お久しぶりです。やっと時間に余裕ができたので何とか最新話を執筆することができました。
デメリットを取っ払った精神と時の部屋が欲しい……。
二人のサイヤ人の激闘からしばらくしたのち、ベジータが負った傷はウイスによって治癒されているものの、未だに意識は戻っていない。
といってもウイスによると、原因は体力の消耗、つまり疲労によるものなので、直ぐに目覚めるだろうとのこと。
「ならベジータはもう大丈夫だな。……そんじゃあ」
戦いは終わり、これでひと段落──
「オラともやろうぜ、ルージュ」
とはならなかった。
だが、それは当然だろう。気を解放せずにフルパワーの超サイヤ人3のベジータを相手取り、傷一つ負わずに一蹴してみせたサイヤ人。
そんな光景を目の当たりにした
「ハハ…悟空ならそう言うと思っていたよ」
「悪りぃな。本当はベジータが先に戦ったから明日にでも頼むつもりだったんだけどよ。さっきのおめぇ達を見てたら身体がうずうずしちまってさ。治まりそうにねぇんだ。
だからよ、オラの頼み、受けてくれるか?」
「勿論。寧ろ大歓迎だよ。ウイスさんも別にいいよね?」
「ええ、構いませんよ」
ベジータに続いて悟空からの申し出。当然彼女が断る理由はない。待ち望んだいた展開にニコリと笑みを溢し、二つ返事で了承したルージュは、悟空と共に湖から離れた草原に場所を移すと互いに距離を取り、戦闘態勢に入る。
そして───
「ハァァッ!!!」
悟空は己の気を解放する。しかし、それは従来の超サイヤ人とは異なり、どこか神々しさを感じさせる
予想外の変化に目を見開くルージュを他所に悟空の髪色、更に、瞳が黒から赤へと変化する。
「……超サイヤ人ゴッド」
「ああ、ちょっと前までは上手くいかなかったんだけど、今はコツを掴んで自由に変身できるようになったんだ」
「…この短期間で…しかも自力で?」
「へへ、おめぇの話を聞いてからずっと修業してたのはベジータだけじゃなかったってことさ」
得意げに語る悟空にルージュは驚愕した。記憶通りなら、今の時点ではゴッドの力は持っていても自力での変身は不可能な筈だった。
神の気とは、その名の通り人間よりも上位の生命体である神々の力であり、通常の気とは違って扱う難易度は遥かに高い。いくら会得したところで闇雲に修業しただけで制御できる力ではないのだ。
それを彼は一度だけゴッドになった経験を活かして、独学でコントロールする術を身につけ、儀式をせずに任意での変身を可能にした。
あのビルスが素直に称賛した通り、彼はまごうことなき天才だったのだ。
「……フフ」
その事実を痛感した彼女の内面は驚愕から歓喜へと一変し、口元がニヤけるのを止められない。
前世はごく普通の一般人だったとはいえ、この世界にサイヤ人として転生してから二百年余り。彼女の心はサイヤ人の根幹に根付く闘争本能に染まり切っており、強い者を目にすれば、喜びを感じずにはいられないのだ。
「…アハハハ! いいねいいねぇそう来なくちゃ!
