新エリー都で如く   作:ゴランド

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 完全に遅れてしまいました…きっと誰も覚えてないから投稿してもバレへんやろ…?



5話 シルバーヘッド

 

 各々が構える中、先陣を切ったのはアンビー。電撃を纏ったナタを振るうことにより赤牙組の構成員達を纏めて吹き飛ばす。そんな一番槍に対して被害が及んでない構成員達が得物を向けようとした瞬間、強い衝撃と共に武器が弾かれてしまう。

 

「悪いな、正義の味方ってのはどんな事も見逃さねぇ!行け甲斐ッ!」

「おおおッ!」

 

 ビリーが作り出した隙*1を見逃さず加賀美は丸腰になった構成員の顔面に飛び膝蹴りを叩き込み1人を戦闘不能に追い込む。そこからすかさず傍に居た敵の顔面に裏拳を叩き込むと同時に、身体に捻りを加えた回し蹴りを別の敵へ撃ち込んだ。

 

「この野郎…良い度胸だッ!」

「くっ!?」

 

 その声と同時に構成員の1人が横からボクシングスタイルで襲いかかって来る。かなりの強者だと直感した加賀美は即座に回避行動を行い相手の背後に回ると、動けないように腕を固める。

 

「ニコ今だ!」

「そう?なら遠慮なく行かせてもらうわ!」

「あ、おい!?」

 

 その言葉を聞いたニコが待っていましたと言わんばかりに改造アタッシュケースから覗く銃口を"2人に向ける"。

 

「死ねぇ!!」

「「死ね!?」」

 

 確殺意が籠った言葉と同時に放たれるマシンガン。構成員を盾にする事で加賀美は襲い掛かる特殊エーテル弾の雨霰を凌ぐ。ちなみに放たれたエーテル弾は全て裏市場にて格安セールで売られていた物。殺傷力は低いものの衝撃や痛みは普通の弾丸と遜色無い事をここに記載する。

 

「あ、危ないな!?おいニコ!俺も巻き込もうと考えてなかったか!?」

「さーぁ?なんの事か!全ッ然ッ!さっぱり!分からないわn……あーっ!?ちょっと待って!拳を振り上げた姿勢でこっちに歩み寄らないで!暴力は何も解決しないのよ!?」

「今こうやって暴力で解決してるだろ!(迫真)」

 

「2人とも、ふざけてる場合じゃない。交戦こそしているものの、こんな閉所でやるのは流石にこちらが不利」

「弾代もどんどん減っちまう!親分どうする!?」

 

「しょうがないわね…ビリー!窓を割って!」

「お安いご用!」

 

 ビリーが愛用の二丁拳銃から数発の弾丸を放つ。それにより壁に張られた窓は破壊され……る事なく、跳弾により天井の照明器具を落とす結果となった。そして運が悪い事にその照明器具はビリーの頭目掛けて落ちていく。

 

「ビリー危ないッ!」

「う、おおおおおおおおお!?救出方法雑すぎねぇか!?」

 

 加賀美がビリーの脚を掴み、力任せに引っ張る事で脳天への直撃を回避する。ビリーはまるで鉄柱の如く探偵に担がれ難を逃れたが、その隙を見逃す程構成員達はバカではない。一斉にドスや特殊警棒と言った武器を構えるだろう。アンビーと加賀美がどう切り抜けるか思考を巡らせている中、ビリーが動く。

 

「全員伏せてな!今こそスターライトナイトの輝きを!」

 

 その言葉を聞きアンビー達は咄嗟に体勢を低くする。直後,ビリーの二丁拳銃から弾丸が四方八方へ放たれる。普通の機械人には再現不可能な立体的機動と早撃ちにより囲んでいた組員達を次々と倒していく。

 

「見たかアンビーッ!これぞ俺様がスターライトナイトから学んだ「ビリー後ろ!」へ?」

 

多数の構成員を撃破したのも束の間、ビリーは後頭部に強い衝撃を受け地面に倒れ伏した。

 

「ビリー!?」

 

 赤いジャケットを纏った機械人の背中側に立っていたのは片手に得物を納めていたミゲルだ。あの弾丸が荒れ狂う嵐の中、部下を肉壁にしてビリーを背後から襲ったのだろう。

ガリガリと鉄パイプを床に擦らせながら次の標的であるアンビーと加賀美に向かって駆け出す。

 

