元々前半後半に分ける予定でしたがそれだと文字数が少なくなってしまうのでやめました。
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「ボクがルージュを
重い空気が広がる中、ウイスの口から告げられた残酷な一言。自分の気によって今も苦しみ続けるルージュを楽にしてあげる。つまりその命を摘むことでこれ以上の苦しみを与えずに安らかに眠らせる。
それがウイスの出した結論だった。
「そうです。もうルージュさんを救う手立てはありません。彼女のことを想うのなら、ビルス様の手で終わらせるべきです」
「…なるほどね」
「あなたは以前に言いました、期待通りでなければ破壊すると。今がその時ではないのですか?」
「ああ、確かに言ったね。ボクは一度決めたことは変えない主義だ」
「でしたら──」
「でもね、ウイス」
ウイスの言っていることは何も間違っていない。
ビルスの手にかかれば一切の痛みを与えずにあの世に送ることができる。本来破壊神の行う破壊は魂も含まれているがそれは彼の意思次第でどうにでもなる。
そして、期待にそぐわなければ容赦なく破壊すると宣言した以上、自分の手で終わらせる義務がある。
しかし──
ビルス様、あたし頑張る。強くなる。
ルージュが初めて喋ったあの時、ビルスは見たのだ。
彼女の瞳にはあらゆる苦悩を乗り越える絶対の信念、どんな理不尽にも屈しない強い覚悟、即ち"不退転の覚悟"を宿していたのだ。他でもない己の期待に応える為に。
そして彼女は今も苦しんでいるが命の灯火は消えてない。
つまり、
(ククク…情が移ったか。破壊神ともあろうこのボクが…)
破壊神とは非情でなければならない。星を破壊するということは、その星に住む全ての生命を殺すことを意味しており、そこに情をかけてはいけない。
一度かけてしまえば理が成り立たなくなり、やがてこの宇宙は崩壊の道を辿ってしまう。だからこそ一切の情を捨て破壊する。そうすることによって宇宙はバランスを保ち、存続できるのだ。
だがビルスは思うのだ、
そして何よりルージュはまだビルスの期待を裏切ってない。ならば答えは一つだ。
「その提案…悪いけど却下だ」
(………息が…苦しい……身体が……はち切れ…そうだ!…)
一方でルージュも己に定められた運命に抗い続けていた。
血が沸騰しているかのような暑さに襲われ、呼吸がままならず、体内で蠢く何かが今にも溢れ出そうとしている形容し難い不快感。
溜まりに溜まった彼女の気は既に臨界を迎え、いつ破裂してもおかしくなかった。
それでもルージュは死に物狂いで強引に押さえ込む。
(…こんなことで……死ぬわけには…いかない!あたしは……まだ…何も為せていない!)
彼女がここまで抵抗する理由はただ一つ、ビルスの期待に応えること。
あの時彼に誓った言葉を違えぬ為に。その思いが彼女をここまで突き動かしているのだ。しかし現実は非情であり───
(─ッ!?……あークソ!最悪だ…こんな時に
抗うルージュの脳裏にはそれまで消えていた前世で死んだ時の記憶が蘇っていた。
卒業式に向かっていたあの時、いつものように通り慣れた道を歩き、横断歩道を渡っていると車道から信号を無視した車が、けたたましい音を立て突っ込んできた。
突然のことに避ける間も無く彼女の身体は宙を舞い、硬いコンクリートの上をボールのように転がっていった。
全身が麻痺したかのように動かない中、視線を向けると運転手らしき男性が怯えた表情で飛び出しており、慌てた様子で車に乗り込むと猛スピードで去って行く。
所謂ひき逃げというやつだ。
そこから先のことは言うまでもない。誰にも助けて貰えず、身体が凍えていき、徐々に意識が薄れていくあの不気味な感覚と絶望感がルージュの気合いを少しずつ削いでいく。それによって僅かにできた綻びを死の運命は見逃さなかった。
(うぐッ!?……畜生!…まだ増えるのか!)
押さえ込んできた気が一気に膨らみ始め、もう彼女の意思ではどうすることもできなかった。情け容赦なく体内で暴れ出す気を前に、ルージュの意識は次第に遠のき始める。まるで前世で経験した自分が死んでいく様を繰り返すように。
(………ごめん、ビルス様…あたし……もう…駄目──)
ずっと自分を信じてくれた
己の不甲斐なさを呪いながらルージュの意識は消え───
「ルージュッ!!!!」
(─ッ!?)
