやら、彼女はハロルド達を敵だと思い込んでいるようだ。

「とりあえず、殴って解決するしかなさそうね。ちょっと乱暴だけど、いくわよ! マクベス!」

「はい、お嬢様!」

 ハロルド、コーディリア、マクベスは、ラティアスを正気に戻すため、彼女との戦いに臨んだ。

 

「……」

「やっ!」

 ラティアスがでんじはを放つ前に、コーディリアはねこだましでラティアスを怯ませる。

 マクベスはその隙に、コメットパンチでラティアスに大ダメージを与える。

う……あぁぁぁぁぁぁぁ!

「危ない、お嬢様!」

 ラティアスは強い念力を使ってコーディリアを操ろうとするが、

 マクベスが庇い、ダメージを受けなかった。

「ありがとう、マクベス!」

「どういたしまして」

「これで攻撃に専念できるわ、とびひざげり!」

きゃあああああああ!

 コーディリアは回転した後、膝を突き出して思いっきりラティアスに突っ込んだ。

 攻撃は命中し、ラティアスは天井に吹っ飛び思い切り叩きつけられ、

 ガラスがボロボロと落ちていく。

 落ちたガラスは次々とラティアスに刺さり、彼女は痛みから叫び声を上げた。

「う……なんて凄い声。でも、ボク達は負けない!」

「近づかないで!」

「うわぁっ! くぅ……」

 ラティアスはハロルド達にミストボールを乱射し、まともに食らったハロルドは倒れてしまう。

 さらに、ラティアスはじこさいせいで自身の体力を回復し、

 首にかかった珠の力を解放して能力を高める。

 ついでに、身体に刺さっていたガラスの破片も全て吹き飛んだ。

「まったく……ハロルドに何をするのよ! 食らいなさい!」

 コーディリアはハロルドが倒れた事を知ると、すぐにとびひざげりでラティアスを蹴り飛ばす。

「うぅ……正気に戻ってよ、ラティアス!」

 ハロルドはふらつきながらも立ち上がり、ラティアスをチャームボイスで攻撃する。

 攻撃を食らい、ガラスの破片のせいで瀕死になったラティアスは最早戦う気力を持たなかった。

「これで終わりです! コメットパンチ!!」

「い……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 そして、マクベスは瀕死のラティアスにコメットパンチをぶちかまし、彼女を撃破した。

 

「……う……」

「早く、彼女をお嬢様の屋敷に運びましょう」

 マクベスはすぐにラティアスを抱えて建物を抜け、急いでコーディリアの屋敷に戻った。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

「早く、彼女を休ませなきゃ」

「マクベス、使用人の部屋はこっちよ!」

「かしこまりました、お嬢様!」

 マクベスは背負っているラティアスを使用人の部屋のベッドに寝かせる。

 ラティアスは意識を失っているが、命に別状はないようだ。

「このまま休ませればすぐに良くなるよ」

「念のために、これを食べさせましょう」

 そう言ってマクベスが取り出したのはベリーミルク、よつばのクッキー、ミニドーナツだった。

「……それは?」

「申し訳ありません、お嬢様の退院祝いです。渡すタイミングを逃してしまいまして……」

「まぁ、渡してくれてありがとう。彼女に渡すべきなのは、こっちよ」

 コーディリアはお菓子を受け取った後、オレンのみをマクベスに渡した。

「ラティアスが起きてから話を聞きましょ。後、このお菓子は後で食べるからね。

 ベトベタフードも、後でじくうのオーブンに入れておくわ」

「……かしこまりました」

 マクベスは一度、使用人の部屋から出る事にした。

 コーディリアはハロルドの鞄からベトベタフードを回収すると、

 じくうのオーブンがある場所に向かった。

 

「彼女は一体、誰なんだろう……。あの首にかかった宝珠……綺麗だな……」

 こうして、ハロルド達はラティアスを救出した。

 それがやがて恐ろしい出来事の前触れとなる事も、

 この時は誰一人として知る由もなかったのである。




次回はヒロインの秘密を探るのでかなり短くなっています。
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