転生したらサイヤ人だった件   作:ウイルス・ミス

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もう感想と評価が来ていて変な声が出ちゃいました。いつの間にかお気に入り数も増えていてビックリです。大変励みになりますので今後も宜しくお願い致します!



蘇る記憶

 

破壊神ビルスに拾われ、彼等の住処である宮殿がそびえ立つ、通称"ビルス星"にて新たな住人として加わることになったサイヤ人ルージュ。

元々はビルスとウイスの二人しか住んでいなかったこの星は基本的に静寂に包まれており、騒がしくなることは滅多に無い。しかし、彼女が来て暫くの間はビルスの怒号が幾度となく響き渡っていた。

というのも───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コラァァッ!!!なに破壊神様の顔に小便吹っかけているんだッ!!汚ったないだろうがッ!!」

 

「ビルス様が顔を近づけ過ぎたのがいけないんですよ。もっと離してからオムツを取り替えて下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぎゃあああ!!!!!ぎゃあああぁぁいあああいやあぁぁぁあああ!!!!!」

 

「ダァァァァァァッ!!!!!!うるっせェぞォォォーーーーーーォッ!!!!ボクの昼寝を邪魔するんじゃなぁぁぁいいィィッ!!!!」

 

「お腹が減っているから泣いているんですよ!呑気に寝てないで手伝って下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいウイスッ!!!ルージュのやつ全然泣き止まないぞッ!!なんとかしてくれッ!!」

 

「ホンギャアァ〜!!ホンギャア~!!」

 

「抱き方が悪いんですよ!それじゃあ逆さまです!」

 

 

 

 

破壊神として生きてきた彼が子守をしたことがある筈もなく毎日のようにルージュの世話に右往左往する日々が続いた。赤ん坊の面倒なんて大したことないだろうと、たかを括っていた過去の自分をビルスはぶん殴りたくなった。

 

 

 

 

「……一体いつまでこんな生活が続くんだ…」

 

「…スー、スー……」

 

 

 

 

スヤスヤと涎を垂らしながら眠るルージュが入ったゆりかごを片足で揺らしながらひとりごちる破壊神。その顔は心なしかやつれており、長い猫耳が枯れた草木のように垂れ下がっていた。はたから見ても明らかに疲労困憊だが別に体力的に疲れたわけではない。子守程度で破壊神の体力が尽きるなんて天地がひっくり返ってもあり得ない。しかし、気力は別問題だった。今の彼の気力は最早風前の灯、破壊神の気力を尽きかける程に追い詰めた人間など後にも先にも彼女だけだろう。

 

 

 

 

「……ああ、泣いてもないのにこいつの泣き声が聞こえてくる…。いよいよボクもヤバいかもねぇ…」

 

 

 

 

ストレスのあまりに幻聴まで聞こえ始めすっかり意気消沈してしまうビルスだったが、彼の憂鬱な生活はある日を境に唐突に終わりを迎えることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わうわーー!!!!」

 

「お、また金髪になったか。ウイス、なんて言うんだっけ?ルージュのこの…」

 

()()()()()ですよ、ビルス様」

 

 

 

 

ルージュが来てから二か月程が過ぎた頃、周りが水族館のように水生生物達が泳ぎ回る水槽に囲まれた薄暗い食堂にて、いつものように三人で食事を取っていると、ルージュが両手にスプーンを持った状態で大きく腕を上げたかと思えば、黒髪が金髪に変化した。

彼女がここで生活するようになってから度々起きるこの現象が気になったビルスがウイスに調べてもらうと、彼女がサイヤ人という戦闘民族であり、金髪になる現象が超サイヤ人によるものだと突き止めたのだ。

 

 

 

 

「そうそれ!超サイヤ人だったか。確かサイヤ人の間じゃ千年に一度現れる伝説の戦士なんだよな」

 

「はい、そのように記録されてますねぇ。詳細は分かりませんが…」

 

