ポケモン不思議のダンジョン Drop of Mind 作:アヤ・ノア
ラティアスのウララは目を覚まし、自分がどこにいるのか戸惑う。
ウララの首には「こころのしずく」という宝珠があり、願いを叶える力を秘めているという。
ハロルド達はウララに探索者になる事を提案し、彼女も探索者として頑張る決意をする。
しかし、ハロルドの言葉は後に思わぬ展開を招くのだった。
あたし、戦う事もできるんです。
Chapter 15
清らかな竜聖女 探索者の道を進む
-Reinheit-
翌日。
ウララを仲間にしたハロルド達は、早速、彼女を探索者にするために探索者協会に向かった。
「ここが、探索者協会だよ」
「わぁ……! あっ」
探索者協会の会長と副会長、アーマルドとユレイドルがウララを見ると、
彼女は緊張したように縮こまる。
「おや、随分可愛いじゃ……って」
「伝説のポケモンですか!?」
アーマルドとユレイドルは、ラティアスが探索者協会に来た事に驚きを隠せなかった。
伝説のポケモンは彼らも見た事が無かったようだ。
「あ、あたし、ラティアスの、ウ、ウララです。た、探索者に、なりに、来ました」
ラティアスは緊張しながらアーマルドに話す。
アーマルドは頷いた後、ウララに探索者になるための方法を話す。
「探索者になるためには、
このダンジョンの一番奥にあるゴーカックオーブを取りに行けばいいんだ」
「あの、一人で行くんですか? ちょっと不安です」
「なーに、安心しろ。怖いポケモンはいない。大船に乗ったつもりで、気楽に行けよ!」
「……はい、分かりました!」
ウララは満面の笑みを浮かべてアーマルドとユレイドルに頷いた。
「あたし、戦う事もできるんです。行ってきます!」
「待ってくれ」
そう言って、ウララが試験会場に行こうとすると、アーマルドが止めに入った。
「え、なんですか?」
「……この地図を見てくれ。試験会場の場所が書いてあるからな」
「あ、忘れちゃいました」
「ねえウララ、一人で大丈夫なの?」
心配になったハロルドは、念のため、一人で行こうとするウララに声をかける。
すると、ウララは柔らかく微笑んで「大丈夫ですよ」とハロルドに言った。
それなら安心だね、とハロルドはウララを待つ事にするのだった。
何はともあれ、ウララは地図を頼りに、無事、探索者の試験会場に辿り着いた。
「ここって、洞窟ですよね。なんか、怖……ううん、出てきませんよね。
アーマルドさんが言ってましたよね」
ウララは首を振って、洞窟の中を探索していった。
周りに明かりが少しだけあるため、完全に視界が閉ざされているわけではないが、
それでも、ウララは敵にぶつからないように浮遊した。
「なるべく敵は避けて進みましょう。いくら戦えるとはいえ無駄に消耗はしたくありませんから」
ウララが浮遊していると、何かの影が見えた。
何だろうとウララが顔を上げてみると、それはこうもりポケモンのズバットだった。
「きゃあ!」
そのズバットは敵意を持っている顔をしており、逃げようにも逃げられる雰囲気ではない。
ウララはまず、羽毛を固めて塊を作り、ズバットに向けてそれを飛ばす。
ズバットの弱点のタイプであるミストボールだ。
その攻撃を受けたズバットは逃げ出した。
「よし、大丈夫ね……ってまた来た!?」
ウララが一匹目のズバットを追い払うと、今度は二匹のズバットがウララに襲い掛かる。
「きゃぁぁぁっ! 離れてください!」
ズバットは鳴き声を上げながらウララを驚かしにかかる。
ゴーストタイプの技に弱いウララは、急いでズバットの攻撃範囲から逃れる。
そして、精神を集中し、強い念力をズバットの群れに放って大ダメージを与え、
ズバットの群れを全滅させた。
「ふう、危なかった。いくら怖い敵がいないといっても、ズバットは襲ってきましたね。
なるべく、戦闘は避けなきゃ」
敵を撃破したウララは、ほっと胸に手を押さえる。
空を飛んでいるため地上の罠は回避できるが、同じく空を飛ぶ敵を回避する必要はありそうだ。
ウララは頷いた後、ゴーカックオーブを取るべく洞窟の奥へ飛んでいった。
「敵には気を付けなきゃ」
ウララは、遠くにいる敵の動きを予測しながら、道具を取りつつ慎重に洞窟の中を進む。
地下へ行くごとに明かりの数も少なくなっており、ウララの周りが見えづらくなってきていた。
「ゴーカックオーブはどこにあるんでしょうか……」
ふらふらと辺りを見渡すと、突然、強い重力に襲われ、ウララは地面に落ちてしまう。
空を飛んでいても容赦なく発動する、じゅうりょくトラップだ。
そのせいでウララは下にあった泥沼に落ち、身体が汚れて素早さが下がってしまった。
「うぅ、身体が重くなってしまいました。全然、力が出ません……」
ウララの身体は泥で汚れていて、思うように上手く動けない。
彼女は何とか再び浮遊するが、重りになっている泥はなかなか落ちなかった。
「はあ、早く帰らないと……」
ウララが溜息をつきながら洞窟の奥に進むと、ズバットとゴルバットが襲い掛かってきた。
「きゃっ! ま、またズバットとゴルバット!?
