未知なる触手を夢に求めて   作: るるいえ

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突然文字量が倍加しておりまぁす〜
沢山沢山練習したのでぇ、その分色々書けるようになって楽しかったんですよねぇ〜
夏といえばぁ!!河原でタコパぁ!!!


4

季節は夏真っ盛り、天気は快晴。私は触手ランドの開園準備を終え、汗をかいてもいないのにわざわざ額を腕で拭う仕草をしながらぽつりと呟いた。

 

「暇、ですねぇ……。」

 

勿論ランドは忙しい。夏真っ盛りでも北方に位置する影響か、涼しいランドは連日かなりのお客で賑わっている。

そのため今もキャストは走り回っているし、園長のやるべき仕事もまだまだある。

だがなんというか、せっかくの夏なのだからなにか夏らしい、賑やかな事がしたい。

ランドとしてはそのうち夏季限定エリアはオープンさせる予定であるしなんなら今工事中であるので夏らしいことは存分に楽しめるであろうが……そうでは無い。

「個人的に」なにか賑やかな事がしたいのだ。

善は急げと懐から端末を出し、お祭りに詳しい知り合いに電話をかけていた。

 

「もしもしぃ〜?」

 

「朝っぱらから何!?朝ごはんもまだ食べてないのに!!」

 

「あ、デコポンさぁん、こぉ……夏らしい集まってご飯食べる催しとか知ってますぅ?」

 

若干眠そうな声で返事する友人の国王に、今思いついた素敵なアイデアについてなにか心当たりがないか聞くも、返ってきた声は乗り気では無さそうだった。

 

「え〜?後でいい?」

 

「えぇ〜!!!今がいいですぅ!」

 

大声で思いっきり駄々を捏ねると仕方ないなとばかりの呆れ声が帰ってくる。

 

「んもぉ、我儘な触手!!!!パッと思いつくのは…流しそうめんとか?」

 

全く知らない文化であった。そういう時は素直に聞くに限る。

 

「どぉいうやつですぅ?」

 

「えーっと、竹を切って…高さを変えて滑り台みたいにした台の上から水とそうめんを流して食べる…かな!」

 

「竹はどんな形状に切るんですぅ?どうやって食べるんですぅ?食べ損ねたそうめん落ちちゃいませんかぁ?」

 

なんとなくイメージこそ着くがまだ詳細が全く分からない。立て続けに質問を重ねていると、

 

「……朝ごはん食べたらまとめて送るから待ってて!!!」

 

「ぇ、あ、はぁい…」

 

通話がぶつりと切れる。ほけーっと何をするでもなく画面を見ていると、少し離れたところから声がかかった。

 

「あ…えんちょうさま……あっちでこまりごと……おきてます……きてほしいのです……」

 

「わかりましたぁ!行きますよぉ〜!!」

 

携帯端末を体内にしまい、キャストの方へ駆け寄っていく。お昼時にでもみればきっと流しそうめんの説明がとどいているだろう。そう考え、午前中のランド経営に勤しむ事にした。

 

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

「あぁ…つかれたぁ……あ、デコポンさんからお手紙きてますかねぇ?」

 

昼休みに端末を開くと、個人メッセージ欄にはデコポンからの返信が届いていた。冷やしそうめんについてかなり丁寧に書かれている。

文章とは別に可愛らしいイラストで冷やしそうめんの仕掛けの構造や作り方等が描かれたファイルも添付されている。

熱心に読んでいるとひとつ、私はある事に気づいた。

 

[デコポンさん、竹が無いですぅ]

 

ぽちぽちとメッセージを返すと、さほど時間を置かずに通知がなる。

 

[なーんでそれを先に言わないの!?徒労!時間返して!!もうタコパでいいじゃん!!!業務用たこ焼き器あるでしょ!!!!]

 

[タコパってなんですぅ?]

 

[皆でたこ焼き焼いて食べるパーティ!やるならよんでね!それでチャラにしてあげるから!]

