初期実装☆2盾キャラ(人権)の話   作:POTROT

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最近の話

 己の力不足を感じたのはいつ頃からだっただろう。

 砂漠の国に行った頃か、はたまた島々の国に行った頃か。

 詳しいことはあまり覚えていない。だが、確かにその頃だったはずだ。

 俺が戦闘員としてこの組織に貢献できていると、はっきりした自信を持てなくなったのは。

 

 敵が強くなってゆく。味方が強くなってゆく。

 もはや俺では追いつきようのない程に、実力の差が隔絶してゆく。

 この組織の中で一番だったはずの腕力は、俺の半分程度の背丈しかない新人の少女に負けた。

 この組織で群を抜いていたはずのタフネスも、今では数発の攻撃しか耐えられない。

 唯一俺だけが持っていたはずの能力も、今ではもうそれと同じか、それ以上の事が出来るヤツが何人も居る。

 

 俺はもう用済みだろう、と。何度も思った。

 もう他の仲間達に任せて、俺はもう後方に引き下がりたいと、何度も願った。

 

 だが、何故だかオペレーターはずっと俺のことを引き回した。

 他の仲間達が次々と入れ替わり、最初に組んでいたメンバーが全員入れ替わった後も、俺だけはずっと一番前だった。

 当然、役に立てるように俺も頑張るが、すぐにやられて気が付いたら勝った後。

 やはり貢献できているとは、ほんの少しも思えなかった。

 

 それは、今この瞬間……最後の戦いの真っ最中であっても、同じ事だった。

 

「ハァーッ……! ハァーッ……! ハァーッ……!」

 

 視界がぼやける。意識が朦朧とする。耳鳴りが響く。

 まるでトラックに跳ね飛ばされたかのような衝撃と激痛に、膝が屈しそうになる。

 たった三発。挨拶代わりのたった三発で、俺はもう限界を迎えようとしていた。

 

「ハァーッ……! ハァーッ……! ハァーッ……!」

 

 カウンターとして怪物に叩き込んだ拳が、ジクジクと痛む。

 恐らく、拳が砕けているのだろう。

 だが、それだと言うのに。目の前のアイツは。黒い異形は。瞳に宇宙を宿すそれは。全ての元凶は。この世界を巻き込んだ悲劇の黒幕は、一切の効いた素振りを見せない。

 ただ目を細めて、俺を嘲笑うかのように見下ろすだけだ。

 

「セン!」

「……ッ!」

 

 ギリ、と。歯を食い縛る。

 そうだ。俺に期待されていることは、ただ敵の攻撃を耐えられるだけ耐え、敵を殴れるだけ殴る事。

 一番最初の、初めての戦いから、それはずっと変わらない。

 そして今、俺は敵の攻撃を耐えた。ならば、後は渾身の一撃を与えるだけだ

 

「ッ……オォォオオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

 腕を大きく振りかぶり、地面を蹴って前方へと跳躍する。

 ごうごうと、風を切りながら、前へ、前へ。あの異形に一撃を喰らわせるべく、前へ。

 

「…………」

 

 俺の姿を見た異形は、自分の目の前に極彩色の障壁を展開する。

 軽々と天を引き裂くラースの雷も、大地を消し飛ばすヴァルマの舞をも防ぎ切った、あの壁だ。

 あれこそが絶対無敵。こちらの使い得る最高硬度の防壁、アイギスすら足元にも及ばない、最強の防御であることは間違いない。

 俺一人であれば、絶対にアレを破ることなど出来ないだろう。

 そう、俺一人だけだったのならば。

 

「起動:『バリアブレイク』!」

「…………!!?」

 

 オペレーターの号令によって発射された光弾が障壁に接触した瞬間、極彩色の障壁が千々に破ける。

 今までに何度もやった連携だ。それこそ、数えるのも億劫になる程。

 今更になって、失敗する道理はない。

 

「ラァアアアアアアアアアアアッッッ!!!」

「!!!!??!?!!!?!?」

 

