転生したらサイヤ人だった件   作:ウイルス・ミス

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先月、公開が当分先になると思っていたとあるアニメ映画の予告映像が解禁され、今年中に公開すると告知された影響でちょっとハイになってしまいまして…。
そのおかげか執筆が進んで想定よりも早く投稿できました。
執筆速度って気分によってここまで差が出るんだなと自分のことながらびっくりしています。




神の領域へ

 

破壊神ビルスとの戦いをきっかけに知ることとなった超サイヤ人ゴッドという新たなステージ。そして、その先の領域に至る為に巧みな交渉術を駆使(食べ物で買収)して破壊神の付き人であるウイスに弟子入りした悟空とベジータ。

同じサイヤ人であるルージュという新たなライバルの前に敗北を喫したことにより、烈火の如く闘志を燃やしていた二人だったが、ウイスによる修業は想像以上に過酷なものだった。

 

 

「はっきり申し上げて、今のままでは神の気を会得したところで十全に力を発揮させることはできません。扱う上で必要な要素が欠けているからです。悟空さんの超サイヤ人ゴッドが不完全なのもこれが原因ですね。

あなた達に必要なのは基礎の部分、謂わば下地です。これから行う修業は神の気の会得では無く、あくまで神の領域に踏み込む為の下地作りであることをご理解下さい」

 

 

ウイスに案内されてやって来たのはビルス星の外縁部。そこには両腕を通す為の輪っかが付いた四角い物体が置かれていた。

 

 

「それでは、あなた達にはこれを付けてもらいます」

 

「…重りか」

 

「へぇー。これを付けて修業するのか」

 

 

一見すると何の変哲もない重り。二人にとって重りを付けた修業は馴染みのあるもの。内心では簡単な修業だと高を括っていたが、輪っかに腕を通して持ち上げようとした瞬間、その考えは誤りであることを思い知った。

 

 

「な、何だこれ…めちゃくちゃ重いぞ!?」

 

「く…ッ! 何なんだこの重さは…ッ!?」

 

 

歴戦の戦士である二人でさえ持ち上げることが困難な重さ。前屈みの姿勢で必死に両腕を上げようと奮闘するも、重りはうんともすんとも言わず、ただ時間だけが過ぎていく。

 

 

「くぅーーーッ!! あ、上がれぇぇええ!!!」

 

「うう……うおぉぉぉおおおお……ッ!!!」

 

 

そして二十分以上が経過して漸くコツを掴んだのか、ほんの数センチではあるが、持ち上げることに成功する。この時点で既に滝のような汗を流し、息を切らしていた。

それでも確かな達成感を感じ、二人は口元に笑みを浮かべる。

しかし、これはまだ序盤も序盤。スタートラインにすぎない。

 

 

「そのままこの星を一周走って下さい」

 

「「え!?」」

 

 

あまりの鬼畜な内容に絶句する。持ち上げるだけでやっとの状態で、この広いビルス星を走れと言われれば無理もない。だが、自ら望んで弟子入りしてきた以上、ウイスは手を抜くつもりはなかった。

 

 

「ほら、早くしないと地面が無くなりますよ」

 

「げぇ!」

 

「じ、地面が…」

 

 

後ろの地面が一定間隔で消えていくのを目にした二人は慌てて走り出そうとするも、重すぎるせいで移動速度は歩いている時とほぼ変わらない。着々と消える地面が迫る中、ウイスが更なる追い打ちをかける。

 

 

「落ちてしまえば異次元に放り出されて、二度と帰って来れなくなりますよ」

 

「じょ、冗談だろ!?」

 

「チィッ!……クソッタレがああ!!」

 

 

自分達の生死に関わるとなれば、何が何でも走り切るしか道はない。それを理解した二人は歯を食いしばり、苦痛の表情を浮かべながら、死に物狂いで走り続けた。

 

その後、悟空とベジータは無事に走り切ったものの、疲労困憊で立ち上がる気力すら無く、しばらくの間は死人のように地べたに横たわっていた。

 

 

「もう…限界だ……動けねぇ…」

 

「ハァ…ハァ……まさか…これ程とはな…」

 

「二人ともお疲れ様です。本日はここまでにしましょう。

明日はもっと厳しい修業になりますので、体をよく休ませるように」

 

 

こうして連日に行われる命懸けの修業で満身創痍になる日々。

だが、彼等のやることは何も修業だけではない。その中には家事労働も含まれている。ビルス星の管理で忙しい中、時間を割いて悟空達を指導しているのだから当然の道理である。