「らぁッ!」

「くっ…!」

 

 アンビーは驚愕する。相手が振り下ろしてきたパイプに対してこちらは電撃を纏う鉈での応戦。武器の質や技量に自信があったアンビーだが、想定していた以上のパワーに思わず表情を崩したのだった。

それに加えてマトモに受け止めた影響で腕が痺れてしまう。その隙を見逃さなかったミゲルは至近距離からの蹴りを放ち、アンビーを後方へ吹き飛ばす。

 

「アマが俺に勝とうと思ってんじゃねぇ!」

「っ…加賀美!」

「任せろ!」

 

 その直後、吹き飛ばされたアンビーの手を握手するような形で加賀美は握る。そのままコマのように遠心力の勢いを利用して雷光纏う銀髪の少女を放り投げた。素早いリカバリーに思わず動きが止まるミゲル。

そんな相手に対してアンビーは切り上げによる一閃を見舞う。

 

「ハァッ!」

「ぐ、こ…のぉ!?」

 

 鋭い一撃を受け、得物である鉄パイプが手放されるミゲル。目尻に怒りの涙を溢し、己が拳を眼前の女に向けて振ろうとする…が、目の前の光景に思わず目を見開く。

加賀美が彼女の背を踏み台代わりにして大きく跳躍し、宙を舞う鉄パイプを手にしたのだ。

 

「おおおおおおおおおッ!」

 

 彼が持つ鉄パイプが眼前の男に目掛けて振り下ろされる。それに対してミゲルは両腕をクロスさせてガードで対応した。腕にビリビリと衝撃こそ来るが奇襲は失敗に終わった。それを嘲笑うかのようにシルバーヘッドが口端を吊り上げる。

 

「なんだ?これで終わりかよ、ガッカリだぜ甲斐ぃ…!」

「…俺ばっかり見てて良いのかよ?」

「あ?」

 

 その直後、ミゲルの顎を懐に入ったアンビーが蹴り上げた。加賀美に意識を集中させていた事により不意の一撃を受け、意識が混濁する。

アンビーが作り出した隙を逃さないように、手にした鉄パイプに力を込めるとミゲルの脳天に向けて得物を振り下ろす。

 

△極『バットの極み』

 

 鉄パイプによる攻撃を頭に撃ち込む事で相手はその場で膝をつく。更にミゲルの顔面に向けてトドメと言わんばかりのフルスイングを放つ。

 

「ぜぇりゃぁッ!!」

「がぁ!?」

 

 その衝撃に脳が揺れたのか2,3歩後方へよろめき、相手は膝を付く。ポタポタと白髪に鮮血を滲ませミゲルは忌々しい相手を睨むだろう。

 

「クッ……ソがぁ…!」

「オ、オヤジ…!?」

「テメェら何ボケッと見てやがる!その手に持ってるチャカは飾りか?ええ!?」

 

 そう言われた赤牙組構成員達は直後、手にした拳銃を邪兎屋の面々に向け発砲の準備を行う。荒事に対してのエキスパートと言っても過言ではないニコ達だが、相手側が大人数かつ閉所である理由から不利な立場に立たされているのは誰でも分かる事だろう。

しかしこれまでも、そのような危機的状況を乗り越えてきた事を加賀美は知っている。故に探偵はこの場から切り抜ける方法をニコの知恵に頼る事にした。

 

「ビリー、起きなさい!ついでに良い感じの目覚まし時計も付けてね!」

「あいよ親分!」

 

 ニコの声に倒れ伏していた筈のビリーが応える。そんな彼の手の内には赤牙組が有していた閃光手榴弾(フラッシュバン)が納められていた。これはミゲルに殴られた瞬間、ビリーは咄嗟に彼の腰元に備えられていた物を取っていたからである。

 

「加賀美!」

「頼むから目を閉じるなよッ!」

「何してやがる撃ち殺せッ!」

 

 ビリーの一声と共に部屋内に放たれる大音量と閃光。そして銃弾の嵐が部屋の中に響き渡る。閃光手榴弾による目眩しも文字通りの雨霰の弾丸が襲い掛かれば意味が無い。部屋の中を包んだ光が収まった頃には男女とロボットの無惨な死体が……

 

「……危ねぇ、間一髪!」

 

