ポケモン不思議のダンジョン Drop of Mind 作:アヤ・ノア
ハロルド達はカプ・コケコの試練を達成したが、ウララは味覚を失ってしまった。
次の試練はカプ・テテフが守る山吹の谷で、彼らはエスパータイプのポケモンと戦う。
試練を乗り越える中で、ウララは復讐の道を選ばないと決意し、カプ・テテフに祈りを捧げる。
その結果、試練は無事に達成され、ハロルド達は新たな力を手に入れる。
カプ・テテフは彼らの成長を見守り、こころのしずくの重要性を伝える。
こうして、彼らは次の冒険へと向かう準備を整えたのだった。
ばいがえしだ……!
Chapter 26
三つ目の試練 玉虫色の力強き守護神
-Fruchtbarkeit-
カプ・テテフの試練を達成し、残る試練はカプ・ブルルとカプ・レヒレとなった。
「よかったね、ウララ! もう少しでこころのしずくが完成するよ!」
ハロルドは喜びながらウララの手を握る。
だが、ウララの表情は何も変わらなかった。
「あれ、どうしたのウララ?」
「あたし、何かしましたか?」
「何も感じないの?」
「はい」
味覚だけでなく、触覚も失ったウララ。
その事実に、ハロルド、コーディリア、マクベスが不安になる。
「な、なんだかだんだん感覚がなくなっているみたいだけど……?」
「こころのしずくを作るためとはいえ、感覚がこんなになくなるなんて、信じられません」
「一度、ラッキーに治しに行ってみたらどう?」
「やってみます」
ハロルド達は、ウララの感覚を治すため、探索者協会のラッキーにウララを見せに行った。
「……というわけで、ウララの五感を治してほしいのです」
ハロルドはウララの五感を治せるかどうかラッキーに聞いたが、彼女は首を横に振った。
「私の力では、彼女の感覚は元に戻りません」
「どういう事?」
「これは呪いの類です。呪いを解くには、その原因を取り除く必要があります」
「呪い……」
ウララの五感障害は、簡単には治らないらしい。
ハロルド達はその事実に落胆したが、ウララの表情は明るいままだ。
「だから大丈夫ですよ! 次の試練を達成すれば、きっと五感は元に戻ると……」
「そのせいで貴女は感覚をどんどんなくしてるのよ!
これ以上試練をしたらどうなるか分かってるの!?」
コーディリアはウララの身を案じて彼女に叫ぶ。
ウララはびっくりして、後ろに下がってしまう。
「な、なんでそんな事を言うんですか?」
「貴女は試練を達成するごとに自分が自分でなくなっていってるの。
自分を捨ててるって事になるのよ」
「だって……こころのしずくを作りたいから……ここで諦めるわけには……」
試練を達成すれば感覚は無くなる。
しかし、試練を達成しなければこころのしずくは作れない。
そのジレンマに、ウララは苦しんでいた。
「……仕方ないわね。でも、貴女の身体については必ず聞くわ。みんな、準備はいいかしら?」
「できているよ」
「左様でございます」
「……」
こうして、険悪なムードながらも、四匹は
玉虫という名前だけあり、木や花は色とりどりだった。
途中の棘のある茨にマクベスが引っかかって擦り傷だらけになりながらも、
四匹は襲ってくるくさタイプのポケモンを退ける。
「わわっ、危ないよ!」
キノココやタマゲタケなど、胞子をばら撒くきのこポケモンがたくさんいたため、
ハロルド達は上手く彼らを回避した。
「れいとうパンチ」
くさタイプに効果的なこおりタイプのれいとうパンチが使えるマクベスが主に前に出て戦った。
生い茂る草木などで周囲の状況が良く分からないがウララは触覚が無いため痛みを感じない。
途中、毒胞子を撒き散らすポケモンがたくさんいる場所に差し掛かり、
一行はそれらを道具や技で切り抜ける。
「たいせつなものを うばわれたのなら」
「ゼロにするため かたきをうて」
襲ってくるポケモンの目は、ほとんどが漆黒色に染まっていた。
ハロルドには分かっていた……皆、かたきうちのタネに操られている事を。
「仇を討っても空しいだけです。みんな、目を覚ましてください」
ウララはポケモンを説得するが、ポケモンは彼女の声が聞こえなかった。
「そとのせかいは きょうあくな じけんが たはつしているぞ?」
「かたきうちを したくないのか?」
「めには めを はには はを」
「ばいがえしだ……!」
「やめてくださいっ!!」
襲い掛かるポケモンを、ウララはサイコキネシスで全滅させた。
しかし、倒すしかなかったとはいえ、ウララはやりきれない表情をした。
「本当に、復讐で問題は解決するんですか? 確かに、復讐は良くないと思いますけど……」
「……分からない。けれど……ウララの言う通り、復讐は良くない事だと思うよ」
