ポケモン不思議のダンジョン Drop of Mind 作:アヤ・ノア
ハロルドはコーディリアとマクベスと共に、きのみの木までの護衛依頼を受ける。
森の中で様々なポケモンと遭遇しながら、彼らは目的地へと向かう。
途中、盗賊達と戦う事になり、ハロルドは彼らの事情を聞く。
盗賊のリーダーは家族のために盗みを働いていたらしく、
ハロルドは彼の罪を償わせるためにジバコイル警察に突き出す。
無事にきのみの木に到着し、依頼を完了させた一行は報酬を手に入れるのだった。
洞窟に棲み着いた何者かが悪さをしているんだ。
Chapter 04
怪しげな森 キノコと毒とリージョン夫妻
-Pilzwald-
ケララッパ護衛の依頼を終えた探索者達は、探索者協会で食事をとっていた。
「ここの料理って意外に美味しいのね。お屋敷では味わえない味だもの」
「この料理はアーマルド、あなたが作ったの?」
「ああ、そうさ(本当はユレイドルが手伝ったが)」
三匹はここでしか味わえない料理を、しっかりと味わいながら食べていた。
これが探検隊であれば、ガツガツ、むしゃむしゃ、ガツガツ、
という効果音が聞こえそうだが……生憎、三匹とも探索者であるため、
そんな音など全くしなかった。
「食べたら疲れが全部吹っ飛ぶね」
「リンゴと違い、きちんと調理されていますからね」
「こういう庶民的な味もまた、料理の1つなのね」
今まで、高級料理しか食べた事がなかったコーディリア。
こんなものを食べるなんて珍しいわ、と思いながら彼女は食事をするのであった。
そして、三匹の食事が終わり、アーマルドとユレイドルが食器を片付けていた頃。
三匹は、しばらく休憩しながら談笑をしていた。
「案外、探索者っていうのも悪くないわね。色んなところを冒険できるんでしょ?
世界の事を知るいい機会になるわ」
「コーディリアさん……」
「あ、言っておくけど、私の今までの考えは変わらないわよ?」
あくまでも自身はコーディリアという貴族である。
その誇りを捨てない、彼女の心の強さにハロルドは心を打たれた。
「……この世界に、ボク以外の異邦人はいるのかな」
「異邦人……ですか。まだ、貴方以外を確認しておりませんので、私達は何も言えません」
「私達は見たもの以外は信じないわよ。貴方が見たならば、私は断言するわ。
『異邦人』は、貴方以外にもいると」
コーディリアは自信たっぷりにそう言った。
彼女がいれば、何とかこの困難は乗り越えられそうだ……とハロルドは思った。
こうして、三匹がゆっくりと休んだ後。
「次は、この依頼をお願いします」
「おっ、あんた達、それはケララッパと繋がってるポケモンだな」
ハロルドは、ケララッパと繋がっているリージョンフォームガラガラの呟きを発見した。
ちなみにこの世界ではジョウトやホウエンといった「地方」はおとぎ話の中にしか登場しない。
故に『アローラガラガラ』ではなく『リージョンフォームガラガラ』表記だ。
洞窟に棲み着いた何者かが悪さをしているんだ。
そいつを退治をしてくれないかな。
「洞窟に何かが棲み着いている?」
その情報は、以前にアーボックの盗賊から聞いていた。
「何か」のせいで、森がおかしくなっている、という事は、ハロルドは知っていた。
ハロルドは、これが「繋がり」なんだなと思い、迷わずこの依頼を受ける事にした。
「お願いします」
「あいよ! 地図はこれだぞ」
そう言って、アーマルドはリンドのもりの地図を三匹に渡した。
三匹は、地図に従って、もう一度リンドのもりに辿り着いた。
「お邪魔します」
「こんなところまでご足労ありがとう」
ハロルド、コーディリア、マクベスを出迎えてくれたのは、
紫の身体を持ち、両端に緑の炎がついた骨を持ったガラガラだった。
依頼主である、リージョンフォームガラガラだ。
「君達が探索者だな。私はシグレ。
君達も他のポケモンから聞いているかもしれないが、今、リンドのもりでは異変が起きている」
「異変、ですか?」
「ひと月ほど前に、洞窟に何者かが棲み付き、森には病人が出て、作物も枯れてしまった。
ポケモンもどこかに行ってしまった」
