田舎者の俺が、気付ば魔法学校に入学させられた件について   作:ドラゴンスキー

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プロローグ

ある日の夜。眠れなくてなんとなく起きた。

今日は空気が澄んでいるので綺麗な月が見えると思って家をでた。

お気に入りの場所で見ようと思い歩き出す。

お気に入りの場所は泉があり村から出て数分歩けば着く。

 

「音…………?」

 

泉が近くなっていくにつれ、チャプチャプという水の音が聞こえる。

泉に着くと女の人が泉に足をつけて空を見上げていた。

 

「誰………?」

 

知らない人だった。

少なくとも村の住人ではない。

ボクの声に気づいたのか空を見上げていた顔がこちらを向いた。

綺麗な人だった。今まで見たこともない美人。

 

「あら……こんな時間に誰か来るなんて予想外だわ。眠れないの?」

「う、うん。おねえさんは誰?」

「私?私はゼェーリャ。よろしくね」

 

そう名乗った彼女はほら、こっちに座ってとボクを隣に招いた。

言われるがまま隣に座って空を見上げる。

 

「綺麗だ…………」

 

見上げた空には綺麗な月が浮かんでいた。そんなボクを見てゼェーリャは何がおかしいのかふふと笑った。

 

「キミは、綺麗なモノが好きなの?」

「うん。好き」

「じゃあ、魔法は?」

「魔法?」

 

魔法と言われてもあまりピンとこない。人が多い街では魔法はありふれたものだと母が言っていたが、村で使われる魔法なんてせいぜい火をおこすくらいの魔法なものだ。

 

「うーん、わかんない」

「わかんないか」

 

またゼェーリャは笑った。ボクは何がおかしいのか分からず、ゼェーリャに尋ねた。

 

「ゼェーリャは?魔法、好きじゃないの?」

「うーん、……わかんないなあ」

「ゼェーリャもわかんないのか」

「うん、そうだね。今はどう思ってるのか分からない。()()()()()()()()()()()()

「そっか」

 

昔を懐かしむように月を見上げるゼェーリャにボクはそう言うしかなかった。

何を話していいか分からず、ボクも月を見上げる。

どのくらい時間が経ったのかは分からないがそれなりの時間が過ぎたときゼェーリャが話を切り出した。

 

「そろそろ行かないと」

「この時間に村から離れすぎたらあぶないよ。今日は泊まっていったら?」

「うふふ。大丈夫よ。私は人間じゃないから」

「人間じゃ……ない?」

 

改めてゼェーリャを見るが人間にしか見えない。モンスターにはとても見えないし、手のひらにのるくらいの大きさの微精霊や子供くらいの大きさの精霊は人間に近い見た目だがゼェーリャは大人くらいの身長がある。

 

「そうよ。私は【()()()】だもの」

「大精霊……」

 

話だけしか聞いたことはない存在だった。

普通の人が一生に一度会えるかどうかというとても珍しい存在だ。

ゼェーリャは「そうだ」と何かを思いついたようだ。

 

「今日は楽しかったし、お礼に魔法をあげるよ」

「魔法……綺麗なの?」

「あはは。私の魔法は綺麗じゃないなあ。でも、将来なにかの役にたつかも」

 

そう言ってボクの頭に手を乗せたあと、ゼェーリャの手から暖かいなにかがボクのなかに流れ込んできた。それじゃあねとゼェーリャはどこかへ歩いていった。それから10年、ゼェーリャには会えていない。

そんな、懐かしい記憶。

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いなあ、イヴァン。手伝ってもらって」

「構わねえよ。おやっさん。いつも世話になってるからな」

 

俺―――――イヴァンは、おやっさんとともに山菜を取りに来ていた。

普段は村の用心棒をしているがモンスターがでることなんてさほどない。ので、他の人の手伝いや畑仕事をしていた。

 

「ふう。こんなものか」

 

しばらく山菜を採ってこんなもんでいいかと採った山菜を眺めてるとおやっさんの悲鳴が聞こえてきた。

 

「ぁぁああああああ!!!」

「ッ!?おやっさん!?」

 

走る。

そんなに遠くにいたわけじゃない!

