ポケモン不思議のダンジョン Drop of Mind   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

ハロルドとルキウスの兄弟決戦が始まった。
コーディリアの裏切りや、仲間の絆が試される中、彼らは希望を信じ続ける。
ルキウスはネバーランド計画を実現しようとし、兄弟の対立は深まるばかり。
だが、ハロルドは諦めずに立ち向かい、ついにルキウスを倒す。
ハロルドはこころのしずくを使い、悲劇を消し去るための決意を固めるのだった。
果たして、彼らの思いは未来を変えることができるのか。


Chapter Finale

 今日も平和だね、ルキウス。

 

 Chapter Finale

 ドロップオブマインド 強き愛は世界を変える

                  -Harold-

 

 ――地球。

 

 こころのしずくが叶えた願いのおかげで、世界は急速に変わっていった。

 全人類と全ポケモンの心から野心や欲望、

 ありとあらゆる心の闇が消えて優しさと思いやりだけになり、

 新たに生まれる悪はもう存在しなかった。

 政治家達は、その権力を力無き国民のために尽くす事に誇りを見出すようになっていた。

 惨めな暮らしを強いられる貧民も、いつ凶刃に倒れるか怯える市民もいなくなった。

 本当の意味で、性善説が実現したのだ。

 

 また、全ての事件がなかった事になったため、事件で失われたものは全て蘇り、

 ハロルドとルキウスの兄弟も平和に暮らしていた。

 もちろん、彼らがポケモンの世界に来た事は、ポケモンの世界の住民は全て忘れている。

「今日も平和だね、ルキウス」

「ああ……そうだな」

「ちょっと生意気だけど、ボクが世界を平和にしたんだよ」

 ハロルド以外の全ての生命は変わっている。

 こころのしずくで新世界を創造した事を覚えているのは、ハロルドのみとなっていた。

「ウララも、ノゾムも、ボク達を見守っているのかなあ……」

「……誰だ、それは?」

「えっ、知らないの? ボクがポケモンの世界で出会った、ラティアスとラティオスだよ?」

「分からないな……」

 ルキウスは、ウララとノゾムがこころのしずくに変化した事を覚えていない。

 いや、既に概念となっているため、

 ウララとノゾムについては、ハロルド以外の記憶からは完全に消滅しているのだ。

 

「……もう、大丈夫だよね。平和になったよね」

「ああ……平和だ、な……」

 ハロルドとルキウスは、いつも通りの平和な日常を繰り返す。

 これからも、ずっと、ずっと。

 

 ――ポケモンの世界。

 

 コーディリアとマクベスは、いつものように探索者として依頼を受けようとしていた。

 世界が変わっても、二匹は探索者のままだ。

 

「お尋ね者を捕まえる依頼が減ってきたわね」

「世界が平和になった証ですよ」

 こころのしずくが願いを叶えてくれたため、お尋ね者の数は減ってきていた。

 探索者協会で受ける依頼も、探索者や一般人の救出や、道具探しが大半を占めていた。

「ホントに、平和ね。この平和はずっと続くわよね」

「空も澄み渡っています、空気も穢れていません。永遠に、この平和は続くでしょう」

「何にも事件が起こらないと、たいく……」

 言いかけた途端、コーディリアが口を塞ぐ。

「ち、違うわよ! 今のはわざとよ! ずっと平和がいいわよ! マクベス!」

「……そう言うと思いましたよ、お嬢様」

「な、何よマクベスゥゥゥゥゥゥゥ!!」

 コーディリアをからかうマクベスに、彼女はムキになって叫んだ。

 

 いつもの風景、変わらぬ時間の流れ。

 ベシク街は今日も、(なご)やかに時が過ぎていく。

 本当に、何も起きない日常だった。

 しかし、ルキウスとの戦いを終えた今では、これが真の平和になった世界だと実感できる。

 

 今や地球とポケモンの世界は、概念となったウララとノゾムが管理し続けている。

 それに反論する者は、もう誰もいない。

 その新世界を創造したのは、ハロルドだ。

 だからこそ、この楽園を他に守れる者はいない。

 

 探索者協会の会長と副会長、アーマルドとユレイドルは驚いていた。

 ハロルドとルキウスが地球へ帰った時は、彼らがいたという記憶も全ポケモンから失われる。

 それが自然の原理であり法則らしいが、

 コーディリアとマクベスはハロルドとルキウスの事を忘れずに覚えていた。

「ハロルドはこの世界を変えてくれたのよね」

「ええ、彼はこの世界の救世主です」

「そしてルキウスも、今は優しい弟に戻っている」

 二匹の間ではハロルドとルキウスの事が今も話題になっていて、感謝の気持ちも忘れていない。

 コーディリアとマクベスは、ハロルドとルキウスが大好きなのだ。

 

