転生したらサイヤ人だった件   作:ウイルス・ミス

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禁足地で棒振り回して虫を飛ばすのに夢中になっていたらいつの間にか二ヶ月以上経ってしまった…。
これも全部タ・シンって奴のせいなんや!許せん!!



予言の戦士

 

北の銀河の辺境の地にある銀河星雲、太陽系に浮かぶ第三惑星。第7宇宙の端っこに位置する青色に輝く星──地球。

緑豊かな大地を一望できる成層圏にて、余裕の笑みを浮かべる破壊神ビルスと満身創痍の男、()()()が対峙していた。

 

 

 

 

「やっと破壊神ビルス様の恐ろしさを理解してくれたようだね」

 

 

 

 

何故この二人が対峙しているのか? それは時を数刻程遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

超サイヤ人ゴッドを探すべく、サイヤ人の生き残りが住む地球を訪れたビルスは偶々開催されていたベジータの妻、ブルマの誕生パーティーに乱入する形で参加していた。

この星は大した技術力がない代わりに食文化が発展しており、大富豪のパーティーというのもあって出されている料理はどれも絶品ばかり。

美味しいものに目がないビルスと付き人として共にやって来たウイスは地球の料理の魅力に取り憑かれ、一つ、また一つと喉の奥が震えるくらいの美味さに感動しながら次々に平らげていった。

 

いくら待っても超サイヤ人ゴッドが現れないことに焦りを感じつつもビルスの機嫌は最高潮に達していたところに、彼の額に銃弾が当たってしまうアクシデントが発生した。

これにより機嫌は一気に悪くなり、地球を破壊(星ごとリニューアル)しようとするもベジータ渾身のビンゴダンスを披露したことによってなんとか事なきを得る。

しかし、今度は食べたかったプリンを魔人ブウが全て平らげてしまったことに激怒し、完全にキレたビルスは地球の破壊を宣言する。

 

地球滅亡を阻止するべくその場にいた戦士達や妻をぶたれ激昂したベジータが禍々しいオーラを纏うビルスに挑むも絶対的な力を持つ破壊神に勝てるわけもなく、容易く無力化されてしまう。

そこへ地球を訪れる前に北の界王星で出会った孫悟空が待ったをかけ、神龍(シェンロン)を呼び出して超サイヤ人ゴッドの秘密を聞き出す運びとなった。

 

神龍によると超サイヤ人ゴッドとは、正しい心を持つ五人のサイヤ人の力をもう一人のサイヤ人に注ぐことで一時的に生み出されるサイヤ人の神のことだった。

 

これを聞いた一同は悟空をゴッドとして誕生させるべく、ベジータとその息子のトランクス、悟空の息子の悟飯と悟天、そしてお腹に新しい命を宿した悟飯の妻、ビーデルを含めた五人で儀式を行い、悟空は無事に超サイヤ人ゴッドへと覚醒する。

ゴッドになった悟空は自分が勝てば地球を破壊しないという約束を申し付け、ビルスはこれを承諾。

こうして地球の命運をかけた神と神による戦いが始まった。

 

 

 

「いくぞ!ビルス様!」

 

「かかってきなさい」

 

 

 

超サイヤ人ゴッドに覚醒したことでビルスと同じ神の領域に至った悟空は己の身から湧き上がる新しい力──"神の気"に驚きつつ、これまでの強敵達との戦いで積み上げてきた戦闘技術を駆使して果敢に挑む。

数度の打ち合いのあと、悟空の拳をすかさず受け止めるビルスはどこか懐かしむような目で小さく笑みを浮かべる。

 

 

 

「クク…こうしているとあいつを思い出すな…」

 

「あいつって誰だ? ビルス様」

 

「いいや、なんでもない。それよりどうだ?

ゴッドになった感想は」

 

「…びっくりだ。こんな世界があったなんてよ」

 

「そうか…ボクも驚いているよ。

たったあれだけの儀式でここまでパワーアップするとはね」

 

 

 

拳と拳がぶつかり、嵐のような突風が吹き荒れ、正面からの乱打戦を繰り広げながら戦場をパーティー会場の上空から西の都の市街地へと移し、打撃音が街中に響き渡る。

ゴッドの力が徐々に馴染んできた影響で悟空の攻めがより速く、鋭くなる。

それに合わせてビルスもギアを上げていき、二人の戦いは過激になっていく。

更に場所を町外れの森、荒野、海上へと移し、激闘の余波で海が割れ、海底が剥き出しになる。

ビルスの重い一撃が悟空を海底に叩きつけるとそのまま地面をぶち抜き、地下空洞まで落ちていく。

地底湖が広がる薄暗い空間にて、二人は示し合わせたかのように距離をとる。

 

 

 

「興が乗ってきたぞ。今まではキミに合わせてペースを上げてきたが、特別にもう少し上の力で相手してあげよう。さあ、キミの力をもっとボクに見せてくれ」

 

「そうしたいところなんだけどよ…オラもう八割ぐらい力出してんだよなぁ」

 