 

[おぉ〜!いいですねぇ、それにしますぅ!じゃあ次のランドの休園日にきてねぇ〜]

 

[休園日!?アトラクション乗り放題できる?]

 

[アトラクションメンテの休園日なので無理ですぅ]

 

[けち!!!!!!]

 

そこまで見て思わずくすりと笑いがこぼれる。何だか楽しくなってきた私はるんるん気分で午後の業務へとむかうのだった。

 

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

何名かに招待を送り、迎えたタコパ当日。会場として指定して置いた触手の川に本日の材料を抱えて向かう。

休園日という事でキャスト達はメンテをしているか思い思いに休日を過ごしているのか、人気はあまりない。すいすいと園内を進み、このまま誰にも会わずに川までいけるかな、なんて楽観視していると、1人のキャストと鉢合わせした。

最近ランドに入園してきたるるゐゑであった。

同族のような違うようなそんな雰囲気と、奇しくもほぼ同じ響きを持つ名前、という事で可愛がっている後輩である。

私と同じ黒い触手の髪をゆらゆら蠢かせ、声をかけてくる。

 

「えんちょうさま……どこにいくのです……?」

 

「あ゙っ…るるゐゑちゃん……そのぉ……」

 

至極真っ当な疑問に直ぐには返答できず、おろおろと言葉を返したが、るるゐゑは理解っているとばかりに頷いた。

 

「わかってるのです……おさぼり、なのです……」

 

「一応休園日ですしぃ……?」

 

思わず目を逸らして誤魔化すが、しっかりした後輩はちょっとジト目でこちらを見つめてくる。

 

「きのう…たくさんのしょるいをわたされているのを……みました……」

 

「そっちは5匹フュージョン触手ちゃんがやってるのでぇ!」

 

事実である。現在執務室では5匹がフュージョンしていつもの5倍賢くなった触手ちゃんがせっせと書類仕事に勤しんでいる。最近は10枚に1枚くらいしか誤字しなくなってきたので成長を感じている。

 

「ふゅーじょん……」

 

「そぉ!だから大丈夫ですぅ!!!」

 

些か強引ではあるがなんとか納得させて少しほっとしたのもつかの間、またしても当然の疑問が飛んできた。

 

「なにしにいくのです……?」

 

「たこぱしますぅ」

 

「……たこぱ」

 

嘘をついても仕方ないので素直に答える。るるゐゑは「たこぱ」に聞き覚えがなかったのか、首を捻った。

 

「たこ焼きをみんなで焼いて食べるんですぅ〜!!せっかくだしるるゐゑちゃんもくるぅ?」

 

「!!!……いいんですか……!」

 

説明がてら、口止めも兼ねて誘ってみると、思ったより好印象であった。こっそり髪の触手でガッツポーズを決める。

 

「1人増えたくらいなら平気だよぉ〜!」

 

「じゃあ……おことばにあまえて……おじゃまするのです……!」

 

優しい後輩は荷物を半分持ってくれたので川に行くのも非常に楽であった。

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

川に着くと、既に招待した1人は到着していた。可愛いうさみみに白い髪、くりくりの赤い目をした旅烏の巣の管理人、サフォケートである。

暇だったのか、平べったい石を見つけては水切り遊びをしている彼女に声をかける。

 

「わぁサフォケートちゃん!いらっしゃぁい!」

 

「来てやったのだ!キャンプならBBQという事で役立つものも持ってきたぞ!」

 

「……トングぅ?」

 

にこにこしながら差し出してきたのはトングであった。そういえば招待する際、「ご飯をご馳走するから触手の川にきてねぇ」としか打っていなかった気がする。最も、サフォケートも深くは聞かず、「わかったのだ!!」としか返して来なかったのだが。

 

「肉を挟んでヨシ!熱々の炭を摘んでもヨシ!大きさも変わる便利なトングなのだ!」

 

「今日たこぱ…たこ焼きなのでトング使いませんよぉ?」

 

得意そうなサフォケートに少し悪い気はしたが、今日のパーティの概要と使用しない旨をやんわりと伝える。

少しきょとん、とした兎の子はなにやら考えたあと、元気にトングに向かって話しかけた。

 