では、どんなことをするのかと言えばその日によって様々だ。

 

ある時は寝相が壊滅的に悪いビルスが眠るベッドのシーツと毛布の交換を任され───

 

 

「痛てぇ! ビ、ビルス様本当に寝てんのか? 振り解こうとしてもびくともしねえぞ」

 

「い、いいかカカロット、そのままビルス様を抑えていろ。オレがシーツを交換する」

 

「早くしてくれベジータ! このままじゃオラが保たな──痛ってぇ!!」

 

「大声を出すな! 今やらなければ次のチャンスがいつになるか…」

 

「ハァクション…ッ!!」

 

「「あっ…」」

 

 

またある時は広大な庭の草むしりを任され───

 

 

「はあ、やっと終わったー。流石にこの広さは疲れちまうな」

 

「同感だ。だがこれでしばらくはやらずに済むだろう」

 

「残念ですが明日にはまた生えてますよ」

 

「「えっ…」」

 

 

またまたある時は大量にある謎の小さなガラス鉢の清掃を任され───

 

 

「駄目だ…。数が多すぎて終わんねぇぞ」

 

「チィ…。壊れやすい所為でやり辛い。これだといつ終わるか…」

 

「因みにルージュさんなら三十分程度で終わらせてますよ」

 

「「はあ!?」」

 

 

その後も波瀾万丈の生活は続いたが、ウイスによる修業の成果は着々と現れていた。

尤も、実力が上がれば、それに比例して修業の内容も厳しくなり、苦悶に満ちた声を上げることになるのだが、それは仕方がないことだ。厳しくしなければ修業にならないのだから。

 

 

「それでは重りを付けて星を一周して下さい。前回よりも重くしてあるのでご注意を」

 

「お、重てぇ…ッ! 折角慣れてきたのに…」

 

「ぬう!? い、今までのようにはいかないか」

 

「ハイ、スタート」

 

「「ううおおりゃああああああ…ッ!!!」」

 

 

そして今日もまた、ウイスによって徹底的にしごかれるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、今日もやってるやってる」

 

 

一方、修業に励む二人を遠方から眺める者達がいた。

 

 

「懐かしいなあ、あたしもよくやらされたよ。それで終わったらいつもぶっ倒れてたっけ」

 

「あー、お前にもそんな時があったなあ」

 

 

懐かしむように話すのは、城の屋根の上で胡座をかいて座るルージュと彼女の隣でプカプカと浮かぶ、水で満たされたガラス鉢に入った小さな青い魚。

この人語を話す魚の名前は予言魚。その名の通り、予言する能力を持った魚で、ルージュにとって幼い時からの付き合い──謂わば友人である。

 

 

「……前から思ってたけど、此処も随分賑やかになったよな。たった二人増えただけなのに」

 

「確かに。けどお前が来た時も大分騒がしかったぞ」

 

「え? あたしってそんなに煩かった?」

 

「いや、煩かったのはビルスの怒鳴り声」

 

「………因みにその原因って」

 

「お前の泣き声」

 

「……今度美味しいものがあったらお土産にして渡そっと」

 

「今更だと思うけどな。あっ、お土産ならこっちにもくれ」

 

「フッ…。はいよ」

 

 

ちゃっかりしているなと思いつつも軽く笑みを溢しながら二つ返事で了承する。

昔から変わらないこの何気ない会話が、彼女の楽しみの一つでもあるのだ。

 

 

「んーー。それにしてもウイスの奴、容赦ないなあー」

 

「容赦ないって…悟空とベジータの修業が?」

 

「ああ。あのままだとアイツら…ほんとに死んじゃうぞお」

 

「大丈夫だよ。ウイスさんはその辺をちゃんと考えて修業させているから」

 

「ほんとかー?」

 

「ほんとほんと。だって…」

 

「?」

 

「あたしの時もそうだったから」

 

 

かつての自分もウイスの修業で幾度となく死にかけてきた。だが、それは身体の奥底に眠る潜在能力を目覚めさせる為に必要なプロセスだからだ。極限まで追い詰めることで生存本能を刺激し、普段は表に出ない力を引き摺り出す。そして身体を十分に休ませ、再び追い詰める。これを繰り返して力が発揮された状態を身体に覚え込ませるのだ。

こうすることで基礎能力を向上させ、神の気を扱う為の下地を作る。

強引かつ危険なやり方ではあるが、これが最も早く最も効率のいい方法でもあるのだ。

 

