ポケモン不思議のダンジョン Drop of Mind 作:アヤ・ノア
ウララは探索者試験に合格し、仲間と共に冒険を始める。
依頼を受けたハロルド達はアメモースを襲うお尋ね者ハガネールを追い払おうとする。
しかし、アメモースは重傷を負っていた。
お尋ね者の狙いは子供であり、ウララ達はその真相を探る。
だが、ハロルド達は罠にかかり眠らされ、仲間がさらわれてしまった。
みんなは、ボクが助ける!
Chapter 17
お尋ね者との再会 大人達を守り切れ
-Schutzen-
「み……みんなどこーーーーーーー!?」
ハロルドが目を覚ますと、コーディリアもマクベスもウララも、
彼の目の前からいなくなっていた。
「ど、どうしてこんな事に……。みんな、どこに行っちゃったの?
こういう時こそ落ち着いて……」
ハロルドは深呼吸した後、落ち着いて状況を思い出す。
「そうだ。すいみんのワナにかかって、みんな眠っちゃって……。
どこに行ったんだろう……。探さなきゃ」
そう言って、ハロルドは一人で階段を探しに向かった。
今は共に戦ってくれる仲間がいないため、一人で複数を相手にしなければならない。
ニョロモやオタマロ、ハスボーなどのみずタイプのポケモンを拾った枝で追い払いつつ、
階段を探していく。
「また罠にかかったら大変だ、慎重に進まないと」
ハロルドは一歩一歩、慎重に罠を確認しながら歩く。
再び罠にかかり、仲間がいなくなるというピンチに陥らないように。
「気を付けなきゃ、ね。みんなを助けなきゃ、ね。
……でも、やっぱり一人だと、難しくなるなぁ」
ダンジョンを探索中、ハロルドは改めて仲間の大切さを実感する。
足りない部分を補ったり長所を伸ばしたりする仲間がいないため攻略が難しくなっているのだ。
それでも、ハロルドは諦めないでダンジョンを攻略する。
いなくなってしまった仲間を探すために。
「つ、着いたぁ……!」
こうしてハロルドは罠や敵を掻い潜り、ダンジョンの最奥に辿り着いた。
そこには、檻に閉じ込められているコーディリア、マクベス、ウララと、
彼らを見張っているハガネールの姿があった。
「キミが、ボクの仲間達を捕まえたんだね。どうして、そんな事をしたの?」
「……」
ハガネールはハロルドの言葉に反応しない。
しばらく二匹は睨み合っていたが、やがてハガネールが口を開いた。
「全ての大人を、終わらせるためだ」
「大人を終わらせる? だから、ボクは見逃したんだ……じゃないよ。そんなの許したくないよ」
「許したくない? そうだろう。俺はお尋ね者だからな」
どうやら、このハガネールはお尋ね者らしい。
ハロルドが少し首を捻ると、ハガネールは静かにこう言った。
「俺は『非情なる鍵』の一員、ジオだ」
「え……!?」
まさか、こんなところでジオと再会するなんて、とハロルドは驚愕する。
しかし、ジオは冷静な態度を崩さない。
「俺はルキウス様の望みを叶えるため、全ての世界から大人を排除する。
まずは手始めに、こいつらから潰す」
「そんなのって……!」
大人がいない子供だけの世界。
それは、子供を導くものがいない最悪の世界。
そう考えたハロルドはすぐさま構え、ジオを阻止しようとした。
「ボクはキミを止める! 大人がいない世界にはさせないよ! みんなは、ボクが助ける!」
「大人のために戦うのか……。いいだろう。かかってくるがいい!」
こうして、ハロルドとジオの一騎討ちが始まった。
「アイアンテール」
ジオはアイアンテールでハロルドを薙ぎ払う。
ハロルドは遠くからみずでっぽうを撃ち、ジオの弱点を突く。
ジオはロックブラストで反撃するが、ハロルドは水中に潜ってジオの攻撃をかわし、
水中から威力の上がったみずでっぽうを放つ。
「うぁぁぁぁぁぁぁ!」
ハロルドが放った水が池の水と混ざり、
威力が上がった水はジオに大ダメージを与え、吹き飛ばした。
吹き飛ばされたジオはオボンのみを使って体力を回復した後、
アイアンテールでハロルドを攻撃する。
「うぐぅっ!」
みずタイプのハロルドにはがねタイプの技は効果が今一つだったが追加効果で防御力が下がる。
ジオはそれを見逃さず、地震を起こして大ダメージを与える。
「うがぁぁぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁぁぁ!」