シグレの証言は、以前のものと同じだったため、ハロルド達はただ、頷いていた。
すると、それにシグレが補足を加える。
「私の調べたところによると、川の水に毒が微量だが入っていた」
「ま、まさか死んじゃうの!?」
「いや、死にはしないが、飲んだら体に害が出るレベルだ」
よかった、と一安心するハロルド。
しかし、シグレは困った表情のまま話を続ける。
「……病人の数と治療期間の長さから、薬が底を突きそうだ。だがこの辺りのきのみは使えない。
そこで、リンドのもりの隣にある森、ソクノのもりに行って、きのみを採りに行きたい。
君達には、護衛をお願いしたいんだ」
「また護衛なのね……」
コーディリアは、はぁ、と溜息をついた。
シグレは渋々とコーディリアに理由を説明する。
「護衛を頼むのは、悪いポケモンが襲ってくるためなんだよ」
「そうですか……して、報酬は?」
「300ポケでどうかな?」
「それで構わないわ(貴族だしね)」
コーディリアは裕福だという理由で、賃上げ交渉をしなかった。
「それじゃあ、早速出発し……」
「待って!」
ハロルド、コーディリア、マクベス、シグレが出発しようとした、その時。
雌のガラガラの声が、後ろから聞こえてきた。
「ソクノのもりに行くつもりなの?」
「マ、マトイ!? 探索者に護衛を頼んだから大丈夫だ」
「……誰よ、それ」
コーディリアがガラガラの目を見つめている。
シグレは、彼女について三匹に説明した。
「彼女は、私の妻のマトイだ」
「あなた達が護衛? 大丈夫なのかしら?
シグレにもしもの事がないように、ちゃんと護衛してちょうだい?」
マトイはシグレの事をかなり心配しているようだ。
シグレは大丈夫、大丈夫だ、という表情でマトイに安心させる。
それでも、マトイはまだ彼を心配していた。
「……それじゃ、改めて出発しようか」
「うん」
「シグレ、ちょっと待ちなさい! お弁当も持って行きなさい!!」
空は快晴。
ハロルド、コーディリア、マクベス、シグレは、ソクノのもりを目指している。
「ソクノのもりはきのみが豊富だが、悪いポケモンがいるという事は話したな。
君達は見たところ、駆け出しの探索者のようだが、タマゲタケについては知ってるか?」
「誰が駆け出しよ! それくらい知っているわよ。ほうしをふりかけてくるんでしょ」
コーディリアは怒りながら、シグレにタマゲタケについて詳しく説明した。
シグレはその通りだ、と頷き、探索者の横につきながら歩いていった。
すると、進行方向を塞ぐようにタマゲタケがうろついていた。
「こちらにはまだ気づいてないようです。しかし、数が多いですね……」
「倒さなければ、先に進めないようだが」
「……分かったわ。先制攻撃を仕掛けるわよ」
そう言って、コーディリアは足を前に出した。
ハロルドとマクベスも、彼女に続いて戦闘態勢を取った。
「これで、終わり!」
「おお、流石の腕前だ!」
この近辺のタマゲタケは、ハロルド達の力により一掃された。
くさタイプの技に弱いハロルドを、くさタイプの技に強いマクベスが守りながら、
コーディリアがとびひざげりで倒したのだ。
「ふぅ、これでようやく進めるな。もう少し進めば、開けた場所に出るはずだ。
そこで少し休憩しよう」
タマゲタケを退けたハロルド達は、湖に辿り着いた。
「眺めも良いし、この辺で昼食にしない?」
「そうね」
ハロルド、コーディリア、マクベス、シグレの四匹は、マトイが作ったきのみ弁当を食べた。
辛くて酸っぱい味のパイルのみや、甘い味のマゴのみなどが使われている。
だが、その中に三匹が見た事のないきのみが入っていた。
緑色のヘタに、青い実……それはまるで、茄子のようだった。
「何よ、このきのみ。見た事がないわ」
「ああ、これは『ビスナのみ』っていって、とても渋いきのみなんだ。
ヘタに覆われて日に焼けてない部分は特に渋いよ」
「……」
こんな渋いきのみを弁当に使うなんて、とコーディリアは苦笑した。
それに対しシグレは「マトイは変わり者だから」とコーディリアに言った。
昼食の後も一行は歩き続け、花畑に到着した。
