逃れぬ劫火〜シュレイドの黒龍伝説〜   作:カワード

9 / 15
ミルレオスとリヴェの2人は、ルピナス孤児院に向かった。
 リヴェは孤児院から入居者を追い出すため、
 ミルレオスは孤児院を守るため、
 それぞれが反対の目的でルピナス孤児院を理解するため、その日は孤児たちと一緒に時間を過ごした。
 それでも孤児院の老朽化を指摘したリヴェは、反発するミルレオスの意見など聞かず、力づくで孤児院から入居者を追い出そうとした。
 だがその時、城から急いで走ってきたカンピアが2人に対し、国からの緊急招集令を伝える。
 その内容はヴェルド王国近辺に出現した正体不明の超大型モンスターの対処についてだった。


老山龍激闘編
9話「動く緋色の山」


 二日前、明朝、シュレイド王国の近隣にあるヴェルド王国の凱旋門。

 見張り台でしゃがみこむ1人の門兵が欠伸をしながら遠くの方を眺めていた。

 

 見張りの仕事に対してやる気が出ず、その憂鬱な就業時間に嫌気が差し始めていた。

 なぜ、夜中から明け方まで、ずっと外を見張らなければならないのか?

 眠いし、怠いし、なんか頭がふわふわして景色が揺れてるしで、かなり滅入った様子だった。

 ついこの前、この場所にモンスターが現れたが、結局この国の技術ではどうにもならなかった。

 例え、ここでいち早くモンスターを発見した所で、何ができようか。そう思うと、余計に怠く感じてしまう。

 

 ズシン。

 

 やっぱり、景色が揺れている。

 脳まで振動が伝わってくるほど疲れが溜まっているのだろうか。

 

「よっ!お疲れっ!」

 

「冷たっ!」

 

 ぼーっとしていた所に、頬に冷たい感触と聞き覚えのある声がした。

 振り返ると、冷えた飲み物(お酒)を差し出した、交代の兵士がニヤニヤと笑いながら隣にいた。

 あぁ、やっと交代の時間だ。長かったな。

 飲み物を受け取り、軽く会釈した。

 

「お疲れ」

 

 ズシン。

 

 その時、体が揺れ、受け取った飲み物がこぼれてしまう。

 

「おいおい、何こぼしてんだよ。ただでさえ食糧難だってのにもったいねぇ」

 

「悪ぃ。こりゃ相当きてるわ」

 

「まぁ、夜勤明けなら無理もねぇか。人間は朝に起きて、夜には寝るように出来てるからな。しっかり休んどけよ」

 

「お前はいいよなぁ。昼の勤務だから」

 

「その分、お前より長く仕事してんだからいいだろ?さぁ、あとは任せとけ」

 

ズシンっ。

 

「あぁ、そうさせてもら......っ!?」

 

 景色だけじゃなく、明らかに大きく体がよろめいた。

 近くの壁に手を付けていないと、そのまま転んでいた。

 目の前にいた交代員の兵士も、同じように手をついている。

 

「何だ?この振動!?」

「疲れ......じゃない!?」

 

 ズシンッッ!

 

「うわっ!」

 

 二人の体が宙に跳ねる。

 顔を見合せ、急いで外の様子を確認する。

 

「.........!?」

「で.........!?」

 

 二人が目撃したのは、蠢く山のような大きさの緋色の巨体であった。

 凱旋門の堀より倍以上高い背を見上げ、大きすぎるその体は視界の全てを緋色に染めた。

 外殻から細く突き出た一部が、黒ずんだ棘になっており、扇状に間隔で生えている。

 四足歩行の体勢から、這いずるように踏み出す一歩は、ゆっくりと巨体を前進させ、その度に大きな振動を起こす。

 

 巨体は凱旋門の真横を素通りしている。

 それはまるで、山そのものが歩き出したかのようだった。

 ありえない出来事だった。

 

 圧巻の光景に声さえ出せず、そのまま呆然と見続けていると、巨体はみるみる前進し、あっという間に尾の部分にさしかかった。

 ゆっくりとした歩みでも、その一歩は人間の何百倍にもなるため、目の前を過ぎるのはあっという間だ。

 

「な、何だよあれ......なぁ?ん?おい!何してっ!?」

 

「くらえっ!」

 

 ドカンっ!

