初期実装☆2盾キャラ(人権)の話   作:POTROT

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責任の話

 全速力で『東の大洋』へと向かう【ゴフェルの舟】。

 幾分か冷静になる事ができた俺は、その操舵室に集まった面々へと先程起こった出来事を説明していた。

 

「………………は?」

 

 ヒクリ、と。

 引き攣った女帝の顔が痙攣する。

 しかしそれも無理もない事だろう。

 あまりにも衝撃的すぎる事実のオンパレードだ。

 俺ですら思考が停止しかけたのだ。

 直接あの男を殺した女帝からすれば、そのショックの大きさは想像を絶するものだろう。

 

「…………いや、待て。待て待て待て待て。あの屑が生きていたじゃと? お前の中で生き続けていただと? 有り得るのか? そんな事が? あっていい事なのか? いいや、あっていいはずがない。そのようなものがこの世界に存在して良いはずがない。あの屑は確と妾が殺したはずじゃ。それが生きているなど有り得ぬじゃろうが」

 

 らしくもなくダラダラと脂汗を流し、いつに無く追い詰められたような表情で女帝が捲し立てる。

 それだけ彼女の中で、先帝という存在は大きなものだったのだろう。

 

「だが、間違いなくアレは先帝……天帝だった。【彼女】の姿こそとっていたが、アレは口ぶりからして間違いなくそうだ。俺は生前のヤツとの直接的な接触はほぼ無かったが、自信を持って断言できる。どうやら本当に俺の中に……俺の中の【彼女】の残滓に乗り移っていたらしい」

「……外法も外法。禁忌の中の禁忌であるな。『山河の国』の天帝め。腐りに腐った王とは聞き及んでおったが、よもやコレほどとはな。余も想定外であった。……が、しかし引っかかる。いくら残滓とは言え上位存在に乗り移ったとしても、通常ならば意識を移したその時点で発狂し、人格は死に絶えるもののはずだ……ヤツはどのようにして精神の崩壊を逃れた?」

「元々発狂していたのでは? 狂った者が更に狂ったとて、狂人であることには変わりないでしょう」

「……成程。そうやもしれぬ」

 

 カイの発言に俺も納得する。

 先帝が『夢』とやらを見たその瞬間から既に狂っており、正常な精神性を失っていたと考えれば、先帝が俺の精神の中で自意識を保つ事が出来ていた事にも説明がつくというものだ。

 

「……ええい、クソがッ! あのっ、あの塵屑めがぁッ!! 死んで尚! 殺して尚! 我らを苦しめるかぁッ!!」

 

 ミシミシと、彼女の握り締めた拳から音が響く。

 正直なところを言えば、俺も彼女とほぼ同じ気持ちだ。

 俺があれほど苦しい生活を強いられたのも、【彼女】が死ぬ羽目になったのも、【彼女】との真の再会が叶わなかったのも……そして、俺の『龍装』から【彼女】が消えたのも。

 全て、全てアレのせいだ。

 俺の心中には堪え難い殺意に満ち溢れ、怒りの熱量は地底の煮え滾るマグマのそれをも大きく上回る。

 しかしそれでも感情を表に出さないのは、もしこの感情をほんの少しでも表へと放出しようものなら、【彼女】が消えた事によって再び俺の身体に渦巻くようになった呪いの力が、意図せずに噴き出してしまいそうだからだ。

 

「しかも何じゃとッ!? あの非道の数々が! 悪政の数々が! 全て海中に潜む『封印種』の体を手に入れるためじゃとぉ!? 馬鹿にするのも……ッ、馬鹿にするのも大概にせぬかッ!! あの屑は、あの屑はどこまで妾の神経を逆撫ですれば気が済むのじゃッ!!」

「落ち着け女帝よ……と、言いたいところではあるが、流石に此度は余とて平常心を保ってはいられぬわ。何たる悪徳。何たる外道。破廉恥とはまさにこの事を言うのであろうな。人の身と心を捨て、奴は蚤以下の存在に成り果てたらしい」

「殺しましょう。一切の迷いなく、一切の躊躇いなく。最大限の苦しみを以て。……しかし、そうなるとヤツには火刑すら生温いでしょうな。むしろ神聖にして浄化の象徴たる炎が奴の穢れた性根で穢れてしまいますので。絞首刑に処せば……いえ、ダメですね。絞首刑では死体が綺麗に残ってしまいます。……はぁ、真性の屑は殺す方法にすら苦悩する事になる。これは法を改めねばなりませんね」

「ええ、本当に。これが法の範囲内ならば法に則って刑罰に処せば良い話ですが……世界の摂理に反した者のための法など存在しませんからね。処刑方法は自分たちで決めねばなりません。私としては出来るだけ永い間、苦しんで絶望してもらいたいものですが……それは即ち『永遠』ですからね……奴の欲したものを与える事になるのは癪です。一瞬が永遠に感じられる薬とかあったりしないものなのでしょうか、フィル殿?」

「流石に無いわね。でもこんな事になるのなら開発しておけばよかったわ。そんなもの即刻禁忌指定されるだろうし何なら私がするけれど……そう言えば何処かのデータに拷問用に服用者の感覚を約3000倍にまで引き上げる薬があったはず……製法がわかっているのなら、今からそれを応用すれば何とか作れるかしら……?」

 

 ……しかし、それにしても他の面々の怒りようが凄まじい。

 初めて知ったが、どうやらホルル陛下は本当に怒ると無表情になって、罵倒の言葉を永遠に吐き続けるらしい。

 ジョージとカイも凄い。顔に薄っぺらい笑みを貼り付けたまま、ビキビキと血管を浮き出させている。何て器用な真似をするのだろうか。

 そしてフィルは何か物凄く怖い事を言っている。

 

