新エリー都で如く   作:ゴランド

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禁足地に足を踏み入れて調査していた為、投稿が遅れてしまいました(ps5をしまいながら)



3話 2人の店長

 

 ルミナ区、治安局のすぐ近くに設置されてある充電スタンドに一体の厳ついボンプが起動する。ガキッ、ゴキッと可動モジュールの不調が無いか確認した後、隣に立つ男にカメラアイを向けた。

 

「よ、臥龍さん。お待たせ」

『ンナナ(なに、今さっき充電が終わったところだ。それにしても無料充電スタンドにはいつも助かるな)』

「全くその通り、不定期収入の身としては大助かりだな…で、充電終わりのところ早速で悪いんだが…」

 

 臥龍ボンプにこれまでの経過報告を行う。彼の言葉を一通り聞いた後に思考プログラムが返答を弾き出す。

 

『どう言う事だ(困惑)』

「まぁそりゃそんな反応になるよな…」

 

 治安官達とラーメン食べてたら変態に遭遇して赤牙組摘発作戦の参加を賭けてクセモンスナップ勝負する事になりました!と一通り説明すればそんな反応が返されても文句は言えないだろう。むしろなんとか事態を飲み込もうとしている辺り、臥龍の人の良さ…否ボンプの良さが垣間見れる。

 

「さて、臥龍も合流した。これより"くせもんすなっぷ"を本格的に開始するとしよう」

「そうだな。んじゃ先生、俺たちは……」

「その前に…この勝負はお主達に任せるとしよう」

「…ん?」

『ンナ?(なに?)』

 

 充電スタンドの傍に設置されたベンチに青衣が腰掛ける。

 

「我は主に機会を与えた。その後の事は己が手で勝ち取るが良い…では我はスリープモードに入る故、失礼する」

「ちょっ、待てよ(焦り)」

 

 充電スタンドに座ったかと思うとブゥン…と音を鳴らし彼女はスリープモードに入ってしまった。その様子を見て加賀実は呆れと怒りが混ざったような声を上げる。

 

「こ、この人…!最初からサボる気満々だったな……!」

『ンナナナ(で、どうするんだ)』

「仕方ねぇ、この人は置いて俺達で探すとするか」

 

 白昼堂々とスリープ(サボタージュ)モードに入った治安官兼師匠に冷ややかな目を向けた後、彼等は不審人物が居そうな場所を探す事に決めた。元々所属していた赤牙組の摘発作戦に参加する為、なんとしてでもこの勝負は勝たなければいけないのだ。

 

『ンナァ(不審者を探すとなると…やはり定番は路地裏だろうな)』

「確かグラビティ・シアター*1のところだったよな。よし、まずそこから探してみるか!」

 

 

路地裏に向かえ!

 

 

 ルミナ区のグラビティ・シアターと美容室に挟まれた形でその路地裏は存在していた。両隣に建造物が存在している為、陽射しが入りにくく死角が生まれやすいそこは不審者が居ておかしくない雰囲気を醸し出している。

 

「さて…臥龍さん。念の為にカメラモード起動しといてくれ」

『ンナナナ(任せておけ。どんな怪しいヤツでもレンズに収めてやるさ)』

 

 クセモン博士によるとボンプのフィルム機能と連動させる事で一応はボンプの視界カメラでクセモンスナップをする事が可能であるらしい。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たると言う青衣がたまに口にすることわざのように眠ってる治安官の代わりに助っ人ボンプを抜擢させてもらったのだ。

 

「気合い充分だな。まぁ…と言っても、そう簡単に見つけられりゃ苦労はしないんだけd」

 

エイサーーーイハラマスコーーーーーイ!!!

(居たーーーッ!?)

 

 簡単に見つかった。そして思った以上に不審者だ。灰色の髪をした男は謎の挙動を披露しておりその言動からドラッグをキメていそうだ。

そんな不審人物をしばらく眺めていると相手がこちらに気付き、数秒間目が合う。そして気不味い雰囲気が流れる。

 

「待ってくれ、違うんだ。これは決して怪しい事をしてる訳じゃないんだ。崇高な理由の元、行動を起こしているだけなんだ信じて欲しい」

「その言動で怪しまれないと思ってるのか???」

 

 溜め息を吐きながらその不審者をカメラのレンズに収めようとする……が、加賀実は気づく。その被写体は自身の良く知る人物と似ている、と言うより本人であった。

 

「ちょっと待ってくれ、もしかして……ビデオ屋の店長か?」

「…ん?そう言う君は……甲斐じゃないか」

 

Random Play 店長

アキラ

 

 路地裏で謎のダンスを披露していた彼こそビデオ屋『Random Play』の若き店長の1人、アキラである。本来ならば六分街に住居兼店を構えてる彼がこんなところで何をしているのだろうか?