あたしは弱点を突けるからいいんですけど、ちょっと、怖いです。でも、頑張ります!」
ズバットの進化形、ゴルバット。
それに少し怯えたウララだったが、倒して先に進むため、彼らに戦いを挑んだ。
「ミストボール!」
ウララは羽毛を光の塊に変えてズバットに飛ばす。
ズバットは悲鳴を上げながらかみつくでウララに反撃しようとする。
「危ないっ!」
ウララはあくタイプの技に弱いので、何とか攻撃をかわすために岩を盾にする。
そこからこっそり顔を出した後、サイコキネシスでズバットとゴルバットを攻撃する。
ゴルバットは空を飛んでウララの背後に回り、彼女にかみついて攻撃する。
「きゃあああああああ!」
弱点の技を受けてしまい、ウララは悶絶した。
ウララは急いで、拾ったばかりのオレンのみを食べて体力を回復する。
「ふぅ。負けませんよ! ミストボール!」
ウララは再びミストボールを放ち、ズバットに大ダメージを与える。
さらに、拾ったゴローンのいしをゴルバットに投げつけた後、急いでその場を後にした。
後は、なるべく敵に遭遇しないよう、敵がいる場所を予測してそこを避けながら空を飛んだ。
そして3分後、ウララは地下三階に辿り着いた。
そこには、一際大きな宝箱があった。
「この中に、オーブがあるんでしょうか?」
ウララがそっと中を開けてみると、中にはキラキラと輝く水晶玉が入っていた。
そう、試験合格の証、ゴーカックオーブである。
「やりましたぁ! あたし、探索者試験に合格しました!」
試験に合格し、喜びの声を上げるウララ。
今の彼女は、泥で汚れている事など一切気にしなかった。
そして、ウララの身体は掻き消え、探索者協会に帰還する――
「ただいま戻りました」
ウララは、試験会場の洞窟から泥だらけで戻ってきた。
彼女の手には、試験合格の証であるゴーカックオーブが少し泥で汚れていたが
しっかりと握られていた。
「おめでとう。でも、結構身体が汚れてるな、一体何があったんだ?」
「……泥沼にはまってしまいまして……」
ウララがアーマルドとユレイドルに事情を話すと、
アーマルドはタオルを持ってきてウララに渡した。
「じゃ、これで身体を拭いてくれ」
「汚いのはランクが下がりますからね」
「分かりました。じゃあ、これを渡します」
そう言って、ウララはアーマルドにゴーカックオーブを渡した。
もちろん、身体の泥を全て落とした後、ゴーカックオーブの泥も落とした後、である。
「おめでとう、ウララ!」
「晴れて探索者になったわね!」
「合格おめでとうございます」
ハロルド、コーディリア、マクベスは、探索者試験に合格したウララを笑顔で迎え入れた。
ウララはそれに返すように満面の笑みを浮かべる。
「ありがとうございます。これで、皆さんと一緒に、ダンジョンを探索できますね」
「そうね。特殊担当は今までハロルドしかいなかったから、バランスが良くなるわ」
「あたし、頑張りますからね。皆さん、よろしくお願いしますね」
どこまでも健気なウララに対し、ハロルドは柔らかく微笑んだ。
こうして、四人目の探索者が彼らの仲間になるのだった。
次回は「あいつ」がまた登場します。