2週間にわたる調査の末、我々があの漁村から得た情報は、まさに【爆弾】であった。
なんと、数千年以上前から地球にはエイリアンが飛来しており、その中でも特に強力な数体は現在も休眠状態であるものの生存していると言うのだ。
そして、エイリアンによる本格的な地球侵略と人類抹殺の開始に伴い、一部の種──これを『潜伏種』と命名──は、それらの復活を世界各地で画策しているのだと言う。
今回の漁村にいたあの魚人のようなエイリアンどもも潜伏種であり、その強力なエイリアン──これを『封印種』と命名──の復活を目論み、ずっと潜伏していたらしい。
この結果を受け、ノイさんは今後の指針を『潜伏種の殲滅、並びに封印種復活の阻止』に決定。
そのためにはまず潜伏種達の潜伏場所がわからなければ話にならないと言う事で、現在、セインツのメンバーは戦闘員非戦闘員問わず総出で情報収集に駆り出され、世界各国の組織もその調査に全力を尽くしている……のであるが。
「暇じゃのう。退屈で死んでしまいそうじゃ」
「今のうちに国務を片付ければ良かろう。最新の機械というものは実に凄まじい。このように遠く離れていようが、滞りなく命令が届く。実に便利だ。近く、民草にも普及させようぞ」
「ンなもん知らん訳がなかろう。妾の国とて『猛すぴぃど』で『でじたる化』の真っ最中じゃ」
紅の唐服を纏い、神々しさすら感じるような物憂げな表情でパイプ椅子に座って頬杖をつき、戯けた事をほざくのは『山河の国』に君臨せし暴君、
褐色の肉体をよく見るまでもなく見事な意匠の施された金の装飾品でその身を飾り、そんな格好でノートパソコンを叩いているのは『砂漠の国』が誇る
そんな国家元首である二人が駄弁っていた。警備隊の詰所で。
いやまぁ、うん。仕方がないというのはわかる。この二人はセインツの戦闘員の中でも特に強力なメンバーで、オペレーターからの信頼も厚い。
有事の際にすぐ出撃できるよう、この舟で待機しているのだろう。
だからと言ってこの詰所に来る必要はないんじゃないかとは思うのだが。
何故ここなのだ? 別に他の場所でも良かっただろうが。
俺か? 俺目当てなのか? 普通に迷惑だぞ?
「妾にはもうすべき務めが無いという話よ。妾の国は既に妾が居らずとも回るような仕組みを整えておるが故に」
「ふむ、可能なのか? それでは奸賊の悪逆にも気付けまい。如何にするつもりか」
「安心せい。そのための監視はおる。……のう、セン?」
と、いきなりこちらへ飛び火が来た。
現在は仕事の真っ最中であるものの、一応俺は『山河の国』の出身であり、彼女の支配下ということになっているので、彼女の問いに答えないという選択肢は存在しない。
「ええ、はい。『影』の者達が広く目を利かせております。欲に負けた痴れ者の浅はかな企てなぞ、実行する前に悉く阻止されましょう」
「つまりはそういうことじゃ。まぁ、左様な真似をする阿呆なぞ、妾の国にはもう居らんとは思うがの」
そんな大口を叩く彼女であるが、しかしここ十数年の『山河の国』の情勢をよく知る俺からすれば決して彼女の言葉を大言壮語だと否定できない。
というのも、である。この女帝と呼ばれる女、自らが実権を握るにあたり、父とその臣下を皆殺しにした上で全ての役職に自分が抱え込んでいた人材を配置する事で、『山河の国』の上層部を完全に一新したのである。
しかもその後に発生した反乱を始めとした不都合の数々も、彼女自身がその暴威を振るい、皆殺しという形で鎮圧した。俺の両親や兄、姉も、この時彼女の手によって直接殺されている。
何万と言う人間の死と、夥しい量の血で以て、彼女はクーデターを達成し、停滞と腐敗から脱却したのである。
で、その後は革新と粛清の嵐が吹き荒れた黎明期が訪れ、そして数年ほど前になってようやく『山河の国』は安定を手に入れたのである。
ただその安定も、すぐにエイリアンによってぶち壊されてしまったわけであるが。
しかしまぁ何にせよ、色々とやらかした女帝に対する恐怖の感情は未だ根強い。
いかに叛意を抱いていようと、殺されるとわかって行動に及ぶ馬鹿はそうそう居ないと言う話である。
「ふぅむ、死の恐怖による統治、というわけか。余の国とは真逆であるな」
「まぁ、そうですね」
絶対的な死の恐怖による支配で以て運営する『山河の国』と、豊穣と繁栄を約束する
「……センよ。やはり余の国に来んか? 左様な国は息苦しかろう」
「ほう? 面白い事を言うではないか
そして唐突に俺を巡って二人の喧嘩が始まった。
普通の感性を持つ者であれば突如として発生した国際問題に動揺するところなのだろうが、しかし俺はもう特に何も感じない。
もはや毎度のことである。これで何回目だろうか。もう100回はやったのではないだろうか。