 

「フーン…。お前がそこまで言うのなら大丈夫か」

 

「でも珍しいね。予言魚さんがそこまで心配するなんて」

 

「アイツら来てからおやつが増えた。だから死なれると困る」

 

 

他人には無関心気味な予言魚が珍しく気遣っているかと思えば、その理由は単におやつが減るからという私欲に塗れたもの。確かに悟空達が死んでしまえば修業の代価である地球の食べ物が食べれなくなってしまうとはいえ、なんともあんまりな理由だった。

 

「地球の食べ物は美味いから、アイツらにはもっと頑張ってもらわないとな」

 

「アハハ! 相変わらず予言魚さんはドライだね」

 

 

いっそ清々しいまでの薄情ぶりにルージュは思わず笑ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「さて…」

 

 

その後も悟空達の修業を眺めながら昔話に花を咲かせていると、ルージュが真剣な表情で予言魚に向き合う。

 

 

「昔話はこのあたりにして、そろそろ勝負の決着をつけようか」

 

「おっと、そうだったな」

 

 

楽しげに話していた時とは一変して険しい顔つきになると、床に伏せていた"あるもの"を手に取る。

そして、一際鋭い目つきで見つめながら重々しい雰囲気で口を開く。

 

 

「最後にもう一度確認するよ、予言魚さん」

 

 

彼女がここまで真剣に語る勝負、それは───

 

 

「この()()()()で負けたら、勝った方に今日のおやつを譲る。この条件に二言はないな?」

 

「ない」

 

「ならばよし!」

 

 

おやつを賭けたポーカー(ただのゲーム)であった。

 

 

「どっちから出す?」

 

「じゃああたしから」

 

 

因みにゲームの内容はポーカーによる三番勝負で、現在は三戦目。一戦目は敗北したが、二戦目は勝利しているので、このまま二連勝すればルージュの勝ちとなる。

 

 

(フッフッフ……悪いな予言魚さん)

 

 

表では表情を変えずに内心笑みを浮かべながら、ルージュは己の手札を見る。

トランプの絵柄は右からハート、クラブの7、スペード、ダイヤ、ハートの10。

つまり───

 

(フルハウス! この勝負、あたしの勝ちだ!)

 

 

この局面で0.14パーセントの確率を引き当てた幸運。まさに『勝ったな。風呂入ってくる』の状況だ。

負ける可能性など微塵も抱かず、勝利を確信しながら床に叩きつけるように手札を置く。しかし───

 

 

「お前の負けだ」

 

「な…!?」

 

 

現実は非情である。

 

 

「残念だったなあ。約束通りおやつは貰っていくぞ」

 

「いやおかしいだろ! なんでこのタイミングでストレートフラッシュを引くんだよ!?」

 

 

あろうことか予言魚の手札はストレートフラッシュ。フルハウスの更に上の役で、その確率は0.0014パーセント。数字からわかる通り滅多に見れる役ではない。

 

 

「イカサマ! 絶対イカサマだ!」

 

「えぇー、そんなことしてないぞお。そもそも証拠はあるのか?」

 

「くっ! た、確かに証拠はない…」

 

「じゃあ貰っても問題ないよなあ。今日は地球で大人気のスイーツみたいだから楽しみだなあ」

 

「ハアァァ!? そんな話聞いていないよ!」

 

 

思わぬ情報にルージュは素っ頓狂な声を上げた。おやつも含めビルス星で出される食事は宇宙基準で言えば最高級なものでどれも非常に美味しい。だが、地球の食べ物はそれらを一蹴してしまう美味さを秘めている。

以前に超サイヤ人ゴッドの件でウイスが持ち帰ってきた料理を食べた際、涙を流しながら『うまい……うまい…』と呟く美味いbotに成り果てるほどだ。

そんな料理が一般的に食されている地球で大人気のスイーツとなれば、その味は計り知れない。

事前に知っていれば賭けをする気も起きなかっただろう。

 

 

「というかなんで知ってんの?」

 

「ウイスからこっそり聞いた」

 

「……まさか、それを狙って勝負をふっかけて…」

 

「さて、そろそろ散歩に行ってくるか」

 

「…ちょっと待った!」

 

「なに?」

 

「せめて半分だけ分けてくれない?」

 

「やだ。それだと賭けた意味がない」

 

「まあそう言わずに。半分が嫌ならちょっとだけでいいからさ。親友(マブダチ)のささやかなお願いくらい聞いてくれよ」

 

