この新エリー都市民達は特殊な訓練を受けています。なのでドスやチャカを喰らって、顔面を打ち付けられたりバイクに押しつぶされて投げ落とされても誓って殺しはやってません理論が通じます(真顔)
1話 探偵家業
世界に現れた総てを呑み込み、侵食し、死に至らしめる怪物の巣窟。その名はホロウ。そこに迷い込んだら最期、訪れるのは死か、怪物への変貌か、どっちにしろ耐え難い悪夢と言うのは確かだろう。
世界はホロウ災害に包まれた。経済は荒れ、大地は裂け、あらゆる生命体は絶滅したかに見えた。
だが意外と元気だったし、会社も学校もパソコンもケータイも一度は滅んだが新資源のお陰で復興されたので大丈夫だった。
現代の若者に心配されるバイタリティに満ちあふれていた。
今回はそんなバイタリティ溢れる若者達に何故か囲まれる事となった探偵を主軸とした物語から始まる。
「……容疑者は未だ現れず、か」
青年は愛用車の中で愚痴を溢す。かれこれ数時間車内で張り込みを続けているが進展無し。暇つぶしと集中力維持を兼ねたガム(ボトル入り)もこれで2個消費された事になる。
口内にミントガムの香りが残る中、彼はとにかくこの仕事が早く終わる事を祈る。
「でさ、あそこの限定スイーツを食べるにはカロリー計算する必要があるわけなのよ!」
「いやルビーってそんなの考えるキャラじゃないでしょ」
「もしかして…食べ過ぎちゃった?」
「タダでさえ毎日スクラッチしてるのに、食べるお金をどこから捻り出してるんだか…」
(頼む…早く来てくれ…ッ!このままじゃ気不味さで押し潰される…ッ!)
青年…名前を
何故なら愛用の軽自動車内が女子高生4人によって占領されている為だ。依頼主を含めた後部座席に乗っている3人の女子高校生は今流行りであろうファッションや映画、限定スイーツの話題をbgmの如く奏でており、助手席ではサメのシリオンらしき女子高校生が夢の中に誘われている。彼女が有する巨大な尻尾がこちらのスペースを奪うと同時にザリザリの鮫肌が当たってくる。端的に言って痛い(小並感)
探偵はただでさえ狭い車内がより一層狭く感じ、二重の意味で肩身が狭い思いをしていたのである…!ひとまず彼女達に向けて加賀実は話を切り出す事にした。
「なぁ、やっぱりカフェとかで時間潰して来たらどうだ?こんな狭い所に居るよりはそっちの方が良いと思うぞ?」
「えぇ〜!折角、探偵の仕事を生で見れるんだから近い方が良いって!」
「いやいや、だからって全員が車に乗る事はないだろ?ギュウギュウ詰めだろ」
『ルビー』と呼ばれている金髪のカチューシャが特徴の女子が身を乗り出すように答えるが、加賀実が呆れた様子で返す。仕事の邪魔にはなってないのだが単純に気不味い空気が流れている事に我慢ならない。
なんとかしてこの子達を車外に出せないかと思案していると、ウシの特徴を有した『モナ』と言う少女が話を切り出してきた。
「あ、あの〜」
「ん、どうかしたかい?」
「やっぱり信じられません。その…彼が私を騙しているだなんて」
おずおずと
今回、探偵事務所に舞い込んできた珍しくマトモな依頼が【彼氏の素行調査】なのである。
依頼人は女子高校生のモナ。一緒に来てるルビー、凛、エレンの3人は彼女の友達であり付き添う形で来たとのこと(ついでにグループ課題である職場見学を兼ねてる)。
そんな彼女が素行調査を依頼する事となった経緯が最近付き合う事となった大学生の彼氏が「50万円の借金を抱えている」「早く返さないと借金取りに殺される」と、モナにお金を貸して欲しいと言い出したのである。
そんな彼氏を不審に思った友人達に連れられ探偵事務所へ依頼を出した…それがここまでの経緯となる。
「いやいやいや!どう考えても怪しいでしょ!」
「急にお金を用意して欲しいだなんて…裏があるに決まってるって」
「うう、でも必死だったしそれに50万なら親から借りたり、頑張って働けば……「そりゃ駄目だ」
