ポケモン不思議のダンジョン Drop of Mind   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

ハロルド達は、森の異変により病人が増え、作物が枯れてしまった事を知る。
依頼人はハロルド達に護衛を依頼し、隣の森できのみを採るために出発する。
途中、タマゲタケやモロバレルとの戦闘が待ち受けていたが、見事に勝利する。
ハロルド達無事にきのみを集め、依頼を完遂した彼らは夕食を共にする。
こうして、ハロルド達の冒険は成功し、次の旅へと向かう準備をするのだった。


Chapter 05

 リンドのもりのポケモンから、とある依頼をされる……。

 

 Chapter 05

 不気味な洞窟 ゴーストポケモンにご用心

             -Geisterhohle-

 

 ソクノのもりの探索を終えた探索者達は、コーディリアの屋敷の中で休息を取っていた。

 ハロルドは下座に、コーディリアは上座に、マクベスは二番目に偉い人が座る席に座っていた。

「さて、と。まだ貴方に話していない事があったわ」

「ボクに話したい事?」

「異邦人とはいえ、流石にまともな寝床がないと貴方も眠れないでしょうから」

「今までボクは変なところで寝てたってわけ!?」

 コーディリアの話に突っ込むハロルド。

 彼女は首を縦に振った後、話を続ける。

「寝室を作ったのよ。まあ、寝室といっても、部屋を使い回しているだけなんだけどね」

「わぁ、ありがとうコーディリアさん!」

「私が貴方を受け入れた事を、感謝しなさいよ」

 コーディリアは目を閉じ、微笑みながら額にさっと手を当てて、左側に振った。

 

「さて、寝室の話が終わったところで、探索者協会に戻りましょう」

「うん」

 

「では、次はこの依頼を受けます」

「お、また繋がってるポケモンだな」

 探索者協会に戻った後、ハロルドはリージョンガラガラと繋がっているジジーロンを指差した。

 

 リンドのもりの洞窟で異変が起こりました。

 どうか、この異変を解決してください。

 報酬は、カゴのみ、おおきなリンゴ、プチふっかつタネです。

 

「あれ、ポケじゃないね」

 この依頼は、前の2つの依頼と違い、道具を報酬として受け取るものであった。

「なんにしろ、報酬には変わらないわね。受けてみましょう、マクベス」

「はい、お嬢様」

 

 ハロルド、コーディリア、マクベスの三匹は、依頼主であるジジーロンに会うため、

 三度目のリンドのもりに着いた。

 敵が現れない道を通ったため、ダメージは受けなかった。

「こうしてお越しいただきありがとうございます。私がこのリンドのもりの長です」

「貴方の依頼を受けに来ましたコーディリアです、よろしくお願いします」

 どうやら、このジジーロンは、リンドのもりで一番偉いポケモンらしい。

 コーディリアは貴族として礼儀作法に通じているので、丁寧にジジーロンに挨拶をした。

(あれ、コーディリアさん……丁寧だな)

(お嬢様は失礼にならないように話しておりますので、ご安心ください)

「今日、あなた達をお呼びしたのは森に起きている異変についての話です」

 ジジーロンは、困った顔で三匹に依頼内容について話した。

「事の始まりはひと月ほど前からでしょうか、原因不明の病に倒れるポケモンが出始めました。

 それと同時期に、森の近くにある洞窟に、何者かが住み着き始めたと噂が流れ始めました。

 あれが、問題の洞窟です」

 ジジーロンはそう言いながら、窓の向こうを指差した。

 森に流れている川のちょうど上流の方向に、その洞窟はあった。

「もし、洞窟に住み着いた者が邪悪な者ならば、どうにかして排除して頂きたいのです」

「分かりました。原因を必ず調査いたします」

「ありがとうございます、どうかよろしくお願い致します」

 依頼を引き受けた三匹に、ジジーロンは深々と頭を下げた。

 彼のためにも、依頼は必ず成功させなければならない。

 