「……じゃあいらないな!よし、トング、お前帰っていいぞ!」

 

「は?えっちらおっちら殴られながらここまで来て1人で寂しく帰れと???」

 

トングが喋った。思わず驚いてフリーズした思考に、それでもトングとサフォケートは構わず会話を続ける。

 

「トング用のメシはないのだ!」

 

「いやいや!?普通に他の人たちと同じご飯たべれるから!!こうなったら意地でもたこ焼き食べて帰るよ?」

 

カチカチと自ら先端を開閉させ、威嚇か抗議かよくわからない音をたてるトング。

 

「…るるいえ、トングも一緒でいいか?」

 

「え、あ、いいよぉ?」

 

唐突にこちらに話を振られるとは思わず、反射的に返事を返す。直ぐに我に返って慌てたものの、別に居て悪いという訳では全くないし、パーティは人数が多い方が楽しいからまぁいいか、と1人で速攻で納得した。

 

「よかったなトング!タダ飯なのだ!」

 

「仕方ないなって雰囲気おかしくないです???」

 

ぺしぺしと肩を叩く要領でトングの胴体らしき部分を叩くサフォケートと、体を揺らして振り払うトングに微笑ましさを覚えつつ、ぴしりと指さして言う。

 

「作るのは手伝ってもらいますけどねぇ〜!サフォちゃんと……トングちゃん?」

 

「しょーがない、手伝ってやるのだ!」

 

「そりゃまぁそれくらいなら……。あ、私はトングロングって言います。長ければ全然トングでもいいので!」

 

「わぁご丁寧にぃ!私はるるいえって言いますぅ!それじゃあサフォちゃん、トングちゃん、タコ切るのお願いしますねぇ〜」

 

持ってきた包丁、まな板、下茹でした大量のタコ足を2人に渡す。

 

「おゎ、にゅるにゅるしてる……ちょっと掴みづらいのだ……」

 

「これホントにタコ……?」

 

ぼそりとトングロングが呟いた独り言に私は朗らかに、自信をもって返答する。

 

「失礼なぁ!今回はちゃんとタコですよぉ!」

 

「今回『は』、ねぇ……。」

 

なにやら察したトングロングを背に、ちょうど着いたらしい新たな客人に私は駆け寄った。

 

「フラウちゃん!いらっしゃいですぅ!!」

 

次にやってきた客人はエステレラ望郷国に住まうフラウ、という少女だった。

 

「はい。こんにちは。今日はおまねき、ありがとうございます。これはおみやげです、どうぞ。」

 

「わぁ!わざわざありがとですよぉ!」

 

「はい。おともだちがもたせてくれました。きっと、気にいるはずです。」

 

ほんの少しだけ、口角があがって得意気な表情になるフラウ。

エステレラに旅行に行った際の楽しかった思い出を思い出して釣られて私も笑った。

 

「……ふふ、やぁっとお招きできましたぁ!!ちょっと前にお手紙貰ってからずぅっとお礼したかったんですぅ!!」

 

「はい。ちょっとまえ、ですか……?」

 

首を傾げるフラウに私も首を傾げる。

 

「ほらぁ、前にエステレラに旅行に行った時の帰り際にぃ……」

 

「はい。でもそれははんとしくらい、前な気がしますよ?」

 

「ちょっと前、でしょぉ?」

 

「はい。うーん、あなたにとっては、そうなのかも、ですね?」

 

認識の相違がある気がする。そう思ったがそれを口に出す前に、フラウの方がまぁそんなもんか、と納得してくれたようだった。

 

「かもですねぇ〜」

 

ほやほやと楽しそうに笑って喋っていると、るるゐゑがこちらに声をかけてきた。

 

「えんちょうさま……ひがついたのです……」

 

「お、ありがとですぅ!!じゃあ材料は持ってきましたし早速焼いちゃいましょぉかぁ!」

 

「がんばります……むん……」

 

そこでやっとオレンジ色のぷにぷにした球体が河原を跳ねて到着した。デコポンである。

 