返せるだろうとモナが言う直前に加賀実が言葉を挟む。
「そう言うのは大体手口が決まってるもんなんだ。優しそうな子をターゲットにしてお金を払わせる。ここでポイントなのが頑張ればギリギリ返せそうなラインを定時するところだな」
「そうなの?」
「ああ、でも50万払ってもまた更に金額を増やして払えないようにする。で、最終的に風俗系のお店を紹介してそこで働かせて金を得る…って算段だ。気分が悪い話だろうけど、青春真っ盛りの女子高校生は絶好のターゲットだからなぁ」
ウシの角を持つ少女がショックを受けると同時にルビーが声を荒げる。
「良く考えてモナ、このままじゃ本当に風俗店に行っちゃうか、スクラッチで一山当てるしか無いんだよ!」
「うん……うん???」
「そうだね、決めた!私スクラッチで一山当てる!」
「なんでその二択なんだよ!しかも判断が早いし!あとスクラッチ削る為に寝てるその子の尻尾使うのやめとけって」
グッスリ寝ているエレンの尻尾を持つモナに加賀実は思わずツッコミを入れる。この天然具合、友人達がわざわざ探偵に依頼をする訳だ…と内心思っているとモナが言葉を紡ぐ。
「で、でも私、その…風俗店で赤ちゃん役の大人をあやすような仕事はちょっと……」
「いや、それはそっとしておいてやれよ」
新エリー都は特殊な性癖を有してる人達が多数いる。今や多様性の時代。マニアックな人はそっとしておいてあげるのが一番だと彼は理解しているのだ。
そうこうしていると、耳に取り付けてあるインカムから協力者の連絡を知らせる音声が響く。
「お、もしもし"臥龍さん"。進展はあった?」
『ンナナナ(ターゲットを見つけた。そっちに向かう)』
「OK、分かった。こっちで追跡をしてみる」
そう言うと彼は女子高生達に身を屈めるように催促する。こっそり聴いてたのか助手席のエレンもその身を縮こませた。
悟られないように外を覗くと、モナの彼氏である『レント』の姿が視界に入る。
「あ、レントさんだ…!」
「これから本格的な探偵の仕事が始まりそうね…で、どう?探偵さん。黒っぽい?」
「いや、初めて見たから白か黒か分からないでしょ」
「そこの凛ちゃんって子の言う通り、今は何も言えない……けど、お金が困ってる割に休みの日にバイトしてないって言うのは怪しいな。これから職場に行く雰囲気でも無いしな」
借金をして困ってるように見えない様子に訝しみつつ、加賀実は尾行の為に車から降りようとする。
「あ、それと君達はここで待機な?」
「「「え〜〜〜〜っ!」」」
「えーっ!じゃありません!(オカン感) 君達4人の顔が割れてる可能性がある以上、尾行にバレるかもしれないからな。ここでお留守番だ」
そう言い残し、車外へ出ると加賀実は一般人に紛れ込みレントの後をついて行く。
レントの後を追え
適度に距離を保ち、悟らせないよう数分歩く……するとレントは見た目は変哲もない商業ビルへ足を運んで行く。どうやらここが目的地らしい。
(ここは…パッと見た限りは普通のビルっぽいな)
そのまま追跡を再開しようとするが「待て」と入口の死角からイカつい顔付きをした男が現れる。
「ここから先は関係者以外は立ち入り禁止だ。お前のようなヤツが来るところじゃない」
「あ、そうなのか?悪い。実はこの敷地内に友達のボールを入っちゃったみたいでさ、ちょーーっと、だけでいいんだ。中に入らせてもらっていいか?」
「駄目だ、さっさと帰れ」
「いやいや変な事はしないから(嘘) 本当にちょっとだけ、5分…いや3分だけでいいから!なんなら1分だけで良いからさ!」
「おい、いい加減にしろ!また同じ事言わなきゃいけねぇのかよ!ええ!?」
「……悪かったよ、それじゃあな(入口に見張りを立てるに加えて、有無を言わさずに追い返す…ますます怪しいな)」
入口の男から見えない位置に移動しながら思考の海に沈む。あれ程の懇願に対して一切動じる事のない態度に男が堅気の者ではないと推察していると、トコトコ…と可愛らしい足音がこちらに近付いて来るのに気づく。
