ポケモン不思議のダンジョン Drop of Mind 作:アヤ・ノア
ウララは兄の形見であるこころのしずくを奪われ、深い悲しみに沈む。
彼女はその責任を感じ、仲間の助けを拒み一人で取り戻す決意を固める。
ハロルド達はウララを心配し、彼女を連れ戻すための作戦を立てる。
ウララは復讐心に駆られ、探索者協会へ向かう途中で不安定な心情を抱える。
ハロルド達はウララを止めるため、情報を集めてヤングースの洞窟へ向かう。
彼らはウララの怒りを鎮め、彼女を救うために全力を尽くす決意をするのだった。
貴女が何を企んでるかは知らないけど、私達の仲間なんだからね。
Chapter 23
探索は佳境へ 呪われしウララの復讐心
-Rache-
ハロルド達はいなくなったウララを連れ戻すべく、ヤングースの洞窟に入った。
「待っててね、ウララ。ボク達が助けるから」
「貴女が何を企んでるかは知らないけど、私達の仲間なんだからね」
「必ず連れ戻しますよ」
マクベスが洞窟に一歩足を踏み入れると、上空に棘が無数に滞空しているのを発見した。
もし避けなければ、これらが物凄い勢いで落下し、身体を貫いて多くの傷がつくだろう。
「はっ!」
コーディリアは素早く動き、上空の棘を全て落とした。
棘は全て地面に落ち、コーディリアも、もちろん無事だ。
「これで大丈夫よ、後は棘を避けていくだけ」
「ありがとう、コーディリアさん」
「いい動きでしたね」
「ふふっ、褒めてくれてありがとう!」
マクベスに褒められて照れるコーディリア。
「罠は、マクベスだけじゃなくてコーディリアさんも解除できるんだ。感心したよ」
「どう、私の華麗なトラップ解除、見たかしら?」
「パチパチパチ~」
「あっはっはっははははは!」
ハロルドは擬音を口に出しながら拍手した。
彼を見たコーディリアは調子に乗ったのかますます明るくなり、ついに笑った。
その様子は、とても仲間を失ったとは思えないものだった。
「よし、このまま進むわよ……っきゃあ!」
コーディリアが前に歩いていくと、うっかり洞窟の壁に触れてしまう。
おかげで岩が崩れ、迂回路を探さなければならなくなった。
「あちゃあ、前言撤回かしら」
「そんな事はないよ、コーディリアさん。ちょっと先に進みにくくなっただけ」
ハロルドは、うっかりダンジョンの壁を崩したコーディリアを優しく宥める。
「……そうね。気を取り直して、先に進みましょう」
コーディリアは辺りを見渡し、罠がないかを確認した後、前に進む。
ハロルドとマクベスも、敵に出会わないように気を付けながら歩いていった。
すると、ハロルドが急に立ち止まった。
「どうしたの、ハロルド?」
「不自然な風の流れだ……こっちに次の階段があるかもしれない」
ハロルドは風が吹いた方向に向かって歩いていく。
すると、そこには彼の予想通り次の階段があった。
「本当だわ! ラッキー、ハロルド!」
コーディリアとマクベスは、ハロルドが見つけた隠し階段を下り、次の階に辿り着いた。
ちなみに、隠し階段の近くにはひかりのたまが落ちていたため、ハロルドはそれを拾った。
「暗くなってきている。もうすぐ、ウララに会えそうだね。……でも」
奥に行くにつれて辺りは暗くなり、周りがさらに見えにくくなる。
今、周囲には敵や罠の気配はない。
だが、単純にハロルド達には見えないだけという可能性もある……。
「こころのしずくは、どこ……?」
「ひっ!?」
ハロルドの耳元で、少女の無機質な声が聞こえてきた。
「コ、コーディリアさんじゃないよね!?」
「誰がそんな事言うわけ? そもそも私が、こころのしずくなんか欲しがるの?」
「もしもお嬢様でないとするならば、姿を現しなさい。ハロルド、ひかりのたまを使いましょう」
「うん!」
そう言って、マクベスがひかりのたまを使うと、暗い洞窟を眩い光が包み込んだ。
しばらくして光が弱まり、三匹がきちんと前を見られる状態になると、
彼らの目の前にポケモンが姿を現した。
「……!?」
三匹はその姿を見て、驚く。
それもそのはず、姿を現したポケモンは……。
「ウララ!?」
行方不明になった、ウララだったからだ。
ウララは漆黒のオーラを身に纏っており、
表情はレジアイスの身体を包む冷気のように冷たく、目はバンギラスのように鋭かった。
「こころのしずくを奪った者に……復讐を」
ウララは感情のこもっていない口調で言う。
普段の彼女なら、そんな事は言わないはずだ。