その時、ルージュの耳にビルスの声が響く。
消えかけていた彼女の意識が再び引き戻される。
「いつまでそうしているつもりだッ!!ボクが言ったことを忘れたのかッ!?」
(…ビルス…様)
「お前はこの破壊神ビルス様が見定めた人間だぞ!ならばこの程度の困難、乗り越えてみせろッ!」
「ビルス様!これは気合いや根性でどうにかなる話しではありませんよ!始めから決定されていた運命なんです!」
「お前は黙っていろッ!ボクは今ルージュと話している」
それはビルスからの激励の言葉。こんな無様な姿を晒しても彼はまだ信じてくれている。
その事実に嬉しさが込み上げてくる。するとルージュの気持ちに呼応するように消えかけた命の灯火が再び息を吹き返す。
「お前は言ったな?頑張って強くなると。ならば見せてみろ、お前の力を!
限界を超える──それは孫悟空達が幾度となく行ってきたこと。
彼らはどんな強敵にも立ち向かい、どんなに力の差が開いていても決して諦めず、己の限界を超えて不可能を可能にしてきた。
ならば自分も超えよう。限界の壁を破らなければ破壊神に並ぶなど夢のまた夢。
これはその夢を現実にする為の始まりの一歩だ。
何よりも───
どうか健やかに…生きて……幸せになってくれッ!
思い出すのは自分を産んでくれた母親の願い。
彼女は己の命を犠牲にして悪のサイヤ人からルージュを守り抜いた。ここで諦めるということはビルスとの約束を反故にするだけではなく、自分を愛してくれた母親の最後の願いを踏み躙ることを意味する。
(……やだ)
故にそんなことは断じて許されない。ビルスの期待に応え、母親の願いを叶える。それが自分が歩むべきただ一つの道だ。
(…死にたくない)
だから行こう!己の前にそびえ立つ限界という名の壁を超えた世界に!
(あたしは…絶対に──)
その先で待っている神々の領域に辿り着く為に!
(
「うおおおーーーーーッ!!!!!!」
それはまさに魂の雄叫びだった。
ルージュの叫びと共に今までとは比べ物にならない黄金の炎が溢れ出す。
突然の異変に唖然とするウイスを他所にビルスは口角を吊り上げた。その顔には歓喜の感情が滲み出ており、くつくつと笑い出す。
「クックック…フハハハ…ハーッハッハッハッ!!そうだッ!それでこそお前だッ!」
「まさか…本当に…あの状況で超えたと言うのですか。己の限界を…」
「だから言っただろウイス!こいつには運命すら覆す力がある!やはりボクの目に狂いはなかった!」
ルージュは今この時を以て定められた死の運命を超えた。死にたくない、生きたいという強い想いに呼応し、秘められた潜在能力が開花したのだ。これにより彼女は超サイヤ人のさらに上の
即ち、超サイヤ人2へと。
「おおおーーーッ!!!!!」
溢れ出る黄金のオーラに混じり青白い稲妻が走る。
超サイヤ人2に覚醒したことでルージュの身体を蝕んでいた莫大な量の気は瞬く間に消耗され、再び正常な状態に戻された。
だが未成熟で変身した影響でルージュは酷い倦怠感に襲われる。
「──あっ…」
変身の反動で気を失うと彼女の身体がゆったりと倒れはじめる。衝撃で寝室の家具や壁は吹き飛んでしまい、このまま倒れれば硬い床にぶつけてしまう。
当然それを黙って見ているわけもなく───
「──おっと」
倒れるルージュをすかさずビルスがキャッチする。
彼女を見ると疲れ果てたのか瞼を閉じて静かな寝息を立てていた。
「…スー…スー」
「お前の覚悟、しかと見せてもらったぞ」
