『丘の国』での封印種討伐戦から、おおよそ一ヶ月。
その間に、我々セインツは新たに2種類の封印種を発見、並びに撃滅した。
片方は『竜の国』のとある民家の下で発見された、幾つもの目を持つ白い異形。
人間の体に自身の子を植え付け、繁殖を繰り返しており、我々が発見した時には既に25mプール一つ分にギリギリ収まりきらない程度の量が産み落とされていた。
そして驚くべきはその戦闘力だ。
まだ生まれて間もない30cmにも満たない個体ですら、並の人間の何倍も強い力を持っており、1m超えの個体ともなると、ただの体当たりを受けただけで体がバラバラに弾け飛んでしまいそうなほどの衝撃に襲われた。
もしあのまま数が増え続けていれば、被害はきっと恐ろしい事になっていただろう。
トビによる発見が早くて、非常に助かった。
そしてもう片方は『野の国』の北方で発見された、風を操る巨人。
半径4km以内に入った人間を風の力を用いて空中へと吹き上げ、そしてそのまま地面に叩きつける事で殺害するという凄まじい能力の持ち主だ。
超広範囲の即死攻撃は発見の遅延に大きく貢献し、我々がようやくその存在を発見した時には既に何万人もの人物が犠牲になっていた。
更にはその能力の特性上、無闇に攻撃を仕掛けることができず、手をこまねいていた間に2000人が、ヨハン率いるエンジニア部隊が【ゴフェルの舟】を改造し、突撃、討伐するまでにも500人もの人々が犠牲になってしまった。
この二つの戦いは我々に封印種の恐ろしさを再認識させると同時に、宇宙の彼方に居るとされる真の黒幕の強大さを想像させた。
そこで我々セインツは、引き続き潜伏種、並びに封印種の調査を進めると同時に、戦力増強にも本格的に乗り出す事にした。
では具体的にどう強化するか。
セインツのメンバーは既に人類として限界値に近い能力を兼ね備えており、これ以上の伸び代は望めない。
そして【ゴフェルの舟】は既に人類の叡智を集結させた地球最高の移動要塞であり、勿論装備品だって地球最高のものだ。これ以上のものなど求めようが無い。
それを、一体どのようにして強化すればいいのだろう?
簡単な話である。
地球由来の力では足りないのなら、宇宙由来の力に頼れば良い。
そして今の地球には、宇宙由来の力の源が溢れかえっていた。
そう、エイリアンどもの肉体や技術を利用する事にしたのである。
当然、反対意見は出た。
エイリアンどもは我々人類の怨敵。
確かに技術や力の面で優れている点は認められるも、それを利用するのは感情が許さない。
そうするくらいならば、地球に籠る方がよっぽど良い、と。
その意見は俺としても同意できるものがあったが、しかし元凶を絶たないことには人類が連中の魔の手に脅かされ続ける事になる。
やはり我々は真なる黒幕を倒しに行くべきであるし、そのためには戦力を増強する必要があるのだ。
そうして結局、ノイさんやオペレーターの意見を踏まえ、セインツはエイリアンどもの力や技術を最大限に利用する事に決まり、それに当たって今まで倒して来た『封印種』の再調査が行われる事になったわけである。
……わけである、が。
どうも俺は今回は役に立てないらしい。
「────────センさん?」
「……ぐ、お」
目が回る。
手足の感覚が消え失せる。
平衡感覚が失われる。
そんな状態で立っていられるはずもなく、俺はそのまま床に倒れ伏す。
「セン! おいセン! しっかりしろ!」
「なっ……いっ、医療班……ッ、おいフィル!? フィルッ!!?」
途端に辺りが騒がしくなる。
しかし、朦朧と意識の中では誰が何を言っているのかがハッキリと聞き取れない。
「クソッ、やっぱりこうなりやがったか! 無理にでも休ませておけば……!」
まぁ、そうだよな。こうなるよな。
何せ最近、何度も死にかけた……いや、何度も
触手に握り潰され、白い怪物に擦り潰され、化け物の幼体に体を内部から喰われ、雪の降る遥か上空に吹き飛ばされて凍り、そして地面に叩きつけられてミンチになる。
そうして俺は何度も死んだ。
何度も死んで、何度も蘇った。
肉体は治っても、精神までは治らない。
どれだけ寝ても疲れは取れないし、頭痛と吐き気は治らない。
食事は咀嚼すら碌にできず、無理矢理食おうにも味がしない。
突如として体が動かなくなったり、何も無いはずなのに痛んだり、無事なはずなのに手脚が潰されるような感覚がしたりもした。
きっと俺は、もう限界だったのだ。
「医務室! 医務室へ運べ! ええい貸せ! 俺が運ぶ!!」
もう良いだろう。
俺はもう十分に頑張っただろう。
才能の無い凡人にしてはよくやった方であるに違いない。
だから、もういいのだ。
