初期実装☆2盾キャラ(人権)の話   作:POTROT

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センさんの話

 封印種4体の同時復活の知らせから72時間後。

【ゴフェルの舟】のスタッフ達は上から下まで、未だに全員が大忙しであった。

 事務方のスタッフ達は勿論、厨房班すら包丁とフライパンを放り出して事務作業に回り、戦闘員達も各国の行政機関と連絡を取っているか、そうでなければエンジニア班や補給班の手伝いに回っていた。

 誰も彼もがその顔に重い疲労を浮かべており、束の間の休憩すらまともに取れていない事は、誰の目から見ても明らかであった。

 

 そんな中で、まともな休憩を取れていると言えたのは、医務室に居た数人の男女。

 封印種の直接的な相手を担当する、戦闘部隊のメンバーである。

 しかし、誰も彼もが彼らの休憩を羨みはしない。

 封印種との闘いはそれほど苛烈であり、凄絶であるのだ。

 

「……久々にやりましたが、やはりかなり精神に来ますね、これ。気分はどうですか、ジョージ?」

「…………聞くまでもないでしょうに。ひたすらに最悪ですよ……!!」

 

 そう青い顔で言葉を交わすのは、天使を思わせるような純白の装いに身を包んだ銀髪の好青年と、黒金の鎖帷子を纏い、金髪の長髪を後ろで結った少年。

 それぞれ、かつては『塩の国』の王太子兄弟の片割れで、現在はセインツの警備隊に所属しているカイ・エダンと、『法の国』に巣食う悪竜を滅殺した事で知られる、ジョージ・アスカロンだ。

 

 ベッドの上に伏せる2人の体に、目立った外傷は無い。

 実際、彼ら2人は現時点において、これ以上ない程に健康体であった。

 しかし、それは当然のことだ。

 何故なら潰れ、ひしゃげた彼らの体は、つい先程完璧に『治療』されたばかりなのだから。

 

「やはりアーカイブを見るのと自分で喰らうのとでは、天と地ほどの差があると言ったところでしょうか……あまりにも理不尽が過ぎますね……」

 

 そう嘯くジョージは、センの戦線離脱に伴い、臨時で編成された盾役だ。

 普段は己の力不足を自覚し、『法の国』にて自軍と共に散発的に飛来するエイリアンの対処を行なっており、封印種との戦いはおろかオペレーターと共に戦場に立つことすら殆ど無かった彼であるが、そんな彼が並いる強者達を押しのけてまで起用されたのは、彼の持つ盾がセンの【被害集約】に似た能力を兼ね備えているからに他ならない。

 つまるところ、センの代わりに最初に来る相手の攻撃を全て受け止め、攻撃の起点を作るためである。

 

 しかし、あくまでもジョージはセンの代役に他ならない。

 センよりも基本スペックに優れており、センと同様に体力の限界を超えても味方を守り続けることは出来ても、肉塊のような姿に成り果てた後にも相手に一矢報いる事や、地に伏した後に味方に有益な置き土産を残す事は決してできない。

 

 ましてや、満身創痍の半死人のような状態から『治療』を受け、健康体に戻ったところで、いきなり動き出すなどと言う事が出来るはずもなかった。

 

「……人類の安寧のためです。この身を差し出す事に何の抵抗もありませんが、しかしやはり私も人間には変わりないと言う事でしょうか、体が動きません……この分では次の復活までに間に合いそうにありませんね……フィル殿、お手数ですが記憶処理剤の処方をお願いできますか?」

「……ええ、わかったわ」

 

 ジョージの依頼を引き受け、フィルが別室へと移動する。

 記憶処理剤。それは、読んで字の如く記憶を都合の良いように処理する薬。

 個人を個人たらしめる最大の要素が記憶であるとするのならば、それは今まで存在していた個人を殺す激毒に他ならず────それと同時に、記憶を由来とする全ての精神疾患に対する、最強の特効薬でもあった。

 本来ならば製法を知る事すら禁忌とされる薬であるが、しかし星の危機たる状況で四の五の言っていられる場合ではない。なのでセインツでは、このような『治療』の前後における身体のギャップが生じてしまうなどした場合に、特例として処方が認められていた。

 

「……ジョージ……」

「……今までは最前線で戦えないことを歯痒く思っていましたが、こと今に限っては僥倖だと言えます。おかげでまだ私には十分に効く……使えるものは使わせていただきますよ」

