その全貌を隠れて聞いていたミルレオスは、ミゲス邸からの脱出を図るが、リヴェに見つかってしまう。
憧れた人がミゲス伯爵のような、最低な権力者に協力している事が許せず、怒りを顕にするミルレオス。
そんなミルレオスを無事に外に逃がすため、リヴェは大きな布をミルレオスに被せ、ミゲス伯爵にバレないように、竜荷車に運び、ミゲス邸を後にする。
だがリヴェはミゲス伯爵の命令を実行するつもりであった。それを阻止し、ルピナス孤児院を守るため、ミルレオスは自分たちにとって孤児院がどれだけ大切な居場所なのか理解してもらうため、あえて孤児院に案内すると言った。
ミルレオスとリヴェはルピナス孤児院に竜荷車に乗って向かった。
その竜荷車の運転手は、シュレイド王国の学者、カンピアである。
それはカンピアとミゲス伯爵の繋がりがある事を証明する事実だ。
当然、この竜荷車に乗ってきたリヴェは既にこの事を承知している。
大貴族であるミゲス伯爵、国の偉大なる学者であるカンピア。
世間体から見ても、この2人の繋がりはなんの問題も無さそうだが、ミゲス伯爵の裏の顔を知ったミルレオスにとっては、大問題だった。
リヴェと同様でカンピアも、ミゲス伯爵の貪欲で卑劣な実態を黙認している。それどころか、手助けしている。
何故、そこまでミゲス伯爵に従うのか?
走る竜荷車に揺られながら、ミルレオスは深く考え込んでいた。
この時、ミルレオスは運転手のカンピアの隣に座り、リヴェは荷車で、腕を後ろに組みながら寝っ転がっていた。
「私とミゲス伯爵の繋がりが、不思議ですか?」
「えぇ?」
それを察したのか、カンピアが隣のミルレオスに話しかける。
「私とリヴェ副長は、ミゲス伯爵とは長い付き合いなんです。私達は表向きでは、国の発展にまともに貢献してきたように見られていますが、その実態はミゲス伯爵の手引きによって、たまたま今の地位に、成り上がってこれただけの人間なんです。ミゲス伯爵はこれまで確かに、非道なやり方で国の発展を行ってきました。ですがそのおかげで今のシュレイド王国があるのも事実です」
「⋯その為なら、どれだけ人を殺しても、僕たちの居場所を奪っても許されるんですか?」
「⋯⋯」
無言のまま、カンピアは顔をしかめる。
「ルピナスは、孤児たちにとって最後の居場所なんです。いくら国の権威だからって、やすやすと手放すことは出来ない」
「はぁ。そうですよね。リヴェ副長、もういいでしょ?引き返しましょうよ」
「ダメだ行け」
「でも、この子はまだ!」
「お前らがなんと言おうと、アタシの意志は変わらない」
「分かりましたよ⋯⋯」
カンピアは後ろの荷車にいるリヴェの様子を伺いながら、ミルレオスの耳に顔をそっと近づける。
「あぁ言ってますけど、リヴェさんは君の生まれ育った孤児院を潰したり、そこから君たちを追い出したりすることなんてしませんよ」
「え?どうしてですか?」
「あの人も、幼い頃、家族と住処を失っているんです、その辛さを知っています。だからこそ君にも同じ思いをして欲しくは無いはずです」
「余計な事は言わんくてえぇ!」
ミルレオスが返事をする前に、話が聞こえていたリヴェが大きな声で一喝した。
それに対し、ため息をつき、前を向いたカンピアは、真剣な面持ちで、運転に集中した。
※※※
張り詰めた空気のまま、竜荷車はミルレオスの案内で迷わず孤児院に着いた。
「私はヴェルド王国に落下した、モンスターの部位の調査が残っているので、これで」
「あぁ」
ご苦労、の一言ももらえず、竜荷車は孤児院を後にした。
「なんとも鮮やかな看板だな」
リヴェが目に入った孤児院の看板に愚直な感想を漏らした。
「マザーとゼフィアに事情を話してきます。少し待ってて下さい」
「ちゃんと、話せよ?」
「分かっています。僕はまだ諦めていませんから」
「⋯勝手にしろ」
ミルレオスは恐る恐る玄関の扉を開け、孤児院に入る。
「た、ただいま⋯」
入る直前に、自分が勝手に出て行ったことを思い出し、気まずくなった。
「!?ミル!全くあんたねぇ!」
出迎えてきたのは血眼で歯を食いしばり、火を灯した赤い燭台を掲げた、ゼフィアだった。
燭台をミルレオスの方に向け、離さないように胸ぐらを掴んで、脅すように火を近づける。
