ポケモン不思議のダンジョン Drop of Mind 作:アヤ・ノア
イーブイが盗賊に追われていると知ったハロルド達は、彼女を助けるためヘドロの洞窟へ向かう。
洞窟内ではどくタイプのポケモンが待ち受け、ハロルド達は協力して敵を倒していく。
ハロルド達は巨大なベトベトンに捕まったイーブイを発見し、彼女を救うために全力で戦う。
ベトベトンを倒してイーブイを解放すると、イーブイは感謝して、進化についての夢を語る。
ハロルド達は彼女の未来を応援し、笑顔で別れを告げるのだった。
さあ、そのこころのしずくをよこしなさい。
Chapter 20
狙われたこころのしずく 非情なる鍵との再会
-Bestrafung-
ハロルドよ、忘れてはいないだろうな。
俺は、お前の――だ。
大人に生きる価値はない。
生きていいのは子供と若者だけだ。
分かっているだろうな?
「う、うぅ~ん……」
「ハロルド、起きなさいよ」
「うぅぅぅ~……」
ハロルドは、夢の中で奇妙な声が聞こえる事で、かなりうなされていた。
コーディリアがハロルドの身体を揺するが、ハロルドはなかなか起きない。
邪魔者め。
計画を否定するな。
未来をこれ以上奪うな。
邪魔をするならば。
貴様も、消す。
「邪魔……者……だって……」
「私が邪魔者ですって? 何を言ってるのよ」
コーディリアがハロルドの寝言に愚痴を吐く。
だが、ハロルドはまだ起きる気配を見せない。
弱い者しか襲わない、卑怯なニンゲン。
「心」が事件を起こすのならば。
「心」なんて無くなればいい。
全てに、罰を。
嘆きの館で下す。
「そろそろ……起きなさいよ!!」
「うわぁっ!」
コーディリアがハロルドを蹴とばした事で、ハロルドはようやく目を覚ました。
ソファから転げ落ちたハロルドは身体を痛める。
「なんで、いつまで寝ていたのよ」
「夢の中でボクを呼ぶ声が聞こえたからだよ。
ボクの事を知ってるみたいな声で、生きていいのは子供と若者だけとか、
計画を否定するなとか、『心』が事件を起こすとか」
ハロルドは自分が見た夢をコーディリアに話した。
夢の内容を隠し通すのはコーディリアにとって悪いと思ったため、
またその声も自分に気付いていないだろうと思ったからだ。
すると、コーディリアは何かを思い出したようにハロルドに話した。
「もしかしたら、大人を襲撃した犯人と同一人物じゃないかって思うわ」
「どうして分かるの?」
「アメモースを襲った犯人も、アメタマには手を出さなかったみたいだし。
子供を守りたいお尋ね者は珍しいから、そう、推理したのよ」
「頭いいね、コーディリアさん」
コーディリアは夢の声の正体を推理した。
普通、お尋ね者は弱者しか襲わないため、まず彼らで間違いない……と。
「それで、そのお尋ね者はどこにいるのかしら?」
「夢の中では『嘆きの館』って言ってたよ」
「あ、それって!」
嘆きの館とは、かつて心を病んだマグカルゴが放火し、
そこにいた多くのポケモン達が死んだ地だ。
事件は被害者のマリルがマグカルゴに復讐する形で終わったが、
そこでは今も怪奇現象が起きているという。
コーディリアは地図を取り出して嘆きの館の場所をハロルドに見せる。
「館はここにあるわ。早くマクベスとウララを呼んで、朝食を食べたら行きましょう」
「うん」
「おや、お嬢様。出発しますか?」
「コーディリアさん、どこにいくんですか?」
「場所は、ここよ」
コーディリアはマクベスとウララに呼びかけ、嘆きの館へ行くように促す。
「夢の中で誰かがここに来いって呼んでたんだよ」
自分を呼んだのは、一体誰だろうか。
ハロルドはそれも知りたくて、嘆きの館に行こうとしている。
「よし、決まりね。嘆きの館に行きましょう!」
「おー!!」
「……ここで、本当に怪奇現象が起こるのかな?」
ハロルドはコーディリアにしがみついていた。
コーディリアは平然としながら歩いている。
「ま、私ならゴースト技効かないし、大丈夫でしょ」
「……しかし、暗いですね」
