転生したらサイヤ人だった件   作:ウイルス・ミス

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出会いは突然に

 

悟空とビルスの戦いから三ヶ月後。

 

破壊神の暮らす星──ビルス星にて、破壊神の弟子ルージュは今日も普段と変わらない日常を過ごしていた。

 

 

 

「そこまで!」

 

「…っ!」

 

「今回の修業はここまでにしましょう」

 

 

 

この日は偶々二人揃って手が空いていたので久しく行っていなかった組手をすることとなった。

しかし、休憩を挟んでいるとはいえ、既に半日以上の時間が経過していた為、そろそろ頃合いと判断したウイスの一声に彼に向けたルージュの拳がピタリと止まる。

 

 

 

「…ふぅーー。ありがとうウイスさん。修業に付き合ってくれて」

 

「いえいえ、お気になさらず」

 

(久しぶりに組手をしたけど攻撃は相変わらず当たらないし、疲れた様子も一切ない…。

わかってはいたけど、ホントに規格外だなぁウイスさんは…)

 

 

 

全身が汗まみれになり、軽い息切れを起こしている彼女とは対照的にウイスは息切れどころか汗一つかいていない。

ルージュは額にかいた汗を手で拭いながら彼の規格外っぷりを再認識する。

 

 

 

(流石は神の極意を修めた"天使"…。あたしじゃあどうやっても敵わない。

でも…だからこそ彼から学べることがある)

 

「それとルージュさん。今日は()()の日なのでシャワーを浴びたら自室に来て下さいね」

 

「…あっ…もうそんな日だったか」

 

 

 

思考に耽る中、ウイスが口にした検査という言葉。

今日は月に一度行われる、所謂"健康診断"の日だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、始めますよ。いつものように目を閉じてリラックスして下さいね」

 

「うん。宜しく」

 

 

 

一時間程経過した後、シャワーを浴び終えたルージュは自室のベッドの上で仰向けに寝転んでいた。

ウイスの言う通りに目を閉じてジッとしているとベッドの傍らに佇む彼がルージュの額にそっと右手をかざす。

すると手が淡い白色の光を纏い、額から顔、首へと慎重に動かしていく。

 

 

 

「……」

 

 

 

そして始めてから数十分後。

足先まで到達すると、満足げに頷き、かざしていた手を引っ込める。

 

 

 

「もう動いて結構ですよ」

 

「…ん。結果は?」

 

「何処にも異常はありません。至って健康体ですよ」

 

「……ウイスさん。この検査をするようになってからもう随分経つけど…そろそろこのペースでやらなくても良いんじゃないか?

せめて半年に一回とかさ」

 

「またその話ですか…。何度も言いますが、あなたの身体は不明瞭な点が多過ぎます。

欠落してしまった器官、寿命、そして()()()()()

今こうして何も起きていないことが不思議なくらいなんですから用心に越したことはありません」

 

 

ルージュの身に宿る特異性とは、謂わば生命が誕生するシステムから生じた一種の"バグ"のようなもの。

それ故に、ウイスの頭脳を持ってしても理解するのは困難を極めた。

 

今でこそ超サイヤ人3を常時化させることで自滅の危機はゼロに等しい。

しかし、(のち)に彼女の寿命、更に彼女しか持ち得ない特殊な気、という二つの特異性が明らかとなり、これによって何らかの不具合が起きる可能性は否定出来なかった。

 

尤も、ルージュの健康状態から考えると、その確率は限り無く低いとウイスは見立てているが、油断してかつての様に死にかけてしまっては目も当てられない。

そこでウイスとビルスが話し合った結果、設けることになったのが、この定期健康診断なのだ。

 

 

 

「……どうしてもダメ?」

 

「どうしても、です」

 

 

 

余談だがルージュは今の様に時折検査のペースについて苦言を呈することがあるが、ウイスも当初は問題が無ければ検査までの期間を伸ばしても良いと考えていた。

ところがビルスに提案すると──

 

 

 

『ダメだ。不確定要素がある以上、何が起こるか分からん。

何があっても必ず月に一度は検査をしろ』

 

『おや、ビルス様にしては珍しく慎重な意見ですねぇ』

 

『……おい、何ニヤニヤしているんだ。

勘違いするなよ。ボクが寝ている間に死なれたら目覚めが悪いだけだ』

 

『彼女の身を案じているのならそう言えば良いでしょうに…。

相変わらず素直ではありませんねぇ』

 