 組員達は驚愕した、それもその筈邪兎達の前に護り聳える壁が作られていたのだから。しかし厳密に言うとそれは壁ではない、弾丸をも通さないその壁の正体は超硬質な材料で作られた床のタイルだったのだ。

閃光手榴弾が爆ぜる直前、ニコは加賀美に『床のタイルを壁にするように』と合図を出しそれを実行したのだった。

 

「案外パイプを床に突き刺せば捲れるもんなんだな…使いやすい武器をありがとうな」

「テメェ…舐め腐りやがって…!」

 

 壁越しに対峙する加賀美とミゲル。そんな場面に轟音と光源が外より現れた。その正体は治安局航空隊が所有するヘリコプターから発せられるものだった。

 

「治安局だと!どうしてこんな所に!?」

「あら?もしかしてさっきの光と銃弾の音で居場所がバレないとでも思ってたのかしら?」

 

 ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべるニコ。彼女は元より赤牙組を4人だけで倒そうなどとは思っていなかった。彼女の目的は閃光弾による光と銃弾による音を敢えて出させる事で治安局にこちらの位置を知らせる事だ。それに加えて現在、治安局は赤牙組の摘発に躍起となっていると加賀美から聞いている。治安局と赤牙組が互いに争っている最中に自分達は目的である金庫を持ち逃げすれば目的は達成する。

 

治安局ヘリを背後にするニコはホーッホッホッと高笑いをする。その光景はまるで映画に登場する悪の親玉みたいだ…とその場に居た探偵は思った。

 

『なにぃ!?赤牙組の【新エリー都スラング】を発見したァ!? 』

 

 その時、部屋の隅に転がっていたモニターより声が響く。その正体は現在自分達が居るヤヌス区十四番街を生放送で送り届けていたアナウンサーだ。その後モニターより数々の罵倒が響く中、ヘリコプター操縦席よりとある言葉が響く。

 

『攻撃命令確認!最大口径の物を使う!』

「「「えっ?」」」

「ちょ、待てよ(ガチ焦り)」

 

 狙腑抜けた声が漏れる邪兎屋、未だ困惑し続けている赤牙組、そしてこの後の展開を察してしまった加賀美。そしてその全員が居る場所に撃ち込まれるミサイル。

上司ではなく、アナウンサーの指示を聞いて銃火器を撃ち込んでくるなんて…そんな事許されてええんか!?と声を上げる暇もなく彼等の居た場所は爆炎が広がる事となった。

 

「チックショー!後でクレーム入れてやるからなああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」

 

 ミサイルにより炎と煙が広がり、見晴らしの良い部屋と化したビル。全身が煤等で汚れながらも邪兎屋のニコは苛々を口にする。

 

「ああ、もう!なんなのよ!何で治安局がミサイルなんか撃ってくるのよ最悪!って、そんな事より…アンビーッ!ビリーッ!どこ!?返事をして!」

 

 従業員の安否を確認する為に声を上げるが一向に返事が来ない。ニコは眼下に広がるホロウに目をやり「まさか2人とも落ちて…!?」と呟く。

その直後、彼女の背後に白髪の男が忍び寄る。

 

「ニコッ!」

「か、加賀美!?」

 

 瞬間、彼の腕から血が滴る。それはミゲルが手にしたナイフを加賀美が腕で防いだ事によりドクドクと赤い体液が溢れた為だ。

 

「女を助ける為に自ら犠牲になろうなんて泣かせるじゃねぇか…!そいつはお前のお気に入りか?」

「違えよ、一方的に突っかかってくる迷惑な奴だよ」

「ちょっと!?」

「しかしこの野郎…組長(オヤジ)に手を上げやがって…!少しは躊躇ってもんはねぇのかよ?…ああ、そうか。簡単に組を裏切るテメェにそんなモンはハナっからねぇ訳だな!不出来な野郎を持って俺は悲しいぜ甲斐…!」

 

 脳裏に過去の映像が浮かび上がる。映画のフィルムのように焼き付けられた記憶には普通の人とは異なる青春が映し出される。

自分が入ったばかりの赤牙組は規模も小さく、日々を生きるのに精一杯だった…しかし輝かしい毎日だった。学校に通う事もなく、独学で勉強しながら仲間達と共に市民達の助けになる正義の味方として活動する。そんな青春時代が彼にはあった。しかし人を守る為に入っていた組織はいつしか腐り、人を害するモノへ変わり果てていった。

 