「リンドのもりは、静かだねぇ」

 この森は、異変のせいか活気に欠けているような気がするのは気のせいだろうか。

 三匹は情報を集めるため、森のポケモン達に聞き込む事にした。

「あっ、先日は護衛ありがとうございました!」

「どうもありがとうございました」

 最初に聞き込んだのは、以前に護衛した事があるケララッパだった。

 ケララッパは三匹に笑顔を見せた後、すぐに困り顔に変わる。

「まさか、森がこんな事になっているとは思いませんでしたよ……」

「そうですね、結構暗いですし」

 森にいるポケモンは少なく、この時間にしては、やけに静かだ。

 皆、異変のせいで外に出ていないだろう、とハロルドは推測した。

「そういえば井戸端で三匹のポケモンを見かけたって話を聞きましたよ。気を付けてくださいね」

「三匹のポケモン?」

 ふむ、とコーディリアは首を傾げた。

 彼らの事を知る事になるのは、まだ先の事である。

 

「ああ、君たちか。先日はありがとう。お陰で当座は凌げそうだ」

 次に三匹が話を聞いたのは、リージョンガラガラのシグレだった。

 彼によれば、ハロルド達のおかげで妻のマトイとは上手くやっているようだ。

 しかし、原因を解決しなければ、再び生活は苦しくなってしまう……。

 ハロルドにまた、守るべきものが1つ増えた。

 

 三回目に聞き込んだポケモンは、ルリリだった。

 ルリリは、尻尾に乗ってぴょんぴょんと跳ねながら三匹にこんな話をした。

「みんなはしんじてくれないけど、あたし、みたの。

 よるのもりにいったら、おばけがいたんだよ! あたし、こわくてにげちゃった」

(ノーマルタイプを持ってる癖に逃げるんじゃないわよ)

 コーディリアは、ルリリが逃げた事にツッコミを入れた。

 しかし、「おばけがいた」という情報は、重要だ。

「ありがとう、ルリリちゃん。情報ありがとね」

「うん! おねえちゃん、どういたしまして!」

「……あの、ボク、男なんだけどな……」

 ルリリに女の子と間違われたハロルドは、苦笑しながらその場を後にするのだった。

 

「リボンをつけていて声も高いので、あなたを女と間違えるのも無理はありません」

「まぁ、まだあの子は子供だし、気にしない方がいいのかもしれないね」

「ハロルド、マクベス、有力な情報が手に入ったところで、洞窟に向かいましょう」

「うん」

 

 探索者達は川沿いの道を歩き、洞窟へと向かった。

「うわ、コイキングが……」

 川をよく見れば、ちらほらとコイキングが腹を上にして瀕死になっているのが見える……。

 この森に何か異変が起きているのは確かなようだ。

「なんて痛ましい……」

 同じみずタイプのハロルドは、この光景に心を痛める。

 コーディリアは、表には出さなかったが、怒りに燃えており、右手を握り締めていた。

 マクベスがそれを理解するように軽く頷き、しばらくすると探索者達は洞窟に到着した。

 入り口の前には、ガスじょうポケモンのゴースが宙に浮いている。

(どうやら、あいつが見張りみたいね……。……くっ、私の攻撃が通用しないなんて)

 コーディリアが使える攻撃技は、ゴースには一切通用しない。

 見破ったり、嗅ぎ分けたり、メガシンカしたりすれば、攻撃は通るようになるが、

 そんな手段は持っていない。

 そもそも、三匹の中で気付かれずに攻撃ができるのは、ハロルドしかいないのだ。

 

「それ!」

 ハロルドは遠くから水鉄砲を放ちゴースを倒した。

 これで、安全に洞窟の中に入る事ができるようになり、三匹は迷わず洞窟の中に入った。

 

「……暗いわね」

 洞窟の中は薄暗い。

 黴と埃の臭いのする空気が、探索者達を出迎えた。

 罠にかからないように、慎重に進んでいく必要がありそうだ。

「……」

 マクベスは、洞窟の中を暗視能力で調べてみた。

「黴と埃の臭いに混じって、僅かに木の臭がします」

「木?」

「恐らく、くさタイプのポケモンがいるのでしょう。

 しかし、何故洞窟にくさタイプのポケモンが……?」

「何にしろ、先に進まなきゃ分からないわね」

 そう言って、コーディリアが一歩前に進むと……。

 

「きゃあああ!」

 きりかぶポケモンのボクレーが、コーディリアに迫ってきた。

「お、お嬢様! しっかりしてください!」

「し、しっかりしてるわよ! こ、こんなの、大した敵じゃないわ!」

(……コーディリアさん?)

