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予言された戦士である孫悟空との戦いを終え、ウイスと共に帰還したビルスは三十九年振りに身体を動かした影響なのか、眠たそうに目を擦りながら湖の畔で両腕を枕にして寝転がっていた。
「それにしてもあいつの潜在能力には計り知れないものがある。
ま、思っていた通り、強敵と呼ぶには大袈裟だったけどね」
「ですが、四割近くの力で放った技を押し返していましたし、ベジータさんも僅かとはいえ、ビルス様の攻撃に耐えていました。案外馬鹿にはできないかもしれませんよ?」
「…そうだねぇ。……あいつ、名前はなんて言うんだっけ?」
「孫悟空ですよ」
悠久の時を生きるビルスにとって行く先々で出会った人間の名前を一々覚えてはいられない。
そんなことをしていてはキリがないからだ。
しかし、今回出会ったサイヤ人は名前を覚えるに値すると判断できる程に強い印象を受ける人間だった。
ウイスから告げられたその人間の名前を彼は決して忘れないように復唱する。
「孫…悟空……孫悟空…か…よし、覚えたぞ。
…その内悟空とベジータは本当にボクの強敵になるかもしれないね」
「悟空さんはビルス様を倒すと息巻いていましたねぇ。口には出していませんでしたがベジータさんも同様でしたし」
「フン…息巻くのは結構だが、そう易々と勝たせるつもりはないよ」
別れの間際、対抗心を燃やす二人だったがビルスとて破壊神としてのプライドがある。見所があるとはいえ、勝ちを譲るつもりは更々なかった。
「…ところでビルス様。あの二人…
「少なくとも悟空は向いてないね」
「やはりそうですか…」
「確かにあいつは磨けば光るものがある。
だが…あの様子だと務まらないし、本人も断るだろうね。
そういう意味ならベジータの方が適性はあるかな。才能も悪くない。
ま、現状は様子見だが、あいつも地球で生活して大分変わったみたいだし、正直あまり期待はしてないかな」
「と、なりますとやはり…」
「ああ…ボクとしてもあいつが一番──」
「ビルス様ーーッ!!!」
「あ?」
「おや…噂をすれば」
二人が神妙な面持ちで話し込んでいると遠くから慣れ親しんだ気を感じ取り、空を見上げれば遥か上空から金色に輝く流星のような物体が高速で迫ってきていた。
するとビルスは素早く起き上がり、流れるような動作で湖から距離を取る。
再び空を見上げれば流星はどんどん近付き、ビルスの瞳により鮮明に映し出される。
彼に目掛けて接近する流星、その正体は──
「おはようございまぁぁぁぁすッ!!!!!!!!」
美しい金髪をなびかせ、金色の雷光を纏い、満面の笑みを浮かべるルージュだった。
それも
「…フッ」
久しぶりに見る弟子の顔にビルスも釣られて小さく口角を上げると受け止める為に右手をかざす。
しかし、ルージュが目前まで迫り、彼女の足が右手に接触する刹那、彼は両腕を交差させたクロスアームガードに切り替えた。
その直後、周囲一帯にまるで雷が落ちたかのような轟音が鳴り響く。
更にビルスを中心に地面が大きく窪み、巨大なクレーターが形成された。
衝撃で土埃が舞う中、彼はニヤニヤしながら口を開く。
「おはようルージュ。今日は随分と威勢がいいじゃないか」
「いやぁ…三十九年振りだからさ、嬉しくてつい力が込もっちゃって」
「…つい、ねぇ。普通は星をぶち抜く勢いで突っ込んでこないと思うけどね」
「アッハッハ! 細かいことは気にしない気にしない!
どうせビルス様なら簡単に受け止めちゃうから問題ないだろ?」
「……それもそっか」
「そこで納得してしまうのもどうかと思いますがねぇ…」
構えを解き、からからと笑うルージュの背後からジト目をしたウイスが土埃を払いながら歩み寄る。
その表情からは師弟揃って何を言っているのやらと呆れた様子を見せていた。
ビルスは兎も角として、普段のルージュはしっかり者なのだが、昔からビルスが目覚めた際は嬉しさのあまりタガが外れてしまう傾向があった。
それだけ彼を慕っているということなのだろう。
しかし、もう少し自重できないものかとウイスは独り言ちるのだった。
「あっウイスさん! 仕事は済ませてきたよ」
「お疲れ様ですルージュさん。後程詳細を聞かせて下さいね」
「オッケー」
「それにしても…今回は随分と派手にやりましたねぇ」
「やっと起きてくれたからついテンションが上がっちゃってさ。つまりビルス様が悪い」
「おい、ボクのせいにするなよッ! 本来は十五年なのにゴッドが現れる日まで寝るように言ってきたのはお前じゃないか」
「それはそれ、これはこれ」
「お、お前なぁ…」
ルージュの理不尽な言動にビルスは思わずこめかみをひくつかせる。
子供の頃は逆の立場だったが、彼女が大人になってからは仕返しのつもりなのか、こういった場面も多くなり、ウイスにとっても馴染みのある光景だった。
「そんなことよりも、超サイヤ人ゴッドの力…どうだった?」
「こいつ…露骨に話を逸らしたな…」
「いいから早く教えてよ。ずっと気になっていたんだからさ」
「わかったわかった! 話してやるからそんなに顔を近づけるな! ハァ…場所を変えるぞ」
待ちきれないといった様子でズイッと顔を寄せてくるルージュに煩わしさが滲み出た表情で押し退けると、再び湖の湖畔で腰を下ろし、隣で座る彼女に地球での出来事を語るのだった。
(良かった…ちゃんと原作通りに進んだんだ…)
ビルスの話を聞き、ルージュは心の内でホッと息を撫で下ろす。
彼女が何に対して安心していたのか?