『喧しい!…兎に角、あいつから何か言われても絶対に変えるなよ。いいな?』

 

 

 

と、指示されているので、何度頼まれても変更するつもりは毛頭無かった。

 

だが、このことを伝えればルージュも納得するだろう。ついでに頬を緩めた彼女の顔も容易に想像できる。

しかし、そうすると今度はビルスがネチネチと文句を言ってくるのが目に見えてるので本人には黙っている模様。

 

 

 

「…ハァ。何でこんな身体で生まれちゃたのかなぁ…あたし。

まあ、そのお陰で強くなれたんだけどさ」

 

「特にあなたの保有する特殊な気の恩恵は相当なものですからね。

…思い返せば、あの日からもう百年程が経ちますか。

あの時は色々と大変でしたねぇ」

 

「……」

 

 

 

ルージュの気が変質した当時の記憶を思い出し、懐かしむような表情をするウイス。その一方で、頭の後ろで手を組んで寝転がるルージュは目付きが鋭くなり、明らかに不機嫌な様子で口を開く。

 

 

 

「……念の為に言っておくけど、あたしはあの()()()()()に感謝する気はこれポッチも無いからな」

 

「そんな事を言うつもりはありませんよ。それとドブネズミでは無く、()()()()です。

他所の宇宙とはいえ、相手は破壊神なのですから最低限の礼儀と節度は持つべきですよ」

 

「フン…あんなハダカデバネズミに敬意を払うぐらいなら死んだ方がマシだね」

 

「その名前は初めて聞きますが、余計に酷くなっていることだけは分かります。

そもそも何ですか、その珍妙な名前の生き物は」

 

「世界で一番醜いネズミ」

 

 

 

キテラとは、十二個存在する宇宙の一つ、第四宇宙を管理する破壊神の名前だ。

そして、ルージュの気が変質する原因を作った張本人であり、彼女がこの世で最も嫌う人物でもある。

 

 

 

「あのネズミ…今度ちょっかいかけて来たら、前歯をへし折って…八つ裂きにしてやる…っ!」

 

 

 

思い出したくもない記憶が脳裏に浮かび、沸々と沸き上がる怒りに呼応するように碧い瞳が金色へと変化する。更に全身から禍々しい赤黒いオーラが溢れ出し、部屋の家具がガタガタと揺れ始める。

 

 

 

(やはり…直すつもりはありませんか…)

 

 

 

彼女のキテラ嫌いは今に始まったことではない。しかし、破壊神に対してドブネズミ呼びは流石に問題がある為、これまで何度も注意してきたものの、改善の兆しは全く無かった。

 

自身が仕える(あるじ)に似て頑固な教え子に頭を抱えたくなるが、このまま放置していれば部屋が滅茶苦茶になるのは自明の理。

余計な仕事が増えても困るので、彼女の気を逸らす為に別の話題を振ることにした。

 

 

 

「…ところでルージュさん。あれから三ヶ月は経ちますが、悟空さん達に会いに行かないのですか?」

 

「え" 」

 

 

 

ウイスの言葉に湧き上がっていた怒りは一瞬で消え失せ、元に戻った碧眼を見開く。

 

 

 

「な、何でそれを…」

 

「あれだけ興味を持っていたんですからそれぐらいは分かりますよ。

ですが、あなたは未だに会いに行っていませんね。何か理由でも?」

 

「……えーと、いきなり会いに行ったら迷惑じゃないかとって思ってさ。

それでずっと悩んでいて会いに行けなかったんだよ」

 

「…は、はい?」

 

 

 

先程までの怒りを溜め込んだ形相とは打って変わり、少し恥ずかしげに頬をかきながら答えるルージュに、ウイスは心底意外といった様子で視線を向けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた…そんなシャイな性格ではないでしょう。

何故今更そんなことを気にしているんですか?」

 

(いや確かにそうだけど! こればっかりは仕方ないんだよ!)