 

「店長…アンタこんなところで何やってんだよ」

「驚かせて悪かったね。何を隠そう、ここはパワースポットになっててね。特定の行動を起こす事でその恩恵を受けられるんだ」

「パワースポットォ?」

 

 店長の言うパワースポットと言うのは歴史や自然、はたまた霊的に纏わる神殿や神社などで受けられる御利益なのだろう。しかし加賀実はこんな狭い路地裏で得られるパワーがあるとは思えない。

そんな疑問が顔に出ていたのかアキラはその詳しい恩恵について説明を行う。

 

「路地裏の角でエイサイハラマスコイの舞いを20回やるとガチャの10連でSレアキャラが当たりやすくなる恩恵さ」

「…いや、信憑性の無いだろそれ!」

「そんな事ない!インターノットでは当たったと言う声が沢山上がってるんだ!」

「匿名不特定多数の声を参考にするのは良くないと思うぞ俺は!?」

「それでも!僕は今度こそ限定レアキャラを手にしたいんだッ!」

 

 そう言いながら彼はデバイスにインストールされたアプリを起動。そのまま10回連続ガチャを回した…その結果。

 

うわああああああああッッ!最低保証にィィィ!

「可哀想に」

「やはりとにかく引くしかないのか…天井まで……ッ!」

「……生活費を圧迫しない程度にな?」

「考えが甘いね甲斐。生活費からどうガチャ資金をやり繰りするかがポイントなのさ」

「これが廃課金者の思考…」

 

 路地裏で慟哭が響く。その様子をカメラに収めるのはあまりにも酷い仕打ちであろう。加賀実はカメラのボタンから指を放す事にした………ちなみに横の臥龍からパシャリと音が響いた事に男二人が気付かなかった。

 

 

Zenless Zone Zero NowLoading…

 

 

 路地裏と悲しみから抜けたアキラ。そんな彼に付き添う形で歩く加賀実はふと疑問に思う。Random Playにはもう一人の店長でありアキラの妹である『リン』が居た筈。元気溌剌な彼女であれば兄と共にショッピングに来ていてもおかしくないだろう。

 

「そういやもう一人の店長はどうしたんだ?」

「リンの事かい?彼女なら時間的にショッピングを終えて集合場所に居る筈だよ。さっきイアスにも確認したから間違いないさ」

「そうか。まぁリンもリンで変な事してなきゃ良いんだけどな…」

「おいおい失礼だよ甲斐。確かにリンはとても可愛らしく純粋無垢で可愛い出来た妹で誰もが狙いたくなるような可愛さを持ってる。でもそんなリンが簡単に騙されると思うかい?」

「確かに、考えすぎだったか」

 

 可愛いを3回も連呼した事に目を背けつつ会話をしていると、目の前のバス停近くに一人の女の子を見つける。彼女こそ兄妹で経営するビデオ屋の店長が1人のリンだ。

 

「あ、お兄ちゃんに…甲斐?こんなところで何をしてるの?」

 

Random Play 店長

リン

 

「ようリン。お前もこんなところで会うとはな」

「そうだね、ムナンチョ〜!(気さくな挨拶) それはそうと2人は神を信じてる?」

「「リンが怪しい宗教にのめり込んでいる!?」」

 

 突如として彼女の口から謎言語による挨拶と宗教勧誘の第一声が放たれた事によるショックで男2人は同様の渦に呑まれてしまう。

 

「おっおおおお、おちっおちちちちち落ち着くんだ甲斐!ままま、まだリンがそんな怪しいカルト宗教団体に入信したとは断定されたわけじゃないからおっ、おおお落ち着くんだ!!!」

「お前が落ち着け!目が泳ぎまくってるぞ!?」

「もう、2人とも。もしかして私が騙されたと思ってるの?」

 

 そんな2人と対照的にリンは冷静だ。大いに慌ててる兄を見て苦笑しながら彼女は手提げ袋より何かを取り出す。

 