「熱ぃ!ご、ごめんなさい!あの時は、ああするしかなくて!」
引きつった顔で、強く目を瞑り、両手を上げ、参ったと言わんばかりの態度をとった。
だがゼフィアは手を緩めなかった。
「問答無用!焼かれろ!」
聖女とは思えない程の言動で、ゼフィアがまるでモンスターのように恐ろしい存在に感じる。
「ま、待ってくれ!話が!重要な話があるんだよ!」
「神よ!この者に炎の罰をお与え下さい!」
ミルレオスの話を全く聞く気がなく、燭台の火をどんどん顔に近づけて来るゼフィア。
「その辺にしておきなさい、ゼフィア」
火がミルレオスの頬をちりつかせた時、部屋の奥から現れたマザーの言葉がゼフィアの行動を静止させた。
「マザー!でも!」
「ミル、あなたのやった事は、確かに許し難い事です。でもそれはルピナスのためを思ってやった事、それは分かっています。そんなあなたが、重要な話があるとここに戻ってきた。この話を聞きましょう、ゼフィア」
「⋯分かりました。マザーがそう言うなら⋯」
ゼフィアは胸ぐらを掴んでいた手を離した。
「はぁ⋯はぁ⋯⋯勝手に出て行ったことは謝る。だけど、こっちも色々あったんだ⋯」
ミルレオスは2人に、ミゲス邸であった出来事を話した。
・ミゲス伯爵の本性
・ 戦争がミゲス伯爵の策略によって起こされていた事
・ 武器の大工房を建設するのに孤児院が邪魔な事
・リヴェ副長とミゲス伯爵の繋がり
・リヴェ副長がルピナス孤児院を潰そうとしている事
「ちょっと待って、一体何がどうなってるの!?」
「困惑するのもわかるけど、全て本当なんだ。今はリヴェ副長をどうにか説得しないと!しかも、もうリヴェ副長は玄関の前で待ってるんだよ!」
「そんな事急に言われたって、説得ってどうすれば!?」
「おーい、新兵!いつまでかかるんだ?」
その時、外から待ちくたびれたリヴェの声が聞こえてきた。
「と、とにかく僕達にとってルピナスがどういう存在か、理解してもらえればいいんだ!ここまで連れてきてくれたカンピアさんも、リヴェさんはそんなに悪い人じゃないって言ってた!だから頼む!協力してくれ!」
ゼフィアの両肩をガッツリと掴んで揺さぶりながら、必死に説明するミルレオス。
その熱意が伝わったのか、ゼフィアは戸惑いながらも力強く頷いた。
えーん!えーん!
奥の部屋から泣き声が聞こえてくる。
「あら、寝てたはずのリン(赤ちゃん)が泣いてる。ちょっと行ってくるわ」
「はい!」
マザーは、急いで奥の部屋に向かった。その時。
ガチャ。
「もーいいだろ、入られせてもらうぜ」
リヴェがミルレオスの合図を待たずに、玄関の扉を開け中に入ってきた。
「も、もう大丈夫です、リ、リヴェ副長。どうぞこちらへ⋯」
「は、初めまして⋯⋯!」
「フィア姉、お菓子まだ〜?」
「お菓子?」
「エレク!?」
驚く2人の後ろにいつの間にかいた孤児のエレクは、しょぼしょぼした目で指を咥えながらぼやいた。
「エレク!今はちょっと待ってて!」
「僕、お祈り頑張ったのに、朝からずっと待ってるよ〜」
「はーい、もう少し、もう少しだけ、待っててね!」
「ねぇ〜早くしてよ〜」
ゼフィアが焦りながら、エレクを奥の部屋に返そうと、少し強引に背中を押そうとした。
「それだ!」
それを見ていたミルレオスは何かを閃いたように、ゼフィアを指さした。
「え?」
「リヴェ副長!これがルピナスでの生活なんです。ルピナスの事を教える約束をしましたよね?皆と一緒にお菓子を食べませんか?」
「何だと?」
「ミル!?何言ってんの!?」
「いや、口で説明するよりも、実際にやってもらった方が分かりますから、いいですよね?」
その時、リヴェは近くの柱に手をかざし凝視している。
「⋯ん?あぁ、約束は約束だ。いいだろう」
「よし!ゼフィア、いつも通り頼むぞ!」
「あぁ、もう分かったわよ!エレク、ミル!すぐに台所に来て!リヴェさんは、客室で待っててください!こっちです!」
「はぁ、ちょっと待て」
リヴェは腰から朱色の布を取りだし、それを使って口元を覆った。
頬の傷跡を子どもたちに見せないために配慮したのだ。
「これで、いいだろ」
「あ、ありがとうございます!」