 

 放たれた大砲が、巨体に命中し激しい爆音と土煙をあげる。

 

「何で、撃った!?こっちに来たらどうするんだよ!」

 

「あ、あんな大きなモンスターほっとける訳ないだろ!」

 

 大砲が直撃したのに、その外殻には傷一つ入っていなかった。

 巨体の前方からのっそりと長い首を上げ、その顔が露になる。

 

 全体が緋色の外殻に覆われた竜顔の輪郭

 後頭部に丸く生え揃った黒い棘

 外殻の隙間に埋まりそうな程の小さな目

 鼻の上にある潰れたような台形の平たい角

 

 どの特徴も、一般的に知られているモンスターには類似点はない。

 そもそもここまで巨大なモンスターである時点で、他に該当するものはなかった。

 

 その巨大な顔でゆっくりと周囲を見渡すと、頭を下げ再び歩み始める。

 

「一体、何だったんだアイツ...」

 

「とにかく急いで報告するぞ!」

 

 ズシンっ!、バゴンっ!

 

「あぁ...ん?」

 

 その時、突如、凱旋門が激しく揺らぎだし、二人が立っていた見張り台が大きく斜めに傾いた。

 急いで台にしがみつくも、どんどん傾いていく。

 

「うわぁぁぁああ!!!」

 

 そのまま凱旋門が崩れ、見張り台ごと二人はそのまま落下して、崩落に巻き込まれてしまった。

 

 その上を、巨体から伸びた長くて頑丈な尻尾がしなっていた。

 巨体は峡谷の底を辿るように、シュレイド王国の方へ歩いていった。

 

 

※※※

 

 

 現在、シュレイド城では王国中の兵士たちを緊急招集させ、ヴェルド王国で起きたこの事件をカンピアが説明している最中である。

 

 カンピアは大広間の演説台に両手を着いて、目撃された正体不明の超大型モンスターの解析図を背に、大きな声で全体に響き渡るように説明をしていた。

 

 本部隊長のズバリを筆頭に、リヴェやミルレオス達を含めて、総勢500人の兵士たちが大広間を埋め尽くすように集まっていた。

 兵士以外にもガンダロスのような、兵器開発に携わる人達も多くいた。

 その脇には、当然のようにミゲス伯爵も壁に寄りかかりながら眺めていた。

 

「――以上が、ヴェルド王国で目撃された正体不明の超大型モンスターの情報です。なお、凱旋門の崩壊に巻き込まれ、見張りをしていた2人の兵士の内、1人は死亡、もう1人は重傷を負ったものの、付近の住民に救助され奇跡的に一命を取り留めました。生き残った彼の情報が無ければ、私たちはこの驚異に気づくことさえできなかった。これ以上の被害を防ぐためにも、早急な対応が必要です」

 

「その超大型......いや、巨龍でいいだろ。そいつは今どこにいる?」

 

 質問をしたのは、リヴェだった。

 にわかに信じ難い内容のせいか、疑いの目をカンピアに向けている。

 

「はい、巨龍で大丈夫です。現在、その巨龍が目撃されたヴェルド王国の凱旋門から、峡谷の底を辿って、私達がいるシュレイド王国に向かって北上しています。推測ではこのままのペースで進行をし続けると、明後日までにドローマの砦まで到達し、もしそこを突破されると、3日後にはシュレイド王国に襲来します。従来のモンスターのように大砲やバリスタ弾で対応ができるのなら、それで問題は無いのですが、ヴェルド王国での報告によると、大砲の玉では、外殻に傷一つ入らなかったので、戦闘による撃退や討伐は非常に困難だと思われます」

 

「では、放置すればいいでしょう。話を聞く限りでは巨龍は通常のモンスターより攻撃性が低く、ここに到達するまでかなりの猶予がありそうだ。その間に周辺の住民を避難させる事は可能だろう。多少家屋が破壊されたとしても、住民の被害を最小限に抑える事ができる」

 

 戦闘を極力避け、何よりも人命を優先したのは意外にも、ミゲス伯爵の提案だった。

 

 彼は犠牲を重んじているため、この案はその思考に反しているように感じるが、その狙いは避難させた住民の住処を巨龍に荒らさせて、その居場所を失う過程をまじまじと見せつけることによって、モンスターに対する憎悪を膨らませる事だった。

 

 この提案には多くの兵士たちが賛同し、ミゲス伯爵を褒め称える声が多く挙がった。

 だが、ミルレオスはこの光景を見て、眉間に皺を寄せ、唇を噛み締める。

 

