初期実装☆2盾キャラ(人権)の話   作:POTROT

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事態が急変する話

 封印種4体の同時復活の知らせから120時間後。

 真っ先に異変に気付いたのは、封印種『風の巨人』の観測を行っていた情報部の一員だった。

 

「……何だ、これ?」

「何だ? 何があった?」

 

 彼はモニターを食い入るように見つめ、疑問の声を漏らす。

 すると彼の呟きに反応して、情報部のリーダーであるトビがやって来た。

 

「リーダー、これを」

 

 そう言って彼が指を差すのは、モニターに映し出された『風の巨人』の仮死体。

 つい数分前に討伐され、そして現在は復活の中途にある、巨大な肉の塊だ。

 

「……?」

 

 トビは部員が指差したあたりを重点的にモニターを観察してみるが、しかしパッと見ではそこに何の異変も見当たらない。

 

「……おい、いったい何を見つけた?」

「よく見て下さい、コイツの体から変な瘴気みたいなのが立ち上っていませんか?」

「何?」

 

 部員の指摘を受け、トビは改めて目を皿のようにしてモニターを見つめる。

 するとどうだろう。言われてみれば、確かに黒い瘴気のようなものが『風の巨人』の肉塊から立ち上っているようだ。

 カメラの位置が遠いこともあり、モニター上で確認できるのはたかだか数ドット分の揺らぎでしか無いが、しかし確実に『何か』がある事には間違いない。

 

「……おい、前のやつと並べろ」

「はい」

 

 部員がコンソールを操作し、以前の緊急討伐作戦の時に録画してあった『風の巨人』の復活時の映像を表示して、リアルタイムの映像と並べる。

 そうしてじっくりと観察してみるが、やはり以前の映像に瘴気の存在が確認できない。

 

「……お前にはどう見える?」

「以前の映像からは、瘴気が見えないですね」

「そうだよな……観測班全員! 今すぐ以前の映像とリアルタイムの映像を比較しろ!」

 

 トビの命令が下り、観測班が一斉に以前の映像とリアルタイムの映像を比較し出す。

 するとやはりと言うべきか、瘴気に関しての報告が次々と上がって来る。

 今回の同時復活の件に瘴気が関わっているのは確定だな、と。トビはそう確信した。

 

「『白の異形』班。多分お前らの映像が一番瘴気を観測しやすいだろ。見せろ」

「そうですね。多分ウチのが一番見やすいかと」

 

『白の異形』はその名の通りその身体が白いため、瘴気の黒が目立ちやすいと言うのもそうであるが、そもそも存在地が廃屋の中なのでカメラの位置が他三種に比べて比較的近く、よりハッキリと死体を確認することができるだろう、とトビは判断した。

 事実として、トビが確認させた中で最も報告が早かったのも『白の異形』班だ。

 

「これです」

「ん」

 

 示されたモニターに表示されるのは、白くブヨブヨとした巨大な肉塊が、照明の光に晒されてテラテラと怪しく輝いている映像だ。

 見ているだけで腐臭を感じさせ、吐き気を催すような悍ましい光景だが、しかし『風の巨人』のそれよりかは圧倒的に鮮明である事には違いない。

 これならば、より詳しく瘴気について観察できるだろう。

 そう思って、トビは映像を覗き込む。

 

「……ん?」

 

 そうしてトビの目がハッキリと『白の異形』から立ち上る瘴気の姿を捉えた、その瞬間。

 トビが感じたのは非常に強い既視感だった。

 自分はどこかでコレを見た事があると、自らの勘が自身に強く訴えていた。

 

「……って事は、俺はコレをどこかで見た事がある」

 

 トビは自らの勘というものを、他の何よりも信頼していた。

 自身の勘のおかげで命を拾った経験は一度や二度どころの数では無く、セインツに加入してからは勘のおかげで世界を救った事さえある。

 だからこそトビにとって自分自身の勘は最高の味方であり、その勘がこの瘴気を見た事があると言っているのならば、トビは間違いなく何処かでこの瘴気を目にしたことがあるのだ。

 

 ならば、瞬間記憶能力を持つトビの記憶の中に、確実にこの瘴気を他に出していた者が存在するはずなのである。

 