ゼフィアはリヴェを連れ、客室へ。
「エレク、僕達も手伝うぞ!」
「うん!」
ミルレオスはエレクと共に台所へ向かった。
そして後にゼフィアも合流し、お菓子作りが始まった。
※※※
孤児院の客室には、幼き孤児たちが行儀よく円形に並んで座り、お菓子が運ばれてくるのを今か今かと待ちわびている。
だが今回はその孤児たちに混じり、大きな胡座をかいているリヴェが居る。
当然、孤児たちはそれに対し、不思議そうな眼差しを向けているが、またしてもリヴェは客室の柱をぼーっと見つめていた。
「なんで、口元隠してるの〜?」
1人の幼き少年が沈黙に耐えきれず、抱いていた疑問を子ども気のまま無垢に問う。
「あ!コラ!それは聞いちゃダメ!ご、ごめんなさい!」
その発言に対し、横に座っていた年上であろう少女が制止しながらすぐに謝罪した。
少女は恐る恐る、リヴェの顔色を伺った。
リヴェは少年と少女の方に向き直り、気にしなくていいと言わんばかりに、ゆっくりと首を横に振り口元を覆っている布を摘んだ。
「口を怪我しちまってな。これが無ぇと痛くてたまらねぇんだ」
「えぇ⋯それは、かわいそう。それじゃ、ご飯を食べる時も痛いの?」
「そーだな、めっちゃ痛ぇ」
「どーしよう!?これじゃ、兵隊さんお菓子食べられないんじゃないの!?」
「あー⋯いや、アタシは食べなくていい」
「お口が痛いから?」
「そー⋯だな。あぁ、そーいう事でいい」
「えー!?それじゃご飯食べれないじゃん!?どーやって生きてんの!?」
「コラッ、マーツ!兵隊さんを困らせる事言わないの!」
マーツと呼ばれた少年は、喋りすぎたお叱りで少女からチョップを貰った。
「痛いよ⋯キアノ姉⋯」
キアノ姉と呼ばれた少女は、ルピナス孤児院の中でもミルレオス、ゼフィアの次に年上で孤児たちの世話もよくこなす、頭の賢い子だ。
そのやり取りを見て、やや緊張気味だった他の孤児たちも、しだいに笑顔になり、場の空気が和やかになった。
「お待たせ〜!今日のお菓子は、ガレットよ〜!」
台所からお盆に山盛りのガレットを持ったゼフィアが、慎重に歩いてきた。
「ガレット?」
「ガレットだ!やったぁ!」
ガレットは円形で厚めのクッキーのようなお菓子で、バター風味の甘じょっぱい味が美味く、孤児たちの大好物である。
もちろん、このガレットはゼフィアの得意手料理である。
「リヴェ副長の分もありますよ!」
ゼフィアの後ろから出てきたミルレオスとエレクも、同じように山盛りのガレットを持ってきた。
リヴェの目の前に置かれた山盛りのガレットは、焼きたての香ばしい匂いがして、とても食欲をそそる。
「アタシは要らない」
「そうだよー、兵隊さんはお口痛い痛いしてるから食べれないんだって!」
「お前らだけで食えばいいだろう」
「何言ってるんですか、これもルピナスの生活の一部なんですよ。ガレットを知らないのであれば、味も知ってもらわないと」
ミルレオスはガレットを一つ取ってリヴェの前に差し出した。
「せっかく沢山作ったから、遠慮せずに食べてって下さい」
「⋯はぁ、どーせ食べるまでそーやって言い続けるんだろ?分かったよ」
リヴェは渋々、渡されたガレットを受け取った。
兵士として長く王国に使えてきたが、こんな庶民的なお菓子など、食べる機会は無かったため、その味に少しだけ興味が湧いていた。
「痛くても食べれるの!?」
「あー、まぁ我慢して食べるよ」
「頑張って!」
頑張れ、頑張れ、とマーツにつられて孤児たちがリヴェを応援した。
リヴェはものすごく気恥ずかしくなった、わけではないが、自身の頬の傷跡を孤児たちに見られないように、後ろを向いた。
口元の布を捲り、ガレットを1口頬張る。
ザクッとした外側の食感に対し、中身はホロホロで甘じょっぱい味が口の中に広がる。
うん、質素だが中々美味いな。
感心しながら小さく頷いた。
「え?⋯⋯」
ふと、目線を上げると、孤児たちから目を逸らしたはずなのに、マーツと目が合った。
マーツは驚愕したまま開いた口が塞がらなかった。
リヴェの傷跡をまじまじと凝視している。
「やべっ!」
急いで布を下ろしたが、マーツはその場から逃げるように離れた。
傷跡を見て驚いちまったか?