「ククク…伝説の戦士か。これはボクの未来視の信憑性が上がったとは思わないか?」

 

「……そのことなんですが、ビルス様。一つお聞きしたいことが」

 

「んー?なんだ?」

 

 

 

 

自分が見定めた子供が古くから言い伝えられてきた伝説上の戦士だというのなら、あの時に映った光景が幻ではなかったことの証明になると考え、上機嫌に食卓の上に並べられたご馳走様を頬張るビルスにウイスは普段よりも声のトーンを下げて彼に問いかける。

 

 

 

 

「ビルス様はこれまでずっと未来視で見た戦士が彼女だと信じているようですが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「………」

 

 

 

ウイスの言う通り、ビルスは今まで未来視で見たものが真実だという前提で話しをしていたが、本当にただの幻覚だった場合についてはこれまで一言も口にしてはいなかった。だからこそウイスは問うたのだ。()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

彼の問いにピタリと動きを止めたビルスを真剣な表情でウイスがジッと見つめる中、彼は瞼を閉じ数秒程考える素振りを見せると今尚金髪に変化しているルージュにギロリと目を向けた。

 

 

 

 

「んーそうだなぁ…ボクを期待させといて実は違いました、ってなった場合は───」

 

「うーー?」

 

 

 

ビルスの黒い瞳とルージュの碧い瞳が交差する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「破壊しちゃおっかなー」

 

「─ッ!!??」

 

 

 

 

 

 

 

───カラーンッ!

 

 

 

 

 

 

 

突然部屋中に響き渡る金属音。それはルージュが持っていたスプーンが床に落ちた音だった。

 

 

 

 

「─あらま、スプーンを落としてしまいましたか。ビルス様、子供に殺気を向けるなんて大人気ないですよ」

 

「フン…この程度の殺気ぐらい別にいいだろう。こんなんでビビるようじゃ、まだまだひよっこだな」

 

「子供相手になにを言っているんですか…まさか散々振り回された仕返しとか」

 

「ち、違うわッ!ただこいつの度胸を確かめただけだ!」

 

「……………」

 

「─ん?どうしたルージュ?」

 

「……………………あう…」

 

 

 

 

いつの間にか超サイヤ人は解かれ、元の黒髪に戻っていたルージュは先程までのニコニコとした表情から一変して両目は限界まで見開き、呆然としていた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「余程ショックだったみたいですね。可哀想に……さあルージュさん、そろそろ眠る時間ですのでベッドにいきましょうねー」

 

「え…あ、あ…あう」

 

「…なんか急に大人しくなったなこいつ」

 

「子供相手に腹いせで殺気を飛ばす大人気ない破壊神のせいですよ」

 

「だぁからそれは違うと言っているだろッ!」

 

「………」

 

 

 

 

この日以降、ビルスの怒号が響くことはなかった。何故ならあれから一度たりともルージュが泣き叫ぶことはなかったからだ。何かに取り憑かれたかのように大人しくなり、彼女がよく浮かべた人懐っこい笑みも鳴りを潜めていった。この突然の急変は後にビルスどころかウイスですら驚くこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「なあ…やっぱりなんか変じゃないか?」

 

「はい、私もそう思います」

 

 

 

 

ルージュの異変から数日後、彼女は一人で宮殿の外に広がる草原の上にペタリと座り込んで、ぼーっとした表情でビルス星から見える星々を黙って眺めていた。

そんな彼女の様子をビルス達は少し離れた場所で様子を窺っていた。

 

 

 

 

「最初はてっきり、ボクの殺気に当てられてビビって大人しくなったのかと思ったけど…なぁーんか違うよなぁ…」

 

「ですが、ビルス様の殺気がきっかけなのは間違ないかと。しかし別にあなたを怖がっている訳ではないようですし……これは確かに妙ですねぇ」

 