「ただ私はこのペペトナスウォーターを買っただけだから!ほら見て!この水って都内の水と比較して体内代謝率が段違いで吸収性も高いから健康増進に良いんだよ!それに伴って徳が高くなる!」

「んー…それなら大丈夫か…?騙されたもんかと思ってたが安心しt」

「それにク・リパースを一定数溜めると…ほら!見てこの水!このペペトナスウォーターを購入する事ができるんだよ!」

「いや騙されてるなこれ!?」

 

 そんな彼女に対して兄は心配一色の顔で詰め寄る。

 

「やめるんだリン!そんな事で生活費を削ってわざわざ水を買うなんて!」

「わざわざ生活費を削って課金してるお前にだけは言われたくないと思うぞ」

「お兄ちゃん落ち着いて!これはただの水じゃないんだよ!別に私は気にしてないけど、これはカロリーゼロだから体重に悩む女子の味方になるんだよ!別に私は気にしてないけど!!!」

 

 リンがやけに声を荒げる中、足元では2体のボンプが会釈を交わす。臥龍に向き合うのはビデオ屋の従業員である旧式ボンプであるイアス。オレンジのマフラーがトレードマークだ。

 

『ンナナ(臥龍さんこんにちは)』

『ンナ(ああ、イアスも息災みたいだな…ところで妹の方の店長はどうしたんだ?)』

『ンナナナ、ンナ(ここしばらくチョップ店長のラーメンとジャンボサイズバーガーにパーティーサイズのピザ三昧で…)』

『ンナ(太ったのか)』

「イイイイ、イアスゥゥーー!?ちょーーーっと、語弊を招く言い方はよそうねぇ!!」

 

 語弊ではなく事実である事をアキラは苦笑していた。しかしそんな彼女に呆れながらも加賀実はとある知識を口にする。

 

「そもそも水ってカロリーゼロだからな?」

「え?」

「いや、え?じゃなくて本当だからな?ネット使って調べれば簡単に分かることだと思うんだけどなぁ」

 

 頭をポリポリ掻きながら言う彼に対してリンは目を泳がせ「えっ?あ、いや…でも……嘘…?」と動揺を隠せてない。そんな妹に兄であるアキラが追い討ちを掛ける…!

 

「リン…悲しい事を言うようだけどね。カップ麺にその水を入れたとしてもカロリーが減る事はないんだ。むしろトッピングのチャーシューや煮卵、〆のライスを入れてる分、カロリーは増える一方だよ」

嘘だぁぁあああああああああああああああッッ!!

 

 哀れビデオ屋の店長(妹)。女性の悩みの種の8割(偏見)とされる体重管理につけ込まれ宗教詐欺に引っかかってしまい余計なディニーを払ってしまった。こんな事なら水なんて買わずにダイエット器具を買っておけば良かった…と後悔の念を口にする。

 

「やっぱりカロリーゼロの水なんて存在しない…私達にとって最後まで頼りになるの水はニトロフューエルしかないよ…!」

「ああ、その通りさ。ニトロフューエルはガチャと違って裏切らない…!」

「……スピリチュアル系が絡むと途端にIQが低くなるのかこの2人?」

 

 今度はニトロフューエルを信仰しそうな予感を胸に探偵はやれやれと呆れるのだった。

 

 

Zenless Zone Zero NowLoading…

 

 

「つまりアレかい?君はとある探偵業務の一環として不審者の撮影を行っていると…うーん…そうだなぁ」

「正直に言うとね……頭大丈夫?」

お前達には言われたくねぇ!

 

 先程までガチャ爆死と詐欺に遭ってた兄妹にそう告げるが内心、否定できないところに悔しさを覚える。知らない人が居れば自分も不審者判定されるであろう撮影。

六分街にてビデオ屋を経営してるのにルミナ区は自分の庭だと豪語する2人に協力を要請したのだが、少し不安に思ってしまう。

 

「まぁ落ち着いてほしい。もしかしたら僕らの目的と合致する可能性がある」

「…どう言う事だそりゃ」

「甲斐はゴールドボンプって知ってる?実はここではゴールドボンプの目撃情報があったんだよ」

「ゴールドボンプが……?」

 

 ゴールドボンプ、全身黄金に輝く小型ロボット。立てば100ディニー、座れば1000ディニー、歩く姿は10000ディニーを落とすと言われている。まさに金の成る木ならぬ金の成るボンプとネットでは言われている。一部では目撃情報を教えるだけでも報酬金が出される程に希少な存在とされている。

