10/14
自室で書類にサインやハンコ、果てはレポートを同時に処理しながら、私は横の伊達メガネを書けた触手ちゃんにだる絡みした。
「今日は祝日って話ですよぉ触手ちゃぁん…私もお休みがいいですぅ…」
「ピギュ!!!」
触手ちゃんが未決済の書類の山をべしべしと叩く。終わるまで部屋から出さないという心積りのようだ。
「ふぇぇ…お休みですよぉ?遊びたいよぉ、お菓子作りたいよぉ…もごごご!!!」
なおも駄々を捏ねる私の口にエナジードリンクの缶を突っ込まれた。喋ってないで働けという事だろうか。
「いちごぱふぇ…まかろん…ちょこれーとぼんぼん…触手ちゃん、食べたくなぁい?」
「ピッ!?……キュゥ…」
触手ちゃんの伊達メガネがズレ、宙に目が泳ぐのを私は見た。もう一押し、と言葉を重ねる。
「こんだけ頑張ってるしぃ?ね?一種類だけおやつ作ってたべなぁい??だめぇ〜?おねがぁい〜♡」
「……ギュ、ピギュギュァ…」
仕方ないなぁとばかりに、しかし嬉しそうに伊達メガネを放り出し、床に降りると部屋のドアをあける。
「やったぁ〜!お菓子ぃ〜!!!!」
やっと仕事から開放された私はうきうき気分でキッチンに向かうのだった。
10/15
「仕事サボって川遊びしますぅ!!!」
朝早く、仕事がやってくる前に私は釣竿と虫かごを引っ掴んで部屋から飛び出そうと試みた。
「ピギューッ!!!!」
足元に伊達メガネの触手ちゃんがまとわりつき、床にへばりついて私を行かせまいと抵抗してくる。その辺でのんきに寝ている触手ちゃん5匹に命令する。
「触手ちゃん5匹ふゅーじょん!代わりに書類よろしくですよぉ〜!!」
命令通り、融合してちっちゃな子供の形になった触手ちゃんは途端に床でじたばたと駄々をコネ出した。
「ヤダーッ!!!」
「川でとったお魚でご飯作ってあげるからぁ…」
暴れる子供触手ちゃんに向かって、ぷらぷらと釣竿と虫かごをゆらすと、子供触手ちゃんはそれをじっと見つめる。
「シカタナイナァ」
やれやれとばかりに呟く子供触手ちゃん。如何にも大人な対応をしてやったぜ、といった雰囲気だが口の端にちらっとヨダレがみえる。
「ちょろぉ…」
思わず本音が小声で漏れてしまった。諦めたような顔をした伊達メガネ触手ちゃんが呆れたような顔になって私を見上げている。
「????」
聞こえなかったらしく、不思議そうな顔をしている子供触手ちゃん。
「なんでもないよぉ!あ、誤字1枚につき量減らすからねぇ!あと仕事する時は服着てねぇ!」
変に追求される前に、子供触手ちゃんの手にペンとハンコを押し付け、私は外に飛び出るのであった。