ポケモン不思議のダンジョン Drop of Mind   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

消えたウララを救うため、ハロルド達は罠と暗闇の満ちた洞窟を進む。
奥へ進むと、冷徹なオーラを放つウララが現れ、仲間への攻撃を開始する。
ハロルドは心の奥深くから訴えかけ、ウララの暴走を必死で止めようとする。
涙の力が奇跡を呼び、ウララは正気を取り戻す。
探索者協会で休息を取ったハロルド達は、次の冒険に向けて再び絆を強めるのだった。


Chapter 24

 ……もしもそれで、本当にこころのしずくができるのなら……。

 

 Chapter 24

 始まりの試練 朽葉色の気分屋な守護神

              -Schlacht-

 

 ウララを黒い種から解放し、無事に探索者パーティーは四匹に戻った。

 しかし、こころのしずくはまだ取り戻していない。

「ハロルドさん、あたしのこころのしずくはどうなるんでしょう」

「そ、それは……」

「ちょっと待ってくれ」

 ハロルドが困っていると、アーマルドがウララに声をかけた。

「会長?」

「もしかしたら、特定のダンジョンに行けば新しいこころのしずくを作れるかもしれない」

「それって、どこなんですか?」

「カプ・コケコが守護する朽葉(くちば)の山、カプ・テテフが守護する山吹(やまぶき)の谷、

 カプ・ブルルが守護する玉虫(たまむし)の森、カプ・レヒレが守護する(はなだ)の湖だ」

 アーマルドは、四匹のとちがみポケモンが守護しているダンジョンについて話した。

 彼によれば、カプ達に認められる事により、新しいこころのしずくが生まれるという。

「俺も噂程度でしか聞いた事がないが、力の強いポケモンなら大丈夫じゃないかと思ったんだ」

「……もしもそれで、本当にこころのしずくができるのなら……」

 ウララは淡い希望を抱いた。

 カプの四つの試練を達成すれば、こころのしずくを作れる。

 失われた兄の形見が戻ってくる……それを信じたウララは、迷いなく頷いた。

「行きます。そのダンジョンに行きます! この試練は必ず突破します!」

「おお、ウララは随分と積極的だな」

「だって、あたしが大事にしているものですから」

 そう言ったウララの表情は、晴れやかだった。

 

 そして……。

 

「よし、準備はできたか?」

「ええ、ばっちりです」

 ハロルド、コーディリア、マクベス、ウララは、

 カプ神が守護する四つのダンジョンに挑み、こころのしずくを手に入れる準備をした。

 鞄にはじくうのオーブンで食糧に変えたベトベタフードがたくさん入っており、

 回復用のきのみや、補助用のふしぎだまも入っている。

「大丈夫だよ、ウララ。ボクを信じて。ルキウスは……必ず、止めるから」

 兄として、弟のネバーランド計画を阻止しなければ、世界は平和にならない。

 ハロルドは真剣な表情で、ウララと向き合った。

「分かりました、ハロルドさん!

 そしてコーディリアさんもマクベスさんも、あたしはずっと信じますよ!」

「そうね、そういう心も冒険には必要なのよ」

「一度絆が断ち切られたからこそ、さらに絆というものを大事に感じましたね」

 この三匹なら、必ず試練を達成する。

 ウララはそう思いながら、彼らについていくのだった。

 

「じゃあ、最初はここだね」

 最初に四匹が行ったダンジョンは、朽葉の山だ。

 ここにはでんきタイプのポケモンが多く、ハロルドはなるべく距離を取って戦った。

 浮遊しているため実質的に弱点がないシビビール、はがねタイプも持つトゲデマルなど、

 数々のでんきタイプのポケモンが待ち受けていた。

「少し離れてくださいね。はぁぁぁっ!」

「ミストボール!」

 主にマクベスが地震を起こしてポケモンを倒し、

 ウララがマクベスの倒し損ねたポケモンにとどめを刺していく。

 ハロルドとコーディリアは、彼らをサポートするように技を使っていった。

「カプ・コケコが守っているだけあって、電気系の罠や敵がたくさんあるね」

「だから、あなたは特に気を付けて進みなさい」

「はーい」

 ハロルドが慎重に進んでいくと、四匹のレアコイルが飛び出してきた。

「きゃっ、コイルね! まずは一発!」

 コーディリアはねこだましをレアコイルに放ち、怯ませる。

 ウララは怯んだレアコイルをサイコキネシスで浮かせ、ミストボールで攻撃する。

 ハロルドとマクベスはレアコイルの電撃をかわすがウララには当たってしまい、

 痺れて動けなくなる。

「動けません……!」

「なら、これを食べなさい!」

 コーディリアはウララにクラボのみを投げる。

 ウララはそれを受け取るとコリコリと食べ、麻痺状態を回復した。

 ハロルドはチャームボイスでレアコイル達をまとめて攻撃し、

 マクベスはしねんのずつきでレアコイルを一匹倒した。

 ウララはオボンのみを食べて自身の傷を癒した。

「うっ、痛いわ……。でもそれ以上に痛いんだから! せいやあっ!」

 レアコイルはコーディリアを10まんボルトで痺れさせるも、

 コーディリアはとびひざげりで反撃して撃破する。

 そして、マクベスが地震を起こして全てのレアコイルを一掃した。

 