「はい、できればそうしたいのですが、これはリスクが大き過ぎます。おっしゃる通り、もし仮に4日間で国民全員を巨龍が進行する範囲から避難させる事が出来たとします。シュレイド王国に侵入した巨龍は、街のあらゆる建物を破壊しながら進行するでしょう。その中には家屋は当然、水道施設や家畜小屋、生活に欠かせない施設もその多くが破壊されるでしょう。そうなった場合、例え巨龍が完全に過ぎ去ったとしても、その後に残る負担はとても大きなものになります。加えて、今は食糧難の危機にも直面しています。最悪の場合、内乱が起こる事も危惧されます」

 

「……それもそうだな」

 

 人目が多い大広間で、ミゲス伯爵は本心を出すことができないため、彼はただただ顔を顰めた。

 

「あの、1つよろしいでしょうか?」

 

「ミルレオス君?」

 

「その巨龍なんですが、ルピナスの教えに出てくるあるモンスターの事だと思うんです」

 

「何か心当たりでも?」

 

「はい。ルピナスの教えでは『人々が日に対する感謝を忘れ、命を無下にしたとき、空から日は消え、怒りの劫火が、愚かな人間を全て焼き尽くすであろう』と言う伝承があります。その怒りの劫火を放つ存在は、とても強大でまるで歩く災害であり、そのモンスターの名前は老山龍(ラオシャンロン)と言います。例え火竜のように、炎を直接放射しなくとも、その圧倒的な巨体なら、周囲をただ歩き回るだけで人類が滅びるような災害をもたらす劫火になるのではないでしょうか?」

 

 ミルレオスの解析を聞いて、カンピアは顎に手を当て神妙な面持ちで、何か小声でブツブツと呟いている。

 

「ラオシャンロン……まるで動く山のような龍ですか。日に対する感謝を忘れ、命を無下にしたときに怒りの劫火に焼かれる。私たちはこれまで自分たちの身の安全を守るため多くのモンスターを殺してきた。その行為が命を無下にしている、そう捉えることもできますね。確かにその話には説得力がある」

 

「この前ヴェルド王国に飛来したバカでけぇモンスターの部位はこいつのじゃねぇのか?」

 

 仕事用のハンマーを肩に乗せたガンダロスは、駄ロス工房のメンバーと一緒に腕を組みながら質問した。

 

「えぇ、何らかの関係はあると思います。ですが、説明できない事もあります。何故その部位は空から落ちてきたのか?当初、これがモンスターの部位だと判明した時、それに該当するモンスターはリオレウスくらいの大きさであると予測しました。しかし、ラオシャンロンは今までに見た事のない規模の巨体であり、神嶺域(しんれいいき)から落下してきたとはとても考えられない。それに、今判明している情報だけでは、どの部位が破損したのか判断できないんですよ」

 

「だが、もしラオシャンロンの部位だったら、このまま調べりゃ何か弱点が分かるんじゃねぇのか?」

 

「それは……」

 

 何かを言い出そうとしたカンピアの前に、スバリが割って入り、両手で演説台をバン!と叩いた

 

「じっくりと調べていたい所だが、状況は一刻を争う。今こそ、我らシュレイド王国軍が立ち上がる時だ!現在判明しているラオシャンロンの情報を元に、私とカンピアと協議して既に迎撃作戦を立ててある。それを決行する場所はドローマの砦だ!」

 

 ドローマの砦にラオシャンロンが到達するまで、わずか1日しか猶予が残されていない。

 兵士たちは至る所で動揺の声を抑えきれずにいた。

 声だけではなく、まるで波のように兵士たち全体が蠢いている。

 

「静粛に!私がこれから作戦を伝える!まずリヴェ副長!……リヴェ副長?」

 

 スバリは演説台から1番近くに見えていたはずのリヴェを見失っていた。辺りをキョロキョロと見回しても、その姿は見当たらない。

 

「おい、リヴェ副長!どこだ!?」

 

「スバリさん!リヴェさんがさっきの騒ぎの間に姿を消しました!」

 

 隣のカンピアが焦りながら、スバリの服の袖を掴んで状況を伝える。

 

「何!?おい!誰か、リヴェ副長を知らんか!?」

 

 スバリは演説台の手前にいた兵士に強く問いかける。

 