「お、やってる〜??ご馳走になりに来たよ〜ん!」

 

「デコポンさんだぁ〜、今から焼くとこですよぉ」

 

「いいね!!楽しみ!!!」

 

ちょうど良かった、と鉄板を熱しながら話していると、大量のブツ切りにしたタコをボウルに山と盛ってサフォケートがトングロングと共にこちらにやって来た。

すぐにデコポンに気づいたのか、元気よく声をかける。

 

「るるいえ〜、タコ切れたのだ!お、デコポンだ、元気か〜??」

 

「元気だよ!サフォケートさんも元気そう!」

 

「ふふん、うさぎは元気も取り柄なのだ〜!」

 

片手に切れたタコがたっぷり入ったボウルを持ち、もう片手でカチカチカチカチ!と勢いよくトングを開閉させるサフォケート。

 

「ちょ、カチカチしないで!優しく扱って欲しいんですけど!!」

 

「トングが……喋った!?」

 

「私もサフォケートさんと同じれっきとした冒険者ですからね!失礼な!!」

 

「トングも冒険者の時代なんだ……ま、まぁ、草とか魚もいるし今更か!」

 

喋りだした3人を他所に、持ってきた重たいボウルを1つとるるゐゑが持ってくれた軽めのボウル2つをドンと置く。大きい方にはペースト状のたこ焼き生地、軽めの方にはネギと天かすがこれまた大量に入っていた。

 

「じゃあ先に生地流し入れましょっかぁ〜!」

 

ボウルのラップを外し、たっぷり入ったたこ焼き生地におたまをたふりと浸ける。

そのまま持ち上げて流し入れようとした所、るるゐゑがキラキラした目で、フラウが興味津々な目でこちらを見ていることに気づいた。

 

「やりますぅ?」

 

「はい。やりたい、です。」

 

「ぜひやりたいのです……!」

 

「お玉ふたつもってきててよかったですぅ!思ったよりたっぷり生地入れちゃってねぇ!」

 

「うんうん!じゃあ天かすとねぎいれましょぉかぁ!紅しょうがはぁ……好み分かれるので今回は無しでぇ〜」

 

「ざばざば……やまもりにするのです…!」

 

「はい。同じくらいにいれるの、少しむずかしいですね。」

 

豪快にたっぷりねぎをいれるるるゐゑに、均等に少しずつ天かすをいれていくフラウ。

 

「まぁてけとぉでもなんとかなりますよぉ〜!」

 

楽しそうな2人をみて私も楽しくなりながら、サフォケートから受け取ったボウルをもち、タコを手際よく1つずついれていく。

だいたい入れ終わった後、火の通りをちまちまみながらひっくり返すタイミングを測る。

鉄板が十分に熱されていたのか、程なくしてひっくり返すのにいい塩梅の固さになったのを確認した私は、ピックを数本取りだした。るるゐゑとフラウに1本ずつ渡し、自分のピックでちょいちょいと縁をつつく。

 

「よぉし!じゃあひっくり返しましょぉかぁ!」

 

腕をまくっていざ!とピックを差した瞬間、兎の娘が焼ける匂いを嗅ぎつけてやってきた。

 

「いい匂いがしてきたのだ!!もう食べれるのか??」

 

「今からひっくり返すところですよぉ〜!サフォちゃんもやるぅ?」

 

「任せるのだ!よし、トング!変形しろ!」

 

「出来ない!出来ないから!!」

 

再びトングロングを掴んでカチカチ言わせるサフォケート。無理だと当然の抗議を叫ぶトングロングの2人にも慌ててピックを渡す。

 

「これ使ってねぇ〜!!ちゃんと人数分あるからぁ!」

 

全員に行き渡った事を確認すると、お手本にと1個ひっくり返してみせる。

 

「む……なかなかむずかしいのです……でもたのしい、です……!」

 

「よっ、ほっ……結構うまくできるのだ!!」

 

「はい。手首を上手く使えば……意外と上手くできる、かもしれないです。」

 