おやっさんのところに着くまでは時間は掛からなかった。

 

「………!デカい!」

 

案の定。モンスターがでた。

しかし、俺が知っているモンスターの数倍の体格だった。

四本足の前足に人を切り裂くには十分な爪があり、口から見せる牙は凶暴な様子がうかがえる。

 

「おやっさん、逃げろ!」

 

叫んでモンスターと向き合う。

これだけのヤツとは戦ったことがないが、戦うしかない。

魔力を身体に巡らせて身体能力を向上させる。

まだまだ拙いが長年、モンスターとの戦闘から得た技術を使う。

 

「ふッ………!」

 

地面を蹴ってモンスターに接近する。

そのままの勢いを保ったままモンスターに蹴りをいれる。

やられる前にやるのがモンスターとの戦いにおける基本だ。

 

「ちっ……!効果なしかよ!」

 

俺の渾身の蹴りは意に介していないのか微動だにしない。

一度距離を取って仕切り直す。

ここまで効果がないのは予想外だった。このままでは相手を倒す手段がない。

モンスターは距離を取った俺を見つめ、口を大きく開けた。

 

(咆哮か………!)

 

気づいた俺はすぐに身体能力向上を止めて【()()】を起動させる。

 

「GUWAAAAAAAAAA!!」

 

モンスターの口から勢いよく炎が吐き出された。

並の魔法士よりも格段に強力であろう咆哮はしかし、俺のことを傷つけることは出来なかった。

 

「GUWAAAAAAAA!?」

 

俺が無傷なのが予想外だったのかうろたえる。

しかし、炎が効かなくても物理的に攻撃すれば良いという考えに至ったのか攻撃姿勢をとる。それを俺は確認して魔法を解除して、再び身体能力を向上させる。

 

(どうするこのまま続けても―――――――――)

 

――――――――拉致があかないぞ。

そうした俺の考えは謎の声によってかき消えた。

 

「よっと」

「GUGYAAAAAAAAAA!?」

 

上空からありえない速度で降ってきた女性がモンスターの上に着地する。その勢いに耐えられなかったのかモンスターはその一撃で絶命した。絶命したモンスターは魔石を残して霧となって消えた。

 

「………!!」

 

なんなんだ、こいつは。見るからに20代前半で雪のように真っ白な肌とは対局に位置する真っ黒な服装ととんがりとした魔女の帽子。その女性は魔石を回収したら、ぬるりとこちらを向いた。

 

「道に迷ってたんで、空から確認してたんだが…………」

 

ジーとこちらを見つめてくる女性。

 

「お前、名前は?」

「……イヴァンです」

「そうか、イヴァン。お前さっき【魔法】つかったな?どういう魔法だ?」

「………どうして答えないといけないんですか」

「いいから答えろ」

 

有無を言わせない雰囲気を出し、こちらを睨むくらいの勢いで見つめてくる女性に負けて正直に話すことにした。

 

「………【()()()()()】、ですけど………」

「…………!!【魔法無効化】だと……?」

 

俺の言葉を聞いてしばらく考え込むようにうなる女性だったがすぐに考え込むのは止めて口を開いた。

 

「よし。魔法を発動させてみろ」

「………?」

「いいから」

 

言われるがままに【魔法】を起動する。

 

「発動させたか?」

「はい」

雷槍(ライトニング)

「…………!!?」

 

女性の手から音速を超える速さで雷の槍が打ち出された。その攻撃に反応することなどできるはずもなく雷槍は俺の身体を貫かんと俺の肌に触れ―――――そのまま()()()()

 

「ははっ。ホントに【魔法無効化】かよ。シールドを出して防いだわけでもなく、雷槍の勢いを殺したわけでもねえ。ああ、たしかにお前の言ったことは本当だったわけか」

「そう言ってるでしょう」

 

ハッタリだと思ったんだがな。

そう言うと再び口を開いた。

 

「しかし、だるい任務を押しつけられたと思ったんだが、最後にとんだ拾いものをしたぜ」

「は?拾いもの?」

「こっちの話だ。いくぞ」

「え?」

 

女は俺の腰をつかんだと思ったら、飛んだ。

 

「うわああああああああああああああ!!?」

「うるさい、喋るな。舌を噛むぞ」

 

上空まで一気にジャンプしたと思ったら、空気を蹴って空を進む。

高い!地上が遠くに見える!