 俺の拳が異形に突き刺さる。

 異形は大きくのけ反り、たたらを踏んで───────

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 そうして気が付いた時、アイツらはもう勝っていて、世界はとっくに救われていた。

 あの後に続いた数十分にも渡る戦いも、追い詰めた異形が見せた真の姿も、ソイツが語ったこの悲劇を引き起こした動機も、全て後から聞いた。

 

 ……勿論、世界を救ったメンバーの一人になれた事は誇らしい事だ。

 仲間達はよくやったと俺を褒めてくれたし、俺無しでは勝利は無かったと讃えてくれた。

 特に役に立った手応えのない俺には、その称賛が薄っぺらいものに聞こえてならなかったが……まぁ、うん。あまり深く考えないようにするべきだろう。

 

 とにかく。そんなこんなあって俺たちの組織……『セインツ』は世界を救ったわけだが、これで終了、解散ってわけではない。

 これからも世界各地で起こる、エイリアン共による怪現象の管轄は俺たちだし……何より、あの黒い異形が死の間際に遺した言葉が真実なら、あの悲劇より酷い事がこの先に起こることになる。

 その調査と、予防。それが目下最大の目的になるだろう。

 

 とは言っても、俺がやることと言えば調査くらいのものだが────

 

「セェン!!」

 

 おおっと。

 詰所の扉が、バンと音を立てて勢いよく開かれる。

 そうしてそこから深い紺色の髪を首元まで伸ばした少年が首を出す。

 我らがリーダーにして地球の救世主、そして各国の主要人物や名だたる豪傑達、果ては人外達までをその人柄で以て惚れ込ませ、従える、最強のタラシでもある、オペレーター様だ。

 普段の装いではなく、黒を基調とした防護服を纏っているところから見るに、どうやら任務のお誘いらしい。

 

 はいはいと適当に返事を返しながら席を立ち、俺の相棒である籠手を装備しながらオペレーターの方へ向かう。

 すると廊下の奥の方から、足音と衣擦れの音をあげながら、和装の女性が走って来た。

 

 ただ、和装と言ってもただの着物ではない。

 十二単衣かの如く何重にも重ねられた着物の胸元はだいぶ大胆に、どころかもうほぼ隠せていないレベルで大きく開いており、更には脚にこれまた凄まじい深さのスリットが刻まれ、白い生脚が覗いている上、各所に施された装飾はギラギラと輝き、これでもかと自己主張をしている。

 これが着物ではない、着物のような何かであることは見るからに明らかであり、こんな物を着る人間と言えば娼婦か、でなければ痴女かという具合である。

 しかし、それを着用する本人の美貌が見事にそれを飼い慣らしており、似合っていると言う感想しか出てこない上、金色の髪と併せて何だか高貴なオーラさえ漂わせているのだから釈然としない。

 

 だがまぁ、高貴なオーラが漂っているのは当然とも言える。

 何故ならば彼女は山島の国の重鎮である近衛家が誇る才媛、近衛レナであるのだから。

 

「あ、あんまり急に走らないでください……走るのは得意でないのです……!」

 

 彼女はオペレーターの側まで来ると、手を膝に当ててゼェハァと荒い息を吐く。

 貴女が前傾姿勢になると色々と見えそうになるので正直やめてほしい。

 …………いや、と言うか。

 

「どうして彼女がここに? 各国の主要人物は、皆国へ帰ったんじゃないのか……?」

 

 セインツが各国を巡り、例の悲劇の調査をしつつ、各国の問題解決に取り組んだり協力を要請したりする中で、悲劇を止めるべくセインツに加入したメンバーは百人をゆうに超える。

 そしてその中には、各国王やレナのような重鎮達も居たわけだが、彼ら彼女らには国を運営すると言う大任があるわけで。

 黒幕を倒し、束の間でしかないかもしれないものの平和が訪れた今、彼らは国へと帰り、自らがやるべき責務を全うする……と言う話のはずだったのだが……

 

「え? 別にいつでも来れるでしょ?」

「ええ、まぁ……ここには転移の陣も置いておきましたし……そもそも、いざとなったら通信でどうにでもなりますので……」

「……そうか」

「他の王様達もそんな感じでよく来てるよ。ホルルとかよく来てるんだけど、見かけない?」

「…………」

 

 そう言われてしまえばもうこちらからは何も言えない。

 ……まじかぁ……そうかぁ……普通に来れるのかアイツら……ようやく国に帰ってキャラの濃い奴らが居なくなったと思ったのに……またああなったりするのか……?