苦戦していたり上手にやったりしているのをにこにこ眺めていると、るるゐゑが感心したようにトングロングの方を見ていた。

 

「とんぐさま……のとんぐがぴっくをはさんで……ふしぎ、です……」

 

確かにトングがピックを挟んでたこ焼きをひっくり返す絵面は奇妙であったが、なかなかに上手い。

 

「でも上手いですねぇ!手先……?が器用ですぅ!」

 

感心して褒めると、トングロングも悪い気はしなかったのか持ち手を反らして嬉しそうにしている。胸を張っているつもりかもしれない。

 

「伊達にトングやってないのでね!おまかせあれ!」

 

暫く全員で無心でひっくり返し、さらに焼けるまで待つ。ピックでちょいちょい、とつついて中まで火が通っているのを確認し、私は声を上げた。

 

「できましたよぉ!」

 

その言葉に完全に観戦モードだったデコポンが声をかけてきた。全く何もしていない訳ではなく、後ろで跳ねて応援していたのは確かであるが。

 

「お、できた?ソースもマヨネーズもたっぷりかけてね!青のりは控えめで!」

 

「自分でやっt……うぅん、今日はお礼に来てもらってるしぃ……仕方ないですねぇ……了解ですよぉ〜」

 

手早く注文通りにソースやマヨネーズをかけてデコポンの頭に乗っけてやる。

嬉しそうにぽよぽよとデコポンは跳ねた。

 

「おいしそ〜!!いただきま〜す!」

 

それを見て、ついでに自分もと頼んだサフォケートを皮切りに、それぞれが自分の希望を口々に言い出した。

 

「ソースとかつぶし多めで頼むのだ!!!」

 

「……あおのりとまよをたっぷりでおねがいするのです……」

 

「えーっと、全部ほどほど?で!」

 

「はい。おまかせします。」

 

「はいはぁい〜!2回目からはセルフで勝手にやっちゃっていいですからねぇ〜!」

 

押し寄せるオーダーをさっさと捌いては渡し、全員にたこ焼きを行き渡らせる。

 

「ふぅ……私も食べますかぁ……あぇ?」

 

粗方終わらせ、とっておいた自分のを食べようと私が自分の分を置いていた場所を見ると、忽然とたこ焼きは消えていた。竹串と飲み物のコップまで無い。

 

「この辺に置いといた私のたこ焼き知りませんかぁ?」

 

「しらないのです……ふしぎ……」

 

「知らんのだ!」

 

その他の面々に聞いても知らないと答えるばかりで首を捻っていると、ふと少し離れた茂みからソースの匂いが微かに漂ってきたのを感じた。

目を細めた私は、静かに気配と音を消して近づき、草むらに首をそっと突っ込んで盗人を確認する。

 

「あふっ、あふっ…おいしっ…」

 

小声であつあつのたこ焼きを食べている後ろ姿。ピンクの髪にふわふわのしっぽと耳が嬉しそうに揺れている。

 

「犯人みぃっけぇ……」

 

「ぴぇ!?」

 

すでに3つほど消えているたこ焼きの皿を持って驚いた拍子に地面にへたりこんだのは山奥のケモ耳少女、コーラルであった。

口の端にソースが付いているあたり、現行犯である。

 

「こぉらるちゃぁん?それ私のたこ焼きなんだけどぉ?」

 

「へへーんっ!名前書いてなかったですのーっ!!!」

 

口の端にソースを付けたまま、生意気にも得意げな顔をするコーラル。

 

「にしたって勝手に持ち去るのはダメでしょぉ!」

 

「取られる方も悪いのですよーっ!!!」

 

反省の兆しはないようだ。食べ物の恨みは深い。じっとりと盗人を見つめ、私は彼女の保護者にチクる事を決意した。

 

「ふぅん?うさぎさんにチクっちゃおっかなぁ?」

 

「な、な、なんでっ!?やだっ!!!」

 

生意気顔が一変、大きく目を見開いたコーラルは大きくぶんぶんと首を振る。

彼女の保護者のうさぎのお仕置はだいぶんキツイともっぱらの噂である。前に1回チラ見してしまったが正直言って私も受けたくない。

 