それは自分という正史には存在しない"異分子"がいることで原作が崩壊してしまうことを危惧していたからだ。
惑星M2で戦ったベビーがいい例だろう。
彼は計画実行の為に活動していたが、これは正史ではあり得ないことだ。
どういう経緯で目覚める時期が早まってしまったのかは定かではない。
しかし、彼女の存在によって起きてしまったイレギュラーであることは確かだった。
このような事態が起こり得る可能性もあって、ルージュは悟空達とは関わらないスタンスを取っていた。
勿論、前世の頃から大好きだった彼等に会いたいという気持ちもある。
だが、後先考えずに干渉してしまえば取り返しの付かない事態が発生してしまうリスクがあった。
例えば人造人間セルとの戦いを例に出そう。
物語の終盤、超サイヤ人2に覚醒した孫悟飯は圧倒的な力で完全体となったセルをねじ伏せるも、彼の慢心によってセルの自爆行為を許してしまい、あと僅かで地球ごと消滅するところで悟空がセルと共に瞬間移動することで事なきを得る。
これによって悟空は死んでしまうが、これが正しい歴史だ。
では、もしここでルージュが干渉して自爆する前にセルを倒した場合はどうなるだろうか?
確かにその場合は悟空は死なない為、ハッピーエンドと言えるだろう。
正史では自爆したセルは後に完全体を超えるパーフェクトセルとなって復活し、未来トランクスを殺してしまうが、自爆を阻止しているので彼が死ぬこともない。
結果だけを見ればいいことづくめだ。
だが、問題はこの後だ。
七年後に現れる魔人ブウとの戦いで展開が大きく変わってしまうのだ。
正史では死んだ悟空が大界王の下で修業して超サイヤ人3に覚醒する。
更にあの世にいたメタモル星人から二人の人間を融合させる技、フュージョンを伝授してもらい、これが後に重要な役目を担うことになる。
しかし、悟空が生存している場合は大界王の下で修業することも、フュージョンを伝授してもらう機会もない。
つまり、自分が出しゃばればそれだけ彼等の成長する機会を奪ってしまい、それが悪い方向に繋がる可能性があるのだ。
下手をすれば未来トランクスの世界のような悲惨な末路を辿るかもしれない。
そういった経緯があり、彼女は今まで原作には干渉してこなかった。
だが、それもここまでの話。
何故なら悟空とビルスが出会ったからだ。
言ってしまえばルージュは破壊神サイドの人間であり、ビルスが悟空と関わるようになれば
何より───
(
ルージュの記憶にある原作知識では、近い将来、かつて宇宙の帝王として恐れられていたフリーザが復活し、更にその後にビルスと第六宇宙の破壊神、シャンパによる団体試合が開催される。しかし、彼女が知っているのはそこまでだった。
その試合がどんな内容だったのかも、試合後にどんな展開があるのかも知らないのだ。
それが最初から知らなかったのか、転生する過程で記憶が抜け落ちてしまったのかは今となっては知る術はないが、そんなことは些事でしかない。
重要なのはそこから先は未知の世界であるということ。
どんな展開が待っているのかもわからないのに、やれ原作がどうのこうのと言う話をしていても意味がない。
(ここから先は…あたしの好きにやらせてもらうよ)
三十九年──否、それ以上の時を待ち続けてきた。
これまで原作遵守を掲げて行動してきたが、もうその必要はない。
原作知識を持つ転生者ではなく、この世界に生きる一人の人間として、彼等に会う時がきたのだ。
「そんな硬い顔をしてどうしたルージュ」
「……いーや、なんでもないよ。ちょっと考え事をしていただけだから」
怪訝な表情を浮かべたビルスの声にルージュは悟られぬように誤魔化す。
流石に原作知識というある意味劇物と呼べるものを知られるわけにはいかない。恩人である彼に打ち明けることができないことにもどかしさを感じる中、二人の後ろに控えていたウイスが何かを思い出した様子で口を開いた。
「あっ…そうでしたルージュさん。実はあなたにお土産があるんですよ」
「お土産?」