「すみません、分からないです!自分は突然、体を押しのけられただけです!」

 

「…まさか」

 

 スバリは何かを察したのか、口を開けたままカンピアと目を合わせ、指を指した。

 

「このパターンは、そうでしょうね」

 

 カンピアは呆れた顔で頷く。

 

「あいつ!自分がラオシャンロンと早く戦いたいがために、作戦も聞かずに立ち去ったのか!?何を考えてるんだ、あの戦闘狂は!?すぐに連れ戻せ!」

 

「追っても無駄ですよ。スバリさんも知ってるでしょう?あぁなったリヴェさんは誰も止められない」

 

「今回は規模が違いすぎる!いくらなんでもリヴェだけの戦力ではどうにもならん!国の一大事にどうして団結できんのだ!」

 

 怒りが込み上げてきたスバリは握り拳を演説台に、思いっきり叩きつけた。

 その音で近くにいたカンピアがビクッと驚くリアクションをした。

 

 遠目でそれを見ていたミゲス伯爵は、首を横に振って外に歩き出す。

 

「つまらん、今回も国民の心は何も変わらんだろう」

 

 小さなボヤキは、誰にも聞こえていなかった。

 

 

 ※※※

 

 

 その日の夕暮れ時。

 

 カンピアの演説中にシュレイド城を抜け出したリヴェは、シュレイド王国から坑道を通ってドローマの砦を通過し、峡谷の底を辿りながらヴェルド王国に向かって走っている。

 

 当然、その目的はヴェルド王国で目撃されたラオシャンロンと戦うことだった。

 

 長刀を構えた状態で峡谷の底を全力疾走している。

 その顔は新たな獲物を見つけ、欣喜雀躍(きんきじゃくやく)で、大地を駆けていく。

 その顔は、溢れ出た喜びを隠すことができず、不敵な笑みを浮かべている。

 

 ズシン。

 

 ドローマの砦からしばらく走ったところで、リヴェにも大地の振動が伝わってきた。

 走りながら地面が揺れたため、バランスを崩しそうになったが優れた体幹で持ち直し、スピードを落とさず走り続ける。

 この振動こそがラオシャンロンの存在証明であり、そこに近づいている事実を示しているものでもある。

 肌味でその振動を感じたリヴェは、さらに口角が上がる。

 

「カンピアの話は本当だったな!この先にとんでもねぇモンスターがいやがる!」

 

 ズシンッ!

 

 ドローマの砦からどんどん離れていくと、振動もどんどん大きくなってきた。

 

 ドシンっ!

 

「っ!?」

 

 大きすぎる振動でリヴェの体は宙に跳ねた。

 それでも冷静に着地し、その時見下ろした地面が何故かとても暗くなっていることに気づいた。

 日はまだ沈んでいない。

 見上げると目の前には、巨大な緋色の外殻壁がとても大きな影を作っていた。

 

「な、なんじゃこいつは!?」

 

 いつの間にか目前に迫っていた、巨大な右前脚がその正体だ。

 リヴェの予測を遥かに凌駕する衝撃の光景であった。

 四足が大地を揺らすたびに進む巨体。

 長い首は蛇のようにゆらりと漂っている。

 この巨大なモンスターこそが、ラオシャンロンであると確信した。

 

「ひゃハハッ!まさかこんなモンスターが、この世界にいるなんてなぁ!」

 

 リヴェの興奮は最大に高まり、腰を落として長刀を両手で持ち、戦闘態勢に入る。

 ラオシャンロンとリヴェの体格差は100倍以上もあった。

 

 ラオシャンロンは右前脚をあげ、その1歩を踏み出した。

 当然、そんな脚で踏み潰されてしまったら最期、絶対に助からない。

 

 リヴェは峡谷の崖にひょいっと飛び移り、踏み下ろされる前脚を軽々と躱した。

 

 ドシンっ!

 

「遅ぇ!」

 

 前脚が地面に着地する瞬間振動が発生するが、大地が揺れるその瞬間、リヴェは目の前の前脚に飛び移った。

 空中で振動を回避したのだ。

 

 前脚にしがみついたリヴェは、そのまま素早い虫のように外殻を這い伝って前脚から肩へ、肩から首、そして首からラオシャンロンの顔の方へ移動する。

 頬の近くまで這い寄ると、外殻の突出した部位に足を絡めて固定させ、長刀を構え上体を起こした。

 そして、両手で持ち直した長刀の刃を口元に向ける。

 

 ドシンっ!

