転生したらサイヤ人だった件   作:ウイルス・ミス

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前、中、後と3つに分けた筈なのに過去1番長くなってしまいました。



神の代行者 後編

 

リルドとの戦いを制したルージュの前に現れたベビーという不気味な雰囲気を纏う男。

彼はドクター・ミューが造り上げたネオマシンミュータントと呼ばれる究極の機械生命体──というのがミュー本人の認識だが真実は全く異なる。

 

彼の正体はかつて惑星プラントを乗っ取る為にサイヤ人に滅ぼされた原住民──"ツフル人"が残された科学力を結集させ、ツフル王の遺伝子を組み込み誕生させた寄生生物だ。

彼等は滅亡する直前にベビーの雛型を完成させると、それをカプセルに乗せ宇宙へと射出した。その後ベビーは宇宙を漂流しながら徐々に成長していき、自分達を滅ぼしたサイヤ人への復讐を決意する。

同時に"全宇宙ツフル人化計画"を発案し、計画実行と自身が成長する為のエネルギーを収集するべく、ツフル人の科学技術のデータをプログラムしたマシンミュータント、ドクター・ミューを製造した。

つまりはミューがベビーを生み出したのではなく、ベビーがミューを生み出したというわけだ。

 

 

 

 

「まさかこのタイミングでサイヤ人がやって来るとはな」

 

「その姿を見て合点がいったよ…。お前、それだけの力を得るのに()()()()()()()()

 

「態々数えるわけがないだろ。いずれ宇宙の頂点に立つこのオレの糧になれたのなら寧ろ光栄なことだと思わないか?」

 

「救いようの無い下衆だな…お前は」

 

 

 

 

ルージュは前世の記憶にあるベビーと比べて明らかに成長している姿を見て彼がこれまで何をしてきたのかを察した。

元々彼女がこの星に訪れたのは惑星M2周辺の星々に住む人間が立て続けに絶滅しているという情報を破壊神の付き人であるウイスから知らされたからだ。

この異常事態を聞いて原作とは違い宇宙征服を掲げるマシンミュータント達が本格的に動き出したと考えていたがそれは誤りだった。

理由は定かではないがこの時代に目覚めたベビーは成長の為に近くの星を襲い、そこで暮らす人間に寄生してエネルギーを得ていたのだ。

そしてベビーによって生命エネルギーを奪われた人間の末路は死のみ。

平和に暮らしていた多くの住人が身勝手な野望のせいで命を落としたのだ。

 

 

 

 

「お前がここまで行動しているってことはドクター・ミューはもう…」

 

「そうだ、オレが殺した…と言いたいところだが奴にはまだ利用価値があった。今は忠実な駒として働いてもらっている。もっとも用済みになれば始末する予定だがね」

 

 

 

 

誰が創造主なのかを忘れ、自分が創造したと思い込んでいたミューはベビーにとって到底許せる存在ではなかった。しかし数多のマシンミュータントを製造してきた点に価値を見出したベビーはまず彼を命令通りに動く傀儡にする。

その後はミューを使って惑星M2や他の星に点在するマシンミュータントを自分の手足として使えるように洗脳し、計画の実現と自身の成長の為に必要なエネルギーを集めさせた。

これによってベビーの力は急速に増大していき、より効率を上げる為に彼自身も他者に寄生して直接エネルギーを得るようになっていった。

 

つまりはこの星は既にドクター・ミューではなくベビーによって支配されており、計画実行の為の隠れ蓑になっていたというわけだ。

 

 

 

 

「今までは地道に力を蓄えてきたが貴様の身体が手に入ればもうその必要はなくなる。想定外だったとはいえ運はオレに味方しているようだ」

 

「あー…言っておくけどあたしの身体はおすすめしないよ。面倒な問題を抱えているからね」

 

「クク…貴様の意志などどうでもいい。大人しくオレに寄越すんだッ!」

 

 

 

 

ルージュの力は確かに強大だがその反面厄介な体質があるのでおすすめしないというのは割と善意で言っているのだがベビーは聞く耳を持たない。

彼女の言葉を無視して両手から紫色の気弾を生み出し、飛翔しながら勢いよく投げつけてきた。

 