「…………………」

 

 人体は、薬物の使用を続ければ薬物に対して耐性を得る。

 使用回数を重ねれば重ねるほど効果を得るために必要な薬剤の量が増えてゆき、最終的には死ぬまで薬剤を注入し続けても効果が現れなくなる。

 そしてそれは、記憶処理剤も同じ事。

 大半の戦闘員は、とっくの昔にそうなっていた。

 

「……しかしまぁ、何とも情けない……やはり私ではセン殿の代わりにはなり得ませんか……」

「自惚れるでない。センの代わりなど、誰にも務まらぬわ」

 

 ベッドに臥せたまま自嘲気味に呟いたジョージの台詞に吐き捨てるように反応したのは、わざわざ持ち込んだちゃぶ台の前に座り、ガタガタとノートパソコンを叩いていた女帝だった。

 その背中はあからさまに不機嫌であると語っており、液晶画面を睨む目にも僅かばかり殺気が混じっている。

 

「抑えよ、女帝。アスカロン公は自らに課せられた役割を果たそうとしているに過ぎぬ。現状が現状であるが故、気が立ってしまうのは仕方が無いと目を瞑るが……八つ当たりは看過できん。国や身分は違えど、我らは皆同じ志を抱く仲間であろう」

 

 そう言って女帝を窘めるのは、女帝の向かい側に座って、女帝と同じようにノートパソコンをガタガタと叩くホルルだった。

 

「ふん。妾は身の程を弁えぬ痴れ者の愚かしい勘違いを正してやったに過ぎぬわ」

「確かにそうかも知れぬ。だが言い方というものがある。不機嫌な物言いはその場にいる全員に良い心象を持たせぬものだ。山河の国の支配者の在り方は承知しているが、それでも為政者ならば外面を取り繕う事くらいはせよ」

 

 これまた不機嫌そうに唇を尖らせる女帝をホルルは諭す。

 言っていることは至極当然のことであるが、一万年近い歴史を持つ砂漠の国の、その中でも最高の神帝(ファラオ)として名高いホルルの言葉となれば、側から聞いている者達も感心してしまうような重みを持っていた。

 暴君たる女帝も、その言葉に言い返すことができない。

 

「……ええと、その、ホルル陛下、女帝様の仰られていることは……」

 

 タイミングを見計らい、ホルルに声をかけるのは、ジョージのベッドの近くに座っていた1人の少女。

 漆黒の髪を後ろで束ね、顔の目から下を布で覆い、紺色の忍者装束に身を包んだ彼女は、山島の国の暗部部隊に所属する、風魔ミコトだ。

 セインツにおいては情報部隊に在籍するが、その類い稀なる戦闘の才能故に戦闘部隊に抜擢されることが多く、今回の封印種との戦いにも抜擢された。

 そして先の戦いで腰を折り、つい先程治療を受けたばかりであるが、彼女はもう慣れた側であったので、既に動く事ができていた。

 

「む? センの代わりが誰にも務まらぬと言う話か?」

「は、はい。セン殿の能力が強力無比かつ他に追随するものの無い事は存じておりますが、しかしそうも断言なさるというのは……」

「不思議、と。ふむ……そうだな。ではミコトよ。このセインツには攻撃の全てを自分に集中させる能力の持ち主が数人居るが……その中でセンの特異性は分かるか」

「……まず我々が攻撃を受ける事、でしょうか?」

「然り」

 

 ホルルが頷く。

 

「そこなアスカロン公やカイが我らへの攻撃を遮断し、自らに攻撃を集めるのに対し、センの【被害集約】は仲間が受けた攻撃による衝撃や損傷を自らに集める。……この時点で、センの能力は既に異常と言えよう」

「そうなのですか?」

「被害の置換は既に呪術として確立された技術だ。山島の国では藁人形を用いたものが有名であるが……暗部ならばよく知っているであろう?」

 

 コクリ、とミコトは頷く。

 確かに山島の国では藁人形を用いた呪術が有名だ。

 その中でも特に有名なのが呪いたい相手の髪を藁人形に入れ、然るべき儀式を行う事によって発動させるもので、これをする事によって藁人形と相手の体がリンクし、藁人形の損傷がそのまま相手にフィードバックされるのである。

 その確実性、殺傷力から歴史の中でこれを用いた暗殺は何度も行われており、暗部の人間がこれを行う事も少なくなかった。

 そして当然ミコトにも、同様の経験があった。

 