「ぬぅぅぅぅぅぅ!」
地震はウララ以外の檻に閉じ込められているポケモンにも影響が及んだ。
特に、じめんタイプに弱いマクベスはより大きなダメージを受けてしまう。
「みんなっ!」
ジオの攻撃を食らった仲間を見たハロルドは叫ぶがジオは一切動じずに攻撃を続ける。
「他者の心配をする必要はない」
「そんな事はない! ボクの仲間だもん!」
何としてでも、仲間を助けたい。
そう決めたハロルドは、みずでっぽうを弾幕のように連射する。
ジオはのろいで自分の素早さを下げて身体能力を高め、ロックブラストを撃つ。
海驢と鉄蛇の、壮絶な弾幕戦が繰り広げられる。
「負けないんだから!」
「それは俺も同じだ、消えろ」
「できればどっちも消えてほしくない。でも、消えないのは、ボクだ!」
「ぐぉぉぉぉぉぉ!」
そう言ってアシマリはみずでっぽうの出力を高め、ジオを大きく吹き飛ばした。
壁に叩きつけられたジオは気絶し、鍵を落とす。
その隙に、ハロルドはジオから鍵を取り、コーディリア達が捕まっている檻の鍵を開けた。
「ハロルド! まさか、私達がこんなところに捕まっていたなんてね……」
「話は後だよ、ジオが起きちゃうから急いで檻から脱出して」
ハロルドは小声でコーディリア達に話す。
コーディリアは「分かったわ」と言い、マクベスとウララに声をかけて二匹を檻から出した。
「うぅ、怖かったです……」
ウララは怖がってハロルドに抱き着いた。
狭い場所に閉じ込められていたため、恐怖してしまったようだ。
しかし、これももう少しで終わるとハロルドは安心させる。
「……さあ、とりあえず脱出するわよ。マクベス、いいわね?」
「はい。依頼もありますからね」
「よし、戻ろう!」
そう言って、ハロルド、コーディリア、マクベス、ウララはこのダンジョンを脱出した。
……気が付くと、檻の中は空っぽになっていた。
起き上がったジオは、それが判明すると悔しそうに歯を食いしばる。
「くそっ……! せっかく、大人を潰したかったのに……。
あいつが……あいつさえ邪魔をしなければ……!」
ジオはあなぬけのたまを使い、ダンジョンを脱出した。
目的を達成できなかった、悔しさを胸に。
こうして、一行は探索者協会に戻ってきた。
コーディリア達の身体にはいくつかの傷があり、ラッキー達が応急処置をして治った。
「本当にお疲れ様です。よく、頑張りましたね」
「お尋ね者はボク達が倒しました。もう、アメモースが襲われる事はないでしょう」
ハロルドが依頼主のアメモースにお辞儀をして、お尋ね者が来る事はないと彼を安心させた。
アメモースは「ありがとうございます」と言い、ハロルドに報酬のさくれつのえだを渡す。
「これは、さくれつのえだ?」
「はい、振った場所とその周囲を爆発させる枝です。敵に襲われた時の自衛手段として有効です」
「どういたしまして、アメモース。それじゃ、ボクはこれで」
「本当にありがとうございました」
アメモースが去っていった後、ハロルドはコーディリア達に謝る。
「コーディリアさん、マクベスさん、ウララさん、ごめんなさい。
ボクがちゃんと罠に気づいていれば、こんな事にはなりませんでした」
ハロルドは不注意から危機を招いた事を反省する。
しかし、コーディリア達は晴れやかな表情をしてハロルドを許した。
「大丈夫よ、私は貴方を許すわ。悪いのはお尋ね者だもの」
「ハロルドは目的のために一生懸命に頑張りました。
アメモースを攻撃したお尋ね者を倒すのも、お尋ね者に捕まった私達を助けるのも」
「終わり良ければ総て良しです。そして、これもまた教訓になりますよ」
全ては失敗から学ぶ。
失敗しなければ、何も成長しない。
ある意味、失敗というのは成功の母なのだ。
「……そうか、教訓、か。ヒトはそうやって、成長するんだな。
そして、ジオ……キミは、どうして大人を憎んでいるんだい?
子供のためとは言っても……それは本当に、子供のためになるのかい?
だから、ボクは知りたいんだ。キミがどうして、大人を排除しようとするのかを」
元人間のハロルドは胸に手を置き、この冒険の経験をそっと胸に刻んだ。
お尋ね者との再会、一時的な単独行動。
あまり経験していない事が重なったからこそ、ハロルドの記憶に強く残る冒険となった。
「さあ、次はどんな冒険が待っているんだろう」
次回は休息回です。