何ならもう焦りとかより呆れの感情が勝つ。
「……はぁ……」
ため息を吐きながら、端末を操作してオペレーターに助けを乞う。
「いい加減な事を抜かすな女帝よ。余がここへ貴様よりも先に来た時より、彼の者に首輪なぞついていなかったぞ。どうせ貴様が急拵えででっち上げた嘘であろう。選択の自由は彼の者に有る。断じて貴様が決めるべきものではない」
「否。センは元より我が国の民。であるのならば我が配下であり、首輪付きと称すが適当であろう?」
ゴゴゴゴと、不穏な空気が部屋の中に渦巻く。
早く来いオペレーター。他の警備員達があまりのプレッシャーに死にそうになっているぞ。
と、そんな事を思っていると、コンコンコンと扉がノックされた。
瞬間、2人の纏っていた威圧感が消し飛ぶ。
「はいはーい、何があったのー? ってあれ? 二人とも何でここにいるの?」
「いや何もなかったぞ?」
「うむ、気のせいではないかの?」
「……………………」
そんなわけがねぇだろうが、というのがこの部屋にいるコイツら以外の全員の総意であろうが、しかし全員が全員口を閉ざしてしまう。
誰も彼も、痛い目は見たくないものなのである。
「本当? また喧嘩とかしてない?」
「然り然り。余達、とても仲良し」
「戦場じゃ共に背中を預け合う仲じゃからの、うむ、『ほるる、まい、ふれんど』じゃ」
しかし相変わらず凄まじい変わり身だ。これが外交のコツというものだろうか。(皮肉)
「……ん?」
と、俺がそんな2人にある意味感心していると、扉の外に誰かがいることに気付く。
いわゆるメイド服と呼ばれる服を纏った、小柄な体躯に、ブラウンの短い髪、そして少女を思わせるような幼い顔立ちの……
「……いや、なんて格好してんだお前?」
「ボクだって着たくて着てるわけじゃないんですよ!?」
そう言って反論して来るのは、我らがセインツの初期メンバーの1人にして厨房担当、チーフシェフのサブローであった。
尚、性別は男である。
■
「……成程、大体理解した」
「う、うう……」
オペレーターの話を総括するとこうである。
『丘の国』のとある村に、若い娘を捧げる奇妙な風習があるという情報を入手。
潜入捜査をすることになったが、しかし女性を連れて行くと危険な可能性があるので、全員男で行くことにした。
しかし若い娘が居ないと歓迎されない場合が考えられるので、それっぽい見た目の戦闘員を女装させることにした。
見事サブローが選ばれた。
……つまり、こういう事らしい。
「しかし大丈夫なのか? 本当に?」
「最大限に安全には注意してあるよ。その服も特別製だし」
「フィルの水着みたいなやつか」
「うん、そう」
「はい、その、この服を着ていると、センさんが使っているようなすごい力が使えるんです! 料理しか能の無いボクでしたが、これならセンさんと一緒に戦う事だって出来そうです!」
「……そうか」
ふんす、と鼻を鳴らし、力こぶを作るサブローであるが、その格好でやられたところで可愛らしいという感想しか出てこない。
「で、俺はどうする。いつも通り戦闘か?」
「うん、今回もセンさんにはお願いするつもり。お願いね!」
「ああ」
「センさんがボロボロにならないよう、ボクも頑張ります!」
「……ああ……」
【被害集約】は俺が自らダメージを負いにいく技だ。
彼がいくら気合いを入れようと、俺がいつも通りやられるのはほぼ決定事項なわけだが……
まぁ、うん。出来る限り頑張って欲しいものだ。
女帝……人権星5アタッカー。自分に対する強力なバフで、とんでもない超高火力をばら撒きまくる。大体のパーティでメインアタッカーを張っており、高速周回となるとまず彼女がパーティに入る。しかも体力の自己回復、デバフの解除も持ち合わせており、優先度の高い攻撃技も持っているので、EXを撃たれる前にセンさんを倒すのは大体この人の役目。最強キャラの一角。
ホルル……人権星5デバッファー兼バッファー。火力はそこまで高くないものの、通常攻撃(多段ランダム攻撃)でスリップダメージや行動阻害、能力ダウンを確率で付与しまくるので、自軍の被害を減らしつつ敵に確実なダメージを与えてくれる。EXで敵全体に付与される【ファラオの呪い】は解除しない限り全てのデバフ効果が倍になるとか言うバグ。更に味方に対する強力なバフも持ち合わせる。対人戦ではいかに早くコイツを倒せるかで勝負が決まると言っていい。最強キャラの一角。
サブロー(通常)……星2バッファー。男の娘枠。正直弱い。全体に回復と回復量バフを配るEXは星4並と言われており、一部ステージでは刺さったり無課金編成では必須だったりすることもあるが、対人戦や高難易度だとEXの発動条件を満たす前にまず落ちる。薄い本での登場数はオペレーターに次いで高い。