「申し訳ありませんビルス様。私としたことが出過ぎた真似を…」
「別にいいよ。なにも間違っちゃいないしね。それよりウイス、
「ええ、私も感じました。
ルージュが覚醒した時に見せた力の奔流。しかし、ビルスとウイスはこれが全てだとは1ミリも考えてない。二人は確かに感じたのだ、
「幸い、気の増加する速度が先程よりもかなり緩やかになっています。あれは恐らく一時的な暴走だったようですね」
「ならばルージュはこの先も生きていけるということか」
「ですが、まだ油断はできません。成長と共に気の生成量も増えていくでしょうし、また暴走する可能性も捨て切れません」
「ならばやることは──」
「はい、それに耐えられるように肉体を鍛えることです」
二人の方針は決まった。体内の気で自滅してしまうのなら、そうならないように肉体のキャパシティを上げてしまえばいい。今の時点では本格的に鍛えることはできないが少しずつ超サイヤ人に慣らすだけでも効果は出てくるだろう。
しかし今は試練を終えた彼女を休ませるべきだ。
ウイスの能力で寝室を元通りにすると穏やかな表情で眠るルージュをビルスはそっと寝かせるのだった。
「よくやったぞ、ルージュ。これからも期待しているよ」
それから四年後───
「さてルージュさん、今日から本格的な体づくりと武術の基礎を学んで頂きますが宜しいですね?」
「はい!ウイスさん!」
四年の月日が流れたことでルージュは幼児から少女へと成長した。
幼児の頃から少しずつ超サイヤ人に慣らしていったことで許容量を超えることもなく、心配されていた気の暴走も起きずに彼女はすくすくと元気に育っていった。
そして以前から決めていた通りに、五歳を迎えたタイミングでウイスの指導の下、本格的な修業を始めることとなった。
因みにビルスは見学である。理由は手加減が面倒だからとのこと。それを聞いたルージュとウイスは揃って彼にジト目を向けるのだった。
「でもウイスさん、武術は兎も角として体づくりってのは具体的に何をするんだ?」
「そうですねぇ…まずあなたが抱えるその
「そりゃあ…勿論。四年前に死にかけたんだし…」
「宜しい。あなたの身体は本来備わっている筈のリミッターが欠落してしまい、それによって気が無制限に増え続け、やがて破裂してしまう。でしたら答えは簡単です」
「…というと?」
「
気が常に体内で溜まり続けるのなら、それに合わせてこちらも気を使い続ければ破裂する心配はない。そして、サイヤ人にはそれにピッタリな変身形態がある。
「──あ、そうか!常に超サイヤ人になっていればいいのか」
「その通りです。超サイヤ人を変身形態ではなく通常の状態にする。その負荷に耐えられるように肉体を鍛えていくのですよ」
(悟空と悟飯がやった修行と同じだ)
ウイスが言う"常時超サイヤ人化"は原作で孫悟空が人造人間セルとの戦いに備えて編み出した修業方法だ。超サイヤ人を日常化することで興奮状態と肉体への負担を抑え、戦闘力を大幅に上昇させる。
ルージュの場合は戦闘力の強化ではなく、体内の気を消耗させるのが目的だがやることは変わらない。
しかし、ウイスの考えはこれだけではない。
「ですが、あなたが成長していけばそれに比例して気の生成量も増えていくでしょう。そうなるといずれ超サイヤ人になるだけでは消耗仕切れなくなる。そこで──」
「…え、ちょ、ちょっと待ってウイスさん!まさかとは思うけど!?」
「もうお分かりですね。現時点での最終目標は
(なんかとんでもないことになってきたー!!??)