そんなゴールドボンプがここルミナスクエアにて見かけたとされる…そんな情報に加賀実は首を傾げる。

 

「いや、けどよ。おかしくないかそれ?」

「君の懸念点は分かってるつもりだよ、何故なら…」

「ゴールドボンプはホロウ内にしか存在しないとされている!からでしょ?お兄ちゃん」

 

 ゴールドボンプはその特異な性能か、はたまたエーテルとの反応によるものか、それともコイン集めが生態なのか?なにはともあれホロウ内を縄張り?としているボンプが街中に現れるものかと疑問に思うだろう。

 

「つーか、良くゴールドボンプの事を知ってたな?ホロウ内に目撃されるってのは勿論だけど、ビデオ屋やってると詳しくなったりすんのか?」

「そ、そうなんだよ!最近はボンプ特集のビデオを仕入れて…ね!お兄ちゃん!」

「そ、そうさ!ビデオを仕入れるにしてもお客さんにオススメできるよう内容を逐一チェックしてるからね。自ずと詳しくなっていったのさ」

「ふーん?まぁそれはそれとしてゴールドボンプは気になるがそれと俺の撮影とどう関係が…」

 

 その様子を見たアキラが「甘いね」と言わんばかりの表情を浮かべる。

 

「分からないかな甲斐?そう言う情報を求めて人が沢山来る可能性がある」

「つまり、沢山来ると言う事はその中から良さげな不審者を見つけられる可能性が高いって事だよ!」

「成る程なぁ…いわゆるゴールドボンプはクセモンホイホイってとこか」

 

 伝説とも言えるゴールドボンプをそう呼ぶのは如何なものかと思いつつも、2人は何も言わなかった……。そんな店長達を差し置き、加賀実はバックから三脚らしきものを取り出す。それを臥龍に取り付けるとガチャガチャと音を立てながら変形しする。

 

「これは…オービス*2に似てるね?」

「それに似たようなもんだ。特定の対象をカメラで押さえる自動撮影プラグインが搭載されたモードだな」

 

 臥龍のモードの一つ。自動撮影かつ遠くから近くの物を自在にレンズに収める。これならどんな変態でも見逃す事はない筈だ。

 

『………!?』

 

 刹那、臥龍がシャッター音を鳴らす。急に撮影してどうしたのだろう?と3人が疑問に思ってると加賀実のデバイスに臥龍が撮影した写真が送られてきた。

 

「これは……ッ!?」

 

 そこにはピントはズレ、姿自体もブレているものの、黄金の何かが写っていた。これぞまさに…!

 

「「「ゴールドボンプ!?」」」

 

 ホロウ内にしか存在しないとされる幻のボンプ。それを見つけた喜びに3人は満ち溢れると同時に俄然としたやる気が溢れてくる。

 

「このブレや角度から察するにゴールドボンプはこの先へ行ったようだね」

「早く追いかけるとするか!」

 

 2人がその足を進める中、リンはふと疑問に思う事があった。それは何故写真にボンプが入り込んでいるのかである。

 

(確か臥龍って変質者を自動的に撮るように設定してたんだよね?)

 

 それなのに何故ゴールドボンプを臥龍は撮影したのか?そんな疑問がリンの頭の中にこびりつく。ただ設定を間違えたのか?それともプログラムに不備があったのか?それとも────

 

「リン、どうかしたのかい?」

「ううん何でも無いよお兄ちゃん!さぁ、早く私たちの目的も達成しちゃおうか!」

 

 ひとまず目標である黄金の子兎を追い掛ける為に、3人は街中を駆けて行ったのだった。

 

 

Zenless Zone Zero NowLoading…

 

ゴールドボンプ?を追え!

 

 

 しばし足を動かして捜索する一同。市民の目撃証言を頼りに最後に見つかった広場らしき所まで来たものの、ゴールドボンプらしき姿は見えない。

 

「……うーん、こっちに来た筈なんだけどなぁ」

「とりあえずここで待ち構えて写真を撮るのが良いかもしれないね」

「そうだな…そう言えば何で2人はここまで付き合ってくれるんだ?つーか、ビデオ屋を営業してなくて良いのかよ」

 

 そんな疑問を2人にぶつける。

 