足下に視線を向けるとサングラス装着し、黒いシャツとライトグレーのスーツを模した格好のボンプ*1が居た。
『ンナンナ(ヤツはどうした?)』
「よっ、臥龍さん。いや、このビルの中に入ったところまでは分かったんだけどなぁ…門前払い喰らっちまって…」
『ンナンナナ(成る程な…どうする、諦めるのか?)』
その言葉に対して「まさか」と返す。
「まだまだやれる事があるんだ、諦めるなんて真似しねぇよ……あ、そうだ。臥龍さん悪いが
『ンナ?…ンナナ(なに?…ったく、しょうがねぇな)』
「よし来た、んじゃ準備頼むぜ」
加賀実がそう言うと懐から携帯デバイスを取り出す。デバイスの外付けカバーを取り外すとガチャリ、と広げて変形させる。その変形させたカバーをボンプに取り付けるとその愛らしいボディがガチャガチャと組変わりドローンのような形状へ姿を変えた。
「デバイスとの操作接続…OK。カメラアイ精度も問題なし。エンドウさんの所は良い仕事をしてくれるなぁ」
デバイスに操作を加える。すると連動するようにボンプの臥龍が浮かび上がる。このボンプは通常販売されているボンプとは異なり、外付けパーツを装着する事により多目的な運用が可能となっている。このドローン機能もその多目的の内の一つである。
ドローンの操作を行い、ぐるりとビルを一周させてデバイス越しに観察を行う。
「一見すると何の変哲もないビルだな…」
「それじゃきっとどこかに隠し部屋があったり!?」
「うおおッ!?」
横からの声に思わず驚く加賀実。デバイスからは『ンナナ!?*2』と声が上がるがそんな事に反応している場合ではなかった。何せ隣には車内で待機するように言い聞かせていた筈の女子高校生ズが居たのだから。
「お前達、なんでこんな所に…!?」
「そりゃグループ課題の一環としてちゃんと仕事ぶりを見てなきゃだし!」
「その、ご迷惑でなければ何かお手伝いを…と思いまして」
「私達にできる事は限られてるとは思うけど…」
「ん〜…まぁ、そういう事」
「えぇ…(呆れ)」
子供の遊びじゃないんだけどな…と、頭を抱えていると凛が声を掛けてくる。
「あの、あそこの4階のところ…あの角部屋だけブラインドを下ろされてませんか?」
「…ん?確かに言われて見れば……ちょっと良く見てみるか」
5人でデバイスの画面を覗き込む。すると丁度良いタイミングで見失ったレントがブラインドで中が見えない部屋へ入って行くのをレンズ越しに捉えた。
「成る程、サンキュー。お手柄だ凛ちゃん」
「えっ、あ…ど、どういたしまして」
「よし、目標地点は決まった。あとはどうやって乗り込むかだな…」
入口の見張りをなんとかしない限り、建物内に入る事は難しい。それに加えてボンプドローン越しに観察した結果、他にこっそり入れそうな場所はなく窓も全て鍵を掛けられている徹底ぶり。
どうしたものか…と悩んでいると、サメのシリオンであるエレンがスマホで誰かと電話している事に気付いた。
「…うん、いきなりごめん……それで場所変わっちゃうんだけどお願いね」
「エレンどうしたの?もしかして急にバイト入ったり!?」
「あー…ちょっと職場の先輩と少し用事があっただけ。
そう彼女が言うと隣の路地からギィィイイイイイイイ!と甲高く、まるでチェーンソーで何かを斬り刻むような轟音らしきものが響いた。
その音にビクリとその場のエレンを除く全員が驚いていると、バタバタと建物内から数人の男達が慌てたように飛び出てくる。
「なんだ!何の音だ!?」
「良く分からないが様子を見るぞ!」
「クソッ、一体なんなんだ!?」
「あ、見て。見張り居なくなったよ」
「え?…あ、そ、そうだな」
「入るなら今の内じゃない?それとあの音は気にしなくて良いから」
気怠げに、かつどこか自信のあるエレンの物言いに少し疑問を有しながらもこのチャンスを逃す手は無いと見たのか加賀実はボンプを回収。共にビルの中へと侵入する事にした。