 

 

 

「はぁ…人の忠告は素直に聞いた方がいいと思うけどなぁ」

 

 

 

ベビーに対しやれやれといった仕草をしながらも飛来してきた二つの気弾を虫を払うかのように片手で弾き返す。

するとベビーはすかさず両手を前に突き出すと気功波を放ってくるがこれも難なく片手で受け止められてしまう。

 

自身の攻撃をあっさり防がれたというのにベビーの口元がニヤつくと、グネグネと身体が崩れていきゲル状の物体に変化する。

彼は身体をゲル化させて他者の身体に寄生し、宿主の力や意識を奪い支配するという非常に厄介な能力を持っている。

気功波を受け止めている隙にベビーが迫って来るが、彼の能力をよく知っているルージュが黙ってそれを見過ごすわけがなかった。

 

 

 

 

「浅はかだな」

 

「─ッ!?ぐはああ!!??」

 

 

 

 

空いている片手から素早く気弾を放つと吸い込まれるように高速で飛来し、着弾と同時に激しい爆発を起こす。

ベビーは直前で身体をずらしたことで直撃は免れたものの、これにより身体の一部が消し飛んでしまった。

寄生しなければベビーは大した脅威ではないが、それは彼自身が十分に理解していること。故に力を得る過程で身につけた能力を発動させる。

 

 

 

 

「─ッ!お前…そのスピードで再生できるのか」

 

「クハハ…オレがただエネルギーを集めていただけかと思ったのか?この程度の損傷…いくらでも修復できるぞ」

 

 

 

 

超速再生。ベビーは仮令(たとえ)身体がバラバラに散ったとしても僅かでも残っていれば時間をかけて再生することができるが、これはその強化版。どんな傷もその場で瞬時に修復させ元通りにすることができる。その再生能力はあの魔人ブウに匹敵していた。

 

 

 

 

「お返しだ…食らえ!!」

 

 

 

 

再び人型に戻ったベビーはすかさず真空波を放つ。

かまいたちのように無数の不可視の斬撃がルージュを襲うが、気のシールドがあるのでこれもリルドの怪光線と同様に無効化する。

何をしても悉く塞がれてしまうことにベビーは徐々に苛立ちを募らせていく。

 

 

 

 

「チッ!やはりこれも通じないか…。ならば!」

 

(…ん?何のつもりだ?)

 

 

 

 

彼は何を思ったのかルージュから距離を取り始めると連続で気弾を放ってきた。

今までとは異なり、逃げるような動きを見せるベビーを不審に思いながらも見失わないように追跡しつつマシンガンの如く飛来する気弾を手刀で軽々と弾いていく。

ルージュも隙を見て気弾や気功波でベビーを狙い撃つが被弾直前にゲル化させることで直撃を免れてしまい、ダメージは負っているものの決定打にはならなかった。

 

 

 

 

「その程度の攻撃でオレは倒せないぞ」

 

「じゃあ…これはどうかな?」

 

 

 

 

ベビーが挑発するとルージュは今までより一際大きい気弾を生み出し彼に向けて投げつける。しかしそれでは先程と何も変わらない。回避の為に再び身体を崩していくが、ここで想定外の変化が起きた。

 

 

 

 

「何!?」

 

 

 

 

ベビーに迫っていた一つの気弾が突然十、二十、四十と凄まじい速さで分裂を始めた。思いもよらない事態に狼狽える中、数はどんどん増え続け、視界を埋め尽くす程の無数の気弾がベビーに襲いかかる。

 

 

 

 

「こ、これでは避けられ──ぐがぁぁ!!??」

 

 

 

 

ゲル状に変化したベビーは非常にすばしっこいが、絶え間なく飛来する気弾を躱し切れずに一度被弾してしまう。そして動きが鈍くなったその瞬間、残り気弾が次々に命中し、苦痛に満ちた悲鳴を上げながら近くの瓦礫の山に落下していった。

 

 

 

 

「…ガ……アガ……そ…損傷が…大き…い…」

 

「ここが終点ってことでいいのか?」

 