弁解の言葉を考えるリヴェ。
マーツはガレットを食べているエレクの元に向かうと、耳打ちで何かを伝えた。
「えぇ!本当!?」
すると二人は勢いよくリヴェに駆け寄ってきた。
「ねぇ!兵隊さん、そのカッコいい傷、もう1回見せて!」
「は?」
「あ〜だから、兵隊さんを困らせちゃダメだって!」
「ふっ、構わねぇさ⋯お前ら、ビビるなよ」
リヴェはゆっくりと布を外し、大きく裂けたように見える口元を、孤児たちに晒した。
きっと、みんな怖がってしまう。そう思っていたが、意外な反応が返ってきた。
「すっげー!かっけぇええええ!」
「やべぇ!強そー!」
「こんな傷見た事ない!竜の尻尾みたい!」
「大きな口!」
「⋯そ、そうか?」
多くの人がリヴェの傷跡に対し、凶悪や醜悪なイメージを抱き、時としてその言葉を何度も受けてきた事があったが、孤児が口にしたのはかっこよさであった。
男女の隔たりなく、それぞれが独自に賞賛の声をあげている。
兵士としての活躍を称賛されることは多かったが、自分の容姿に対し賞賛を受けることは初めてだった。
「変なガキどもだ⋯⋯」
孤児たちから目を逸らしながらも、微かだがそれでも確かに笑みをこぼしていた。
その後、リヴェと孤児たちの交流は続いた。
祈りの儀式や竜狩りごっこ、赤ちゃんの世話までして、その日はルピナスの必要性を余すことなく伝えようとした。
だが、何をしている時も、リヴェは孤児院の柱や壁を注視したり、触ったり、軽く叩いたりしていることが多かった。
そして日暮れ時、ミルレオスはルピナスの必要性を十分に伝えることが出来た、そう思ってもう一度、あの質問をぶつける。
ゼフィアも、マザーもミルレオスの隣で祈るようにそれを見ていた。
「これが、僕たちの住むルピナス孤児院です。リヴェ副長、分かって貰えましたか?」
「⋯⋯⋯⋯あぁ」
「それじゃあ――」
「今すぐ、出ていけ」
「え?なんで!?」
「アタシの考えは、変わらない。いや、むしろ正しかったと再認識した」
「どうして!?」
そうすると、リヴェはおもむろにミルレオスの服を掴んで、近くの柱に力づくで顔を近づけさせる。
「ミル!?」
「おい、新兵、これが見えるか?」
「え?」
「この柱、至る所に黒ずんだ跡があるだろ?」
「そ、それが?」
「朽ちてんだよ、この柱。それだけじゃねぇ」
リヴェは柱を、コンコンと軽く叩いた。
すると、その音が僅かだが、洞窟の中にいるように反響して聞こえてくる。
「表面に黒ずんだ跡、叩くと中に空洞があるかのような音。この柱はもうじき、折れる」
「えぇ!?」
「そんな!?」
「ここだけじゃねぇ、この建物の殆どの柱が、既にボロボロだ。古い建物が崩れる前兆でもある。だから崩れる前に――」
「そんなの嘘だ!」
ミルレオスは、遮るように声を荒らげる。
「リヴェ副長!あなたは兵士だ、建物の知識なんてそんなに詳しくないはずです!僕たちを無理やりここから追い出すためにデタラメを言っている!」
「ちょっとミル!?」
「デタラメじゃねぇ。アタシの知り合いに建築の仕事をしている奴がいる。昔、そいつから聞いた知識だ。実際に崩壊した建物も見た事がある。だから、これ以上、ここに住むのは危ねぇんだよ」
「嘘だ!絶対そんな事ないっ!」
「アタシの言ってる事、お前らは分かったか?」
「⋯⋯⋯⋯⋯は、はい」