「……この部屋だよな」
『ンナ(ああ、間違いない)』
ビル内の道中、何人か見張りが居たが時にやり過ごし、時に気を逸らす事で4階の部屋にまで辿り着いた。目的の部屋であるドアノブに捻り中に入る。するとそこは和風なテイストが醸し出された部屋だった。
『ンナナナ(これは…賭博場か?)』
「賭博…?って事は認可されてないタイプって事か」
部屋の様子を見ると賽子を使った賭博であるチンチロに興じている者達が何人か居る。その中にレントもおり、その表情から賭博の結果は上々では無さそうだ。
「大学生が違法賭博をやるのかよ…」ヒソヒソ
『ンナ(こりゃ悪ガキに違いないな)』ヒソヒソ
「おいおいレント、調子悪いな?もうその辺にしたらどうだ?」
「うるせぇな!ここからだここから!こっから巻き返すんだ!」
「いつも負けっぱなしの癖に良く言うぜ…なんつーか羽振り良さそうじゃねぇか」
「へへっ、分かるか?実は新しいシノギに手を出してな。そこからガッポリよ」
ふとレントとゴロツキの会話が気になり耳を傾ける。
「アレだろ?女から金をせびってるヤツの。顔が良い癖してえげつない事やってんなぁ」
「言い方が悪いなぁ、俺はただちょっと困った風に言ってるだけであっちから金出してくれるからそれを貰ってるだけ」
「で、女の方が金に困ったら仕事を紹介してるんだろ?その紹介してるのがもっぱら風俗店なんだから始末が悪いな!アッハッハッハ!」
「なーに言ってんだよ。金に困ってんだから手っ取り早く多く稼げる所紹介してやってるんだ感謝して欲しいね」
人間の屑がこの野郎…(憤怒)と言う臥龍の呟きを他所に加賀実はチンチロに興じるレントの隣に腰掛ける。
「ハァイ、調子良い?(気さくな挨拶)隣失礼するぜ」
「ん?おお」
「いや実はさ。その女の子なんだけど興味あってさ。少し紹介してくんない?」
「は、急になに?」
レントは訝しげな反応を見せるのに対して加賀実は肩を無理矢理組んで会話を弾ませる。
「いやさ、ルミナ区って治安局の分署があって規制ガチガチだろ?だからストレス溜まるからパーっと解消したい訳なんだよ。で、どうなんだ?その女の子のレベルはさ」
「お、アンタそう言う口か。おうよ俺が厳選したのばっかりだからルックスは上物揃いだぜ!その分、金は取るけどな」
「えぇ〜?金取るのぉ?ちょっと聴き耳立ててたけどガッポリ儲かってんだろ兄チャン。もしかしてアレ?紹介料的なやつ?」
そう加賀実が言うと「その通りよ!」と賭博に興じてた客の1人が声を上げ答える。
「しかもどの系列店は
「………へぇ、うちの組ね。それじゃあ、ちょっと探してる娘がいるんだけどリクエストしていいかい?」
「お、どんな子だ?」
「んーと…短髪で、良いボディラインしてて、あっ脚は太い方がいいな。年齢はそうだな…高校生くらい若い感じで」
加賀実は立ち上がると更に言葉を紡ぎ、レントへと詰め寄る。
「種族は…牛のシリオンってところかな?性格はおっとりしてて…ちょうどお前が騙そうとしてる娘だよ。なぁ、レント君」
「……テメェ、なんなんだ?喧嘩売ってんのか?」
「御託はいい、何人も騙して金まで毟り取って来たんだ。捕まる覚悟くらいできてるよな」
そう言った直後、周りの賭博目的で訪れていた客の視線が加賀実に突き刺さる。どうやらこの客達はレントの仲間で良さそうだ。
「ハハッ、馬鹿だなお前。こんな所で喧嘩売ってさぁ、俺のバックには『山獅子組』が付いてるんだぜ」
『ンナ?(なに?)』
「山獅子組だと」
山獅子組と聞いて臥龍と加賀実は緊張を強める。山獅子組と言えば現時点において治安局に一度も捕まらず荒事に長けた反社会の武装組織である。その組織のメンバーがこの客達なのだろうと察する。
「へっ、ビビりやがって!」
「天下の山獅子組の賭博場にカチこんで来たんだ…ノされる覚悟は出来てんだろうなぁ!」
横から飛んでくるチンピラの拳が加賀実の頬を捉える。バギィ!と言う音を響かせながらフラフラと後退してしまう。
