セカイコネクト!プリキュア 〜悪役転生者の活動記〜 作:HeroGirlに憧れて
第一話
青く澄み渡る空。摩天楼にぶつかり乱れる風。コンクリートで舗装された道を走る車の列。前世で幾度も見た地球の姿がそこにはあった。
「……こんな形で里帰りとか、不本意過ぎるんだけどねぇ」
ビルの屋上の縁に腰掛け、町を見おろしながら吹き上がる風で視界の端でひらひらと揺れる自身の銀髪を耳にかける。
「まあ、どうしようもない事もあるか」
視線を少しずらすと、侵略者としての同僚である不気味な小枝のような男、コカーツが闇の力を使って巨大な怪物セメンダーを生み出して暴れまわっているのが見えた。
あの姿からして、素体は自販機であろう。お腹の取り出し口から連続で缶型爆弾やペットボトルミサイルを放出してるし。
「世は儚く無情なり……ってね」
せめてこの世界の被害が小さく済むようにと祈りながら眺めていると、突然まばゆいピンクの光がセメンダーを吹き飛ばした。
驚きつつもよく目を凝らすと、ピンクの光の中心には日本人の少女、恐らく中学生ぐらいの年齢の子が手元を呆然と見ているのが見えた。
「氷製『レンズ』」
右手の親指と人差指で丸を作り、その間に氷で凸レンズを作る。その際、不純物が入らないように調整しないと、真っ白でよく見えないので、気をつけないといけない。
「どれどれぇ。……って、え?」
作ったレンズを覗き込んでみると、少女の隣に小さなぬいぐるみのようなものが浮かんでいるのを見つけた。
僕の記憶が確かなら、あの特徴は妖精たちの住まう世界、キラトピアの妖精だったはずだ。
しかし、キラトピアは既にインベダー帝国によって攻め滅ぼされてしまったはずだが、まさかその生き残りが地球に居たとは……。
……って、ん?この展開って。
何か記憶、それも前世の物に引っかかる感覚がした。思い出せず首を傾げていると、妖精が何やらコンパクトを取り出して少女に渡していた。
少女はコンパクトを開くと何かピンクに光るものをはめ込んで前面に向けて構えた。
「プリキュア!コネクトリンク!」
掛け声と共にコンパクトから溢れるピンクの優しい光が少女の身体を包み込み、その姿を変化させていく。
ピンクをメインとした、フリフリの衣装にリボンとハートの装飾が揺らめく。薄桃色の長い髪を大きなリボンが束ねていた。
「世界にひろがるおっきな愛!キュアタンドレス!」
ペリドットカラーの瞳には強い意志の光が宿り、プリンセスグローブのような手袋をつけた拳をセメンダーへ向けて放つ。
そんな激しい戦いをよそに、思わず頭を抱えてしまう。
「そうだよ、既視感あると思ったらプリキュア感満載の状況じゃんこれ」
この状況で行ったら、僕は悪の組織の幹部役。所謂ダークファイブ*1にあたる配役になるのだろう。……まあ、今世では女子だし、イース様*2みたいになる可能性も……
「あるわけ無いよねぇ」
思わず口に出してしまう。どれほど薄ーい可能性なのだ。自分がプリキュアになるなんて。
ガワはプリティーでキュートだが、中身はおっさんだ。プリティさの欠片もない。
それにプリキュアが勝てるとは限らないし、僕は既に真っ黒に汚れきってる。救われるなんて思ってはいけないだろう。
それでも、救いを求めるなら……
「裏切りがバレないように立ち回る……か」
インベダー帝国に忠実であるように見せながら、プリキュアを鍛える。そうすればもしかしたら彼女に、もしくは将来増える彼女の仲間も、ナラクシンに勝てるかもしれない。そうすれば……。
「……ま、これ以上は捕らぬ狸のなんとやら。そんな冷めることしない方が得だね」
改めて視線を向けると、丁度キュアタンドレスの必殺技でインベダーが浄化されるところだった。
コカーツも悔しそうにしながら退散していくのを見届けると、ビルの縁に立ち上がる。
「そろそろ僕も帰ろうかね」
ナラクシンから与えられた闇の力を使って転移用の穴を開ける。
それをくぐり抜ける前にもう一度あの少女を見ると、変身を解いた彼女は何やら妖精と騒いでいた。
「頑張れ少女。これから幾度も困難が君を襲うだろう。けれどどうか、君の心がへし折れ、すり減らないことを願うよ」
聞こえないだろうが、僕は彼女へと激昂を送るのだった。