 

「俺を、どこに連れていこうってんだ!?」

「あ?決まってんだろ。()()だよ」

「…………!!」

 

協会。正式名称は魔法協会。

魔法や精霊についての研究や、魔法で起きた事件事故などの調査を行うところだ。

魔女っぽい見た目をしていたがやはり協会の人間だったのか。

 

「ああ、自己紹介が遅れたな。私はエステラ。協会に属する人間だ。これからよろしくな」

「………?ああ、よろしく」

「さて、自己紹介も済んだし。ちょっと飛ばすか」

「ぐっ!」

 

いきなりスピードが上がり身体に負荷がかかる。

空にいるという今までにない特殊な状況とものすごい勢いで進んでいることからか気分が悪くなってくる。お、降ろして………!

 

 

 

 

 

 

「よし、着いたぞ」

「おぅえ」

 

なんとか吐くのは我慢したがすごい気分が悪いぞ。

 

「着いたってどこに………?」

 

言って、顔を上げると答えられるまでもなく分かった。

ここは――――――――。

 

「ここは、首都リスティシアだよ」

 

俺の考えを先取りするかのようにエステラが答える。

お。

おお…………!!

 

「人がいっぱい…………!」

「首都に始めて来て言うことそれかよ。ま、田舎者じゃしかたないか」

 

人、人、人。

エステラと地面に四つん這いになっている俺のことを見つつも大通りをたくさんの人が足を止めることなく歩いている。

ここにいる人だけで村の何倍の人がいるんだ……!?

 

「おら、いつまでそうしてんだ。いくぞ」

「ぐぇ」

 

四つん這いになっている俺に蹴りを入れてエステラがついてくるように促す。

早くいかなければ蹴りだけでは済まないだろうと短い間だが、エステラのコトをなんとなく理解したので立ち上がり、前を歩くエステラについていく。

 

「にいちゃんよかったら立ち寄っていきな!ここらじゃ珍しい【魔法の腕輪(マジックリング)】入荷したよ!」

「おい、あっちで魔法劇あってるらしいぞ!いこうぜ!」

「号外、号外―――――!また、【破滅の妖精(カタストロフ)】が出たんだって!」

「ウチの果物、特に今日はリッパなんか最高さ!試食もあるよ!」

 

村にいた頃には考えられないほどの人と声にあふれた街に思わず目が回りそうになるがなんとかついていく。途中果物を販売しているおばちゃんから出された試食用の果物を手に持ちあふれかえる人並みに負けないように手で人をかき分けながら歩く。手に持っていた果物が邪魔になってきたので食べて左手をフリーにする。

 

「………!甘くておいしい!」

「………ハァ。田舎者だし、珍しいものがたくさんあるここで目を引かれるのは当然ちゃあ当然だが。遅れたら……」

「遅れたら?」

()()

「ひぇ」

 

シンプル過ぎる答えとあまりの即答にごくりと喉をならす。やっぱり迷子になるのはまずそうだ。気合いを入れ直し、もう珍しいものだろうと惑わされないぞ!と決意したはいいものの、結局いくつかは目を引かれてしまってエステラに説教(物理)されながらもなんとか魔法協会までたどりつくことができた。

 

「え、ここが協会………?」

 

普通に一軒家なんだけど。

 

「いや、ここは()()()()()()だ」

「入り口………?」

「入れば分かる」

 

ドアを開き、中へと入る。

中には協会のマークである太陽と月が描かれたマークが服に描かれていた人が立っていた。

 

「おつとめご苦労。エステラだ。ここを使わせてもらうぜ」

「どうぞ」

 

許可がおり奥の部屋へと歩みを進める。

奥の部屋には風呂場のように水が張ってあった。

余裕で10人いっぺんに入れそうだ。

 

「ここで何するんだ?風呂にでも入るのか?」

「んなわけあるか」

「いてっ」

 