そこからは何の罪も無い人を獲物にした出来事ばかり。市民をターゲットにした薬物販売、人身売買、健常な子供を誘拐し身代金を要求。そんな事は日常茶飯事であった。青春から一変、自分史上最低な時期だったと胸を張って言える。

 

「どうなんだ言ってみろよ甲斐!」

「…ああ、アンタの言う通りだよ。俺は不出来な野郎だ…」

 

 加賀美自身、己が清廉潔白と言われればNOと答えるだろう。一番荒れていた赤牙組に所属していた時、彼は仲間や幹部達の為に心身削って働いていた。借金取りと称して人に暴力を振るい半殺しにするのは当たり前。ホロウが世界を侵食するように殺伐としたギャングとしての日常が自分の中に侵食していったのだ。

彼は疑う事なくミゲルの言う事を聞き、組の暴力装置として淡々と拳を振るう毎日に縛られていた。

 

───それで本当に良いの?それが甲斐のやりたかった事なの?

 

 しかし、同じ組の少女から告げられた一言をきっかけに人生は一変する。荒んでいた加賀美は己の原点を思い出す。

 

「けどなぁ…!人様を大切にする、そんな事を忘れちまった組に今更躊躇なんてできるかよ!…それにアンタをここで止められなきゃアイツに顔向けできねぇからな!」

 

 そう口にした直後、くるりとミゲルに背中を向ける体勢になり背負い投げを決める。コンクリートの床に叩きつけられ、ミゲルは肺の中の空気が一気に吐き出される。

 

「ぜぇやッッ!」

 

 そのまま加賀美は追い討ちの蹴りを頭に叩き込み、ミゲルに大ダメージを与える事に成功する。不適な笑みを浮かべる彼だったが腕の刺し傷に顔を歪ませる事となった。

 

「加賀美ィ…!テメェだけは許さねぇ…!」

 

 恨み言を呟きながらフラフラと立ち上がる。常人ならば失神してもおかしく無い程のダメージを受けている。それでも尚倒れないのは赤牙組のボスを務めている実力者と言う証拠を指し示しているのだ。

そんな相手に対してニコと加賀美の2人は迎え撃つ準備を行うが、シルバーヘッドは不適な笑みを浮かべ、燃えるビルの断崖へ足を運ぶ。

 

「今日のところはお前の勝ちにしておいてやる…!」

「オヤジ!?」

 

 そう言い残すとミゲルはビルから飛び降りる。それを見て驚愕の表情を浮かべながら加賀美は走り出そうするが、後ろからニコが止めに入った。

 

「待ちなさい加賀美!悔しいけど奴の作戦勝ちよ」

「…そりゃどう言う事だ?」

 

 ニコが無言で下を見ろと目配せを行う。加賀美は恐る恐るビルの下を覗き込むと大きく黒い孔の存在を目の当たりにする。

 

「オヤジの奴…ホロウに落ちたのか…」

「落ちたと言うより逃げたって言うのが正しいわ。ホロウ内は常に荒れ狂う迷宮。ここに駆けつけてくる治安官達から逃げるのに最適な空間よ」

 

 ホロウレイダー並びに裏社会に生きる者にとってホロウは切っても切り離せない関係となっている。治安局に見つかった以上、ここにずっと居る訳にもいかない。故に戦闘を切り上げてホロウへ逃げ込んだとニコは推測した。

 

「アイツの余裕そうな態度…恐らく高いエーテル耐性を持ちホロウ内での活動を長時間できると言う自信から来るもの。アイツ相当頭が良いに違いないわね」

「いや、別にオヤジは言うほどエーテル耐性高くないぞ」

「どうやらアイツは馬鹿だったようね(手のひら返し)」

 

 この手のひら返しである。先程までの賞賛はどこへ行ったのだろうか、そんな言葉を発した彼女に訝しんだ視線を向けつつも痛む手に布(倒れていた構成員の衣服)を巻く。

 

「つーか、ちょっと手助けくらいはしてくれたって良かったんじゃないのかよ?」

「大事なお話中みたいだったから空気読んでいたのよ。逆に感謝してくれたって良いのよ?」

「ハイハイ…っと、不味いな」

 

 2人が耳を澄ませると下からサイレン音と他の赤牙組構成員達の声が響いてくる。ヤヌス区の非難誘導を済ませた治安局員達と待機していた赤牙組の組員達が続々と集って来たのだろう。