「へっ、口ほどにm「うおらァっ!」ぐがっ!?」
その直後、加賀実は胸倉を掴みチンピラの顔面に頭突きが命中する。プッと口内を切った影響で滲み出た血を吐き捨てると息を整えながら腰を落とし、ファイティングポーズを取った。
「そっちこそ先に手を出して来たんだ。なら反撃される覚悟くらい出来てるよな?」
「こ、この野郎…!オイ、お前等やっちまえ!」
「はぁッ!」
「うごっ!?」
加賀実は近くに居たチンピラの1人に近づくと相手の顎に掌底アッパーを繰り出し、意識を刈り取る。
「テメェッ!」
「っ!オラッ!」
横からヤクザキックが飛んで来るのに対し腕を盾に防御し、カウンターと言わんばかりのパンチを相手の胴体に連続で繰り出す。ふらついた瞬間を狙い、首に向かって回し蹴りを放ちノックアウトさせる。
「調子に乗りやがって!」
「ぐっ!?」
「おら、お返しだッ!」
後方より羽交締めにされた加賀実はもう1人のチンピラに顔面を一発、二発と殴られる。だが黙ってされるがままではないのがこの男だ。殴って来た男にカウンターの要領で蹴りを入れると、そのまま拘束を無理矢理振り解く。
「そっちこそッ!お返しだッ!」
「ぐう!?」
そのまま背後の敵に対して頭突きを放つ。顔面に技を受けたゴロツキは悶絶し、地に伏す事となる。
「て、テメ…!?」
蹴りを入れた男の胸倉を掴むと壁面に近くへ移動し、後頭部を掴む。
△極『壁面打撃の極み』
「ふんっ!オラァッ!」
「ぶっ!…うごぁっ!?」
チンピラの顔面を壁に叩きつけ、強い痛みと衝撃によって相手は膝から崩れ落ちる。そのままトドメと言わんばかりに蹴りを放ち二度目の顔面叩き付けを受けた。
「こ、この…!」
『ンナ!(させねぇよ!)』
「うお!?」
頭突を顔に受け倒れていた男が背後から襲い掛かろうとしていた…だが、それを見越してたのか臥龍ボンプのボディからワイヤーが飛び出し山獅子組員である男を拘束する。
身動きが取れない男に向かって加賀実は走り出し、ズドン!と足を踏み締める。
「せい……やァッ!」
「がッッ!?」
最後の1人に放ったのは鉄山靠。加賀実の師匠とも言える人物…否、個体より教わった背面体当たりをチンピラに叩き込む。
その衝撃により男は後方へ吹き飛ばされ、戦いの幕は閉じたのであった。
「ハァ…ハァ…ああ、痛っ…、結構強めに殴られたな…」
『ンナナナ(この程度で情けないな)』
「臥龍さんはほとんど何もやってないだろ…まぁ、いいや。治安局に通報は?」
そうボンプに問いかけると既に通報済みだと言う意図が込められたサムズアップで返ってくる。ノックアウトしている構成員達を他所に彼は息を整え、口を開いた。
「さて、邪魔な奴等が消えたところで…レント君。お前も大人しく…あれ、アイツの姿が無い?何処に……オイ、まさか!」
ふと入口に目を向けるとそこにはキィ…と音を立てて開いたままの扉があった。そして更にブラインドと窓を開き外を見ると先程まで部屋に居た筈のレントが逃げていたのだ。
「あの…野郎ッ!」
『ンナ!?(待て!ここは4階だぞ!?)』
臥龍の声を無視するかのように加賀実は窓から身を乗り出し、外へ飛び出る。すると器用に手足を使い、各階層にある窓の縁や配管を伝いながら下へと着地。
「これくらい余裕…!」
『ンナンナ…ンナナ!(ヒヤヒヤさせやがって…頼んだぞ!)』
ボンプの声援を背に受けながら、加賀実は逃げる目標を駆け足で追跡し始めた。
レントの後を追え
「待てェ!」
「クソ!?もう来たのか!」
大通り、路地。人の密集地帯を掻き分けチェイスが繰り広げられる。サラリーマンや学生、主婦やナウでヤングな若者達との衝突を避けながら走る、走る、走る。
そんな拮抗した状況に業を煮やしたレントはポケットから鍵を取り出すと、駐輪場の方面へと向かい始めた。
(確かアイツ、こっちにはバイクで来てたよな…まさか乗って逃げる気か!?)