リヴェの正論に対し、返す言葉をなくし、項垂れるゼフィアとマザー。
それでもミルレオスは、何とか留まる理由を考えた。
「今までこの建物が崩れそうな事なんて無かった!だから今は大丈夫なんです!」
「仮にこの建物が大丈夫だったとしても、ここはあのミゲス伯爵が目をつけた場所だ、どんな手を使っても自分の物にしようとしてくる。女、子供であろうと容赦はしない。どっちみち、この建物は手放すしかないんだ」
「僕は!ルピナス孤児院を守るために兵士になったんだ!ここを守るためだったら、何だってする!ミゲス伯爵なんて恐いもんか!僕たちはここから離れない!」
「ちっ!いい加減現実を見ろ!てめぇが本当に守りたかったのは、今にも崩れそうなこのボロボロの孤児院の建物か?それとも一緒に過ごしてきた兄妹達か?どっちだ!?」
「どっちもです!」
リヴェは思いっきり、ミルレオスの手を掴み、ボロボロの柱に手を付けさせ、その上から覆い被せるように自分の手を重ねた。
そのまま力強く、柱ごと手を握りしめた。
柱はミシミシと嫌な音を立て軋んでいく。
「うがぁぁぁ!」
「分かるだろ?どんだけ脆くなってんのか。今この建物がどれだけ危ねぇのか。それでもまだここに居ると言い張るか!?あぁ!?」
「も、もう分かりましたから!これ以上はやめて下さい!」
ゼフィアがそう言ってもリヴェは一切、力を緩め無かった。
ミルレオスは握られている手を、反対の手で何度も叩き、痛みを訴えている。
「くっ⋯うぅ⋯⋯ダメ⋯だ」
「まだ分からねぇのか!」
リヴェは柱から手を離し、自分の長刀を手にした。
ミルレオスは痛さの余り、手を押さえながら地面で蹲っている。
「こうなったら、今すぐ出ていく理由を作ってやる!ここをぶっ壊す!」
ダンっ!と長刀の柄を地面に打つける。
ゼフィアは涙目でミルレオスの元に駆け寄り、押さえている手を摩る。
「分かりましたから!もう充分、分かりましたから!」
「やめ⋯⋯ろ」
「ミルっ!お願いだから、もう喋んないで!」
「ダメだ、そいつがまだ分かってねぇ!おらァ!」
リヴェは長刀を構え、柱に向かって全力で振り下ろす。柱に刃が当たろうとしたその瞬間。
「ま、ま、待ってくださぁぁぁいっ!」
バンっ!
リヴェの後ろのドアが勢いよく開き、そのままドンっ!とぶつかった。
普通に考えれば、ドアが開けられた衝撃で前に飛ばされるが、リヴェはその強い体幹でその場に留まっていた。
柱を壊そうとした動きがピタッと止まる。
そして、声がした方に顔を向け、ギロっと睨みつける。
「カンピア?調査はどうした?」
そこには、息を切らしたカンピアが物凄く焦った表情をしていた。
「はぁ、はぁ⋯⋯リヴェさん⋯すぐにシュレイド城に来て下さい!後、ミルレオス君も!」
「はぁ?何でだよ?」
「緊急招集令です!ヴェルド王国近辺に、正体不明の超大型モンスターが出現しました!」
「正体不明の超大型モンスター?」
「はい!今、王国中の兵士たちに呼びかけています!」
突然現れたカンピアから、告げられた正体不明の超大型モンスター。
倒れていながらも話を聞いていたミルレオスは、そのモンスターの事に心当たりがあった。
はい!次回から宣言通り、大きな大きな戦いの幕が開けます!
ここまで長い話にお付き合い頂きありがとうございました!
まだまだ執筆に時間がかかると思いますが、これからもよろしくお願いします!