初期実装☆2盾キャラ(人権)の話   作:POTROT

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神殿の話

「ぬぅっ!」

 

 ゴフェルの舟から降りたその瞬間。

 神殿から黒い瘴気を纏った矢が一斉に上空に向けて放たれ、俺たちへ一斉に降り注ぐ。

 黒い雲が降って来るかのようなその光景に対し、セインツの行動は素早かった。

 

「随分とまぁ余裕のない事で!」

 

 即座にカイが盾を構え、バリアを展開。

 ドーム状に展開されたそれが、上空から降り注ぐ矢の悉くを受け止める。

 そしてそれと同時に、工事現場のそれさえも生温いと感じるような、脳が震え、聴覚が痛みを訴えるほどの鈍い振動音が響き渡る。

 

「ッ!? うるさッ!?」

 

 明らかに尋常な音ではない。

 ただの矢と言うには、あまりにも重量がありすぎる。

 それこそ鉄の塊が絶えず降り注いでいるかのような、そんな音だ。

 

「……よもやッ!」

「うおぅ!?」

 

 何かに勘付いた女帝が、トビから双眼鏡をひったくり、その両眼を押し付ける。

 そうして数秒の操作の後、わなわなと震えて、叫んだ。

 

「間違いない……屍軍じゃッ!! あやつッ、エイリアン共を屍軍に仕立てておるッ!!」

「なんと、噂に聞く僵尸の軍勢というヤツか?」

「……冗談じゃないぞ、オイ」

 

 屍軍。

 それは先帝が組織した、数十人の道士と彼らの操る僵尸達で構成された軍隊の事を指し、そしてそれはかつての山河の国における最強部隊……つまり、皇帝近衛隊の正体でもあった。

 

 死体を用いて道士が作成する僵尸は、文字通り動く死体。

 身体保護のための自己制限の存在意義が消失したその死肉の身体は、生者とは比べ物にならない程の能力を誇る。

 

 当然、扱える武具の類も、生者のそれとは比べ物にならない。

 数トンはあろうかと思える程の大戦斧であろうが鉄槌だろうがお構いなしにブンブンと振り回し、弓であれば十人張りどころか五十人張りは当たり前。

 破城槌さえ手持ちの武器として利用できる。

 

 そんな僵尸どもが、何十人何百人と存在し、一斉に襲いかかってくるのだから、これらに挑戦する側としてはたまったものではない。

 故にかつての女帝は、この屍軍にこそ辛酸を舐めさせられた。

 そして、今度はそれがエイリアンになっているというおまけ付きである。

  

「……これは……些か不味いか?」

「些かどころではないですね、これ。女帝様、以前はどうやってこれを突破したので?」

「例の領域を逆手に取って皆殺しにしてやったわ。奴にしても、妾のような血縁の存在は完全に想定外であったが故な。……だが」

 

 逆に言えば、そうでもしないとどうにもできなかった、という事にもなる。

 そもそも僵尸を扱える道士というのはそれ自体が達人クラスの実力を秘めるものであり、一人の道士と一体の僵尸はそれだけで十分以上の脅威になり得るものだ。

 それが互いに背中を守り合いながら攻めてくるわけだから、それくらいの反則が無ければどうしようもない、という話になるのも頷ける。

 

「であればこの場に例の領域を……などと、そのようなことが出来るわけでもあるまい」

「然り。であるからには、攻略法は正攻法である、僵尸の主たる道士への直接攻撃になるのじゃろうが……」

「多分ですがアレ、その道士とやらは居ないですよね」

 

 というよりは、先帝こそが連中を束ねるたった一人の道士なのだろう。

 エイリアンの、それも封印種の肉体を用いることによって、あのような離れ技を可能にしているに違いあるまい。

 世界中の人間を纏めて悪夢に誘うことが出来るような存在だ。

 山のような僵尸どもを悉く操るのも、造作もないことのはず。

 

「……随分と手の早いことよ……否、始めからこうするべく準備を推し進めていたのか……?」

「……つくづく妾の神経を逆撫でしてくれるのう、あのゴミカスめがァ……!」

 

 ギリギリと、女帝の歯軋りが聞こえる。

 彼女の気持ちは俺にも良く分かる。俺とて、似たような感情であるのだから。

 

『朕をゴミカス呼ばわりか、卑しい売女め。朕の高貴な血を引いておるとは、到底思えん粗暴よ。どこまでも教養と躾が足りておらんと見える。……朕を一度殺せたことだけは、それが結果としてこの結末を招いた一点を評価し、褒めてやってもよい。褒美は朕の手ずから死ぬ栄誉だ』