 そう虚勢を張るコーディリアの足は、少しだけ震えていた。

 ハロルドはそれを少し不思議に思いながら、ボクレー達に戦いを挑んだ。

 

「……ゴーストに効く技が使えない私が、悔しいわ」

「だから、私がいるのです」

 ボクレー達は、マクベスのれいとうパンチによって倒された。

 コーディリアは、マクベスに守られた事に対し、悔しそうな表情をしていた。

 マクベスはそのために自分がいる、とコーディリアに目配せをした。

 ふと、倒れているボクレーの傍から、道具が3つ転がってきた。

 それは、ゴローンのいしと、いしのつぶて2つ、いや……。

「……なしのつぶてだわ!」

 いしのつぶてと、それのそっくりどうぐ、なしのつぶてだった。

 これは、いしのつぶてと違い、使うと「こらえる」状態になる。

「これ、そっくりどうぐだったの! 初めて見るね」

「ええ……このなしのつぶては、使い所を間違えなければ有用ね。

 でも、『そっくり』だから、間違えないようにしないと」

「うん」

 

 三匹が洞窟の奥に進むと、大きな扉と中央に何かを乗せる台座を持ったマリルリの石像がある。

「開かないなぁ……」

 ハロルドが扉を調べてみるが、その扉は開かず、鍵か何らかの仕掛けがあるようだ。

「どうやって開ければいいのかしら? マクベス、調べなさい」

「かしこまりました。おや? 石板がありますね」

 マクベスは、マリルリの石像の近くにある石板を読んでみた。

 そこに書かれていた文章を、マクベスは口にする。

「二つの属性を表せ」

「二つの属性……? この辺に、そんなものなんてあるのかなぁ」

 ハロルドが辺りを調べてみると、白や橙色の奇妙な形の石が散らばっていた。

 すると、ハロルドが何かを閃いたように、青い石と桜色の石を拾い、台座の上に乗せた。

「あっ、動いた!」

 その時、扉の方からガコンという音がした。

「どういう事なの?」

「これは、マリルリのタイプと同じ色の石を乗せればよかったんだ。

 マリルリはみず・フェアリータイプだからあおいグミとさくらグミの形をした石が正解なんだ」

「へえ~、そうだったのね」

 知識が豊富なコーディリアだったが、ハロルドの説明に感心した。

 そしてコーディリアが扉を開けると、中央に魔法陣が描かれた部屋に入った。

 魔法陣の中央には、ゴーストポケモンらしき影がいる……。

 探索者達の気配を感じると、影は振り向く。

「おやおや、ちょうど良いところにお客さんだ。

 実験用のエネルギーが足りなくなってきたところです。

 しかもなかなか生きのいい者達のようですねぇ。これはいい研究材料だ、歓迎しますよ」

「実験用? なんの実験のため?」

 コーディリアがそのゴーストポケモン、ゴーストにどんな事をしているか質問する。

 ゴーストは微笑んだ後、三匹にこう言った。

「お前達の主となる者の名を教えてあげましょう。私はゴーストのフーリ。

 私の下僕となる事を光栄に思いなさい」

 フーリがそう言うと、ゴースやボクレーが彼の周囲に現れ、探索者達に襲い掛かった。

「来ますよ!」

「……分かったわ!」

 フーリと彼の下僕のゴーストポケモンと探索者達の戦いが始まった。

 