ここに、目的となるきのみが、たくさんなっていた。
「おお、ここだ! やっと着いた! すぐにきのみを採るから待っ……」
その時、シグレの背後に、ポケモンが襲い掛かるのをマクベスは見逃さなかった。
「シグレ、危ないです!」
「うわっ!」
それは、タマゲタケが進化した、きのこポケモンのモロバレルだった。
マクベスはモロバレルの攻撃を食らうが、
効果は今一つだったので大したダメージにはならなかった。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
しかし、モロバレルは胞子をばら撒いてシグレの身体に障害を与える。
そのせいで、シグレは戦線を離脱してしまった。
「……来ますよ!」
「ええ、迎え撃つわ!」
「タイプ相性なんて、ひっくり返す!」
モロバレルとの戦いが始まった。
「ねこだまし!」
コーディリアはモロバレルにねこだましを繰り出すが、モロバレルはその攻撃を回避する。
「いきます!」
「♪~♪~」
マクベスは冷気を纏ったパンチを繰り出し、モロバレルの弱点を突く。
ハロルドの攻撃技はモロバレルには効果が今一つなので、なきごえでサポートする。
モロバレルはあまいかおりでコーディリア以外の回避率を下げる。
「技が当たりやすくなったわね……なら、早めに仕留めるのみ! とびひざげり!」
コーディリアは勢いよく飛び膝蹴りを放ち、モロバレルを思いっきり吹っ飛ばす。
マクベスはすぐにモロバレルに近付き、しねんのずつきでモロバレルにとどめを刺した。
「あ、危なかった……」
「……助かった。マクベスは!?」
「大丈夫です、生きていますよ。……とにかく、ここにいるのは危険です。
早くきのみを採って帰りましょう」
「ああ」
その後、シグレはきのみを急いでかき集め、リンドのもりまで帰った。
探索者がリンドのもりに帰り着いたのは、日が沈んでからの事だった。
「ちょっと、シグレ! ボロボロじゃない! 何があったのよ!?」
当然、妻のマトイは、胞子を浴びたシグレを心配する。
シグレはゆっくりとマトイに事情を話す。
「きのみに気を取られている隙にモロバレルに襲われてかくかくしかじか……。
私が無事に帰って来れたのは彼らのおかげなんだ」
「そうだったの……道理でボロボロ。今手当てするわ、ちょっと待ってね」
そう言って、マトイはシグレの手当てをした。
「はい、これで終わり。しばらく痛むと思うけど我慢して。後には残らないって保証するから。
さ、お仲間さんが待ってるわよ」
「いっ……つつ……」
「まったくもう、大丈夫だなんて言ってたのはどこの誰よ……」
そして、シグレとマトイは、依頼を完遂したお礼をハロルド達に言った。
「今日は本当にありがとう。君達には本当に助けられた。報酬は明日、届けよう」
「私からも礼を言わせて。シグレを守ってくれて、本当にありがとう」
「どういたしまして」
ハロルド達はシグレとマトイに礼を返す。
マトイは、骨を振るって三匹にこう言った。
「……夕食の時間も過ぎてしまってるでしょうし、今日はうちで夕食を食べて行って」
「え?」
「我が家秘伝のレシピの、きのみスープよ」
そう言ってマトイは三匹にきのみスープを出した。
中には、マトマのみやクラボのみなど、辛いきのみがたくさん入っていた……。
「……辛そうだな」
「どうぞ、召し上がれ」
「……いただきます」
探索者達は辛いきのみスープを飲んだ後、探索者協会へと帰った……。
その翌日、探索者教会にシグレがやってきた。
「昨日はありがとう。依頼の報酬を渡しに来た。報酬は……300ポケだったな。確かめてくれ」
「ひい、ふう、みい……うん、ちゃんとあるわね。どうもありがとう、シグレ」
コーディリアは報酬を確認した後、笑顔になった。
シグレも笑顔で三匹に返す。
「君達のおかげで、病人の治療が続けられそうだ。……本当に、ありがとう」
こうして、シグレの護衛依頼は、成功で終わった。
ビスナのみを出したのは、ポケモンSMにマーボービスナという料理が出たからです。
次回はちょっと怖い内容です。