「僕らはちょっとした副業をしているのさ、ビデオ経営だけじゃ収入が心許ないからね」

「そうそう!ネットで知り合った人の依頼を解決する…まぁ、いわゆるインターネッツ探偵って感じかな?」

「インターネッツ探偵ねぇ、俺はどうも直接人と関わるような依頼じゃないと気が済まないって言うか…まさか2人がゴールドボンプを探してるのって」

「そのまさかだよ!実はゴールドボンプの撮影をして欲しいってネットの知り合いから頼まれて引き受けてるの!」

「ご近所付き合いやネットで依頼を受ける事でビデオ屋の顧客に繋げる…こう言う営業のやり方もあるのさ」

 

 加賀実は性格的に合わない為かネットを利用する機会がそこまで無い。それ故に電子の海を利用した方法に関心の声を漏らす。参考にすべきかと思考しながらカメラの準備を整える。今度は己の直感を信じてクセモン博士から支給されたカメラとボンプを連動させる。

 

「なら、その撮影手伝わせてもらうぜ」

「それはありがたいけど、いいの!?」

「なぁに、ビデオ屋を再開した時にサービスしてくれりゃ歓迎だ。うちは依頼が中々来ない時もあるからな。ビデオ見てないと暇で仕方がないんだよ」

「それは…なんとも悲しい理由だね」

 

 アキラが苦笑していると臥龍が反応を示す。これはゴールドボンプが近くに居る事を示していると加賀実は思い、カメラを構える。先程の写真やリン達の情報からゴールドボンプはとにかく素早く、気を抜けばあっという間にシャッターチャンスを逃してしまう事だろう。

 

『勝負は一瞬だ。気をつけていけ』

「ああ、勿論!」

 

スクープミッション

『ゴールドボンプ?を撮影せよ』

 

GOOD

ピンボケしてない

顔が写ってる

EXCELLENT

最大倍率で捉える

ゴールドボンプ?のを写真の真ん中に収める

 

 街道にカメラを構え、目に全神経を集中させる。まるで時間の流れが遅くなったかのように、彼の視界に映るもの全てがスローモーションで再生されるビデオのようにゆっくりとした動きに変わる。

そして獲物である金色のそれが写る刹那、加賀実はシャッターボタンに指をかける。

 

(ここだッ!)

 

◯『撮影』

 

 パシャッ!と、カメラモードの臥龍からフラッシュが放たれる。飛び出して来た全身金色の何かは強烈な光により動きを停める。それに伴いゴールドボンプらしきものの全貌が顕になるだろう。

 

そこに居たのは………!

 

「くっ、見つかってしまったンナか!」

 

 ゴールドボンプらしき仮面を付け、首から下をパツパツの金色タイツで纏う筋肉モリモリマッチョマンの変態であった。

 

「「「変態だぁーーーーッッ!?」」」

「貴様等!このゴールドボンプマンを変態と申したンナか!?」

「「「ゴールドボンプマン!?」」」

 

 奇怪!なんと言う事であろうか。ルミナ区に現れるゴールドボンプの正体はゴールドボンプのコスプレをした変態だったのだ。そしてリンはようやく合点がいく。何故ゴールドボンプに臥龍が反応したのか?それは故障などではなく、正常。何故ならば最初から撮影対象はゴールドボンプではなく変態だったからだ。

 

「バレてしまっては仕方ない。さぁ、貴様等もこの全身金色タイツを来てゴールドボンプになるが良いンナ!」

「いやぁぁーーーーッ!助けてお兄ちゃん私達ボンプにされちゃう!?」

「落ち着くんだリン!僕等はボンプになるのは慣れっこじゃないか!」

「ほう、それは良い事を聞いた…よし気に入った!貴様等2人には特別にラメ入り全身金色タイツとゴールドボンプマスクを着てもらうンナね!」

「「うわぁあああッ!藪蛇だったァァ!?」」

 

 ゴールドボンプマンの金色タイツを着せてくる妖怪めいた生態系に2人の店長が怯えの表情を露わにする。兄妹は諸事情により裏側の世界を知っている。それに纏わる出来事も色々と体験して来た。しかし得体の知れない変態に全身金色タイツを着せられそうになると言う出来事は初めてだった。

 

「待ちやがれ変態野郎、俺の友人に手を出すのはやめて貰おうじゃねーか」

「また変態呼ばわりンナか、無礼な奴ンナね」

 

 しかしそんな2人に差し伸べられる救いの手。店長達の前に守るように立つ加賀実は臨戦体勢だ。この様子から察するに力づくで止めなければ我々は犠牲になる。そう予感した彼は相手を殴る事に対する戸惑いは一切ない。

そんな男に相対するボンプモドキはクックックッと不敵な笑みを溢す。

 

「まぁ、良いンナね…このゴールドボンプマンが貴様を倒し、3人には全身タイツを着てもらうンナね!特にそこの娘には黄金のぴちぴち全身タイツで身体のラインを露わにしてもらうンナァァァァ!」

やっぱり変態じゃねぇかこの野郎!!!