ダンジョンは長い一方通行になっている。
明かりもほとんどなく手探りで進むしかなかった。
「……ん?」
ウララがある程度進むと、カラン、という音が鳴った。
彼が気付いて上を向くと、天井から五体の幽霊が襲いかかった。
「タチサレ……タチサレ……」
「ゆ、幽霊……!」
「逃げないで! これが、幽霊の正体よ」
ウララは思わず逃げようとするが、コーディリアは落ち着いて幽霊達を「みやぶる」。
すると、幽霊はカゲボウズやゴースである事が分かり、
さらにノーマル・かくとうタイプの技が当たるようになった。
「良かった、やっと戦えますね」
「参りますよ」
「せい!」
コーディリアはとびひざげりをぶちかまし、カゲボウズを吹き飛ばす。
カゲボウズはウララのミストボールを防ぎ、おどろかすで反撃する。
「私がお守りいたします」
マクベスはゴーストタイプに弱いながらも、カゲボウズとゴースの攻撃をその剛腕で防ぐ。
その間に、ハロルドがチャームボイス、ウララがサイコキネシスで範囲攻撃し、
最後にコーディリアとマクベスがとどめを刺した。
「ま、怪奇現象と言っても、こんなものだよね」
ハロルドが安心していると、彼の頬を生暖かい風が襲った。
「な、何?」
ハロルドが振り向くと、そこには誰もいない。
気のせいかな、とハロルドが進むと、彼の頭の中に女の声が聞こえてきた。
―ルキウス様の邪魔をする気なの?
「! 今、ルキウス様、って声が、ボクの頭の中に聞こえてきたよ!」
「ハロルドさん、エスパータイプのポケモンはテレパシーが使えるんですよ。
だから幽霊じゃありません」
「そ、そっか……」
だが、ここで放火殺人事件が起こった事は確かだ。
きっと幽霊は、今もここにいる生きた者を妬んでいるだろう……。
その後、ゴースやカゲボウズが驚かすなどのこれといった怪奇現象は起こらず、
四匹は落ちていた道具を拾いながら階段を上がっていく。
やはり、怪奇現象というのは嘘ではなかったかとハロルド達は怪しげに思っていた。
そして、四匹が最上階に辿り着くと、衝撃的な光景を目にした。
「……来たか、ハロルド」
「ミリア、ジオ、ルキウス……!」
最上階で待ち受けていたのは、お尋ね者集団『非情なる鍵』、ルキウス、ジオ、ミリアだった。
「あの声は、もしかしてミリアが出したの?」
「そうよ。ふん、まったく、仲間を連れていくなんてどうかしているわ」
「お前がこころのしずくを持って来てほしかったのだが」
ルキウス達はハロルドが仲間を引き連れている事を残念がっていた。
お尋ね者の尊大な態度に、コーディリアは怒りを隠せない。
「私達は二の次なの? 貴方達の方がどうかしているわよ!」
「なんとでも言え。俺達が欲しいのは、そのラティアスが首にかけているこころのしずくだ」
「えっ……これですか? 駄目です、兄様の形見ですから!」
ウララは兄の形見であるこころのしずくを大切そうに握り締めた。
しかしミリアはそれを意に介さず、ゆっくりとウララに近付いていく。
「そんな事など、私達にはどうでもいいわ。ルキウス様に必要なものなの。
さあ、そのこころのしずくをよこしなさい」
「い……嫌です!」
ウララはミストボールをミリアに放つが、ミリアはひかりのかべで攻撃を防ぐ。
どうやら、非情なる鍵は力ずくでもウララのこころのしずくを奪いたいようだ。
「こころのしずくは渡さないよ! ボク達が相手になってやる!」
「お尋ね者は退けてやるわ!」
「私の腕は、守るためにあるのです」
「……チッ。邪魔者め……いくぞ、ジオ、ミリア!」
「必ず、こころのしずくは手に入れる」
「ルキウス様のために!」
ハロルド、コーディリア、マクベス、ウララ、ルキウス、ジオ、ミリアが戦闘態勢を取る。
今、お尋ね者チームと探索者チームの戦いが始まろうとしていた。
嘆きの館については、あの放火事件を元にしています。
ポケモンらしくなく、不謹慎かもしれませんが、こうでもしなければ刺さらないかと思いまして。
次回は敵キャラとの激突です。