流石の加賀実でもバイク相手に追跡は困難であり撒かれてしまうだろう。どうにかならないか…?と考えてると視界に特徴的な格好した女の子が入る。
「うう…エレンさん、一体どこに…それにこのお弁当、どう処理すれば…」
何やら困ってる様子の緑髪のツインテールとメイド服が特徴的な少女がそこに居た。しかし探偵である彼が着目したのはメイド服でも何故か背負っている物騒な丸ノコギリ的なサムシングでもない。
その手に持った(暗黒オーラが滲み出てる)重箱である。
「君!本当にごめん!緊急事態だ、その弁当借りるぞ!」
「えっ、ええ!?」
メイドは「食べるのはオススメしませんよ!?」と言い切る前に加賀実は彼女から重箱を手に取るとそれを目標に向かって蹴飛ばしたのである。
「ハァッ!」
「リナさんが丹精込めて作った
「は?…うげぇっ!?」
スコーーン!と甲高い音を立てながらレントの後頭部に重箱が命中。追跡相手は転倒し、ついでに重箱の中身はぶちまけられる事となった。
「やっと止まったな…!って、臭ッッ!?なんだこの匂い!?くっっっさ!?」
「ご、ごめんなさい!それを作った方は悪気はないんです!本当なんです信じてください!」
「そうなの!?これ一種の料理に対する冒涜だろ…!?なんか中身見えてるけど本当に人が作ったものなのか!?」
激臭を漂わせながらレントはフラフラと立ち上がり、ぶつけて来た加賀実に向けて怒りの籠った眼差しを向ける。
「テメェ…人にこんな劇物ぶつけやがって…!もう許さねぇ!」
「そこのメイドの嬢ちゃん下がって!俺が相手をする!」
「す、すみません!ご迷惑をお掛けして本当にすみません!」
「おらぁッ!」
大振りのパンチ。明らかに人を殴りなれてるだろう一撃に対して加賀実は掌底で相手の拳をカチ上げる。
「ハァッッ!」
「うぐぅ!?」
無防備になった胴体が露わとなった瞬間を見逃す筈もなく全身の体重を乗せた拳を放つ。腹部へのパンチが効いたのか、よろめく相手。そのまま流れるようにパンチ、蹴り、突進のコンボを放って行く。
「な……めんじゃねぇよ!」
加賀実による試合運びを無理矢理終わらせる為に、懐から取り出したナイフを加賀実に突き立てようと襲いかかる。
「甘いんだよッ!」
「えっ?……うお!?」
ナイフを突き立てようとした瞬間、加賀実の姿が消えた。否、瞬時に体勢を低くした事で視界から消えたのである。そのまま足払いを仕掛け、男は転倒した。
△極『追い討ちの極み』
倒れた衝撃により手からナイフが離れた刹那、顔面に向けて加賀実の蹴りが放たれる。ドゴォ!と言う音と衝撃が顔面を捉える。レントの鼻から血が吹き出ると同時に後方へ大きく吹き飛ばされた。
「うげぇっ!!」
「大通りでこんなもん出しやがって…」
そう言い捨てながらナイフを踏み砕く。探偵業で沢山の場数を踏んで来た彼に負ける道理はなく、戦闘は呆気なく終わったのだった。
レントを大人しくさせ、先程まで居たメイドに謝罪を終えるとモナ達を呼び出す。モナ以外の女子ーズは友達を騙していたクズ男に敵意剥き出しだ。特にエレンは尻尾をバシン!バシン!と震わせながら殺意を瞳に滾らせている。海のハンターは伊達ではない。
「で、コイツどうする?」
「処す?処す?」
「擦り潰そう(即決)」
「ヒィッ!?ま、待ってくれ!頼む!ね、ねぇ聞いて欲しいんだ!