「……どこだ? 一体俺はどこでアレを見た?」

 

 自身の脳内に保管されているデータを片っ端からひっくり返して確認するが、しかしどのデータもあの瘴気には該当しない。

 それはつまり、少なくとも今までにセインツが戦った中であのような瘴気を出していたエイリアンは存在しないと言う事になる。

 

「だが、俺の勘は見た事があると言っている。つまりアレは宇宙由来ではなく地球由来のもの。となると、一体どれだ? 魔力は違う、氣も違う。神通力でも無いし、超能力の類も違う」

 

 考え得る力を挙げては潰し、可能性を狭めてゆく。

 

「…………呪力、か?」

 

 全ての選択肢を潰していって、最後に残ったのが、それであった。

 と言う事は。『全ての不可能を除外し、最後に残ったのがそれであるのならば、それが真実に他ならない』という竜の国の格言に従うのなら、封印種から立ち上る瘴気は、呪力によるものだと言う事になる。

 

 しかし、あの瘴気が呪力だと考えるとなると、一つおかしな点が生まれてしまう。

 もしアレが呪力ならば、地球における呪術の頂点である神帝(ファラオ)ホルルが察知していないわけがないのだ。

 それでもアレが呪術だと仮定するならば、それは神帝(ファラオ)以上の実力を持った呪術師の存在が不可欠であるが、そのような人間はこの地球上には────

 

「……まさか」

 

 居た。居た。存在した。

 神帝(ファラオ)ホルルを以てして、『猿真似すらできそうにない』と言わしめた呪術の使い手が。

 トビの記憶の中に。トビの近くに。この組織の中に。

 

「……………」

 

 心当たりさえつけてしまえば、脳内データの検索は容易い。

 そうしてトビは瘴気の正体を理解した。理解してしまった。

 

「………………今すぐ! 今すぐに今までのセンの戦闘データを全部片っ端から引っ張り出せ! 今すぐに! 今すぐにだ!!」

 

 違って欲しい。どうか自分の勘違いであって欲しい。

 そんな思いを込めて部下たちを怒鳴りつけるトビ。

 

 ──────しかし悲しいかな、現実は非情であった。

 

 

 ■

 

 

 

「今回の封印種の復活が、センさんの仕業ぁ!?」

 

 オペレーターの絶叫が、操舵室に響き渡る。

 声にこそ出していないが、操舵室に集められた他のメンバー……ホルルや女帝、レナにカイ、フィルと言った戦闘メンバーも、そう叫びたい気持ちでいっぱいだった。

 

「……そうなるようだ。私とて信じ難い話だとは思っているが、証拠を見せられてしまった以上、そう判断せざるを得ない。そうだな、トビ」

「ああ艦長。封印種の死体が発していた瘴気が、センの【被害集約】発動時に出ていたものとほぼ一致した。同時復活のタイミングや呪術の特性から鑑みても……そう考えるのが自然だ。全部が全部アイツが理由とは言い難いし、思いたくないが……関連している可能性は高い」

「そう言う事だ。現在【ゴフェルの舟】は全速力で『山河の国』に移動している。封印種の対処は難しくなるが……致し方あるまい。各国の働きに期待するしか無いだろう」

 

 トビの報告を受けてから、ノイ=ヌーフの行動は迅速だった。

 彼は速攻で各国に少しの間封印種の対処を任せると言う旨のメッセージを送った後、リソース等の問題から普段は殆ど使わない艦砲射撃を敢行してまで封印種討伐を速攻で終了させ、『山河の国』への移動を開始したのである。

 そうしてオペレーター含む戦闘メンバーはよく分からないまま操舵室に集められ、爆弾発言をかまされたわけである。

 勿論、負傷したジョージは医務室に送られていたが。

 

「兎にも角にも、我々は『山河の国』に引き返し、センの様子を確認する。そして、もし彼が本当に今回の件の元凶であると言うのならば……我々は『決断』を迫られる事になるだろう」

 

 ドン、と。

 操舵室に鈍い衝撃音が響く。

 氣を荒立て、ノイに殴りかかろうとした女帝を、カイがその盾で防御した音だった。

 