 ――そうして、コーディリアとマクベスの周りでは変わらぬ日々が続いている。

 

「……」

 だが、コーディリアは大きな喪失感を抱いていた。

 世界を救ったハロルドは、弟のルキウスと共に地球に帰ってしまった。

 ベシク街のみんなは、ハロルドとルキウスの事を忘れていた。

「ハロルドとルキウスにはもう、二度と会えないのかしら……」

 みんながハロルドとルキウスを忘れ、ハロルドとルキウスもこの世界に戻れなくなった。

 もう二度と、ハロルドとルキウスとは出会えなくなった。

 

 ――その時だった。

 

「誰が二度と出会えないと決めつけたんだ?」

「ジオ!」

「私もちゃんといるわよ」

「ミリア!」

 なんと、ジオとミリアがコーディリアとマクベスの前に姿を現したのだ。

 彼らもまた、ハロルドとルキウスの事を覚えている数少ないポケモンなのだ。

「ルキウス様にもう一度会える方法を見つけたぞ」

「ホント!?」

「精神電波塔に行って、こころのしずくで願いを叶えてもらうんだ」

「で、でも……もう、ハロルドは世界を平和にしたいって願いを叶えたのよ!?」

 だが、こころのしずくでもう願いは叶った。

 二つ目の願いを叶えてもらえるかは分からない。

「でも、諦めちゃダメよ。諦めたら本当に、二度とルキウス様には会えないんだから」

「ジオ……ミリア……」

 二匹は、お尋ね者だった今までと異なり、希望に満ち溢れた顔をしていた。

 彼らの表情を見たコーディリアとマクベスも、表情から絶望の色が消えていく。

「……そうね! みんなでもう一度、精神電波塔に行きましょう!」

「私も、寂しいのはもうたくさんです。またみんなで一緒に、冒険しましょう!」

「その意気だ!」

「さあ……行きましょ、コーディリア、マクベス、ジオ!」

「「「「おーーーーーーーっ!!」」」」

 

 ――地球。

 

「あ、父さん、新聞が届いたよ!」

 ハロルドは届いた新聞を父フレデリックに見せた。

「何々……ふむふむ、○○首相が××した……」

 新聞をめくったが、何一つとして事件は無い。

 これが、平和になった世界の象徴だ。

「ふむ……なるほど、そういう事か。ほれ、ハロルドとルキウスもそろそろ朝食を食べるぞ」

「はーい! いっただきまーす」

「いただきます」

 ハロルド、ルキウス、フレデリック、そしてイリアは朝食のトーストを食べ、牛乳を飲む。

 こうして一緒に食べる事ができるのも、世界が完全に平和になった証である。

「平和って、やっぱりいいよね。しかも、ずっと平和になってるんだよ?」

「……どういう事だ?」

「あ、何でもないよ。もう少ししたら、そろそろ学校の時間だね」

「そうだな、兄さん。行こうか」

「うん!」

 

 ハロルドとルキウスは笑顔で登校していく。

 町を歩く人々は、誰も彼もが幸せだ。

 二人は彼らを見て、さらに笑顔になる。

「本当に、みんな笑顔だね」

「平和だ。幸せだ。兄さん」

 楽しく談話をするハロルドとルキウス。

 その時、ルキウスは何かに気づいた。

「……あ、そろそろ電車が来る時間だ」

「あ、そうだ。急がなきゃ!」

 ハロルドとルキウスは、電車に間に合うために急いで走り出した。

 

 ――その時。

 

『ハロルド! ルキウス!』

 聞き覚えのある少女の声が聞こえてきた。

「その声は、コーディリア!?」

『そうよ!』

『そして私はお嬢様の執事、マクベスでございます』

『俺はお前と共に戦ったジオだ』

『サーナイトのミリアよ!』

 声は次々と増えていく。

 順番に、コーディリアの執事マクベス、元お尋ね者のジオ、同じく元お尋ね者のミリアだ。

「どうして、ボク達が分かるの!?」

『私達、もう一度精神電波塔を登ってきたんだからね。貴方達にもう一度会うために!

 はぁ、はぁ、はぁ……』

 コーディリアは息を切らしながらそう言った。

 ハロルド達に会うために苦労している事が伺える。

『二つ目の願いは自然の法則を超えられないと思いますが、私達は奇跡を信じています!』

『俺はルキウス様と一緒にいたい!』

『ずっと、ずっと一緒よ! 諦めないわ!』

 コーディリア、マクベス、ジオ、ミリアは、必死でハロルドとルキウスに呼びかけている。

 地球の様子は見えないはずだったが、こころのしずくがそれを叶えてくれたようだ。

『ハロルド、ルキウス! 聞こえてるわよね?』

「うん、聞こえてるよ!」

『私達の姿が見えますか? 私達の声が聞こえますか?』

『ベシク街のみんなが、ハロルドとルキウス様をどう思っているのか、見てきたな?』

「ああ……見てきている」

『それを見てどう感じたかよ! そして、どうしたいかよ!』

『貴方達が強く願えば、きっと……!』

 四匹は、ハロルドとルキウスがポケモンの世界に帰ってくる事を信じていた。

 全員、希望に満ち溢れた声を出していた。

 みんなから忘れられていない……その事実を知ったハロルドとルキウスに、迷いはなかった。

 