「お…オレは死なない!…サイヤ人に……復讐するまではぁッ!!」

 

 

 

 

ルージュの攻撃でベビーの身体は半分以上が消し飛んでしまった。既に再生が始まっているとはいえ見るも無惨な姿に変わり果てていた。

そんな彼に容赦なく止めを刺そうとするルージュに対し、最後の悪あがきなのか再び気弾を放ってきた。

だが動作が遅い上に大した威力がない気弾が通用するわけもなく、片手であっさりと弾かれてしまう。

しかし弾かれた瞬間、突如として発光し、辺り一帯を強烈な光が覆った。

 

 

 

 

(──ッ!?これは…目眩しか。そうなると…)

 

「貴様の身体を頂くぞ!」

 

「そう来るよな──ハァッ!!」

 

 

 

 

ベビーが放ったのは気弾に見せかけた閃光弾だった。

これによりルージュの視界は奪われるが、このタイミングでベビーがする行動は寄生以外あり得ない。

すぐ側まで迫ってくるベビーを気配で感じながら己の気を開放し、雷のような荒々しい気の嵐が彼を容易に吹き飛ばした。

そして閃光弾の効果が切れ視界が元に戻った瞬間、片手に気を収束させる。

 

 

 

 

「こ、こんな筈では…」

 

「見えたぞ。大人しくくたばりな!」

 

「─ッ!ギャアァーーッ!!??」

 

 

 

 

完全に行動を読まれ、唖然とするベビーに向けて赤色の気功波が放たれる。

一切の隙を与えずに放った気功波は瞬く間に彼を飲み込み、断末魔を上げながら、細胞一つ残さず消滅していった。

しかし──

 

 

 

 

(………おかしい)

 

 

 

 

この星の諸悪の根源は倒されたというのにルージュの気持ちは晴れなかった。

その原因は彼女の胸に巣食う()()()によるものだった。

 

 

 

 

(ベビーはあたしのことをかなり警戒していた。それなのに寄生するタイミングがあからさま過ぎる。アイツならもっと慎重に行動する筈だし…何よりあの執念深いベビーがこんなあっさりやられるなんて不自然だ…)

 

 

 

 

それは前世の記憶があるからこそ抱いた違和感。

此処とは違う世界とはいえ、復讐という執念で孫悟空達を出し抜き、窮地に追い込んだ人物。

確かに戦闘力には決定的な差があったが、それを欺き、覆してしまうのがルージュのよく知るベビーという男だった。

だからこそ呆気なく消えていったことに疑義の念を抱かざるを得なかった。

 

 

 

 

(何かを見逃している気がする…でも何を──ッ!)

 

「うおおーー!!!」

 

「─()()()!?」

 

 

 

 

考えを巡らせてると突然背後にある瓦礫の山が崩れると気を失っていた筈のリルドが飛び出した。

先程ベビーが落下した先はリルドが埋もれている瓦礫とほぼ同じ場所だったのだ。

瓦礫を薙ぎ払い、両目をひん剥きながら大声を上げるリルドはそのままルージュに目掛けて突っ込み、拳を振りかざした。

 

 

 

 

「オオオーーッ!」

 

「──動きが単調だな!」

 

「ゴフッ!?」

 

 

 

 

思いもよらない事態に流石のルージュも驚きを隠せなかったが、瞬時に頭を切り替えると、迫り来る拳をすかさず掴み、無防備なリルドの腹に膝蹴りを打ち込む。

ルージュの反撃に苦痛な表情を浮かべたリルドはガクッと首を落とし再び気を失う。

しかし、彼の口が開いたかと思えば()()()()()()()()()が飛び出てきた。

 

 

 

 

「─ッ!お前は」

 

「クハハ!もう遅い!」

 

 

 

 

出てきたのは先程消滅した筈のベビーだった。彼は素早くルージュに飛びつくと流れるような動きで耳の穴からスルスルと体内に入り込んでしまった。

 

 

 

 

「あーあ…入ってきちゃったか」

 

『ククク…ハハハッ!!遂に手に入れたぞ!最高の肉体を!』

 

 

 

 

