ポケモン不思議のダンジョン Drop of Mind 作:アヤ・ノア
ベシク街のカモネギは、亡き祖父から譲り受けた家宝の長ネギを悪いポケモンに奪われた。
彼は勇敢な探索者達に助けを求め、ハロルドは彼と共に山荘へ向かう。
ハロルド達は隠し通路を見つけ、敵と戦いながら進む。
その道中で彼らはお尋ね者集団と対峙し、激しい戦闘を繰り広げる。
見事に勝利を収め、長ネギを取り戻し、探索者協会へと帰還するのだった。
ボクは、この人を知っている。
Chapter 08
謎のお尋ね者 異邦人は頭を捻る
-Sunder-
お尋ね者集団「非情なる鍵」を退け、家宝の長ネギを取り戻した探索者達。
「……ハロルド、貴方あいつらを知ってるのね」
コーディリアがルキウスを見て頭を押さえたハロルドを訝しそうに見ている。
「うん、知ってるけど……思い出そうとすると……痛っ! こんな風に頭が痛くなるんだ。
ねえ、マクベス、なんでだか分かる?」
「私の推測ですが……思い出したくないという気持ちが頭痛を起こしているのでしょう」
「思い出したくない気持ち……?」
「心に負ったダメージ、恥ずかしい記憶。
誰でもそういうのは掘り起こしたくありませんよね? それと同じですよ」
マクベスは、ハロルドが頭痛を起こす理由をそう推測した。
つまり、ハロルドにとっては一番嫌な記憶らしい。
「でも、それが貴方の人間時代の失われた記憶なら、
いつかは思い出さなきゃいけない時が来るわ。それまでは普段通りに暮らしなさい」
「ありがとう、コーディリアさん」
「本当の事を言っただけよ」
コーディリアと会話してすっきりしたハロルドと、彼と会話したコーディリアは、
笑顔でコーディリアの屋敷に戻っていった。
マクベスも安心して、仕える当主が住む屋敷に戻っていく。
「コーディリアさんって本当にいい子だなぁ。足が綺麗だし、強いし、何より優しいし」
「あら、私の事を褒めてくれてありがとう。でも、私って優しかったのかしら」
「うん、優しいよ」
「それは、貴方が良いポケモンだからではなくて?
貴方が少しでも堕落したら、私、容赦しないわよ」
コーディリアは決して悪には容赦しない。
悪の心に堕したものにも、心あるお尋ね者にも。
それは過激ともとれる行動だったが、執事のマクベスはあえて止めなかった。
(お嬢様は本当に悪い存在ではありません。私は、そう信じていますよ……)
ハロルドは、コーディリアに叱られないように慎重に彼女の屋敷を歩いていった。
「ひ、広いねぇ……。コーディリアさんがいないと迷っちゃうよ」
「こういう場所に住まわせているのは名誉なのよ? もっと喜びなさいよ」
「じゃあ、ありがとう、コーディリアさん」
ハロルドは改めて、コーディリアの屋敷を彼女と共に歩く。
自分の第二の故郷であるこの広い屋敷、きちんと覚えておく必要があるとハロルドは思った。
「ここがこのお屋敷の使用人の部屋。貴方はここで寝るのよ」
「ありがとう」
ハロルドはここで寝る事になっていた。
中はリビングと比べて質素だったが、最低限の設備は整っていた。
「マクベスもここで寝るの?」
「いいえ、マクベスは専用の部屋よ。彼は私にとって一番大切な従者だもの」
「お、お嬢様、そう仰られると私、大いに喜びます」
コーディリアに褒められたマクベスは少し照れた。
一応、マクベス(メタグロス)は無性別だが執事なのでコーディリアは「彼」と言っているのだ。
ちなみに、コーディリアとマクベスの部屋にはハロルドは入らなかった。
もちろん、理由は二匹に叱られるからである。
「さ、少し休んだら、また依頼を受けに向かうわよ」
「はーい」
ハロルドはコーディリアと別れ、使用人の部屋に入っていった。
「……」
ハロルドは、使用人の部屋の中で、一人物思いに耽っていた。
自分の事を知っている、お尋ね者のルキウス。
思い出そうとすると、痛くなる頭。
もしかしたら……とハロルドは推測するが、
コーディリアの言葉を思い出し、すぐにかぶりを振った。
―それまでは普段通りに暮らしなさい。
そう、今はまだ、知るべき事ではないのだ。
今はまだ、だが……。
その頃、ルキウス、ジオ、ミリアは、暗い闇の中で何かを計画していた。
「あの女は忌々しい『正義』の心を持っている……! しかも、良家の娘ではないか……!
必ずや仕留めてみせるぞ……!」
それは、コーディリアの暗殺計画であった。
あの時の戦いで、三匹はコーディリアの正義感の強さと、彼女が貴族である事を知った。
故に、生かしておけば、いずれは彼女に敗れるだろうと危惧したのだ。
「作戦はこうです。まず、彼女の屋敷に忍び寄り、
彼女が単独で行動している時を狙って毒の入った紅茶を差し出します。
身体に毒が回った時、彼女の命は終わります」
「おお……! では、任せるぞ、ミリア」
「かしこまりました」
暗殺を担当するのは、ミリアになった。
彼女はメイドに変装して、コーディリアの屋敷に忍び寄った……。
「さて、そろそろハロルドを迎えなくちゃね」
「お嬢様、紅茶でございます」
そして、コーディリアはハロルドを迎えるため、
使用人の部屋にいるハロルドを呼ぼうとすると、後ろから誰かの声がかかった。
それは、片手に紅茶を持ったメイドだった。
「あら、紅茶? ちょうど喉が渇いていたところに。ありがとうね、メイドさん」
「どういたしまして」
そう言って、メイドは屋敷から立ち去っていった。
しかし、コーディリアにとって彼女は見慣れないメイドであったため、首を傾げた。
「……あんなメイドなんて、私のお屋敷にいたのかしら? でも、紅茶はありがたいわ。
いただきます」
それでも、紅茶で喉を潤す事はできる。
コーディリアはソファに座った後、紅茶を飲んだ。
すると、彼女の顔が青ざめ、口を押さえる。
「何、この変な味……。身体が痺れるわ……。苦くて甘ったるい味が、身体中に広がる……。
もしかして……これって、ど……く……!? ああ……やられちゃったわ……」
そして、コーディリアの身体は前のめりに傾き、バタンという音と共にテーブルに倒れた。
紅茶の入ったカップは衝撃により宙を舞い、テーブルに叩きつけられ、壊れた。
毒の入った紅茶は、テーブルに広がるのだった。
タイトルは「Seraphic Blue」を参考にしました。
次回はヒロインを助ける回です。