「こんなポケモンに出会うとは、大変でしたね」

「でも、こころのしずくのためなら、あたしはどんな試練も乗り越えます。何があろうと、必ず」

 何があろうと……それは命を落とす可能性もあるという意味だ。

 ハロルドはごくりと唾を飲み込む。

「……本当に、覚悟はできているのね」

「できています。できていなかったら、このダンジョンには行きませんでした」

「それほどこころのしずくが大事なのね……」

 コーディリアは改めて、ウララの「こころのしずくを手に入れる」という覚悟を知るのだった。

 

「はっ!」

 棘状の岩などで覆い尽くされた通路を、ウララは上手く潜り抜ける。

 その先には、二匹のエモンガが待ち受けていた。

 エモンガはまだこちらに気付いていないためウララはミストボールでエモンガに不意打ちした。

「よし、今よ!」

 コーディリアはエモンガに飛びかかり、ばくれつのタネを食べてエモンガを爆風で包む。

 続いてマクベスはれいとうパンチでエモンガの弱点を突き、

 ハロルドがみずでっぽうでとどめを刺す。

「とどめです、ミストボール!」

 そして、ウララが残ったエモンガにミストボールを放ちエモンガに何もさせずに戦闘を終えた。

 

「どこまで進んだんでしょうか?」

「随分たくさん登りましたね……」

 ハロルド、コーディリア、マクベス、ウララは、どこまで登ったのかを覚えていなかった。

 しかし、ハロルドの表情には疲れが見えており、たくさん登った事は分かっている。

「はぁ、はぁ……カプ・コケコはどこにいるんだろう……。うぅ……お腹空いちゃったよぉ……」

 ハロルドは空腹で自身の腹を押さえる。

 コーディリアはすぐに鞄からおおきなリンゴを取り出し、ハロルドに食べさせる。

 他のメンバーも、食糧を食べて腹を満たした。

「こころのしずくを取り戻して兄様に会えたら、あたしはとても幸せです」

「そっか、キミはお兄さんにも会いたかったよね」

「兄様……無事でいてください。あたし、必ず試練を達成しますからね」

「ボクも応援するよ!」

 

「やっぱり、恋人同士かしら?」

「それっぽいですね……」

 ハロルドとウララの良い関係を見たコーディリアとマクベスは、羨ましそうに呟いた。

 

 四匹は休息を終えて、再び山を登り始める。

 でんきタイプのポケモンが何匹か立ち塞がったが、全て技や道具を駆使して退けた。

 減った技ポイントは、ピーピーエイダーを使って回復した。

 そして、四匹がようやく頂上に辿り着くと、鶏のようなポケモンが姿を現した。

「このポケモンが……」

「カプ・コケコ……!」

 ポケモンは荘厳な雰囲気を漂わせていて、ハロルド、コーディリア、マクベスは固まっていた。

 一方、同じ伝説のポケモンであるウララは目を輝かせていた。

「そう。僕が朽葉の山の守護神、カプ・コケコだよ」

 このポケモンこそが、朽葉の山を守るとちがみポケモン、カプ・コケコだったのだ。

 性別は不明だが、その口調から♂寄りと思われる。

「君達は一体、何をしに来たのかな?」

「あ、え、えっと……早く、こころのしずくを作ってください」

 正気を取り戻したハロルドはこころのしずくを作るようにカプ・コケコに言うが、

 彼(?)は首を横に振った。

「その前に、やってもらう事があるんだ。

 君達がこころのしずくを使うに相応しいかどうか、試したいんだ」

「つまり、貴方と戦え、という意味なのね」

「そういう事だよ」

 要するに、カプ・コケコと勝負して勝てば、試練達成という事になるらしい。

 ハロルド、コーディリア、マクベス、ウララは覚悟を決めて戦闘態勢を取った。

 

「さあ、この僕に勝てるかな? 鋭き電撃、受けてみてね!」

「……来ますよ!」

 カプ・コケコが叫ぶとエレキフィールドが広がる。

 今ここに、カプ・コケコとの戦闘が始まった。

 