寄生を許してしまったことにルージュがあちゃーと手で顔を覆っていると、彼女の頬にベビーの顔が浮き上がり、歓喜に満ちた声を上げた。

しかし、ルージュは取り乱す素振りを見せず冷静な様子で口を開く。

 

 

 

 

「お前…分裂することもできたのか」

 

『どうやら全て理解したようだな。頭の悪い猿だと思っていたが中々察しが良いじゃないか』

 

 

 

 

ベビーが戦闘中に逃げるような動きを見せたのはこの為だったのだ。

まず、彼は悟られないように遠周りしながら気絶するリルドが埋もれている場所までルージュを誘導する。

そして、敢えて被弾することで怪しまれること無くリルドの近くに落下し、そこで自身の身体の一部を切り離す。

その後はリルドに寄生して体内で身体を再構築させ、囮の分裂体が消滅したタイミングで彼を操り、確実に寄生できる隙を作る──これがベビーの作戦であり、ルージュも大凡の見当が付いていた。

 

 

 

 

『君の身体を使い、残りのサイヤ人共に復讐した暁にはこの宇宙全ての人間をツフル人にし、オレが頂点に立つのだ!』

 

「お前の行いはビルス様の破壊対象だ。仮に実行しようとしてもビルス様がそれを許さない。お前が頂点に立つことは永遠にないよ」

 

『ビルス?…ああ…この星に来た時から口にしていた破壊神とやらか…。フン、破壊神など所詮は誇張されたものに過ぎない。このオレの手にかかればなんの障害にもならない』

 

「ハァ…おめでたい奴だな…」

 

 

 

 

破壊神の恐ろしさを何も理解していないベビーに思わずため息をつく。

ビルスが目覚めているこの時代に全宇宙ツフル人化計画を実行するなど自殺行為でしかないというのに。

 

 

 

 

『随分余裕そうだな…分かっているのか?オレは君に寄生するだけでなく、支配する。つまり君になるわけだよ…。身体の主導権はオレに移り、肉体を捨てない限り、君という自我は永遠に目覚めないんだ…』

 

「ふーん……で、その支配ってのはいつ終わるんだ?」

 

『クク…もう既に終わって──ッ!?な、なんだ…どういうことだ!?』

 

 

 

 

ベビーは此処でようやく異常に気が付いた。とっくに支配は完了している筈なのにルージュは今だに平然としている。それどころか体内で自由に動き回れる筈のベビーが身動き一つ取れなかった。まるで全身を鎖で縛られているかのように。

 

 

 

 

『き、貴様…オレに一体何をしたッ!?』

 

「別に大したことはしてないよ。あたしの気でお前の動きを封じているだけなんだから」

 

『─は?』

 

 

 

 

ベビーはこの時、ルージュが何を言っているのか理解できなかった。

そもそも彼の行う寄生とは、対象の脳神経を始め、全身の細胞を瞬く間に侵食することでたとえ相手が格上でも支配できてしまうという厄介極まりない能力だ。

しかし、ルージュが言っていることが事実だとすれば、神経や細胞というミクロレベルに侵食したベビーを正確に把握し、そこに気を流し込んで拘束しているということになる。

彼女はあっけらかんと言うが、これは常人には決して真似できない非常に高度な技術だった。

 

 

 

 

『…あ、あり得ない……そんなことができるわけない!』

 

「現に支配できてないんだから素直に認めなよ。これでお前はなにもできない」

 

『何故だ……何故野蛮なサイヤ人が、これ程の技術を…』

 

「厄介な体質を抱えててね。なにもしなければあたしの身体は簡単に弾け飛ぶ。だから身に付けたんだよ…文字通り死ぬ気でね」

 

 

 

超サイヤ人3を通常形態にするには肉体の強化に加えて、精密な気のコントロール技術を身に付ける必要があった。

その為に何度も身体を壊し、血反吐を吐いたが、ルージュは一度も根を上げなかった。全ては幼い頃に交わした約束を果たす為に。その一心で努力したことで会得するに至ったのだ。

 

 

 

 

『そんな…馬鹿な…』

 