「ええ、ブルマさんにお願いして会場で出されていた料理をいくつかお持ち帰りしてきたので宜しければ召し上がって下さい。どれも絶品ですよ」
「ホントッ!? さっすがウイスさん!」
思いもよらないサプライズにルージュはキラキラと目を輝かせる。
世界は違えど久しく食べてなかった故郷の料理だ。嬉しくない筈がなかった。
「おいウイス。ボクの分は?」
「ビルス様の分もちゃんとありますよ」
「それなら皆んなで一緒に食べようよ! 久しぶりに全員揃ってるしさ」
「そうですねぇ。でしたら予言魚さんの分も用意してますので呼んできてもらえますか? 私は飲み物を持ってきます」
「オッケー。予言魚さんは今頃散歩中かな…」
そうして、ルージュは予言魚の下に向かい、ウイスも飲み物を取りに行き、ビルスだけがその場に残された。
彼は欠伸をしながら仰向けに寝転がろうとするもピタリと動きを止めるとおもむろに立ち上がり、ある一点を見つめる。
視線の先には予言魚を呼びに向かうルージュが歩いており、彼は悪戯を思い付いた悪ガキのような表情を浮かべると右手の人差し指を彼女に向けた。
すると指先から紫色に光るビー玉サイズの気弾が現れ、指を曲げると
「フッ…」
ニヤリと口元を歪ませ、弾いた。
音もなく放たれた小さな気弾は彼女の後頭部目掛けて超高速で接近する。
人体を容易く貫く威力を込められた破壊神の一撃は文字通り瞬きの間に距離を詰めていき、後一秒とかからず着弾する距離にまで迫る。
そして──
「……」
「ほう…」
ルージュは不意打ちで放たれたビルスの気弾を
その様子にビルスは感嘆の声を漏らす。
「前よりも反応が良くなったな。どうやらボクが寝ている間に相当腕を上げたみたいだね…」
「…当然。三十九年もあったんだ。強くなるに決まってるじゃないか。
なんなら………ここで試してみるか? ビルス様」
気弾を潰した手を下ろすと、目を細め、挑発的な笑みで振り向く彼女に、ビルスはギラギラとした目付きで口角を吊り上げる。
「ククク…そんなことを言っちゃって良いのかい? お前、さっきまで仕事をしていたんだろ? 万全の状態で挑んだ方が賢明だと思うけどね」
「ハハ…あんなのはただの準備運動だよ。ビルス様の方こそゴッドと戦って消耗しているんだろ? 今あたしとやり合えば膝をつくことになるかもよ?」
「馬鹿言うんじゃないよ。この程度でボクが遅れをとるわけないだろ。寝言は寝て言うんだな」
「本当にそうかな…。あたし、
「…何?」
お互いが挑発し合い、ジリジリと距離を詰めて行く。
しかし、彼女の言葉に一驚したビルスは歩みを止めた。
「つまり…
「そう言うこと。まだウイスさんにも教えてないよ」
「……クク…ハッハッハッ!!! そうかそうか!
それは良い話を聞けた」
上機嫌に笑い声を上げる中、両者の距離が数メートルまで迫ったところでルージュも足を止めると息を合わせるように構えを取る。
二人は揃って口元を緩め、これから始まる"宴の時間"に歓喜の感情が胸の中で湧き上がっていた。
そして、ついに開幕の狼煙が───
「ビルス様! ルージュさん! 飲み物は冷たい方と温かい方、どちらが良いですか?」
「「冷たいのでッ!」」
上がることはなく、メラメラと炎のように燃え盛っていた戦闘欲はウイスの一声によって彼方へと消えていった。
師弟揃って食欲には勝てないのであった。
《補足》
Q:ビルスの強さはアニメ版と漫画版
どっちを基準にしているの?
A:この作品では漫画版をベースにしてます。
Q:ルージュはどうやって宇宙空間を移動しているの?
A:そこに宇宙空間を極超光速で移動する技を持つ天使が
おるじゃろ?つまりはそういうことじゃよ。
Q:界王神は魔人ブウの時にルージュに
接触しなかったの?
A:そもそも彼はルージュの存在を知りません。
だって無能神だし。
Q:原作と比較して頻繁に起きていたビルスに対して
界王神はどう思っていたの?
A:当時の界王神
「えっ…あのビルス様が頻繁に起きている。
怖っ…近寄らんとこ…」
大体こんな感じ。