「えい!」

 コーディリアは、いしのつぶてをフーリに投げつけて攻撃する。

 ゴーストタイプに有効打を与えられないコーディリアは、これしか攻撃手段がないのだ。

「歯痒いわ、こんな奴を攻撃できないなんて」

「大丈夫だよコーディリアさん、ボク達がやるからね」

「……ハロルド……。分かったわ。マクベス、ハロルド、思いっきりやりなさい!」

「はい、お嬢様!」

 コーディリアがハロルドとマクベスを鼓舞し、二匹の能力を高める。

「うわ!」

 ボクレーはハロルドを驚かして怯ませ、もう一匹のボクレーがだましうちで攻撃する。

「参ります」

 マクベスはしねんのずつきでゴースの弱点を突いて大ダメージを与える。

 ゴースはマクベスにしたでなめるで彼の弱点を狙い反撃をしようとしたが、

 コーディリアが割って入り無効化される。

「残念だけど、私にもその攻撃は効かないわよ。それ!」

 コーディリアは、ゴローンのいしをフーリに投げる。

 ゴローンのいしは放物線を描き、フーリに命中した。

「い、痛いですね」

「私は負けないわ。貴方のように森を汚す卑劣な奴に」

 コーディリアは腕を組み、口角を上げる。

 フーリは不快な表情になって舌打ちする。

「ミミロップ如きに何ができる。ほれ、あのメタグロスを倒してやろう。シャドーボール!」

 フーリはマクベスに向けて黒い塊を放った。

 マクベスは特防が低く、さらに弱点タイプなので当たれば大ダメージは避けられない。

「危ない!」

 ハロルドはみずでっぽうで妨害しようとするが、ボクレーが立ち塞がってしまう。

 そして、シャドーボールがマクベスの顔の先まで迫った時、コーディリアが飛び出してきた。

「……マクベスは、やらせないわ!」

 フーリにとびひざげりを放つと同時に、シャドーボールをまともに受けるコーディリア。

 もちろん、どちらにも攻撃は通じなかったが、形勢の逆転には成功した。

「貴方はそれを繰り返す!」

 コーディリアはさらにフーリにアンコールをする。

「これで、貴方の攻撃は私には通用しなくなった。さあ、一気に攻めるわよ!」

「うん!」

「れいとうパンチ!」

 マクベスは氷を纏ったパンチでボクレーに大ダメージを与える。

「いっくよー、みずでっぽう!」

 ハロルドはフーリに狙いを定めて水鉄砲でフーリを濡らす。

 マクベスは残ったボクレーにれいとうパンチでとどめを刺し、

 残るはゴースとフーリのみとなった。

「♪~♪♪♪♪~」

 まず、効果は今一つながらも、マクベスはチャームボイスで全体攻撃をする。

 コーディリアは動き回りながら相手のシャドーボールを引き付ける。

「はぁっ!」

「それっ!」

 ハロルドのみずでっぽうとマクベスのしねんのずつきがゴース達に命中し、彼らは倒される。

「残るは貴方のみですね」

「やめろ……もう、私の負けだ。だから、もう、戦うのは」

「貴方が瀕死になったら、戦うのをやめます」

 そう言って、マクベスはしねんのずつきでフーリにとどめを刺した。

 

「う、ぐ……」

「貴方をジバコイル警察に突き出すわ。しっかり、罪は償いなさいね」

 フーリが瀕死になった事で、周りのゴーストポケモン達は降伏した。

 コーディリアはフーリを鞄の中にある紐を使って拘束する。

 しばらくすれば、ジバコイル警察が来て、彼を逮捕するだろう。

 

「……これが、異変の原因だったんだね」

 洞窟の外から見えた川へと流れていた水は、

 くさタイプのポケモンから盗んで溶かした毒の粉を始め、

 実験に使う薬品をそのまま垂れ流していた物らしい。

 フーリが倒された今、これ以上廃液の流出は無いだろう。

「これで、リンドのもりは平和になりますね」

「そうね。ジジーロンに報告しに行きましょう」

「かしこまりました、お嬢様」

 

 洞窟を後にした探索者達は、ジジーロンに事のあらましを説明した。

「……というわけです」

「そうですか……やはり、邪悪なポケモンが住み着いていたのですね。

 報酬のカゴのみ、おおきなリンゴ、プチふっかつタネです。お納め下さい」

「ありがとうございました」

 ハロルド達は報酬の三つのアイテムを受け取った。

 やがて、ジジーロンは満面の笑みを浮かべてこう言った。

「あなた方のおかげで、じきにこの森も元に戻るでしょう。本当にありがとうございました」

「……はい!」

 一連の事件が解決した事により、ハロルド、コーディリア、マクベスも、

 晴れやかな表情になった。




さくらグミは、ポケダン本編に登場しないフェアリータイプのグミです。
ひっそり「アローラ」を「リージョン」に修正しています。次回は箸休めです。
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