 

 

ゴールドボンプマン

 

 

「オラァッ!」

 

 先手を取ったのは加賀実だった。一気に懐に駆け抜け、拳を腹部に叩き込む!それによりゴールドボンプマンの体が傾く…ことは無く、微動だなしなかった。

 

「効かないンナねぇ…」

「なっ…!?」

 

 続けて掌底、ローキック、正拳突きと流れるように叩き込むがどの攻撃も相手の鍛え上げられた柔軟性と剛性を備えた筋肉により弾かれてしまう。ならば首を狙い、意識を刈り取る!と言わんばかりに空中回し蹴りを放つ。

 

「甘いンナよぉ!」

「う、おおおおおお───がっ!?」

 

 蹴りが命中する直前に足首を掴まれてしまい、そのまま投げ飛ばされる。壁面に背中を打ち付け、肺の中の空気が一気に吐き出される。攻撃が通用せず逆にカウンターを貰った加賀実は認識を改める事となった。ゴールドボンプマンはただの変態ではない。攻守共に優れたマッスルボディを持つ気合いの入った変態なのだ。

 

「本腰入れてやらないと、こっちがやられるな…ッ!」

 

 起き上がった後にトントン、と小刻みにジャンプ。そのまま再び接近戦を仕掛ける。「また同じ手を!」と良いながら相手の攻撃を受け、投げ飛ばす耐性に入る筋骨隆々なゴールドボンプ。

直後、変態の眼前でパァン!乾いた音が響く。不意に現れた破裂音により思わず瞼を閉じてしまった。

 

「らぁっ!!」

「ぐぉンナ!?」

 

「猫騙しで怯ませた!」

「で、そのまま顔面に飛び膝蹴りって…容赦無いなぁ!?」

 

 膝蹴りによりゴールドボンプを模した仮面越しに鼻血が噴き出る。しかしそんな事を知ったことかと言わんばかりに一発、二発、三発と拳を金色の仮面へと叩きつけて行く。

ボディの防御性が優れているのならば顔面を狙い続けダウンさせる。そのような考えの元、幾多も攻撃を加えて行く。

 

「ンナ…ンナナナァーーーーッ!」

「こいつ、なんてタフさだ…ッ!」

 

 しかし獣の如き雄叫びと共にゴールドボンプマンが攻撃を弾く。顔面を集中的に攻撃されたにも関わらず、そこ知れぬガッツを見せる。すると大木の如き金色の腕が探偵めがけて振り下ろされる。

それに対して防御を選択する……直前、相手の指先から鋭い凶器のようなものが伸びる。

 

「しゃあッ!ゴルディオンネイル!」

「うおおおッ!?」

 

 上体を後方に逸らす事で振るわれる爪をギリギリで回避する。幾度も振るわれる爪による斬撃を躱していく。凄まじいパワーが放たれる爪攻撃は当たればひとたまりもないだろう。

更に追い討ちをかけるように相手は言葉を紡ぐ。

 

「ククク、このゴルディオンネイルには麻痺性の毒が染み込ませてあってな…これを喰らえば貴様とは言え無事では済まんンナね…!」

「どんどん犯罪を重ねて来てやがる…!?」

 

 当たるどころか一発でも掠ればアウト。両手の指全てに毒仕込みの凶器10本。それに対して素手で戦うのは確実に分が悪い。どうすれば良いかと考えると加賀実の後方より声が響く。

 

「甲斐!これを使って!」

 

 観客として闘いを眺める立場であったリンが何かを放り渡して来る。襲い掛かる毒爪に対し受け取った得物で防ぐ。ガギィン!と甲高い音を響かせるソレを目にした加賀実は驚愕の表情を浮かべた。

 

「これ…ペンチじゃねーか!?」

「ペンチ!?リン、何でそんな物を!?」

「最近イアスの調子が悪そうだったから修理にと思って買っておいたの」

『ンナ!?(そのペンチを使って一体なにを…!?)』

 