「自然よ、僕に力を貸してくれ!」

「そうはいかないわよ! ねこだまし!」

 カプ・コケコは先制して自然の怒りをぶつけようとするが、

 コーディリアがねこだましで怯ませて防ぐ。

「ミストボール!」

「10まんボルト!」

 ウララは羽毛の塊をカプ・コケコに弾幕のように放つ。

 カプ・コケコはその攻撃を全てかわし、10まんボルトで反撃した。

 ドラゴンタイプを持つウララには効果が今一つだったが、

 とちがみポケモンというだけあってダメージは大きかった。

「やりますね……ですが、これが貴方の弱点ですよ」

うわぁぁぁぁぁぁぁ!

 マクベスは地震を起こしてカプ・コケコの弱点を突く。

「凄いわね、マクベス!」

 コーディリアがマクベスの活躍を褒める。

 カプ・コケコも「へへっ」と笑って飛び上がり、とんぼがえりを放ってマクベスを吹き飛ばす。

「な、なんという火力……! しかし、この一撃は耐えられますか? お嬢様!」

「ええ! いくわよぉー!」

 コーディリアがカプ・コケコにとびひざげりをしようと飛びかかる。

 だが、カプ・コケコは宙に浮いて回避し、コーディリアは地面に激突してしまった。

「いたたた……!」

「当たらなければどうという事はないのさ」

「当たるよ! チャームボイス!」

 ハロルドは不意打ちでチャームボイスを使うが、カプ・コケコはまるで平気という顔をした。

「全然効いてない!?」

「だって僕はとちがみポケモンだからさ」

 くいくいと腕を動かすカプ・コケコ。

 彼(?)は完全に、四匹を舐めているような態度を取っていた。

「相手の挑発に乗らないでね!」

 ハロルドはタイプ相性に関係なく、

 一定のダメージを与えるゴローンのいしをカプ・コケコに投げつける。

 ゴローンのいしはウララが上手くサイコキネシスで操作したためカプ・コケコに命中した。

「いたたたっ! やるねぇ! でも、僕は本気だよ! ほうでん!」

 カプ・コケコの身体から電撃が放出される。

 ウララはひかりのかべを使って電撃を防ぎ、ミストボールで反撃する。

 コーディリアはほうでんで隙ができたカプ・コケコを見逃さず、とびひざげりで攻撃する。

 ハロルドはその間に、後ろで力を溜めていく。

「コメットパンチ!」

 マクベスのコメットパンチが炸裂した後、彼は目だけでハロルドに合図を送る。

 そして、力を溜め終わったハロルドが、口に水を大量に含めてカプ・コケコに突っ込んでいく。

「おお、その技はもしかして……」

「これで終わりだよ! 今のはハイドロポンプじゃない……」

 ハロルドは口から大量の水をカプ・コケコ目掛けて放つ。

 その威力は凄まじく、カプ・コケコの体力をどんどん減らしていく。

 そして、ハロルドの水に耐えられなくなったカプ・コケコはついに戦闘不能になった。

 

「ばたん、きゅー……」

「『みずでっぽう』だ!」

 

「あははははははは!」

 ハロルド達に敗れたカプ・コケコは、子供のように笑っていた。

「凄いじゃないか、僕を倒すなんて」

「いえ、これもこころのしずくのためです」

 ウララは謙虚にそう語る。

 カプ・コケコはくすくすと笑うが、やがて真剣な表情になり、ウララにこう語る。

「じゃあ、戦いも終わった事だし、僕に祈りを捧げてごらん。それで、僕の試練は達成だよ」

「……はい!」

 ウララはカプ・コケコの前に進み、祈りを捧げる。

 すると、天から黄色い光が降り、彼女を祝福するように包み込んだ。

 光はハロルド、コーディリア、マクベスにとっては非常に眩しいものだったが、カプ・コケコとウララは平気だった。

 そして、光が消えると、カプ・コケコは愉快そうにこう言った。

「これでカプ・コケコの試練は達成された。さあ、君達はそろそろ帰るんだ」

「でも、こんな山をどうやって下りるんですか?」

「大丈夫だよ。僕の力で麓に移動させるから。ちょっと目を閉じてね」

 言われるがままに目を閉じるハロルド、コーディリア、マクベス、ウララ。

 すると、カプ・コケコは彼らの周囲をゆっくりと歩き、しばらくして、四匹の姿は消えた。

 

「これで、君は何も味わえなくなった。でも、世界を救うためには、必要なんだ……」

 カプ・コケコは、空を見ながら誰にも聞こえない声でそう呟くのだった。




カプ系が守るダンジョンは、ポケモン本編を参考にしました。
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