「ならば話が早い。つまりセンはその技を触媒、儀式無しに行っているようなものだ」

「っ、成程……」

 

 ミコトはホルルの話に得心すると同時に、戦慄する。

 それがどれだけ無法な行為であるかを完全に理解してしまったからだった。

 

「余は神帝(ファラオ)として呪術を修めておるが、センの【被害集約】だけは全く解析できぬし、猿真似すら出来そうにもない」

 

 神帝(ファラオ)ホルルは世界最高の呪術師として知られている。

 その神帝(ファラオ)が解析も真似も出来ないのであれば、【被害集約】が完全に現代人智を超えた代物であると言う事だ。

 

「更にセンは氣の技術ともう一つ、別の能力も用いる。恐らくは『死』に関係するものであろうが……ふむ」

 

 ホルルが口を閉じ、ふと女帝の方を見遣る。

 黙って話を聞いていた他の面子も、釣られるように女帝の方を向いた。

 

「女帝よ。話の途中であるが、質問させてもらう。……其方、センとどのような関係にある?」

「……なんじゃ、藪から棒に」

「前々から思っていたのだ。センと其方は()()()()とな。今までは同郷故の類似かと思っていたが……此度、センが山河の国の宮殿に運び込まれたと聞いて確信した。セン本人に自覚は無さそうであるが……センの存在は、山河の国の根幹に関わるものだな?」

「「!?」」

 

 ギョッと、臥せっていたジョージまでもが目を見開いて女帝を見る。

 

「……随分と不躾な質問じゃのう、神帝(ファラオ)よ」

「百も承知に決まっておろう。その上で聞いたのだ。何故センを山河の国の宮殿へ移した? 本来であれば、世界で最も安全な場所はこの舟の医務室……つまり、ここであるはずなのだ。だと言うにも関わらず、ノイ=ヌーフはセンを山河の国の宮殿に送った……疑問を持つのは当然というものだ」

「…………」

 

 女帝は殺気と敵意をホルルに対しぶつけるが、しかしホルルは容易くそれを受け流す。

 無駄だと判断した女帝はハァと溜息を吐き、観念したように目を閉じた。

 

「……単純な話よ。あの宮殿にはちと特殊な仕掛けがあるのじゃ」

「ふむ? 続けよ」

「それは先代の愚物……即ち妾の実の父親が遺した、彼奴の保身の如何に過剰であるかを象徴する結界での。その効果はズバリ────玉座の間における、帝の血を引いた者の絶対的守護」

 

 瞬間、その場にいた者たちの表情がピシリと固まった。

 

「……………………そうか、まさかと思っていたが…………よもや…………」

 

 ホルルもその表情を大きく崩し、驚愕の表情を浮かべている。

 宮殿が舟の医務室より安全であるという話題でこの話が出たという事はつまり、絶対的守護の結界とやらが目的であり、その結界の効果対象になるのが帝の血を引いた者であるという事は────

 

「────センは、然森(ランセン)は、妾の腹違いの兄にあたる。妾もつい数ヶ月前に知った事じゃが、間違い無い事実じゃ」




彼方との聖戦……今作ゲームの正式名称。略称はセインツかカナセン。ap◯ store評価は☆4.2(5万件の評価)。あまりにもエンジョイしてる運営が良くも悪くも有名。無課金勢にも廃課金勢にも優しく、キャラデザも秀逸で、ゲーム自体は非常に面白いという意見は一致するが、ストーリーやキャラの扱い、それと運営で大きく評価を分けている。ゲーム自体は大変面白いが〜みたいなレビューが低評価レビューの過半数を占める。
しかしそれを分かってやっているのが運営。勿論後悔も反省もしていない。

ジョージ……☆3タンク。元ネタはゲオルギウス。FGOのゲオルギウスとそこまで大差ない性能。貴重な低コストの庇う系スキル持ちかつカウンター持ち。無課金編成ではセンと並べてセンの退場後のメイン盾として用いられる事が多いが、☆4以上に強力な盾キャラがゴロゴロ居るので基本使われない。

ミコト……☆4アタッカー。いわゆる高火力紙装甲キャラ。回避も持っているのである程度は場に留まる事ができ、連発可能な単体攻撃+確率即死のEXを持っているので十分な戦果が期待できる。攻略でも対戦でも、コスト調整役兼上振れ要因として採用される事が多い。
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