ポケモン不思議のダンジョン Drop of Mind 作:アヤ・ノア
ハロルドは仲間をさらわれたため、一人でダンジョンを探索する事になった。
彼は罠に気を付けながら進み、最奥でお尋ね者ジオと再会する。
ジオは大人を排除する計画を持ち、ハロルドはそれを阻止しようと戦う。
仲間を助けるため、ハロルドは全力でジオに立ち向かう。
激しい戦闘の末、ハロルドは仲間を救い出し、ダンジョンを脱出する。
この冒険を通じて、彼は仲間の大切さと成長の意味を学ぶのだった。
今、メイドがお茶を淹れてくるわ。
Chapter 18
しばしの休息 令嬢はお茶会を開く
-Teeparty-
アメモースだけが狙われる事件で、ハロルドはお尋ね者のジオと再会する。
仲間が攫われるというピンチに陥りながらも無事にジオを退けたハロルドは、
コーディリアの屋敷で休んでいた。
「とにかく、みんなが無事でよかったよ。あのままだったら、みんな全滅してたよ」
「大人を狙うなんてどういう神経よ、まったく」
コーディリアは二回も命の危機に晒された事に腹が立っていた。
紅茶に毒を盛られたり、すいみんのワナで眠らされたり……。
彼女にとっては、悪い意味で心に残る思い出だったようだ。
「はぁ……疲れちゃったわ。今日は、依頼を受けるのはやめましょう」
「そ、そうだね」
「かしこまりました」
そんなわけで、今日はハロルド達はコーディリアの屋敷で休む事にした。
「さて、今日は探索者同士の交流を深めるために、ちょっとお茶会をしようと思うわ」
「はい、とても楽しみですね!」
ウララはコーディリアがお茶会を開くと聞いて、満面の笑みを浮かべる。
どうやら、お茶会を誰よりも楽しみにしているようだ。
「あ、でもお茶は誰が出すんでしょうか?」
「ウララ、ちょっと待ってて。今、メイドがお茶を淹れてくるわ」
そう言ってコーディリアは使用人の部屋に行った。
「お待たせ致しました、紅茶とお菓子でございます」
「お待たせ! 彼女が私のメイドの一人よ」
数分後、タブンネのメイドが紅茶とお菓子を持ってハロルド達のところにやってきた。
どうやら、このメイドはコーディリアに仕えるメイドの一人のようだ。
「紅茶に毒は入ってないの?」
「安心してください。私が毒見をした結果、毒はありませんでした」
あの事件以来、コーディリアはメイドに紅茶の毒見をするように頼んだ。
あの時の悲劇が、再び起こらないように。
「キミがそう言うなら、安心だね」
「どういたしまして」
メイドは人数分の紅茶とお菓子を置いた後、使用人の部屋に去っていった。
「わぁ、いい香り!」
ハロルドはメイドが持ってきた紅茶の香りを嗅いで良い気分になる。
「この香りは、チーゴのみの葉っぱを使ったハーブティーですね」
「そうよ、よく分かったわね」
「あ、このチョコレート、あたしの口に合います」
マクベスはコーディリアとの付き合いが長いため、紅茶の香りに使ったものが何だか分かる。
ウララも楽しみながらお菓子を食べていた。
先ほどまでが嘘のような、他愛ない時間。
この時間は、ハロルド達にとって安らぎの時間となるだろう――
(さて、誰に話を聞いてみようか?)