最高だよ悟空! ならば、あたしも──」
ここでルージュも初めて己の気を解き放つ。
そして──
「な……ッ!?」
悟空の目の前に───雷霆が落ちた。
「……こいつは、ヤベェな…」
爆発的に増大した気は嵐の如く荒ぶり、大気が揺れる。
冷や汗を流す悟空が見つめる先には黄金に輝く雷光と青白い稲妻を纏うルージュが佇んでおり、その姿はまさに雷の化身。
彼女から感じる莫大な気を前に、悟空は驚きを隠せなかった。
「それが超サイヤ人3を極めた…本当の姿ってことか…」
「その通り。まあ、あたしにとってはただの超サイヤ人になっている感覚だけどね」
「……本当に底が知れねぇな。まるでビルス様を相手にしているみてぇだ」
「アハハ! それ、あたしにとって最高の褒め言葉だね」
二人は示し合わせたかのように構えをとる
未だに冷や汗が止まらない中、悟空は闘争心をむき出しにした表情で口を開く。
「前にビルス様が、おめぇに会ったら気が済むまで手合わせしろって言ってたからさ、最後まで付き合ってもらうぞ!」
「ビルス様ったら…そんなことを言ってたんだ…。
…いいよ、全力で来な!」
ルージュの言葉を最後に、両者共に地面を蹴る。あまりの脚力に地面が陥没し、音すらも置き去りにした速度で突っ込み、拳を振りかざす。
そして、二人の拳がぶつかった瞬間────大気が爆ぜた。
「おやおや…。ルージュさんったら、いつにも増して楽しんでいますねぇ」
戦場から離れた場所で、両手を後ろに組みながら眺めていたウイスがポツリと呟く。
遠方の空では、地上から空中戦に切り替えたルージュと悟空が激戦を繰り広げており、黄金の雷と真紅の炎が神速とも言える速度で幾度となくぶつかり合い、空間を歪ませていた。
激流の如く苛烈な動き、軌跡を描きながら繰り出す悟空の拳打。稲妻を帯びた大気を震わす強烈な拳撃を連続で打ち込むルージュ。
お互いに一歩も引かずに殴り合っているが、二人の表情は対照的だ。何故なら、必死の形相で挑む悟空に対して、ルージュは笑っていたのだ。
その様子から彼女が悟空との戦闘を心の底から楽しんでいる意思は伝わってくる。しかし、ウイスにはそれとは別に、待ち焦がれていた憧れのヒーローを前に目を輝かせる幼い子供のような印象を受けた。
彼とは初対面の筈なのに何故そのような表情を浮かべるのか。それはわからないが、いずれにしても───
「悟空さんとは良き友になれそうですね」
ルージュは今までビルス星で過ごし、外出するにしても基本的に破壊神代行の仕事関連。そのせいか友人と呼べる者はほぼいないと言っていい。
尤も、彼女の長命という体質上、
そういった背景もあり、ウイスは悟空に対して密かに感謝の念を送った。
「…勿論、あなたとも良い関係になれると思いますよ、ベジータさん」
「………フン」
ウイスが後ろを向けば、そこには先程まで気絶していたベジータが、腕を組みながらルージュ達の戦いを眺めていた。
「怪我はひと通り治しましたが、気分はどうですか?」
「おかげさまで問題ない。それよりもアイツらが闘り始めてどれくらい経った?」
「十分近くは経過しましたね。悟空さんはまだ神の気を完全には制御できていないというのに彼女相手によく奮闘しています。
ですが、そろそろ限界が来そうですね…」
「…超サイヤ人ゴッドの力を持ってしてもルージュには勝てないと?」
「ええ。ゴッドの力を取り込んだとはいえ、今の悟空さんでは困難です。
完璧に制御できるようになれば、あるいは…」
「それは今のルージュが相手ならの話か?」
「……と言いますと?」
「奴は本気を出していない。まだ何かある筈だ。
あの破壊神が一目置く程の何かがな」
ベジータにとっては屈辱的ではあるものの、ルージュの超サイヤ人3の力は常軌を逸しており、恐ろしく強い。仮に自分がゴッドに覚醒しても勝てるとは断言できない程に。
それだけの強さを秘めているというのに、ベジータには悟空に合わせて力を抑えているようにしか見えないのだ。
加えて、あのビルスが素直に実力を認めていることを考慮すると、恐らくは今の超サイヤ人3すら超える形態を隠していると当たりをつけていた。
「…なるほど。…それについては、いずれ時が来れば明らかになるでしょう。
今は彼女の力よりも、神の気の会得に集中するべきですよ」
「言われずともそのつもりだ。いずれゴッドの力すら超えて…オレが受けた屈辱を倍にして返してやる!」
指導するにあたって人一倍プライドの高いベジータでは、ルージュとの実力の差を意識する余り、空回りしてしまうのではという懸念があった。
しかし、当の本人は今の状況を冷静に受け止め、敗北で味わった悔しさを糧に、良い意味で意気込んでいる。
(ふむ…これだけやる気があるのなら、修業の内容を少しばかり厳しくしても良さそうですね…)
彼の様子から己が抱いた懸念は杞憂だったと判断したウイスは、今後の修業の難易度を僅かに引き上げることにした。更にどうせならと悟空の修業もベジータと同様の内容にすることになったのだが、これに関しては完全に巻き添えである。
後に、その内容を聞いたルージュは「うっわー……」と声を漏らしながら、心の中でひっそりと合掌するのだった。
「…………それにしても…奴の気は…」
「おや? どうかしましたか?」
「……いや、なんでもない…」
(さっき戦った時は気付かなかったが…
あれはただの気ではないな。
…別の力が混じっているのか…?