「さあ、お喋りはこの辺にしてとっととあたしの身体から出て行ってくれないか?自分の中に他人が入り込んでいるのって想像以上に気持ちが悪いんだ」

 

『…ク…クク……な、なにを言い出すかと思えば…オレが貴様を手放すわけがないだろ!』

 

「ええ…まだいるつもりなのか?」

 

『当然だ。これ程の精密操作…そう長く維持できる筈がない。貴様の力が弱まったその瞬間、今度こそ完全に乗っ取ってやる!』

 

「往生際が悪過ぎるだろ…。乗っ取れたとしてもお前の未来は決まっているのに」

 

『クハハ!ならばまず、オレの邪魔をするその破壊神とやらを殺してやる!そしてこの宇宙の神に─』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ"?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─ッ!!??…な…なんだ……何故オレが()()()()()()!?」

 

 

 

意気揚々と喋る最中、突然身の毛がよだつ程の悪寒が走ったかと思えば、ベビーはいつの間にかルージュの体外に追い出されていた。

自分の意思とは関係なく外に出ていたことに流石のベビーも状況が掴めず狼狽えていると彼の背後から底冷えする声が響く。

 

 

 

 

「…おい」

 

「─ッ!?ぐがああぁ!!??」

 

 

 

 

素早く振り向くと冷徹な眼差しをしたルージュに首元を片手で鷲掴まれる。

ミシミシと異音が鳴る程に強い力で掴まれ、ベビーは手足をバタつかせて悶え苦しむ。そんな彼を他所にルージュは光を失った瞳で見つめながら普段より低い声音で淡々と喋り出す。

 

 

 

 

「あたしはね…ベビー。今から二百年ぐらい前にこの仕事を任されたんだ。破壊神の代行者として人間レベルの低い星に行き、そこで馬鹿なことを企む連中に警告して、考えを改めないなら排除する…それがあたしの役目なんだ」

 

 

 

 

長い修業の末、十分な実力がついたと判断したビルスは経験を積ませる為に破壊神の代行を任せることにした。この第七宇宙には長年ビルスがサボってしまったことで良からぬことを企む悪人で溢れかえっている。この状況は極めて良くないことだとウイスから聞かされたルージュは育ててくれた恩を少しでも返す為に喜んで引き受けたのだ。

 

 

 

 

「でも、実を言うとね…長い間破壊神代行なんて大役を任されているのに…あたしは今だに命を奪う行為に心の何処かで抵抗を感じている半端者なんだ。それはきっと前世()の自分の感性を捨て切れないからだと思う」

 

 

 

 

人を殺してはいけない、他人の生命を奪うことは許されない行為であるという誰もが知っているルール。この人間としての感性は当然ルージュにも根付いており、悪人を裁く度に心の内で躊躇している自分を感じていた。

しかし、そんな半端な精神では破壊神の代行は務まらない。裁かなければ大勢の命が滅び、ビルスとウイスに恩を返すことすらできない。

だからこそ、彼女は少しづつ時間を掛けて受け入れることにした。いつか胸を張って破壊神代行を名乗れるようになる為に。

 

 

 

 

「だからあたしは半端者である内は()()()を使わないようにしている。覚悟ができていない今の自分には相応しくないからね…」

 

「さ…さっきから……何を…ペラペラと…がああッ!!??」

 

 

 

 

 

混乱するベビーを無視して首を締め上げる力が強まっていく。身体を崩して逃走を図ろうとするも彼の体内にルージュの気が流し込まれている影響でゲル状に変化させることができなかった。

ベビーが苦痛の叫びを上げているとルージュは顔を手で覆いながら俯き、更に低くなった声音で語り出す。

 

 

 

 

「なのにお前は…よりにもよって…あたしにあの言葉を吐いた…」

 

(─ッ!?……な、なんだこれは…この妙な感覚は…一体なんだ!?)