「「「「!!」」」」

 

 突然、脳内に声が響き、それと同時に脳内に浮かび上がるのは異形の怪物が玉座に座る姿。

 頭と胴が一つづつに、腕と足がそれぞれ一対ずつの人型に近い骨格をしているものの、しかしその全身は穢らわしい緑色の鱗やゴム状の何かに覆われており、口のあたりから髭のように生えるのは無数の触手。そして背中に畳まれているのは蝙蝠の皮膜を思わせるような翼だ。

 明らかに、尋常な存在ではない。

 そして今この状況から考えてもこの脳内に浮かぶ存在こそが、あの時に先帝が言っていた『強大な存在』なのだろう。

 

「アンタが天帝ってやつなのかしら?」

 

 フィルが城を睨みつけながら、強気に言う。

 玉座に座す異形の表情が、ほんの少し不快気に歪んだ……ように、見えた。

 

『口を慎め、下女。貴様如きが朕に質問など、烏滸がましいにも程がある。しかし朕は寛大だ。冥土の土産程度は赦す。然り。朕こそが至上の王にして世界を統べる覇者、天帝である』

 

 世界に轟く暴君の悪名に劣らず、あまりにも不遜な態度の先帝。

 しかし今この瞬間において、我々と最低限の会話をするつもりはあるらしい。

 気付けば、降り注いでいた矢の雨も止まっていた。

 

「【彼女】は……厄龍はどうした?」

『む? ああ、目覚めたのか』

 

 まるで今気づきました、と言わんばかりに先帝は言う。

 俺の意思に反して全身に力が入り、表情が歪んだのが分かる。

 

『あのまま眠っておればよかったものを……まぁよい。貴様も貴様で、この結果に至るに多少の貢献を示したことは事実。質問には答えてやろう。あれの肉体は取り込んだわ。この神殿を取り巻く瘴気が貴様にも見えよう? ヤツの力の証左であろうが!』

 

 その言葉を聞いた瞬間、俺は自らが激情に支配され、たまらず飛び出していくものかと思っていたが、しかし現実にはそうはならなかった。

 スゥッと、妙に頭が冴え、視界がクリアになり、全身から力が漲るのだ。

 

 ……そうか、取り込んだ、取り込んだのか。

 

「……一応聞いておこう。貴様、自分が何をしているのかわかっているのか?」

『ふむ、『砂漠の国』の神帝(ファラオ)とやらか。干からびた僻地の頭風情が朕を差し置いて神を名乗るなど、万死に値する。朕の新たな力の試しとなる栄誉を噛み締めながら死ね』

「……もうよい。会話を期待した余が馬鹿であった。オペレーター、指示を出せ」

 

 ホルルが振り返り、同調するように女帝も視線でオペレーターに指示を促す。

 

『……ふむ、ただの小童の下に付くとは。随分と堕ちたものよのう、皇帝の座は。しかしそれも栓なき事か。真なる王は朕一人であるが故なァ?』

「もういい加減黙ってくれないかしら? 不快だから」

 

 フィルが神殿に向けて中指を立てる。

 瞬間、脳内のイメージの中で先帝の雰囲気が明確に変わった。

 何がスイッチだったのかはわからないが、とにかくフィルの動作が先帝の気に障ったらしい。

 

『……はぁ、まぁ、もうそろそろよかろう。機嫌が良かった故幾つか質問に答えてやったが、すっかり気分が悪くなった。者ども、殺せ』

「「「ッ!!」」」

 

 先帝がそう命令を下した瞬間、再びエイリアンの僵尸達による矢の雨が降り注ぐ。

 そしてそれだけではない。武装したエイリアン僵尸達の歩兵達が、矢の雨の中をこちらに向けて走って来る。

 体に矢が何本刺さろうと、一向に気にする素振りを見せず、ハリネズミのように全身から矢を生やしながら速度を落とさずにこちらへと真っ直ぐ進んでくる。

 

「噓でしょ!?」

「奴らは既に死体! 痛覚など存在しないのだ!」

「動作に必要な関節や筋肉、腱さえ守れれば問題なし……と。面倒な事この上ないな」

 

 事実、よく見てみれば、僵尸達は自発的に関節や筋肉などを避けているような動きを見せている。

 背後から迫っているはずの矢の軌道を見向きもしないままに正確に把握しているのは、連中がたった一人の主人を共有しているからであろうか。

 