そう言いながらレントは見せながらモナに助けを懇願する。心優しい彼女は良心を痛め、慈悲を持って助け───る事はなかった。
「…メナちゃんって誰ですか?私、モナですよ」
「えっ、あ…あれ?」
「成る程、名前を間違えるくらいに女の子達を騙して来たって事か」
加賀実の一言に女性陣の目つきが更に鋭くなる。
「レントさん…」
「ま、待った!違う、違うんだよモナちゃ…「もういいですよ」…へ?」
△極『張り手尽くしの極み』
「ぶ!?おご!?ぐぎゃぁ!?」
「「「「え?」」」」
突如として張り手の連打を放った少女はユラリ…と、静かに。そしてグツグツと煮え滾るマグマのように。モナは言い放つ。
「レントさんさぁ、酷いですよ。なんで私に嘘ついちゃうの…?悲しいですよ…」
「モ、モナ…?」
「えっと…大丈夫?」
「あ、これストレス溜め込んでるヤツだ」
女子高校生のモナ。仲良しグレープのエレン係に位置する彼女だがストレスを溜めやすい傾向にある。特に試験勉強期間によって1日の大半をノートと教科書と向き合うのに費やされているのに加えて、今回の彼氏の不祥事だ。せっかく出来た恋人との思い出が荼毘に伏された上にその恋人に騙されてた事実にストレスは有頂天を迎えていた。
「なんでこんな真似するんです?嘘つかれたら貴方のこと助けてあげられませんよ…もう殺すしかなくなっちゃいましたよ(殺意)」
「モナちゃん!?」
あまりの滲み出る殺意に加賀実とエレン達は腰が抜け、その場から動けずに居た。こうなってはレントの末路を見届けるしかないだろう。
「ぐ、こ…このアマ───あ?」
ふと、モナは傍に停めてあったレントのバイクを両手で掴むと、シリオン特有の怪力で持ち上げ始めた。そのまま彼の前に立つと、グォンとバイクを振り上げる。
△極『壊し屋・超重量武器の極み』
「…ま、待て待て待て待て!それ俺のバイクだよな!ちょちょちょちょっ、ちょっと待って!待ってくれ頼む!助けてください!お願いしますから!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああッッ!」
グシャァ!と潰される末路にその場に居た皆は思わず無言となる。そして数秒した後に我に返る。
「……死んだんじゃないの?」
「生きてるよ…とりあえず治安局の人が来るまでちょっと待つかぁ」
△ △ △ △ △
「では後はこちらにお任せください!通報ありがとうございました!」
「いえいえ、治安官さんも仕事お疲れ様です」
その後、治安官達が通報を聞き駆け付けた。違法賭博場や売春斡旋によりレントは逮捕に加えて大学を退学される事となった。そしてその場に居た山獅子組の構成員も全員捕まる事となり、一悶着は落ち着く事となった。
「あ、いたいた。探偵さん」
「ん?あ…君達、まだ帰ってなかったの?治安官さんの聴取とか色々あっただろうに」
「うん、でもさ。ほら、依頼料払い忘れてたし!」
「えっと…これ、私達で出し合ったお金です!受け取ってください!」
ディニーが入った封筒を受け取る加賀実。厚さを見る限り中々の金額だろうと予想できる。すると封筒からディニー紙幣を数枚抜き出すと「はい、確かに頂いたよ」と金が入った筒袋をルビー達に返した。
「え…ちょ、ちょっと待って?どこか気に入らないところでも!?」
「気に入らないって…こっちは約束通り指定してた依頼料を貰っただけだぞ?」
「でもアンタ、素行調査以外にも
「それに、色々してもらったので報酬の上乗せを…」
「いやいや、しなくていいから!花の高校生なんだ。このお金は遊ぶ時だったり取っておけって」
「探偵さん……ううっ、ありがとう…!私達のなけなしのお金を…!」
「いやルビーさ、50ディニーしか出してないのによく泣けるね?」
学生達のやり取りを見届け、その場を後にする加賀実。しかしそんな彼の前に小柄な治安官が姿を現す。