 

「ここに居たら面倒な事になるな…」

「そうね。これ以上の組員達との戦闘はなるべく避けるべきね…」

「いやそうじゃなくて。治安局の人に俺がここに居るってバレたら、逮捕案件だから。また手錠をつけられる羽目になる」

「治安局と協力してるのよね?」

「やべぇ…これがバレたらセスと朱鳶さんにボッコボコにされる!下手したら罰金どころの話じゃねぇ(震え声)」

「治安局と協力してるのよね!?」

 

 あの人の融通の効かなさを舐めるなと加賀美は呟く。これまでの事件解決の際にやむを得ず発生した暴力行為に対し朱鳶は大分怒っていた。そろそろ手錠ではなく銃火器を使用してもおかしくないだろう。

 

「くそっ、こんな所に居られるか!俺だけでも逃げさせてもらう!」

「あ、ちょっと待ちなさいよ!アンタだけに逃げさせるものですか!いざという時はアンタを盾にするんだから!」

「女ァ!(憤怒)」

 

 

ビルから脱出しろ!

 

 

「ねぇ加賀美!アンタはこれからどうする訳!?」

「どうするって何をだ!?」

「決まってんでしょシルバーヘッドと金庫よ!」

 

 ニコと加賀美の目的は未だホロウの中に健在しているがエーテルの侵食と言う名のタイムリミットが存在している。このまま時間が過ぎていけばミゲルはエーテリアスと言う名の怪物と変貌し、捕まえるどころの話では無くなってしまう。

 

「そもそも俺の目的はシルバーヘッドのオヤジを捕まえる事。正直言うと金庫の中身はどうでも良いって感じだな!」

「そ、ちなみにホロウに入るツテはどうするの?治安局と協力してるとは言え全面的には難しいでしょう?」

「んん…確かになぁ」

 

 知人とのコネクションにより無理矢理この作戦に参加した以上、今後ホロウ内で展開される治安局の作戦に入るのは難しい。この探偵業は法律上は治安局と協力こそできるが民間の域から出る事は出ないのだ。

とどのつまり合法的に入る為の大義名分があれば問題ないと言う事になる。どうすればあのホロウに入れるか思考を巡らせているとニコが言葉を紡ぐ。

 

「ふっふ〜ん!ここで嬉しいお知らせがあるわ!こ こ だ け の 話!なんと!あの伝説のプロキシとも言えるパエトーンとは知り合いでね?」

「伝説って?」

「ええ!伝説上のプロキシよ!(語彙低下) そんな貴方にパエトーンを紹介してあげでいいんだけど…ちょっと相場よりお高めの手数料が必要で…」

「あ、じゃあいいや(即答)」

 

 ニコの提案を断る加賀美。パエトーンと言う怪しい人物への紹介がもの凄く怪しく感じたのでこれ以上聞かないようにした。そもそもネットに疎い彼にとってパエトーンis誰?認識の為、彼女の言う事をシャットアウトする事にした。

そんな彼にニコは笑みを崩さず続けて喋るだろう。

 

「そんな貴方に嬉しいニュースよ、紹介される事によって邪兎屋ポイントカード発行してあげる(ただし有料)。しかも無駄に時間のかかる会員登録手続き無しでやってあげるわ(ただし有料)」

「ハハハ、凄くいらない」

「OKOK、交渉成立ね。請求書は後で事務所の方に送っt」

「いらねぇって!しつこいな!?」

 

 ニコの無理矢理な提案に断ろうとするが、彼女は探偵の脚にしがみつく。

 

「お願いよ加賀美ぃ!パエトーンにツケを溜め込んでるから今は1ディニーでもお金が必要なのよ〜〜〜ッ!そうじゃないとパエトーンに社員達を救援してくれるか分からないのよ!このままじゃ何度目か分からない一生のお願いをしなきゃいけなくなるの!」

「まず金を返せよ(正論)」

「いいの!?知り合いがこうも懇願してるのに!下手をすれば(肉体労働的な意味で)身体を使って払わなきゃいけなくなるのよ!?」

「まず金返せよ(二回目)」

 

 わんわんと泣くニコにどうしたものか…と頭を悩ませる。このまま放っておけば面倒な事になる。そう思った加賀美は溜息を吐くと懐に手を伸ばす。

 