 

約束を反故にしていることは重々理解しているが、せめて味見程度は許される筈だ。二百年以上にわたって培ってきた友情を信じて、ルージュは両手を合わせてお願いする。

 

 

「あげるわけないだろ」

 

「───」

 

 

しかし、返ってきた言葉は拒否。それも即答だ。迷う素ぶりも一切見せず、『なあに言ってんだお前?』と言わんばかりの顔で言い放った予言魚の言葉にルージュはピシリ、と石のように固まった。

 

 

 

「じゃ、後でおやつのことはウイスに伝えておくから。

バイバーイ」

 

「……………………こ……の…」

 

 

俯きながらプルプルと震えるルージュを気にも留めずに颯爽と去っていく予言魚。二百年以上の友情はたった一言で呆気なく崩れ去った。

 

 

「こんの薄情モンがあぁぁぁ───ッ!!!」

 

 

さようなら友情、こんにちは報復心。勢いよく顔を上げると右手の中指を立て、憎き小魚に向けて煮えたぎる怒りを込めながら叫ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやくこの時が来ました…」

 

 

修業を始めてから数ヶ月の時が流れ、悟空とベジータが神の領域へ進む一方、とある宇宙船の中ではニタリと不適な笑みを浮かべる白い影が、星々が煌めく(そら)を見上げていた。

 

 

「待っていなさい、孫悟空…。そしてベジータ。私をこんな目に合わせた代償はあなた達の命で支払って頂きますからね…!」

 

 

かつて第七宇宙の多くの星を侵略し、数多の命を奪い、人々を恐怖で支配した悪の権化。悟空達の活躍によってあの世に幽閉されていた男は、憎悪の炎を宿らせた復讐者となってこの世に帰還を果たしていた。

 

 





ルージュ

フルハウスを引けてヒャッハーしてたのにストレートフラッシュで撃沈した敗北者。イカサマ無しの純粋な運のみで引き当てたのにこの始末⭐︎
あの小魚にはいつか然るべき罰を与えねばと報復計画を画策している模様。
尚、予言魚との友情崩壊は割としょっちゅう起きていて、忘れた頃には修復しているのでビルスとウイスにとっては『ああ、またか…』程度の認識。
ウイスが持ち帰ったお土産を食べて涙を流していた原因の八割は懐かしい味に感動していたから。二百年ぶりの故郷の味なんだから仕方ないね。
まだ地球には行っていないが、既に踏ん切りはついているので、"あるタイミング"に合わせて遊びに行く予定。



予言魚

ルージュが賭けに乗るようにあえてスイーツのことを伏せて勝負をふっかけた鬼畜野郎。おやつを食べている間、暗殺者のような目で睨まれていたが、本人はどこ吹く風で見せつけるように味わいながら完食した。
勝負の最終局面でストレートフラッシュを引いたが、これに関しては完全にイカサマ。後日、トランプに細工していることがルージュにバレてブチ切れられた。
食べ物の恨みの恐ろしさをまだ知らない…。
ルージュが住み始めた当初はビルスが気にかける珍しい人間程度の認識だったが、現代ではすっかり気に入っていて、よく揶揄ったり、煽ったりして反応を楽しんでいる。



悟空

ウイスの下で修業した甲斐もあって無事ゴッドの安定化に成功し、変身時間と戦闘力が大幅に向上した。今では更なる力を覚醒させ、毎日猛特訓中。
ルージュの存在もあって原作以上に修業に励んでいて、何気に新ブロリー戦で披露したゴッドバインドも習得している。



ベジータ

悟空以上に闘志を燃やす男。理由は言わずもがな。ビルス戦でゴッド化している影響で悟空より出遅れていたが、修業を始めてから僅か一ヶ月でゴッドに覚醒したすごい奴。ウイスから夜はよく寝て体を休ませるように言われていたが、言いつけを破ってコソ練していた。ビルス戦以降一番努力したのは間違いなくこの男。今では悟空に追い付き、ゴッドの先の領域に到達した。



ビルス

いまだに就寝中。自身の付き人が買収されたことも、悟空とベジータが修業していることも知らない神様。起きるのはもう少し先の話。



復讐者

ひそかに復活を果たしていた悟空達と因縁のある男。イッタイナニモノナンダロウナー。
もしかしたら煙草の名産地の星を襲ったり、ズルズルボールを持っている宇宙人かもしれない。


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