「ボク達は……」

「もちろん……」

「「帰りたい!! ポケモンの世界へ!!」」

 ハロルドとルキウスが応えると、二人の身体は一瞬にして光り出した。

 みんながいる、コーディリア、マクベス、ジオ、ミリアが待っている……あの世界へ。

 

 ――ポケモンの世界。

 

 そして――精神電波塔の最上階に、二匹のポケモンの姿が、現れた。

 

『――ただいま!』

『――おかえり!』




 本日完結した「Drop of Mind」は、ポケモン不思議のダンジョンの二次創作長編です。

 やっとポケモン不思議のダンジョンの新作が発売されたと思ったら、
 「ロックマンエグゼオペレートシューティングスター」のように第1作のリメイクとは。
 某社の映画もそうですが、最近はリメイクや続編ばかりでうんざりしていたので、
 いっそ完全新作を出そうじゃないか! と思って書きました。

 設定として、タイトルは(Switchなので)「ポケモン不思議のダンジョンS」、
 主人公とパートナーの候補は、第七世代までの御三家、ピカチュウ、イーブイ、
 ロコン、Aロコン、ニャース、Aニャース、エネコ、リオル、イワンコと過去最多の30種類で、
 主人公とパートナーはポケモンを決めた後に性別を決める形となっています。
 もちろん、制限は存在せず、誰でも主人公とパートナーにできます。

 また、「超不思議のダンジョン」のシナリオの強制進行に対するアンチテーゼとして、
 ロマサガのように決まった道のりはなく、ダンジョンを攻略してストーリーを進めます。
 他にも、「閉店」を廃止、性別が復活、野生ポケモンの勧誘が復活、技が第七世代準拠、
 Z技は覚醒ラピスで設定可能、という風に設定しています。

 要するにポケダンの中でも自由度を高くしたのが「ポケモン不思議のダンジョンS」なのです。
 TRPGのような感じと言ってもいいでしょうか。

 各ポケダンでの本編ラスボスは、レックウザ、闇のディアルガ、氷触体、ダークマターと、
 だんだん「ポケモン」から離れていっています。
 なので、ラスボスは原点回帰という意味でパワーアップした普通のポケモンにしました。

 敵キャラのモデルになったのは「キングダムハーツ バースバイスリープ」の三人の主人公で、
 ルキウスがヴェントゥス、ジオがテラ、ミリアがアクアです。
 ルキウスで弟、というと彼を連想しますが、名前の由来は彼とは一切関係ありませんよ。

 ちなみに「Drop of Mind」とは、
 この物語のキーアイテムである「こころのしずく」という意味……というのは、実は後付けで、
 本当は某アニメのキャラクターをもじったものになっています。

 また、小説内ではパートナーがミミロップとメタグロスと、最終進化系になっていますが、
 これは「ファイアーエムブレム烈火の剣」で言うリン編のようなシナリオだからです。
 といっても、これ単体で物語は完結しているので本編の内容は違うものになるかもしれません。
 探索者になるのは変わりませんが。

 ここからはちょっと堅いあとがきです。

 これまで、私は様々な社会問題と、あまりにも情けない権力者に触れてきました。
 人種差別、国際問題、凶悪事件、交通事故、政治家達の足の引っ張り合い……。

 それらを振り返って、思うところがありました。
 結局、これらの問題は“人の心”が原因ですよね。
 それが変わらない限り、根本的に解決しないのに、簡単に変える事はできない。
 だって、人間を含めた地球上の全ての生き物は
 生き残り進化していくためにこのような感情を得たのですから。

 だから、全部を一気に変えるためにご都合主義な展開を入れました。
 ハッキリ言って、こんなやり方でしか平和な社会を築けない人間に、
 そして自分もそんな人間の一員である事に「絶望した!!(by糸色望)」です。

 今回も、こころのしずくというご都合主義を使って平和を実現したのですが、
 今回、私はハロルドのセリフに、こころのしずくを使う事への迷いも入れました。
 「優しさと思いやりだけの心にする」って書いても結局は洗脳、独裁ですからね。

 結果だけ見ればこれでよかったのでしょうが、
 本当にいいのか、という疑問が消えたわけではありません……。

 未解決のまま終了しましたが、まずはこれにてあとがきは終わりです。
 皆様、本当にありがとうございました。
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