 

 またしても踏み出した脚が大きな振動を発生させたが、リヴェはしっかり絡めた足のおかけで、振り落とされず、思いっきり長刀を振るう。

 

 ガキンッ!

 

 鈍い音が辺りに響いた。

 リヴェは長刀を振りぬいたが、外殻に覆われたその口元には擦り傷一つもない。

 

「硬っっっっった!」

 

 それはリオレウスの爪よりも硬い外殻であった。

 

 ドシンッ!

 

「うぉ!?」

 

 長刀を振りぬいた直後に来た振動に耐えきれず、ラオシャンロンの顔から地面に落下してしまうリヴェ。

 片手をつき、足を広げて着地して、上を見上げる。

 

「……目が小せぇな。それに何か妙だ」

 

 ラオシャンロンの目は、身体に対してとても小さいため、地面から見上げた所で、あるのかどうかも分かりづらい。

 相手の目を見て行動を予測するリヴェにとっては、やりづらい相手である。

 だがそもそも、行動を読む以前にラオシャンロンはただ歩いているだけである。

 それでも、一瞬だけではあったが、その小さな目を覗き込んでいだ。

 ラオシャンロンはリヴェの方を向いていなかった。

 

「アタシの事も、眼中に無ぇってか!」

 

 苛立ち始めたリヴェは再び峡谷の崖を登って、前脚の振動を宙で躱しながら体に張り付く。

 そして、肩の外殻の隙間に長刀を何度も何度も斬りつける、切り傷どころか外殻にすらダメージを与えられない。

 

「硬すぎて刃が通らねぇ!クソっ!」

 

 勢いを付けるために、あえて外殻を蹴りつけその場でジャンプ攻撃を仕掛ける。

 

 ドシンッ!

 

「うぐっ!?」

 

 その瞬間、不意に振動が伝わってきたため、またしても外殻の上に留まれず、振り落とされてしまう。

 今回は地面を背にしたまま、上手く着陸体勢が取れなかったため、思いっきり地面に背中を打ち付けてしまった。

 

「痛っ……」

 

 すぐさま目を開けると、眼前にはラオシャンロンの腹部が見えていた。

 

 だが影が濃くなってきたため、リヴェが目を凝らしてもよく見えない。

 

 夕暮れどきから時が経ち、既に日は沈みかけていた。

 

「やべぇな、完全に日が沈んじまったら戦いにならねぇ。だがどうしたもんか…」

 

 そのまま腹部を見つめていると、背中側の外殻と比べて、外観の形状が異なり、白くて大きなシワもあった。

 なら、背中側の外殻とは違う質感である。

 

「やるしかねぇ」

 

 リヴェはすくっと立ち上がると、同じ要領で前脚にしがみついた。

 だが今回は前脚の外側でなく、内側にしがみついている。

 そして刃を腹部へ向け、脚を強く蹴りつけ跳躍。

 

「おらぁ!」

 

 グサッ!

 

 矢の如く勢いづいた長刀は、そのまま腹部に深く突き刺さった。長刀の刃から持ち手の部分まで腹部に埋まっている。

 刺さった長刀を持った状態で、宙吊りになったリヴェは自分の足を、その腹部に着けて逆さまになり、長刀を横に動かそうとした。

 

「っ!?何!?」

 

 だが思ったより深く刺さっている長刀は、リヴェがいくら力を込めてもビクともしない。

 それどころか刺された箇所から出血もしていない。

 

「くそっ!」

 

 焦ったリヴェは歯を食いしばって、必死に抜こうとした。その時、急に地面がどんどん近づいてくるのが分かった。

 長刀から手を離して落下しているわけではない。

 

「やべぇ!」

 

 ラオシャンロンは体を伏せようと、徐々に屈み始めていた。

 今、長刀を手放したところでラオシャンロンの体の下から逃れる術はリヴェには無かった。

 

 日が沈むと共に、たった一人で挑んだ戦いは、これで幕を閉じた。




毎度遅めの月1更新です。
ようやく新章に入ることが出来ました〜。
今まではモンハンと言うよりかは、人間ドラマばっかりだったので、ここからはしっかり戦闘パートをめり込んでいきたいと思います!
その先駆けとして、老山龍とシュレイド王国軍の戦いが激化します!
お楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。