 困惑するイアスを他所にゴールドボンプの変態から放たれる爪撃の嵐をペンチで凌いでいく。

 

「ンナナナナナ!(笑い声)そんなペンチで渡り合おうとは片腹痛いンナねぇ!」

 

 ぶぉん!と毒爪による刺殺が探偵に向かって放たれる。通常なら反応しきれない一撃をペンチを使い軌道を逸らす。そのまま全身黄金タイツで包まれた腕を脇で挟みながら捕える。

 

「なにっ……ンナ!?」

「片腹痛いって言ってたな…でも、ペンチにはこう言う使い方もあるんだよッ!」

 

△極『ペンチの極み』

 

 そう言うと変態の指先に生えた爪を鉄の刃先で噛み挟んだ。その瞬間、これから自身に待ち受ける地獄を察したのかゴールドボンプマンの全身からブワッと冷や汗が溢れる。

 

「ま、待つンナ!そのペンチを使って一体何をする気ンナ!この爪は長い月日と高額のディニーを注ぎ込んで作り上げた特注の爪ンナ!そんな我が傑作にペンチで一体何をするk」

 

ボリィ!(爪を剥ぐ音)

 

ンナァァァァァアアアアアアア!?(断末魔)」

 

「うわッ!?痛い痛い痛い!」

「思い切り爪を剥ぐとはなんて恐ろしい…!?でも効果的だ!」

 

「こ、この……許さンナァァァァ!」

「ハァッ!」

 

 冷静さを失ったゴールドボンプマンの腹部にカウンターの拳が突き刺さる。畳み掛けるようにパンチ、裏拳、回し蹴り、踵落としが撃ち込まれていく。次々と放たれる攻撃に為す術もなく相手はフラフラと膝を付く。

その瞬間を待ち望んでいたと言わんばかりに加賀実は駆け出し、跳躍した。

 

△極『フィニッシュブロウの極み』

 

 ズドンッ!と砲弾の如き握り拳が相手の顔面を捉え吹き飛ばす。紆余曲折こそあったがこの勝負は加賀実の勝利で幕を閉じたのであった。

 

 

Zenless Zone Zero NowLoading…

 

 

「全くなんて強い変態なんだ。ルミナ区は治安の良さがウリじゃ無かったのか?……っと、2人とも大丈夫か?」

「お陰様でね、助かったよ」

「そうそう。もし甲斐が居なかったら私達まで同じ金色タイツを着る羽目になってたところだったね」

 

 そんな安堵する3人の元に朱鳶達が駆け付けてくる。その場をジッと見た後に加賀実に対し口を開く。

 

「またですか?」

「ちょっと待ってくれ逮捕の構えはやめてくれ。今日で二度目はマジで勘弁してくれ(焦り)」

「そうだよ治安官さん!私達の話を聞いて!」

「実は先程……」

 

 すると店長2人が朱鳶に経緯を説明し、誤解は早急に解かれる事となった。それに対しセスと再起動を果たした青衣がゴールドボンプマンをマジマジと見ている。

 

「ところでこれは…?」

「それは妖怪全身金色タイツ。見た者を片っ端から金色タイツ着せようとするやばい変態だ」

「どう言う事だ…?(困惑)」

 

 変態の生態系に困惑するセスだったが、そこにクセモン博士が登場する。しかし治安官や加賀実達には目もくれず、真っ先にゴールドボンプマンの元へ駆け寄ると歓喜の声を上げた。

 

「これは…間違いない!SSR(スペリオルスーパーレア)クセモンのゴールドボンプマンじゃ!」

「「ゴールドボンプマン!?」」

 

 朱鳶とセスが声を上げた。傍の青衣は「面妖な」と呟くだけで終わった。そんな驚く者達を放っておいてクセモン博士は解説を続ける。

 

「これは中々目にかかれないクセモンでのぅ。三体揃えば融合してプラチナボンプマンへ変身を遂げると専らで噂されてるのじゃ」

「こんな奴が他にもう二体いるのか!?」

「と言うか融合するんですか!?」

「プラチナボンプマンってなんだよ!?」

 

 怒涛の情報量に処理が追いつかない全員。そんな中、青衣は冷静に朱鳶とセスの2人に声を掛ける。

 

「さて、セスに朱鳶よ。おぬしらが撮影した『モルゲッソヨ化犬下僕』のランクはSR(スーパーレア)。この勝負は坊の勝ち…で異論はあるまい?」

「…はい、勝負に負けた事は悔しいですが彼等の話を聞く限り守る為に体を張った。それだけで俺は口を出す事はありません…いややっぱり口を出させてください。良くやってくれたな加賀実!」