ハロルドはお茶会で、三匹と一緒に話をしようとしている。
コーディリアはジャムを挟んだ四角いクッキーを食べていて、
ハロルドも気になって彼女が食べているクッキーを口にする。
「「美味しい!」」
ハロルドとコーディリアは同時に叫んだ。
「このクッキー、誰が作ったの?」
「それは、私です」
「やっぱりマクベスなのね」
ハロルドとコーディリアが食べたクッキーは、マクベスが作ったものである。
マクベスは手先が器用で、使用人の中でも特に料理が上手いのだ。
「気に入って貰えたのなら良かったです。中身はモモンのみとノメルのみのジャムですよ」
「とても甘くて美味しいわね! そうだ、私にも作れる?」
「もちろんですよ、ただ生地を作るのに少し力が要りますよ。今度、教えてあげましょうか?」
「本当? ありがとう!」
コーディリアとマクベスはお菓子作りの関係でまたもや意気投合するのだった。
「マクベス」
ハロルドは、コーディリアの執事のマクベスに話しかけた。
「私に何か御用でもありますか?」
「この先って、どうなってるんだろう……」
彼が話したのは、これからの事だ。
お尋ね者と出会ったり、罠を突破したり、レアアイテムを手に入れたり……。
それを想定したマクベスは、神妙な面持ちでこう言った。
「今までから考えますと、この先はもっと強力な敵や罠があるかもしれませんね」
「……そうか」
この先の依頼で訪れるダンジョンでは、今まで以上に手ごわい敵などが出てくる。
もしかすると、ダンジョンの中で全滅してしまうかもしれない。
それでも、ハロルドは希望を信じてマクベスにこう言った。
「でも、大丈夫だよ。皆で一緒に行けば、恐いものなんてないよ」
「……ええ、そうですね。お嬢様はできる方だと信じております。もちろん、他の皆さんもです」
「そっか、じゃあ安心だね」
そう言って、ハロルドは紅茶をじっくりと味わって飲んだ。
コーディリアやウララの♀組は、特にクッキーを喜んで食べていた。
「ウララ」
次に、ハロルドはクッキーを食べているウララに話しかけた。
「どうしたんですか、ハロルドさん?」
「キミのこころのしずくって、綺麗だね」
ハロルドはウララが身に着けているこころのしずくを褒める。
すると、ウララの頬が少し赤くなった。
「あ、嬉しいです。きっと兄様も喜ぶと思いますよ」
そういえば、こころのしずくはウララの兄の形見だったな……とハロルドは思い出す。
「あたしの面倒を見てくれたのは兄様でした。兄様はあたしの唯一の家族でした。
でもある時、兄様は蒸発してしまいました。何も言わないで、しかも突然に。
でも、このこころのしずくを渡してくれたから、兄様はまだ生きている。
あたしはそう、信じているんです」
ウララは兄が生きている事をずっと信じている。
突然に蒸発してしまっても、兄の事が心配でたまらない、俗に言う「ブラコン」な性格なのだ。
「早くお兄さんに会えるといいね」
「はい……! あたし、頑張りますからね」
「コーディリアさん」
最後に、ハロルドは紅茶を飲んでいるコーディリアに話しかけた。
「何? ハロルド」
「これからもボクを守ってくれないかな」
「あのねえ、貴方一応♂でしょ? ♀に守ってもらうなんて……」
コーディリアがぼやくと、ハロルドは首を横に振った。
「ボクはウララを守りたいと思ったんだよ。マクベスはコーディリアさんを守ってる。
でも、コーディリアさんに守るものはある?」
「この屋敷の全てよ。それ以外に何かあって?」
コーディリアにとっては、屋敷こそが全てだ。
それ以外に守るものは、何も考えていない。
逆に言えば、それだけ彼女が貴族にしては無欲だという証だ。
「ほら、例えば、町のみんなとか……」
「そんなのは二の次。なんだかんだでみんな自分が大事でしょ?
私もそんなポケモンの一匹だから」
コーディリアはいつも通り、強気な口調でそう言った。
しかし、その目はどこか悲しげだった。
今のハロルドは自分が人間である記憶は無いが、
その辺は人間もポケモンも同じなんだな、とハロルドは深く沁みた。
「そろそろ、お開きにしようか?」
「そうですね」
話している途中で、用意した紅茶やお菓子はなくなった。
特に話す話題も残っていないため、お茶会はもうお開きの時間となった。
「それじゃあ、ここにある食器を片付けて……今日のお茶会はそれまで!」
「皆様、本当にありがとうございました!」
この平和で穏やかな日常は、探索者にとっては癒しの時となるだろう。
これが2月最後のハーメルンの小説となります。