だが…なんだ…?
何なんだ、一体…)
「でりゃあああッ!!!」
「オッラァァ!!!」
もう何度目かもわからない、掛け声と同時にぶつかり合う二つの拳。
ゴッドの力を駆使し、果敢に挑んでいた悟空だったが、その勢いは徐々に落ち始めていた。
「どうしたどうしたぁ! ペースが落ちてきているぞ!」
「ぐぅ……ッ!?」
戦闘前とは打って変わり、ルージュは野生味のある笑みを浮かべながら乱暴な口調で殴りつける。
彼女から繰り出される怒涛のラッシュを拳と蹴りで迎え打つも、全てを抑え切れず、被弾が増えていく。
「あたしはまだ満足していないんだ!
もっと悟空の力を見せてよ!
あたしをもっと…楽しませろぉ…ッ!!」
「なんか性格変わってねぇか!?」
彼女の変わりように悟空は思わずツッコミを入れる。
出会った当初は何処となく地球人に似た雰囲気を感じていたのに、今の彼女は悟空がよく知る、好戦的なサイヤ人そのものだった。
元々は悟空の戦闘欲を解消する為の戦いが、いつの間にか、ルージュを満足させる為のものに変わっていた。
「そら、まだまだいくぞ!」
「くッ! …それなら」
ダメージは蓄積しているものの、まだ致命的なものではない。防御の構えを解くとゴッドによって強化された俊敏性を活かして、ルージュの連撃を紙一重で躱す。
「うおおりゃああ!!」
懐に入ると、すかさず右手を握り締め、渾身を力を込めて拳撃を打ち込む。
しかし───
「…ッ! 中々やるね…ッ!」
(手応えが薄い…ッ! 岩でも殴っているみてぇだ…)
悟空の拳打はルージュの腹部に直撃するも、ほんの僅かに怯ませただけでロクなダメージを与えられなかった。
超サイヤ人3を維持する為に鍛え抜かれた強靭な肉体は、謂わば彼女自身を守護する鎧そのもの。その防御力はゴッドとなった悟空でさえ突破することはできなかった。
(ルージュの奴、疲れている様子もねぇ。
それどころか気の量が増えてきてやがる。
そろそろ仕掛けねぇと不味い──)
「ぼさっとしている場合?」
「しまっ…ガハァ──ッ!?」
思考に耽る中、ルージュの膝蹴りが悟空の腹部に突き刺さる。マトモに入ったことで体がくの字に折れ曲がり、木の葉のように吹き飛ぶ。
更に両手から青白いスパークを発生させると、稲妻の軌跡を描きながら悟空に向かって突貫する。
「くぅ…ッ! こうなったらやるしかねぇ…
かめはめ──」
打たれた箇所から走る激痛を無視して、素早くかめはめ波の構えを取り、エネルギーが即座に充填されるも、既にルージュは目前まで迫っていた。
そして、バチバチと音を鳴らし、激しいスパークが迸る両手を容赦無く突き出す。
「良い判断だね。でも、あたしの方が速い!
(……今だ──ッ!)
悟空は敢えて構えを解かず、ギリギリまで引き寄せたところで一か八かの賭けに出る!
「──ッ!?」
悟空の姿は一瞬でかき消え、稲妻は空を切った。
そして、姿が消えた悟空はルージュの背後に出現した。
彼が行ったのはかつてヤードラット星人から教わった、他者の気をアンカーにしてあらゆる距離を飛び越え、瞬時に移動する技術。即ち、瞬間移動である。
彼はもしもの時の切り札として、この技を温存していたのだ。
(よし、取ったぞ──!)
瞬間移動を用いたゼロ距離からのかめはめ波であれば確実に当たる。
そう確信した悟空は両手をすかさずルージュに向ける。
しかし───
「──フフ」
「な…ッ!?」
完璧に不意を突いたというのに、即座に振り向くと右手をかざしたのだ。その様子から自身の作戦が完全に読まれていたことを悟った。
唖然とする悟空を見つめながら、ルージュはしてやったりという顔でゆっくりと口を動かした。
「捕 ま え た」