「加賀実君おめでとう御座います。これで貴方の参加は正式な物となりました」

「あー、いや悪いんだけどな、モルゲ何とかって言うパワーワードの所為で喜ぶに喜べねぇんだけど???」

 

 クセモンスナップ勝負は加賀実の勝ちに終わり、赤牙組の摘発作戦に参加が叶う事になった。本来は跳ねて喜ぶべきなのだろうが前述のパワーワードで内心複雑であった。

 

「ところで加賀実君、ゴールドボンプマンは高額な報奨金を提示されている指名手配犯です。それを鎮圧、治安局へ突き出してくれた貴方はこれを受け取る権利があります」

「マジか!?金出るのか!?」

 

 思わぬ収入に喜びの感情を上げる貧乏探偵。なんて美味しいのだろう!と思うと同時に協力してくれた店長達への申し訳無さが溢れて来る。

 

「あー、店長。よかったら…」

「いや、そのお金は君が持ってて欲しい」

「そうそう。寧ろ助けて貰っちゃったんだから!…あ、そうだ!良かったらコレを受け取って!」

 

『ニトロフューエル』×1を受け取った!

 

「こ、これは…!?」

「ああ、命の水さ!」

「いやエナドリだろ(真顔)」

「私達にとっては命の水だよ!」

「いやエナドリだろ(真顔)」

 

 アキラとリンから命の水と称されたニトロフューエルを受け取る。感謝の印である栄養ドリンクを受け取る。金にドリンクと変態との邂逅は幸運を引き寄せるのだろうか?ありがたいと思う反面それはちょっと…と思ってしまう。

そんな中、グググ…と先程まで地に伏していた金タイツの変態が体を起こす。

 

「ンナナナ…中々の一撃だったンナよ」

「あっ、気をつけて甲斐!まだ息があるよ!」

「そりゃ殺してないからな!?」

 

 リンの一言に思わず声を上げる加賀実。ゴールドボンプマンが起き上がった事により全員の警戒レベルは引き上げられるが、それは杞憂に終わる。

 

「いいや、安心するンナよ。ゴルディオンネイルが剥ぎ取られた今、自分は善良なるゴールドボンプでンナ」

「善良ではないけどな?変態だからな?」

 

 しかし覚えて欲しい、と付け加えるとゴールドボンプマンは彼等に遺言を残すかの如く言葉を紡ぐ。

 

「このゴールドボンプマンもまた、ゴールドボンプに狂わされた人物の1人ということをンナ…」

「サッサと歩け!」

「変な事言いやがってこの変態!」

 

 そのまま治安官達によって連行されていく変態を見届ける。その一連の流れを眺めていた朱鳶とセスは言葉を漏らした。

 

「ゴールドボンプマン…なんて悲しい人だったんでしょう」

「おかしい人だろ」

「ゴールドボンプマン…ヤツはきっと更生して善良な人になってくれる筈だ。その時は……」

「更生してもあの性癖はそのままだと思うけどな?」

 

 業務と人付き合いを真摯に取り組み、性格がとても真面目故に謎の感情移入を見せる2人。そう言う部分が治安官のエースとして相応しい素質なのだろう…きっと、おそらく。

 

 

サイドストーリー END

激写せよ!クセモンスナップ!

 

 

*1
ルミナ区に構える映画館

*2
速度違反自動取締装置。道路を走行する車両の最高速度超過違反を取り締まるスピード測定器とカメラを組み合わせたもの




【登場人物紹介】
○アキラ&リン
ビデオ屋の店長は仮の姿。本当の姿は…!と言う感じのゼンレスゾーンゼロ本編の主人公達。本作品主人公とは客と店長の付き合いであり、互いの裏事情はまだ知り得ていない。
ちなみに朱鳶達とは今回初めて会う事となった。

○ゴールドボンプマン
己の姿を見た一般市民に全身金色のタイツを着させようとしてくる変態。ゴールドボンプを愛するが故に己自身もゴールドボンプになろうとした結果、ピチピチの全身金色タイツが性癖とマッチ。哀しきモンスターが生まれる事となった。


シルバーアンビー、トリガーさん、プラクラさんに加えてモッキンバード陣営が控えてる事実…!復刻キャラも是非とも手に入れたいですね…!

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