「おい! 起きろ! 目を閉じるんじゃない! おい! おい!!」
視界に映る同僚をぼんやりと眺めながら、俺は意識を失った。
■
ベッドの上、様々な機材に繋げられたセンを囲むのは、4人の男女。
オペレーター、ノイ=ヌーフ、トビ、そしてフィル。
サブローとヨハンを除く、セインツの初期メンバーが集結した形になる。
「──フィルさん、センさんは……」
「精神的負荷、つまりストレス。それ以外に無いわ」
既にセンが倒れてから半日が経つが、しかし一向に目覚める気配は無い。
オペレーターの顔には隠しきれない不安が浮かび、フィルもその焦燥を隠しきれていない。
「無茶をさせ過ぎたな……最近は飯もまともに食えてなかったらしい……あークソ、見てただろうが! 見てただろうがよ! アイツが肉塊になっていく様をよ! 畜生! こうなるんだったらもっと早くに止めておけば良かった!」
トビは頭を抱える。
最近になってトビも新しい装いを手に入れ、強力な力を手にした。
そうしてセンが普段『何をしている』のかを理解し、センがいかに危うい状況にあることを既に把握していた。
だからこそ、その後悔もひとしおだった。
「止めたわ、止めたわよ。でも止まらなかった。止まれなかった。それがオペレーターの命令だったから。地球を救うために必要なことだったから」
キッと、フィルはオペレーターを見る。
オペレーターはびくりと肩を震わせ、そして顔を青ざめさせてセンを見た。
「僕が……僕は、センさんが、センさんが一番……センさんだから……」
「ええ、そうよね。コイツは優秀よ。でも、アンタはコイツにかかる負担を考慮していなかった。コイツの能力ばかりを見て、コイツを見ようとしなかった。その結果がこれよ」
「…………そんな、ことは……」
「無いってわけ? 最近コイツがどれだけ追い込まれてたか、見てなかったの?」
カルテをデスクに叩きつけ、フィルはオペレーターに詰め寄る。
「女帝も、
いよいよフィルとオペレーターの距離が狭まる。
「■■■■回! これが何の数字かわかる!? コイツがここの医務室で治療された回数よ! その回数だけコイツは死んだの! それが一体、どれだけの負担になるか……ずっと戦場にいたアンタに、わからないはずがないでしょう!?」
とうとうフィルがオペレーターの胸ぐらを掴み上げる。
装いを新たにしたことで得た凄まじい力は、オペレーターの体を易々と持ち上げ、吊るした。
オペレーターは苦しそうにするが、しかし足が地面に届かない。
まさか殺す気か、と。トビが慌てて止めに入ろうとする。
その瞬間。
「やめろ。フィル」
「ッ……」
圧倒的な重厚感を持った言葉が、ノイより放たれる。
セインツのトップに君臨する男の眼光に、フィルは大人しくオペレーターを地面に降ろし、手を離した。
「……これは我々の罪だ。我々セインツの罪だ。我々はセンに頼り過ぎた。世界を救うため、地球を救うためとセンに犠牲を要求し続けた。この舟に居る全員が彼に守られながら、守られることを当然と受け止め続けた……見ろ。その代償が今、センを苦しめている」
チラリ、と。センを見る。
やはりセンが目を覚ます気配は無い。
「我々は反省せねばならない。そして成長しなければならない。今、我々はセンの庇護からの脱却を強いられた。これは我々に課せられた試練だ。これを糧に、我々は成長するべきなのだ」
そう語るノイに、残りの3人は不安を覚えずにはいられない。
センの不在が、一体どれだけの負担になるかを理解していたからだ。
きっとノイも、それを理解しているからこそそう言っているのだろう。
もうセンが倒れてしまった以上、やらねばならないのだ。
「トビ」
「……はい。何でしょう」
「女帝をここに。センは一時、『山河の国』の宮殿に預ける」
「………………わかりました」
不安は尽きない。
懸念事項は星の数ほどある。
だが、それでもやらねばならない。やらねばならないのだ。
センが居なくてもセインツは問題ないと、胸を張って言えるようにならねばならないのだ。
今までに倒した全ての『封印種』が一斉に復活したと言う情報が届いたのは、その8時間後の事であった。
インタールード・ストーリー『臥龍の試練』
参加条件:キーイベント 『怪奇! 狂気の漁村! 〜陰に潜む者達、水着を添えて〜』『メイド服 is ジャスティス!!』『廃屋に潜みし白い影』『緊急事態:超級封印種討伐作戦』全てクリア済み(未クリアストーリーはメインストーリークリアで無料解放)
開催期間:21日間。
!注意! ストーリー1話読了後、☆2キャラクター『セン』が条件を達成するまで編成不可になります。(PVP含む)