「ちょっ、女帝陛下!?」

「……よもや妾が、そのような事を赦すとでも?」

「赦されるなどとは思っていない。だが、それでもやらねばならない。そういう使命を我々は背負っているのだ」

 

 ギリ、と。ノイの言葉に女帝は歯軋りする。

 そうして更に氣を練り上げ、第二撃を繰り出そうとする。

 だが、その拳が繰り出される事は無かった。

 ホルルの呪詛が、女帝の動きを封じたからであった。

 

「落ち着け。今は争っている場合ではなかろう」

「邪魔立てするか神帝(ファラオ)! 此奴はあろう事かセンを殺すとほざいたのじゃぞ!?」

「ノイ=ヌーフにも立場というものがある。我らのような立場の者には、そうせねばならぬ時というものが得てして訪れるものなのだ。ノイ=ヌーフとて、言いたくて言ったわけではあるまい」

 

 ホルルの言葉を受け、女帝は大人しく練り上げた氣を散らせる。

 その様子を見て、ホルルは呪術による拘束を解除した。

 

「……そして同時に、其方もだ。ノイ=ヌーフよ。余は其方の心持ちを十分理解しているつもりではあるが、やはり言い方、伝え方というものはある。特にこの場にいる者達はセンと関わりが深い故、そこは考慮に入れるべきであった。あまりにも簡潔な説明は、時として人を不快にさせるものだと知れ」

「ご忠告痛み入る、ホルル陛下。……配慮に欠けた発言を、ここに謝罪しよう」

 

 そうしてノイが女帝に頭を下げ、女帝が幾らか溜飲を下げた事を察してカイは盾を下げる。

 

「して、何故我らをここに呼んだ。それを伝えるだけならば、それこそそこのトビに頼めば済んだ話であろう」

「勿論、それだけではない。……女帝陛下、貴女に折り入って頼みたい事がある」

「…………何じゃ」

「センについて知っている事を、全て話していただきたい」

 

 ノイの発言を受け、女帝に視線が集まる。

 

「知っての通り、センはああいう人間だ。それが我々に、ひいては世界に弓を引くとは、どうも考え難い。さらに言えば、彼に封印種4体の同時復活という芸当ができるとは思えない。何か我々には知らぬ事情があるものと思われるが、女帝陛下は何かご存じないだろうか」

「…………ぬぅ」

 

 女帝は苦々しげに声を漏らし、困ったような素振りを見せる。

 

「……貴様、先程あのような事を言っておいて、随分といい度胸じゃのう?」

「それについての更なる謝罪を所望するならば、私は土下座してもいいし女帝陛下の靴を舐めても構わない。ただ、その代わりにこの場でセンについての話はしていただきたい。必要な事なのだ」

「要らんわ気持ち悪い……」

 

 と、そうぼやきながら彼女はオペレーターの方を見遣る。

 

「聞きたいか」

「うん。多分、とても大事なことだから」

「……良かろう。どうせいつかは話す事じゃ」

 

 そう言うと、彼女はどっかと用意された椅子に座り込んだ。

 

「さて、どこから話すかのう……否、最初から全部話してしまうか。まず大前提として、邪智暴虐にして怜悧狡猾たる我が亡き父親、即ち先帝は不老不死の探究をしておったのじゃが────」

 

 それから女帝が語り出すのは先帝の為した、聞くにも耐えないような、凄惨で、悍ましく、あまりにも冒涜的な所業、その数々であった────




情報部……トビをリーダーとして、セインツに必要なあらゆる情報を司るチームであるが、セインツという組織の都合上、世界中の機密が集まる火薬庫と化してしまった。部員は全員が自決用の毒を隠し持っている。


※お知らせ※

 FANBOX作りました。
 取り敢えず拙作『待て、それ以上近付くな! 俺の性癖が歪む!』からR-18小説「ワカモとの初体験」と、この作品の次話を乗っけておきました。
 他にも『冒険します、冒険者なので』のR-18作品とか、他にも各小説の小話とか、あとはお題箱で受け取ったものとかも載せたいですね。
 まぁ、興味がある方は、もしくはPOTROTを応援したいと言う気持ちのある方は、以下のリンクから是非どうぞ。

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