「お主がやった事を考えれば依頼料は高くても良いと思うが」
「治安官様の前でそんな事出来るわけ無いってのは分かるだろ。それに学生の内で遊べるなんてあっという間なんだ。そっちに金を使って欲しいんだよ俺は」
「ふむ…その他者に対する人当たり故に赤貧洗うがごとしを体現した懐事情。坊よ、相も変わらず無茶ばかりしてるようで何より」
「周りが居るのにその坊って呼び方はやめてくれないかなぁ
そう言い返すと目の前に居る青衣と呼ばれた少女がはははと愛想笑いを浮かべる。
「そう邪険にするでない加賀実よ、老いた先人の数少ない楽しみの一つ。弟子と出会い、成長を喜び、揶揄して得られる感情の昂りを奪ってくれるな」
「老いた先人って……まぁ、強ち間違っては無いけども。てか、先生はここら辺担当してるのか?」
「然り、ちょうど治安官戸別訪問サービスなる度し難い業務を自動音声モードで乗り越えていた最中だった為に手を貸す事となったのだ」
眉パーツを顰める青衣。彼女は治安局の特務捜査班に在籍する
「先輩、お待たせしました!そして…加賀実君」
「あれ、朱鳶さんも?最近忙しいんじゃなかったっけ」
「その件ですが少し片づきましたのでこちらの応援に駆け付けました」
新たに現れた女性。彼女もまた青衣と同じ治安官であると同時に特務捜査班の班長を任されている人物だ。年齢的に若いにも関わらず彼女が班長に選ばれているのは未解決事件が0件であると言う実力に起因している。更にその市民や仕事に対する熱心な姿勢が好印象なのだろう。
「もしかして通報してくれたのは…」
「そ。俺だよ朱鳶さん」
「成る程、あの賭博場の荒れようはそう言うことですか…それでは」
直後、加賀実の両手首にガチャリ、と鉄の輪が嵌められた。
「えっ」
突如として手錠をつけられ困惑している中、朱鳶は彼に言い放つ。
「器物損害及び不法侵入罪の疑いが掛けられています。どうかご同行を願います」
「え゛」
違法賭博場とは言え勝手に侵入した上にどったんばったんの暴力騒ぎを起こせばそうなるだろう。至極当然の事だった。
「ま、待ってくれ誤解だ!話を!」
「言い訳は結構です!これで何度目だと思ってるんですか!さぁ早くこっちに来てください!」
「違うんだ待ってくれぇぇぇええええ!」
「ねぇ、グループ課題の職場見学どうする?」
「やり直すのはちょっと…」
「お世話にもなったし…」
「……じゃ、
「「「異議なし」」」
学生達は探偵の不祥事から目を逸らした…時に見を逸らす事も大事なのだと彼女達は職場見学を通じて学んだのだった。
【登場人物紹介】
○加賀実 甲斐《かがみ かい》
攻撃タイプ:我流功夫
適性特性:強攻 属性:物理
通常攻撃:カンフー&ラッシュ
強化特殊スキル:ヒートアクション
終結スキル:アルティメットヒート
所属:加賀実探偵事務所
詳細情報:ルミナ区域中心部よりやや離れた立地にプレハブ小屋の探偵事務所を構えている探偵所長。地域密着型の探偵により近隣住民に愛されてはいるがお世辞にも収入は良いとも言えない。そのため幾つかの副業を掛け持ちしている姿が見られる。
また、幼少期にはとある組織に所属し抜けたらしいが…?
○臥龍ボンプ
旧式のボンプであり、廃棄されていたところを加賀実が拾い、知り合いに修繕・補正してもらった。サングラスを掛け、白と紅のスーツらしき様相をしている為、中々厳ついシルエットになっている。
また特徴として外部モジュールとの接続が有線・無線問わず可能であり、外付けパーツで飛行や高速移動。加えて戦闘も可能な汎用性に秀でている。修繕時に翻訳機器を取り付けており、クール&ワイルドな口調がギャップを生み出し、探偵事務所の人気マスコットとなっている。
ちなみにボイスは渋め(CV黒○崇矢)
1話の内容がキムタクが如くの二作目序盤の焼き増しって恥ずかしくないの???
※蹴飛ばしたメイドの弁当は後でスタッフ(サメの女子高生)が美味しく(?)いただきました。