「まあボクとしては、大人しくなったお陰でこうしてゆっくり昼寝ができるから別にいいんだけどね。でもあの変わりようはちょっと気になっちゃうよね」

 

「ええ、明らかに雰囲気が別人レベルで変わっていますからねぇ。現時点で確かなのは──」

 

「なんだよ?」

 

「あの時、()()()()()()()()()()()()()()()()、と言ったところでしょうか」

 

 

 

 

ルージュの異常なまでの変わりように、ウイスは彼女の内面で人格や精神に影響を及ぼす何らかの変化があったと睨んでいた。しかし、それ以上のことは破壊神の付き人として豊富な知識を持つ彼の頭脳を以てしても解析できなかった。

 

 

 

 

「なんだよそれ、何かってなんだよ?」

 

「そこまでは流石に私でも分かりかねます。こればかりは直接本人に聞くしかないですが、それもまだ言葉を喋れない彼女では叶いませんし───」

 

「──ッ!?……わ…わ…あうわーー!!!」

 

「うお!?なんだ!?……なんだ、また超サイヤ人か…いきなり大声出すからビックリしたじゃないか」

 

 

 

 

 

ビルス達が話している最中、空を見上げていたルージュの髪色が金色に変わり、ふさふさと生えていた髪が逆立った。もうすっかり見慣れた超サイヤ人である。

いきなり響いた大声に寝転がっていたビルスが仰天して起き上がるが、またいつもの光景だと知ると飽きた様子で再び背中を地面に落とした。

しかし、変化する直前のルージュの顔に戸惑いの色が浮かんでいたのをウイスは見逃さなかった。

 

 

 

 

「………」

 

「ん?どうした?」

 

「ビルス様、ルージュさんがここに来てから超サイヤ人なった回数を覚えていますか?」

 

「はあ?回数?知らないよそんなの」

 

「今ので三十一回目ですよ」

 

「それがどうしたんだよ。別になんの問題もないだろ?あいつピンピンしているし」

 

「ここ最近、おかしいとは思いませんか?」

 

 

 

ルージュとの生活が始まって既に二ヶ月半。その間に超サイヤ人になった回数はウイスの言う通り、合計で三十一回。この数字だけを見れば特に不自然なところはないのだが、問題なのはその周期だった。最初の一ヶ月間は週に約一回のペースだったのが次の二ヶ月目からは二、三日に1回。今ではほぼ毎日超サイヤ人に変化している。

つまり、日数が経過するにつれて変身する回数が増えてきているのだ。

 

 

 

 

「そもそもあの変身はまだ自分の意思で制御できてないようですし…気になるんですよねぇ」

 

「考えすぎじゃないのか?成長すれば制御できるだろうし、寧ろ今のうちに慣らしておいた方が後々得じゃない?」

 

「そうだといいのですが…」

 

 

 

自分の意思ではないといことは身体が勝手に行なっているということ。つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。では何故月日が経つにつれてその頻度が増えていくのか?ウイスはそこに疑問を感じずにはいられなかった。

しかし、ビルスの考えにも一理あると判断した彼は心の内に感じていた違和感を頭の片隅にそっとしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方でルージュの身には二人が知りもしない大きな変化が起こっていた。

それは遡ること数日前、彼女がビルスの殺気を浴びたあの日のこと───

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

用意された寝室にて、ルージュは赤ん坊が使うにはやけに大きいサイズのベッドの上でふかふかの毛布にくるまっていた。普段であれば可愛らしい小さな寝息が聞こえてくる筈なのだが室内はシーンと静まり返っていた。何故なら彼女のクリクリとした目がパッチリと開いており、全く寝付けていなかったからだ。

それもその筈、今の彼女はとても眠れる精神状態ではなかった。

何故なら───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(嘘…あたし…)

 

 

 

彼女はビルスの殺気を受けたあの時、思い出したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(転生しちゃったッ!!??)

 

 

 

 

自分が前世の記憶を持った()()()であることを。

 

 

 

 

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