「そりゃぁ人のもの盗み食いするなら…ねぇ?」

 

「ご、ごめんなさい…っ!!」

 

私のジト目が余程怖かったのか、はたまたチクられる恐怖か、コーラルはたこ焼きの皿を差し出してふるふる震えている。しっぽが足の間で縮こまっている感じ、本気で嫌なようである。

 

「もぉ……言ってくれればあげるのにぃ…まだ食べるぅ?」

 

たこ焼き窃盗犯ではあれど元々親しい友人、そこまで怒っていなかった私はコーラルの持っていた皿を取り上げながら提案してやる。

 

「えっ!?いいのーっ!?食べる食べるっ!!」

 

それを聞いた瞬間しっぽが嬉しそうにぱたぱた揺れるのだから調子がいいものだ、と思う。だがしかし私は可愛いものと甘いものに弱い。

せっかくなので一緒に楽しむことにした。

元のたこ焼き器のところまでコーラルを連れていくと、見知った顔にコーラルは嬉しそうに手を振った。

 

「わーっ!るるゐゑちゃんだーっ!やっほー!」

 

「こーらるさま……!こんにちは、なのです……!」

 

「ん?2人とも知り合いなの?」

 

仲良さそうに挨拶し合うのが意外だったのか、コーラルの旧知の仲のデコポンが問う。

 

「こーらるさまとは……よくおんせんでしのぎをけずりあってるのです……!」

 

「触手ランドの温泉にはよく行くからねーっ!!こっこぱーんち!ってしてるのですよーっ!」

 

聞きようによっては如何なものかと思われる2人の答えに、デコポンはわざとらしく声を張り上げた。

 

「うわ、コーラルさん、後輩虐めてるんだー!さいてー!!!!」

 

そんな風に言われると思ってなかったのか、コーラルがしどろもどろになって弁明し出す。

 

「ち、ちがっ!!!先輩として後輩にこう、教えを……っ!」

 

「こ、こーらるさまとは……なかよくさせてもらってるのです……!いじめられてなんてないのです……!しのぎのけずりあいは、ひつぜん、なのです……!」

 

るるゐゑも弁明に加わり、デコポンはちょっとびっくりしていた。煽り返されると思ったからである。

 

「おぉ……仲良いんだね……びっくり」

 

「ふふーん!トモダチなのですよーっ!」

 

全くない平らな胸をはるコーラル。嬉しそうなるるゐゑ。それを横目でみながら次のたこ焼きの生地を流し入れる。

 

「……るるいえさん、古い世代ってああいう煽り合いが日常なの?」

 

突然、トングロングに話しかけられ、私は少し回答に困った。

 

「え゙。あ、いやぁ……うぅん……部分的にそぉ、というかぁ……完全に否定は出来なくてぇ……。」

 

「ふむふむ……いいなーー!!!ああいうやり取り、絶対楽しいし……」

 

思ったのと真逆な反応で私は少々驚いた。トングロングの顔色がそれ以上に非常に読み取りづらい、というのもあったが。

 

「あ、そぉいう……ドン引きされるかと思いましたよぉ」

 

「まっさか!!!古い話とかこういうノリとか大好きなので!!!」

 

私とトングロングが生地をほっぽって喋っている中、サフォケートがフラウにこっそりと耳打ちをしていた。

 

「なぁ、そこのおまえ!フラウって言ったか?いい考えがあるんだが……。」

 

「はい。なんでしょうか?僕にできることなら。」

 

ごにょごにょ…とサフォケートが何やらフラウの耳元で囁く。少しの間フラウは思案していたが、やがてこっくりと頷いた。

 

「……はい。それは、たのしそうですね。」

 

「ちょうどよくこんな物があるし……ふふん、これでよーし!!ひっくり返すのは任せたのだ!」

 

「はい。ばっちり、やってみせます。」

 

何やら2人がこそこそとやっているのには気づかず、じゅうじゅうとたこ焼きは焼けていく。

 