 

「……うわぁ……」

 

 黒幕を倒す前、各国の王や重鎮達が味方同士であると言うのに今にも喧嘩し始めそうになったり、かと思えば酒を一緒に飲み始めてとんでもないことになったりと、混沌も斯くやといった様相になった事を思い出し、ずーん、と気持ちが沈み込んでゆく。

 

「まぁ、いい。案内してくれ二人とも。今日はどこに行くんだ?」

「えっと、今日はねー……──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

「消ぇし飛ぶがよいわぁあああああああああああああっはははははははははははははは!!」

 

 さて、そんなわけでオペレーターに連れられてやって来たのは、何やらエイリアン共がまたもや飛来して来たらしい場所である。

 そこでエイリアン共を殲滅するのが今回の任務であるわけだが……

 

 ちゅどーん、どかーん、ずがーん。

 そんな音を立てながら地面が爆発し、エイリアン共が文字通り消し炭になってゆく。

 そんな光景を、最前列に立っている俺はただじっと見つめていた。

 これはこの爆発を耐えたエイリアンが攻撃してくるかも知れないと言う事への警戒であるのと同時に、ただ俺が後ろを振り向きたくないだけであったりする。

 

 ここで振り返ったのならば、きっと金ピカの装飾をこれでもかと纏った半裸の褐色肌の男が謎の禍々しい光を放ちながら高笑いし、見事な唐服を纏った妖艶な女性が全身から神々しい光を迸らせながら美しく、しかし狂気的に嗤い、そして布の面積が凄まじい事になっている傾国の踊り子が、素晴らしい舞を踊り、味方に強力なバフをかけてくれている、そんな様を見る事ができるだろう。

 それを見てしまえば、俺はまた才能と実力の圧倒的な差を目の当たりにして、惨めな気分になってしまうに違いない。

 

「…………! セン!」

「っ!」

 

 オペレーターの声に俺が身構えた瞬間、まるでタイミングを見計らっていたかのように、巨大な爪を持ったエイリアンが虚空よりその姿を表した。

 その瞬間、俺は半ば反射的に自らの能力(スキル)、【被害集約】を起動させた。

【被害集約】は文字通り、チームへと与えられたあらゆる被害を、俺の一身に集約するスキル。

 

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「うぐっ……!?」

 

 故に、エイリアンがこのように咆哮を上げれば、その咆哮による鼓膜へのダメージも、全て俺に集約される。

 直後俺を襲うのは、強烈な耳鳴りと頭痛。

 この感覚には覚えがある。きっとまた鼓膜が破れたのだろう。

 

「!!!」

「ッ、ぐ、オオオッ!?」

 

 そうして俺がダメージから立ち直れていない中、エイリアンの巨大な爪が俺の体を引き裂いた。

 そしてそれは一撃で終わらない。二撃目、三撃目、四撃目と。間髪入れずに巨大な爪が俺の体を叩く。

 ようやく連撃が止んだ頃、俺はまたしても初っ端から限界を迎えていた。

 

「……ぐ、う」

 

 ……やはり俺はもう、最前線に立つべきではないのではないだろうか。

 もしあの黒幕の台詞が正しかったとして、今後待ち受けるのはあれ以上の脅威。

 であるのならば、この程度で死にかけている俺は、やはり使い物にならないのではないか。

 

「………………」

 

 もう何も聞こえない。何も聞こえないが、オペレーターが後ろで何を言っているのかはわかる。

 そうだ。やるべき事をしなければ。

 俺は満身創痍の体に鞭を打って立ち上がり、拳を握り固めて……

 

 

 

 ■

 

 

 

 気が付いたらまたもセインツの医務室だった。

 ……配属変更願とか出してみようかな?

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