これまでのドラゴンボール史上において誰一人としてやらなかった超サイヤ人2の日常化。
前人未踏の挑戦にルージュは心の中で吃驚するのだった。
「いいですね、その調子ですよルージュさん。次は更にスピードを上げて行きますので私の攻撃を全て防いで下さい。一度でも被弾した場合は次の休憩時間は無しとなりますのでご注意を」
「…ハァ!…ハァ!は、はい!お願いします!」
こうして、超サイヤ人の日常化と並行してウイスによる厳しい武術の鍛錬も始まった。始めた頃は動きもぎこちなく身体を何度も地面に打ち付けていたが、それは序盤だけの話しで次第にウイスの動きを学習していき動きに迷いがなくなり、技のキレも良くなっていった。
そうして一日、また一日と経過するごとにルージュの技量はみるみる上がっていき、遂にはビルスもルージュの組み手の相手をするようになる。
毎日毎日二人にしごかれる日々が続いたがルージュは決して折れなかった。寧ろ楽しんですらいた。そんなある日、何故楽しそうなのか気になったビルスが彼女に尋ねると───
「お前、随分楽しそうだけど辛くはないのか?」
「え?…まあ確かに辛いけどそれ以上にさ、あたしは嬉しいんだよ」
「何がだ?」
「こうして毎日組み手をして自分がどんどん強くなっているって思うとさ、それだけあたしはビルス様がいるところに近づいているってことでしょ?それが嬉しくて嬉しくて仕方がないんだよ。だからつい楽しくなっちまうんだ」
ビルスのいる神々の領域は果てしなく遠い道を歩いた先にある。そこに一歩一歩と少しずつ近づいて行く自分を実感できることがルージュにとっては幸福であり、それがつい顔に出てしまう。
思ってもみなかった返事にビルスはニヤけてしまった。
この人間は本気で破壊神に並び立つつもりなんだと、改めて再認識させられるのだった。
それから更に時は流れていき、ルージュが十歳になった頃、ビルスは彼女にあることを告げた。
「じゃあルージュ、ボクはそろそろ暫く眠らせてもらうよ」
「え"…」
「お、おい、そんな捨てられた子犬みたいな顔をするなよ。安心しろ、君に配慮して
「─ッ!!ありがとうビルス様!」
元々ビルスは寝ていることが多く一回の睡眠で数十年間、下手をすればさらに長い期間眠りにつくこともある。
しかしそれではルージュの成長を見守るどころか彼女の寿命が尽きてしまうので気を遣って五年周期で起きることにしたのだ。
そうして彼女に稽古をつけ、暫くしたらまた眠りにつく。
これには彼のだらけっぷりを何億年も見てきたウイスにとってはあまりにも衝撃的で思わず涙を浮かべてしまった。
「ビ、ビルス様が…あの寝てばかりで仕事をサボる…だらしのないビルス様が……五年おきに起きるなんて…ッ!私、感動しておりますッ!」
「…苦労してきたんだなウイスさん」
「わかってもらえますかルージュさん」
「聞こえているからなお前らッ!!今言ったこと取り消すぞッ!!コラッ!!」
そしてビルスは宣言通りに五年に一度目を覚まし、数ヶ月間ルージュの修業に付き合い、また五年間眠るというサイクルを繰り返した。
彼が眠っている間はウイスがルージュの修業を行い、五年ごとに起きる度に驚異的な成長を遂げている彼女の力にビルスは驚愕することになるがそれはまた別の話。
余談だが後にある事実を知ったビルスがルージュとこんな会話をしていたとか───
「お…お前ッ!それならそうと先に言ったらどうなんだ!ボクの苦労を返せッ!!」
「ええ!?それはないだろビルス様!最近になってやっとウイスさんが気が付いたことなのに…」
「喧しいッ!こうなったらボクの気が晴れるまで付き合ってもらうぞ」
「え、相手してくれるの?」
「ああ、してやるよ。その生意気な性根を叩き直してやるから覚悟しておくんだな」
「─ッ!上等だよ!こっちも理不尽なことを言われてイラついてたんだ。そのガリッガリの腹にデカいの食らわせて胃の内容物を全部吐き出させてやるよ!」
「……言うようになったじゃないかルージュ。泣いても止めないからな!」
「望むところだッ!!」
そして年月は流れていき、エイジ778年───物語は動き出す。
【プロフィール】
ルージュ(少女期)
種族:サイヤ人
出身地:惑星サダラ
誕生年:エイジ549年
年齢:10歳
身長:不明
体重:不明
変身形態
超サイヤ人
超サイヤ人2
人物評価
《ビルス》
目指すべき目標であり師匠。何やかんや言って自分を気遣ってくれる心優しい神様
《ウイス》
尊敬する師匠。厳しいけどいつも自分に付き合ってくれる優しい人。
《予言魚》
ビルスとウイス以外の唯一の話し相手。普通に友達だと思っている。
〔エラーリスト〕
▶︎エラーコード001
〈詳細〉
気の無限生成。あるべき筈のリミッターが欠落したことで当人が死亡しない限りは体内の気が許容範囲を無視して永久に増加する。
▶︎エラーコード???
〈詳細〉
解析不能