 

 

 

 

ベビーは突然、猛烈な違和感を覚えた。自分はこの場にいる筈なのに何処にもいない。己という存在が曖昧になったような、口では言い表すことができない不気味な感覚。

理解不能な事態に彼の脳内ではパニックを起こしていた。

 

そして、ふと気がついた。自分の足の感覚が無いことに。

首を絞められる中、視線だけを動かすと──

 

 

 

 

「なんだこれはあッ!!??」

 

 

 

 

彼の足は消えていた。否、足だけではない。そのまま足首からスネ、太ももとみるみる内に()()()()となって崩れていく。更に手の感覚も無くなり、始めから無かったかのようにサラサラと崩れ始める。

目を疑う光景にベビーは何が起こっているのか理解した。

否、理解してしまった。なまじ高度な頭脳を持つからこそ、己の身に起きている異変を客観的に捉えてしまったが故に…。

 

自分は今、存在ごと消滅しかけているのだと。

 

 

 

 

「オレが消える!?オレという存在が…消えているのかッ!!??」

 

「…昔からの決まりでね」

 

「や、やめろ…頼む!やめてくれ!元に戻せ!!今すぐにッ!!!」

 

 

 

 

肉体も含めた自己の完全消滅。あまりの恐ろしい事態にベビーは意地もプライドも投げ捨てて必死に止めるように訴えかけるが崩壊は止まらない。

既に下半身と両腕は消え、上半身も同様に崩れ去っていく。

するとルージュはゆっくりと顔を上げ、酷く怯えるベビーを指の隙間からギロリと睨みつけながら、普段からは想像もつかない強圧的な声で告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたしの前でビルス様を殺すと口にしたものは例外なく

ブチ殺している」

 

「─ひぃッ!?」

 

 

 

 

ビルスは命の恩人であり、幼い頃から育ててくれたかけがえのない存在。そんな彼を殺すと言われることはルージュにとって決して許せるものではなかった。

破壊神である彼を殺せる筈がないと頭ではわかっていても、大切な神様()に殺意が向くことがどうしても無視できず、はらわたが煮えくり返って仕方がなかった。

 

だから破壊する(殺す)。たとえ己の心情を曲げてでも二度とその口が開かないようにあの世にすら行かせはしない。

ベビーという男をこの世界から抹消する。

 

 

 

 

「た…頼む……助けてくれぇ…このまま…では…オレが消え……る…」

 

「……」

 

 

 

 

いくら懇願したところで彼女の決定は揺るがない。

崩壊は進み、残っている箇所は首だけとなる。

ベビーは生まれて初めて感じる恐怖と絶望に苛まれながら己の消滅をただ待つことしかできなかった。

そして顔の半分は消え、意識が薄れていく中、最期に目にしたものは──

 

 

 

 

「……」

 

(なんて…奴だ…)

 

 

 

 

 

野獣のような鋭い眼光で己を睨みつける()()()()だった。

 

 

 

 

「…バ…ケ……モ………ノ………めぇ…………」

 

 

 

 

復讐に取り憑かれ、欲望に目が眩んだ哀れな男は、掠れた声を残し、この世界から完全に消滅するのだった。

 

 

 

 





【プロフィール】

ルージュ(???)

種族:サイヤ人
出身地:惑星サダラ
誕生年:エイジ549年
年齢:???
身長:167cm
体重:53kg
変身形態
超サイヤ人(通常時)
超サイヤ人2(通常時)
超サイヤ人3(通常時)
超サイヤ人3・限界突破(戦闘時)

人物評価
《ビルス》
目指すべき目標であり師匠。そして大切な家族だと思っている。好き。

《ウイス》
ビルス同様家族のような存在。修行で無理をして死にかけた際に何度も助けられてきたので彼には頭が上がらない。

《予言魚》
相変わらずの話し相手。よくトランプをして遊んでいる。最近ハマっているゲームはポーカー。

《孫悟空》
早く直接会って話しがしたい。願わくは手合わせもしたいと思っている。

《ベジータ》
悟空と概ね一緒。できれば生ビンゴダンスを見たかったがとある事情で断念。無念。

《キテラ》
ドブネズミ。駆除対象。




〔エラーリスト〕

▶︎エラーコード001
〈詳細〉
気の無限生成。あるべき筈のリミッターが欠落したことで当人が死亡しない限りは体内の気が許容範囲を無視して永久に増加する。

(追記)
開示不可



▶︎エラーコード002
〈詳細〉
開示不可
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