「しょうがねぇなぁ…」

「やったぁ!流石は持つべきものは互いを切磋琢磨し合うビジネス競争相手ね……ちょっと、何これ?」

「何って……メスキングカードだが」

「ふん!!!」

 

 バシン!と薄着の女性が描かれたカードが床に叩きつけられる…直前に加賀美はギリギリの所でキャッチする。

 

「あああああああああ!馬鹿!馬鹿お前!このウルトラレアリティカードの『シンエリーギラフォスオオクワガタ』に傷が付いたらどうするんだよ!」

「何がオオなんちゃらガタよ!ただのグラビア雑誌に付いてそうなカードじゃないの!」

「なにっ、訂正しろ!これは現世代の少年少女に人気アーケードカードゲームである『甲虫女王メスキング』の最強カードなんだぞ!」

「なに…その、なに!?」

「期間限定!それに加えてカードデザインミスによりすぐ修正される事となったがカードマニア間では幻と言っても過言じゃない初期verカードをお前…人の心ないのかァ!!!」

「なんなの貴方怖いんだけど!!??」

 

 困惑するニコを他所に加賀美は治安局員たちが迫ってくる足音を感知した。「チィッ、ここまで来たか治安官の奴らめ!」と仮にも探偵の口から出てはいけない台詞を吐きつつ彼はニコの尻ポケットにカードを差し込む。

 

「潮時だな…じゃ、ニコ。そのカードはお前に託す」

「あーーーーーッ!?ちょっと!こんなカード入れないで…って、待ちなさい、窓から飛び降りて逃げるんじゃないわよーーーーッ!?」

 

 

Zenless Zone Zero NowLoading…

 

 

「さて、どうしたものか…」

 

 それからと言うもの彼はビルから脱出し、それとなく治安局の面々と合流した。奇跡的に加賀美が赤牙組と拳を交えてた事は伝わってなかったらしく安堵する一方で焦燥感が湧いてしまう。

ニコの予想通り、上からの命令でホロウ内部での探索は許可される事はなかった。治安局はホロウ内部へ落ちたであろうシルバーヘッドの捜索を筆頭に様々な調査の為に慎重かつ確実に準備を整えてあの虚空へ突入するだろう。

 

しかし加賀美はこのまま指を咥えて黙っていられない。ビリーやアンビーの救助は勿論のこと、自身の因縁にケリを付けなければ納得がいかない。最悪ニコとパエトーン?なるプロキシに任せると言う手もあるだろうが、彼の脳裏にホロウへ落ちて行ったミゲルの顔を思い浮かべる。

 

(あの表情…なんで余裕があった?オヤジ…ミゲル自身、エーテル耐性がそこまで無いってのは理解していた筈だ)

 

 一抹の不安が過ぎった彼は数秒考えた末に、デバイス端末を操作し"ある人物"へ連絡を入れる。数回のコール音が鳴った後、端末越しから女性の声が響いた。

 

『私に連絡を入れるなんて珍しいわね。で、何の用かしら?』

「ああ。ちょっと確認したいんだけど、お前ってプロキシみたいな事もできたっけか()()()()()

 

 

*1
ちなみに武器に当たったのは偶然である





【託されたメスキングカードのその後】

ビデオ屋『Random play』にて…

「ニ、ニコ!?そのカードは…!?」
「げっ、違うわよ!これは知り合いから無理矢理押し付けられたカードで私の趣味じゃないわ!…あ、プロキシ。これが欲しいならあげるわよ」
「いいのかい!ニコ!?この幻とも言われる期間限定の初期verウルトラレアリティカードの『シンエリーギラフォスオオクワガタ』を僕にくれるなんて!?」
「は?」
「凄いよお兄ちゃん!これオークションに出せばしばらく豪遊できるくらいの資金が入るね!」
「へ?」
「それもいいけどリン。コレクターとして、メスキングカードバトラーとしてこれは大切に取っておくべきだと思うんだ。確かに売れば何百連も回せるだろうけども!」
「え、あの…え?」

 一生のお願いと更なるツケをしないで済んだニコ。しかし手放したカードの思わぬ希少価値に彼女は戸惑うしかなかったのだった。





Q.バットの極みなのに鉄パイプ使うとはこれ如何に?
A.龍が如くシリーズは初めてか?肩の力抜けよ。その内トイレのスッポンやマグロ大砲、衛星レーザーを使うぞ?
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