 

 

 

アポ無し訪問は今まで破壊神の代行業で散々やってきたこと。

故に彼の疑問はもっともな物だが、ルージュにとっては話が全く違う。

 

何せ、訪問先はあの孫悟空達の下だ。

数えるのが馬鹿らしくなるほどの時を経て、漸く訪れた機会。

しかし、いざ地球へ向かおうとすると『いきなり会いに行って本当に大丈夫なのか?』という不安に駆られてしまうのだ。

 

彼らの性格を考えれば無用の心配だと自覚しているのに、あと一歩踏み出すができない。

そうしてあれやこれやと悩み続け、気が付けば三ヶ月も経ってしまったというわけだ。

 

 

 

「ま、まあ、こっちにも色々事情があるんだよ」

 

「はあ…事情ですか。よくは分かりませんが、あまり深く考えなくても良いと思いますがねぇ」

 

「と、兎に角! もう少ししたら踏ん切りがつくと思うからさ。

この話はここでお終い。はい解散!」

 

 

 

これ以上は前世の話しが関わってくるので、下手に喋るとボロが出かねない。

そうなっては流石に不味いと判断し素早くベッドから起き上がると、そそくさと部屋を退室するのだった。

 

「…ふむ」

 

 

 

 

 

 

それから数日が経ったある日のこと。

 

この日は破壊神の代行業は無く、ウイスは出かけているので不在。

やることが無く完全に暇だったので、ルージュは外で瞑想をして過ごしていた。

 

因みにビルスは何をしているのかというと休眠である。本来であれば休眠期に入るのはまだ先の筈だが、これには事情がある。

 

実は以前ウイスが持ち帰ってきた地球の料理を全員で食べていたところ、ルージュ達が目を離している間に寿司と一緒に付いてきた山葵の塊を丸ごと食べてしまったのだ。

 

あまりの辛さに涙を浮かべ、顔を真っ赤に染めたビルスは大声を上げながら暴れ始め、危うく周囲の星を破壊し尽くすところだったが、ルージュとウイスの連携プレイにより一つも破壊せずに彼を抑えることに成功する。

 

だが、無理矢理抑えた影響でそのまま休眠する運びとなり、今も自室のベッドの上で呑気にいびきをかきながら眠っている。

 

 

 

「…っ! ウイスさんが帰って来たか」

 

 

 

瞑想で時間を潰している中、ウイスの気を感知したルージュは出迎えに向かうと彼とは別に()()()()を感じ取る。

立ち止まり首を傾げるも、大方彼が連れて来た客人だと思い、失礼がない様に気を引き締めているとウイスが地上に降りて来た。

 

 

 

「おや、出迎えありがとうございます」

 

「おかえりないウイスさん。お客さんを連れて来るなら出掛ける前に言って………は?」

 

 

 

出迎えの言葉を掛けながら駆け寄るが、ウイスの背後にいる人物を見て思わず立ち止まってしまった。

それどころか口を開けたまま、限界まで目を見開き言葉を失ってしまう。

 

 

 

「……ア…ア、ああ…ア…」

 

 

 

絶句するルージュの視線の先にいる二人の客人。一人は黒髪で特徴的な髪型に山吹色の胴着を着込んだ見覚えしかない男。もう一人は隣の男と同じ黒髪に逆立った髪型をした青と白の戦闘服を着たこれまた見覚えしかない男。

 

二人は石のように固まるルージュを信じられないものを見る目で凝視していた。

 

 

 

「お、おめえがビルス様の弟子…」

 

「な、なんだ…この馬鹿げた量の気は…っ!?

あの時の魔人ブウが可愛く見えるぞ…」

 

「なな…な、な、なな…なん…で」

 

 

 

あまりの予想外の展開に過去一番の衝撃を受ける中、震える口元を必死に抑えて絞り出すように疑問を口にすると、してやったりと言いたげな顔をしたウイスが口を開く。

 

 

 

「というわけで、連れて来ました」

 

「どういうわけっ!!??」

 

 

 





《補足》

⚫︎神の気について

原作ではクリアで質が高い、気を表面に出さない、といった特徴が挙げられていますが、それ以上のことはよく分かっていません。(私のリサーチ不足の可能性もありますが)
たまにネットで神の気には神の気でしか対抗出来ない、などといった記述を見掛けますが、当作品では神の気は通常の気よりも上位の気として扱いますが、絶対的なものではありません。
実力が上であれば相手が神の気を使おうと上回ることができる、といった感じですね。


⚫︎ハダカデバネズミ

アフリカに生息する数十から数百匹の大規模なコロニーを形成して生活する完全地中棲の哺乳動物。
見た目については名前が全てを物語っている。
一説では某珍獣ハンターが出演する番組で取り上げられ、一気に知名度が上がったとか何とか…。
人によって醜い派と可愛い派に意見が別れる模様。
因みに私は醜い派です。
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