「やれそう?」

「わからん」

「だが、やるしかない」

「その通りじゃ。さぁ、早く指示を出せ、オペレーター。早く。早くじゃ!」

「うん! これより、海中神殿攻略作戦を開始する! 女帝! 弓兵に向けて『剛破掌』! ホルルとトビも弓兵の殲滅を最優先! ジョージは盾を展開! レナは使える支援をありったけ女帝に!」

 

 オペレーターの指示を受け、幾つもの気弾や呪いの力が神殿に陣取った弓兵達に殺到し、次々とエイリアン僵尸達を撃ち抜いてゆく。

 更にそこに叩き込まれるのはトビの放つミサイルランチャーによる爆撃。

 流石にそれだけで壊滅にまでは追い込めなかったものの、明らかに降る矢の量が激減する。

 

「殺せずとも、吹き飛ばせば攻撃は止むかッ!」

「ならば、攻略の手法は幾らでもあるッ!」

「突撃!」

「「応ッ!!」」

 

 その隙を見計らい、オペレーターが前衛組に突貫を指示するので、俺も便乗して走り出し、エイリアン僵尸の歩兵どもに突っ込んでゆく。

 

「えっ、センさん!?」

「問題ない! 行かせろ!」

「ッ……ほ、ホルルッ、センさんの援護を!」

「ええい、血迷ったかセン!」

 

 指示にない俺の突貫にオペレーターは困惑しつつも、すかさずフォローを指示。

 肉体がすでに死んでいようと関係なく作用する呪いの弾丸が歩兵を射抜き、その動きを封じ込んだ。

 

「ふっ!」

 

 そして、俺はそのエイリアンに肉薄し、その瘴気を巻き散らす体をガシリと掴み───

 

「なッ、何をしておるッ!?」

 

 エイリアン僵尸共の纏っていた黒い瘴気を吸収してゆく。

 俺の中に瘴気が、苦痛が、疲労が、死が、蓄積してゆくのが分かる。

 成程、これは凄まじい。この何倍もの量を体に蓄えこんでいたとは、本当によく死ななかったものだ。

 

「く、はは……ッ!」

「笑って居る場合かッ!? それは『負』の力じゃぞ!?」

「百も承知! 必要な事です!」

 

 それは明確な根拠があるわけではなく、ただの直感の域を出ないものだったが。

 しかしそれでも、俺はこの勘を信じたかった。

 そしてその勘を肯定するかのように、瘴気を失った僵尸が倒れ伏す。

 起き上がる様子は、全くない。

 

「何とッ、まさか、僵尸どもはその瘴気を動力源に……!」

「でしょうな! そんなことより、よそ見をしている場合ですかねッ!?」

 

 女帝の視界の後ろから迫ってきている歩兵を認め、俺は呪いの力を開放する。

 使わなくなった、というより、使えなくなっていたのだが。

【彼女】が消えてしまったからか、再び使えるようになっていた。

 まぁ何にせよ、あれからかなり長い時間が経っていたが、元々の俺の力だ。

 動きを止めさせる事、そのまま捻り潰すこと、引き寄せて瘴気を回収すること。

 その程度なら、今の俺でも簡単だ。

 

「……ははっ、随分と頼もしくなったのう、兄様!」

「あにさッ……!? この場面でそういうことを言うのはやめていただきたい!」

 

 再び降り出した矢の雨から避けるように、カイの後ろへと避難する。

 今の一連の動作によって我々が神殿に近づいたのは、歩幅にして約3歩。

 先程攻撃した弓兵達は再び起き上がり、ある程度吹き飛ばした歩兵達も再びこちらへと駆けてくる。

 ……さて、長丁場になりそうだが、絶対にあの野郎に俺の拳を叩き込むと決めた以上、これもやるしかないというものだ。

 

「第二波、行くよ!」

「「「「応!!」」」」

 

 さぁ、待っていろ。

 絶対に殺してやる。




 エイリアン僵尸を倒し、瘴気を回収しよう!
 回収した瘴気量に応じて特別なオペレーターズスキル、【呪懐】が解放されてゆくと共に、報酬を獲得できるぞ!

 skeb開きました。
 書いて欲しいものがあったら是非どうぞ。
 https://skeb.jp/@POTROT185078

 あとFANBOXに新しいのは置いておきます。
 
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