しかし、何故こうなってしまったのか、ハロルドには分からなかった。
「こころのしずく……返して」
「うわぁ!」
ウララは不意打ちでミストボールをハロルドに向かって放つ。
彼は飛び退いて攻撃をかわすが、ミストボールは爆発して砂煙が辺りを覆う。
「何、いきなり攻撃してくるの!?」
「渡さないのなら……殺す」
「やめなさいよ!」
コーディリアはウララのサイコキネシスを紙一重でかわし、とびひざげりを叩き込む。
効果は今一つだったが、ウララは壁に向かって吹き飛ぶ。
「……」
ウララは痛みを感じずに立ち上がり、そのままハロルド達に突っ込んでいく。
ハロルドはチャームボイスでウララの弱点を突き、彼女に大ダメージを与えた。
「ウララ! ボクの声が聞こえる!?」
「……」
ハロルドはウララと戦いたくないため、彼女の心に訴えるように呼び掛ける。
しかし、ウララは彼の言葉に反応せず、ハロルドをサイコキネシスで宙に浮かせた。
「う、うぐぐぐぐぐ……!」
「こころのしずくはどこ……こころのしずくはどこ……?」
ウララはうわごとのように、こころのしずくの行方を呟いている。
このままでは、ウララが暴走してハロルド、コーディリア、マクベスを倒してしまう。
そのため、ハロルドは諦めずにウララに説得を続けた。
「ウララ! 自分が何をやってるのか分かるの?」
「こころのしずくは……どこ……?」
「だからといって、ボク達を攻撃する必要はないでしょ! やめてよ、ウララ!」
「……」
ハロルドはサイコキネシスに縛られながらも、ウララを正気に戻すべく何度も何度も説得する。
それでもウララはサイコキネシスを徐々に強め、ハロルドの身体をどんどん締め上げる。
「……ウララ……ボクの、目が、見えない、の……? ボクの、声が、聞こえない、の……?
ウララ……お願い、元に戻って……よ……」
今にも瀕死になりそうなハロルドの目から、涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。
その涙がウララの身体に落ちた時、ウララの身体が眩く光り出した。
「きゃあっ! 眩しい……!」
「なんでしょう、この光は……!」
「う……あ……!」
コーディリア、マクベス、ウララは目を覆う。
その光は強くも温かい、優しい光だった。
そして、その光が消えると、ハロルドとウララは二匹揃って眠る姿勢に入った。
「……ん、ここは……」
「あれ……? あたし……」
ハロルドとウララは目を開く。
ウララの目は、あの時のように暗くも鋭くもなく、いつもの優しい瞳に戻っていた。
「大丈夫、ハロルド?」
「お怪我はありませんでしたか?」
「あ、ボクは大丈夫だよ……。ちょっと、疲れちゃったけど……。それより、ウララは……?」
「ちょっと体中が痛いです……。一旦、探索者協会に戻りましょう……」
「そうね、一度休んだら話を聞きましょう」
ハロルド、コーディリア、マクベス、ウララは、探索者協会でラッキーからの治療を受ける。
「大丈夫だったかい?」
「かなりお疲れだったみたいだけど」
探索者協会の会長と副会長、アーマルドとユレイドルが疲れている四匹を労う。
「はい、ちょっと疲れましたけど、ボク達は無事ですよ。ほら。はぁ、はぁ、はぁ……」
「まだ疲れてるじゃないか! もうちょっと休んだ方がいい」
「分かりました……」
こうして、四匹の疲れは完全に取れた。
ハロルドは正気に戻ったウララを椅子に座らせ、彼女からこれまでの事情を聴いた。
「……あたし、ルキウスに取られたこころのしずくを取り返したかったんです。
外に出て、黒い種を取ったら、意識がなくなって……」
「ボク達に迷惑をかけた、って事だね」
「本当に申し訳ありません、あたしがもう少し考えていれば……」
ウララは悲しい表情でハロルド達に謝る。
自分があの黒い種に触れていなければ、ハロルド達を傷つける事はなかった、と。
しかし、ハロルドは優しい表情でウララにこう言った。
「そんなにくよくよしないでよ。もう過ぎた事だし、こころのしずくは必ず取り返すし。
あ、もちろん正攻法でね」
「あたしを許してくれるんですね。本当にありがとうございます、ハロルドさん」
「うん、どういたしまして!」
そう言って、ハロルドとウララはお互いに強く握手した。
コーディリアとマクベスは、二匹の強い絆に感動するのだった。
次回はウララがメインとなります。