「……ね、ねぇ、センさん、その……」

 

 と、俺が他の面々を観察しているところに、ふとオペレーターがやって来る。

 何やら浮かない顔だ。一体どうしたと言うのだろう。

 

「えっと……さ……今まで────」

「やめろ」

 

 遮る。

 ほんの少しでもその先をオペレーターに言わせないように。

 絶対にそれを許さないように。

 

「謝らないでくれ。頼むから」

「え……? いや、でも……センさんは……」

「……ああ、そうだな。辛かったよ。何度も痛い目に遭って、何度も死にかけて。苦しんだよ。辞めたいって何度も思ったし、早く前線から退きたいとも思った。でもお前の命令だったからどうしようもなかった」

 

 ぎしり、と。表情が軋む。

 

「……」

「だが、謝るな。お前は決して謝るんじゃない。お前はセインツのオペレーターなんだ。世界を救う鍵なんだ。お前は自分が正しいと思って行動しなくちゃならない。たとえ周りがお前を責めようと、俺がいくら弱音を吐こうと、世界を救うためならばお前は無理を通してでもそうしなくちゃならない。たとえ酷使の果てに俺がぶっ倒れたとしても、お前はそれは必要な事だったって胸を張らなくちゃいけない。自分の背負っているものの重さを忘れるな。お前が背負っているのは世界だ。人類だ。地球そのものだ。そのお前が、自らの過ちを認めるな。お前が謝るのを許されるのは、世界を救う事が失敗した、その瞬間だけだ」

 

 確かに俺は心の底から休みたいと思ったし、もう戦いたく無いと本気で嘆いた。

 だから思い通りに休ませてくれないオペレーターに心の中で何度も文句を言ったし、罵倒した。

 時には俺の力でボコボコにして殺してやろうかと思ったことさえある。

 

 だが、それとこれとは別なのだ。

 オペレーターとは、責任を負う者とは、そうでなくてはならないのだ。

 オペレーターは、謝ってはならないのだ。

 

「……それは」

「違うか? いいや違わない」

 

 もし違ったら、俺は何のために苦労した事になる?

【彼女】は、何のために消えた事になる?

 もしコイツが謝れば、それを間違いだと認めれば、それらの全てが無駄だったという事になる。

 そんな事は、許してはならない。

 

「さっさと気を取り直せ。今から突入するのは敵の本丸。それに恐らくだが未発見の『封印種』も居るぞ」

「……うん、わかってる。でも、このままだと……」

「言っておくが弱音も許さないぞ。下らない事考えてる暇があったらとっととあの屑を殺す方法について考えろ」

 

 ああ、だが。やはり。

 

「…………オペレーター、やっぱりちょっと歯ぁ食いしばれ」

「え……ぶッ!?」

 

 バキッと音がして、オペレーターの小さな体がよろける。

 籠手を外した生の拳で人を殴るのは、初めてだった。

 

「……これで負い目は全部無くなった。あの屑をぶち殺すためだけにお前は全力を注げ。他の何も考えるな」

「……………………………………………わかった」

 

 そう言って、オペレーターは自らの立ち位置へと戻って行った。

 オペレーターを殴った右の拳が、ひどく痛い。

 怪我をさせないように、呪いの力を込めないように、精一杯手加減して殴ったと言うのに。

 …………ああ、畜生。

 

「─────おい!! 大変だぞ!!」

 

 と、そこに駆け込んで来るのは、先程まで情報部の方に行っていたトビだ。

 顔を真っ青に染め、息を切らしたその様子は、明らかに只事ではない。

 

「一体何事だ」

「せっ、世界中の人間が、一斉に悪夢を見始めたらしい! ウチの部員も何人かやられた……! あまりの悍ましい夢に、狂気に呑まれてしまった者も居るそうだ! このタイミングにこれって事は、間違いなく……!」

「あの屑か……ッ!」

 

 ギリギリと、女帝が歯軋りの音を響かせる。

 他の面々も、より一層怒りの丈が強くなったようだ。

 

「……む、アレは」

「「「ッ!!」」」

 

 ノイさんの呟きに反応し、全員が一斉に、弾かれたようにモニターの方を向く。

 すると、モニターの奥に方に小さく映るのは、海の中からちょこんと飛び出た────

 

「……塔?」

「いや違う、これは……」

 

 ゴゴゴゴゴゴ、と。地面が揺れ、軋む音がする。

 海が持ち上がり、海中に潜んでいた『ソレ』が姿を現す。

 

「………チッ。趣味の悪い」

 

『ソレ』は、都市だった。海藻と岩礁に侵食されてなお、冒涜的で神秘的な様相を保つ、巨大な都市。

 間違いなくこれこそが、あの屑が言っていた『神殿』というものだろう。絶対にそうだ。

 となれば、あの中のどこかに、あの屑が潜んでいる。

 

「行くぞ」

「……うむ。行くしかあるまい。このようなものはさっさと消し去るに限る」

「あの屑は消すッ! 絶対に! 絶対にじゃ!」

「ええ、絶対に」

 

 それぞれが意気込みを胸に、下船の準備を進める。

 迷いは無い。あるのは純粋な殺意と怒りのみ。

 どんな姿になろうが、どんな強大な力を手に入れていようが、何が何でも奴は殺す。

 絶対にだ。




オペレーター……13歳(公式設定)。

特別イベント『緊急:海中神殿攻略作戦』
参加条件:『臥龍の試練』レイドバトル出撃一回以上

他プレイヤーと協力して巨大海中神殿を攻略し、『恐ろしき存在』の復活を阻止しよう!
イベントクリアで超豪華報酬をイベント参加プレイヤーに配布!
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