「復讐は空しい勝利にすぎませんからね」
こうして、一行は森の奥へ進み、三つ目の試練を受けるための場所に辿り着いた。
森の奥には、牛のような姿をしたポケモンがいた。
「我はカプ・ブルル。玉虫の森の守護者だ」
荘厳な口調で話すそのポケモンは、カプ・ブルルだった。
彼(?)の試練を達成すればこころのしずくの完成が近づく……しかしそれは、
ウララの感覚を失う事でもあった。
「カプ・ブルルさんに質問があります。
ウララは今、味覚と触覚がないんですけど、どうしたらこの感覚は治りますか?」
ハロルドはカプ・ブルルに、ウララの五感が治るかどうかを聞いた。
すると、カプ・ブルルの表情が少し揺らいだ。
「五感を取り戻せば、こころのしずくは生まれなくなる。それでもいいのか?」
「えっ? どういう意味です……か?」
「それは、其方達が知るべきではない事だ」
カプ・ブルルは何かを隠しているようだ。
それを聞きたがるハロルドだったが、カプ・ブルルは推して何も言わない。
一方で、ウララは真剣な表情をしていた。
「……お願いします。試練を受けたいです。
こころのしずくを作るためにも、試練は達成しなければ!」
「よかろう。かかってくるがいい!」
「待って……!」
ハロルドの制止も空しく、カプ・ブルルとの戦いが始まった。
「ぬぅん!」
カプ・ブルルはグラスフィールドを展開し、大量の岩を空中に浮遊させる。
その後、ハロルドにウッドハンマーを振り下ろす。
「危ない!」
コーディリアはハロルドを庇い代わりにダメージを受けるが、
威力は桁外れに高くコーディリアは気を失う。
「お嬢様!」
「この程度の威力を耐え切れぬとは……」
あのウッドハンマーを「この程度」と言い切るカプ・ブルルにウララは恐怖する。
それでも、ウララは諦めずにミストボールを放つ。
「……」
しかし、命中したかに思えたミストボールは、カプ・ブルルにダメージを与えられず消滅した。
「あたしの攻撃が効きません」
「これならどうですか? れいとうパンチ!」
「む……」
マクベスはカプ・ブルルの弱点であるこおりタイプの技、れいとうパンチを放つ。
彼の技をまともに食らったカプ・ブルルは大ダメージを受けたが、まだ瀕死にはなっていない。
「我の力を侮るな。今度はこちらから行こう」
カプ・ブルルは浮かせた岩をハロルド、マクベス、ウララに向けて放った。
ハロルドとマクベスは上手く攻撃をかわしたが、ウララは避けられずに攻撃を食らう。
「きゃぁぁぁああああぁっ!」
「試練を受ける者よ、倒れるな」
「言われなくても! サイコキネシス!」
ウララはお返しにサイコキネシスを放ってカプ・ブルルを浮かせ、吹き飛ばす。
その後にウララはコーディリアにふっかつのタネを使って瀕死から回復させた。
「ありがとう、ウララ」
「どういたしまして」
ウララは笑みを浮かべた後、すぐに真剣な表情に変わる。
「このタネを食べて!」
「えいやっ!」
ハロルドはじゃあくなタネをカプ・ブルルに使い、
コーディリアはもうげきのタネをマクベスに使って彼を援護する。
「行きますよ! れいとうパンチ!!」
もうげきのタネで上がった攻撃力と、じゃあくなタネで下がった防御力により、
れいとうパンチの威力は桁外れに上がる。
しかも、カプ・ブルルの弱点であるため、まさに大規模ダメージとなった。
カプ・ブルルは一撃で大規模ダメージを受け、その強烈なダメージの前に瀕死となった。
「よくやった……。試練は達成だ」
「……」
カプ・ブルルの試練を達成した四匹だったが、ウララ以外の表情に笑顔はない。
次はどんな感覚が消えるのか……それが三匹の心配だった。
「大丈夫ですよ、皆さん。あたし、必ずこころのしずくを作りますから。
お願いします、カプ・ブルルさん」
「うむ」
ウララはカプ・ブルルの前に進み、祈りを捧げる。
すると、天から緑色の光が降り、彼女を祝福するように包み込んだ。
そして光が消え、カプ・ブルルの試練は達成した。
「もう、これで其方は何も嗅げぬ。クサイハナの臭いも、ドレディアの匂いも……」
「えっ? じゃあ、嗅覚がなくなったんですか?」
「そうだ……。だが、こころのしずくを作るためには其方が清らかでなければならないのだ」
清らかな者のみがこころのしずくを作るとはどういう意味なのか。
とにかく、これで残る試練はあと一つという事になるが……。
「ありがとうございました、カプ・ブルルさん」
「其方達に幸あらん事を……」
こうして、四匹はカプ・ブルルに見送られながら、玉虫の森を去っていくのだった。
もう、自分が自分でなくなるのを避けられないという運命を感じながら。
次回は最後の試練となります。