エステラは俺を殴りつけた後、再び俺を担ぎ上げて水の上を歩いた。

ちょうど水の中心まで来たかと思うとピタリと止まった。

 

「……【水渡り】」

 

そう口にすると足下の水がゆっくりと重力が反転されたかのように空気中に上がっていく。上がっていったみずは俺とエステラを囲い込んで水の檻となった。かと思うと水がはじけ飛んでもとの状態へと戻る。

再び水がないところまで俺を運んで降ろすとてくてくと歩いて行く。

 

「い、今のは!?」

「いいから、ついてこい」

 

エステラが扉を開く。

 

「!?」

 

すると先ほどまでといた場所とは全く異なっていた。

水渡りと言っていたし、それに関係があるのだろう。

うって変わって長い廊下に出た俺たちだったが歩き慣れた様子でエステラは歩いて行く。

しばらく歩いて一つの扉の前でエステラは止まった。

 

「ここだ」

「………入ればいいのか?」

「ああ。ノックも忘れずにな」

 

危ない。言われなかったらそのまま入るところだったぞ。

村では互いに知れた仲なのであまりノックもしないのだが、と少し緊張するが意を決してコンコンとノックすると中から「どうぞ」と女性の声が聞こえた。

 

「し、失礼します……」

 

中へ入ると一人の年配の女性が椅子に座っていた。

 

「おや、君は………?ああ、エステルもいるのかい。彼は?」

「【魔法無効化】魔法の使い手ですよ」

「…………!!そうか……」

 

驚いた様子の女性だが、こほんと咳払いをひとつしてこちらに話しかけた。

 

「君、名前は」

「イヴァンです」

「そうか。私はスサンナ。ここ魔法協会の会長を務めている。よろしくね」

「よ、よろしくお願いします」

「年齢を聞いてもいいかな?」

「……?14です」

「14……。そしてここからが本題だが、【魔法無効化】の魔法はどうやって手に入れた?」

「………!」

()()()()()()()()()()()()()()()?」

「………!?」

 

彼女を知っていた。

幼い日、一緒に月を見上げて魔法をもらった彼女、ゼェーリャのことを。

 

「は、い。そうです……」

「やはり、彼女か…………」

 

……?

やはり?

協会の会長であるスサンナさんは彼女を知っているのか。

 

「あの、ゼェーリャはどこ―――――」

「君、14歳と言ったね?」

「―――に、えと、はい。14です」

 

話を遮られ、もう一度歳を確認される。

それを聞いて会長はにこりと微笑んだ。

 

()()()()()()()。エステラ、手続きをお願いできるかな?」

「ああ、はい。りょうかいでーす」

 

エステラはその言葉を聞いてどこかへ行った。

 

「??……えと?」

「君のような将来有望な人材を放っておくほど協会も人手が足りているわけじゃない。君には()()()()()()()()()()()()()()()()()

「え!!?学校!?そんな通うお金なんてないです!」

「お金ならこちらで用意しよう。住む家も。大抵のモノはこちらで準備させてもらおうとも」

「でも、村のこととか!俺が用心棒をしてたんです!俺がいなくなると困ると思いますが!?」

「その件もこちらで対応しよう。村には魔物が近づけないように結界を張るし、君が一人で用心棒をするより、安全になると思うがね?」

「それは、でも………!!」

「―――――――嫌かい?」

 

嫌―――――ではない。

学校や都会へのあこがれはあったし、唯一家族だった母も病気で亡くなっている。家族のように接してくれた村の人たちのことも心配だが、そういうことであれば心配ないだろう。

 

「ま、通ってみたら気持ちも変わるかも知れないし!エステル!」

「はいはい、ただいまー」

 

手に何かを持ってエステルが戻ってきた。

 

「………服?」

「ああ、お前が通うことになる学校の制服だ。ってわけでいくぞ」

 

俺をつかんでずかずかと歩き出す。「いってらっしゃい、がんばってねー」と手を振る会長に見送られて会長室を後にした。

 

 

「やっぱりもうちょっと考えさせて―――――!!?」

 




【名前】イヴァン
【年齢】14歳
【魔法】魔法無効化



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