「第2陣できましたねぇ〜!熱いうちに食べてくださぁい〜!」

 

自分も1つ出来たてあつあつのたこ焼きを頬張りながら勧めると、各々鉄板からたこ焼きをとって口に運ぶ。

しばらくたこ焼きをつまみながら和やかに話していると、不意にデコポンが声をあげた。

 

「か、からーっ!?!?なにこれっ!から、辛い!!!ひーっ!!!」

 

唇を真っ赤に腫らして叫ぶデコポンを指さしてサフォケートが嬉しそうに笑う。

 

「お、最初のアタリはデコポンなのだ!!激辛ソース入りたこ焼き!今からここはロシアンたこ焼きパーティなのだーっ!!」

 

その言葉に、ソースとマヨがたっぷりかかったたこ焼きを頬張っていたコーラルが口に手を当ててデコポンの惨状を茶化しだす。

 

「ぷぷーっ!唇がたらこですのーっ!そっちの方が口が分かりやすいし、デコポンっぽくていいんじゃなぁい???」

 

「むきーっ!!!失礼なっっっ!!」

 

ぽよん、と跳ねたデコポンがコーラルに体当たりしようと試みたものの、当人はひらりと躱し、更に馬鹿にしたように茶化すとキャッキャと笑いながら逃げ回り始めた。

 

「きゃゃゃゃゃゃゃ!デコポンが怒りましたのーっ!こわーいっ!」

 

追いかけるデコポン、逃げ回るコーラル。河原がにわかに騒がしくなった。

 

「河原だからコケないか心配ですぅ……」

 

「……ふふ、げんきはいいこと、です……」

 

そう言ってたこ焼きをぱくついたるるゐゑの表情が凄いことになる。きゅっと目を瞑り、口が*のように縮こまる。要するに物凄く酸っぱそうな顔だ。

 

「……すっぱいのです……きゅぅ……」

 

「アタリ2個目なのだ!!!めっちゃ酸っぱいたこ焼き!!あはは!!すっごい顔なのだ!!!」

 

「むむ……ふほんい……これはでこぽんさまにならってわたしも……」

 

「お?やるのだ?受けて立つのだ!!」

 

堂々と逃げるポーズを取り始めたサフォケートに、るるゐゑはいたずらっ子のように笑って囁いた。

 

「……さふぉ。」

 

「??突然呼び捨てにしてどうしたのだ?」

 

「さふぉけ……さふぉけっ……」

 

「や、やめるのだ!!!!こらーっ!!!」

 

なにか心当たりがあったのだろうか、サフォケートの方がるるゐゑを追いかけ出す。

 

「ふふ……つかまえてみるのです……」

 

からかった犯人は楽しそうに笑って逃げ始めた。

 

「平和ですねぇ〜」

 

「はい。みんな楽しそうで僕もうれしいです。」

 

「それならよかったぁ!!いっぱいあるからじゃんじゃん食べてねぇ〜!!」

 

「はい。おいしい、です。」

 

追っかけっこしている2組をのんびりと鑑賞しながら、たこ焼きをパクついていた面々。突然、トングがびっくりしたように跳ねた。

 

「あっ、甘っ!?!?」

 

「はい。それはチョコレート入りです。あたり、ですね。」

 

丁寧に解説してくれるフラウ。カチカチとトングを鳴らしてトングロングは何やら難しそうな顔をして悩む。

 

「いやうーん……確かに、美味しい、かも……しれない……?」

 

「せっかくなので何かデザート作るのもいいですねぇ〜!」

 

たこ焼きをむぐむぐ食べながら、私は手持ちの食材で何ができるか考える。

快晴の天気の下、楽しそうな笑い声が河原に響く。夏の日差しと賑やかな雰囲気が川面に反射し、キラキラと光を撒き散らすのだった。




なんだかんだこれも半年前くらいのやつですねぇ

キャラお借りした方々
サフォケート
フラウ
るるゐゑ
トングロング
デコポン
コーラル
(敬称略)
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