「えっ八割?………だったらこのスピードに着いてこれるかな!」

 

 

 

ビルスの姿が消えると悟空もそれに合わせて彼を迎え撃ち、衝撃で水柱が立ち上がった。

それから続けて至る所で水柱や水飛沫が上がり、目にも止まらぬ激闘が再開される。

しかし、ここでゴッドの特徴であった赤い髪が黒髪に戻り、身体から溢れていた真紅のオーラも消えてしまう。

超サイヤ人ゴッドの時間が切れてしまったのだ。

悟空がビルス相手に戦いが成立していたのはゴッドの力があってのもの。

ところが戦況は変身時と比べるとやや劣勢ではあるものの戦いは続いていた。

悟空の拳打がビルスの腹に直撃するとお返しと言わんばかりに無数の気弾を放つ。

これまでの純粋な格闘戦とは打って変わり、遠距離攻撃を解禁したのだ。

 

 

 

「なんだよ、飛び道具か!」

 

「フン!スポーツをしているんじゃないんだよ」

 

 

 

狭い地下空間で放たれる破壊神の気弾を悟空はなんとか捌いていくが、防ぎ切れなかった気弾が壁や天井に当たり、遂には崩落を始める。

頭上から濁流のように大量の岩が押し寄せ、疲弊した悟空を情け容赦なく飲み込んでしまう。

 

 

 

「破壊を楽しんでんじゃねぇぞおおぉぉ!!!」

 

 

 

しかし、ここで終わらないのが孫悟空という男だ。

彼の怒りがこもった叫びと共に髪は金髪に変化し、黄金の炎が溢れるとそのまま凄まじい勢いで地中を泳ぐように突き進み、上空へと舞い上がる。

 

 

 

(良いぞ…それでこそあいつと同じサイヤ人だ。もっと抗ってみせろッ!)

 

 

 

臆することなく挑み続ける悟空を見てビルスは幼い頃から育ててきた教え子の姿と重ねながらニヤリと笑みを浮かべる。

サイヤ人とは本当に面白い種族だと改めて痛感しながら彼に追尾して地中から飛び出す。

 

 

 

「まだまだだぁぁ!!!」

 

「ハァァァ!!」

 

 

 

ブルマの飛行船に乗った仲間達が見守る中、青空の広がる晴天の下で金色と紫色のオーラが激しくぶつかり合い、空間をも揺るがす大激闘が繰り広げられるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ………参った…オラの負けだ。

ビルス様強いなぁ…全力だしているってのに全く敵わなかった。

ハハッ…流石宇宙一だぁ」

 

「やっと破壊神ビルス様の恐ろしさを理解してくれたようだね」

 

 

 

そして、冒頭に戻る。

 

二人の戦いは成層圏へと戦場を移し、悟空の消耗具合から限界が近いことを悟ったビルスはフィナーレとして地球を一撃で消し去る威力を持つ巨大な気弾、"破壊玉"を放つ。

絶大な力が込められた破壊神の攻撃を前に悟空は十八番である"かめはめ波"で対抗する。

太陽の如く燃え盛る気弾と青白い光を放つ気功波がぶつかり合うが力の差は歴然でビルスの破壊玉がジワジワと迫るが、悟空は残された全ての力を出し切ることで何とか相殺することに成功する。

だが、悟空に出来ることはそこまでだった。全身全霊のかめはめ波を撃ったことで彼の気は底を尽いてしまいこれ以上の戦闘は困難だった。

逆立っていた金髪は元の黒髪に戻り、道着はボロボロになり、息も上がってしまっている悟空に対し、ビルスは全くの無傷。それどころか彼は最後の一撃を除けば半分の力も出していなかったのだ。

 

文字通り次元が違う。

仲間達の力を借り、ゴッドとなって全力で挑んだにも関わらず、これだけの力の差があるとは一体何の冗談だ。

その事実を知った悟空は最早笑うしかなかった。

 

一方でビルスは溢れていた禍々しいオーラを消し、満足気な笑みを浮かべていた。

 

 

 

「ところでキミは気づいているかい?超サイヤ人ゴッドがとっくに時間切れだってことに」

 

「…ああ、途中で気づいたさ。けど…どういう訳かゴッドじゃなくなったってのにあんまり変わった感じがしなかったんだよなあ。

…ビルス様は分かるか?」

 

「ふむ…どうやらお前はゴッドとなって戦っている内に

神の領域(その世界)を身体に吸収してしまったようだ。

だから元の状態に戻っても大してパワーダウンしなかった。

…大したものだよ。稀に見る天才と言っても良い」

 

「そういうことか……にしても天才、か」

 

「なんだ不服か? 破壊神から天才と称されるなんて栄誉なことなんだよ?」

 

「そうじゃねぇ。評価してくれるのは嬉しいさ…。

けど結局、オラはビルス様に勝てなかった。負けたら地球が破壊されちまうってのにこの有様だ。それが悔しくてよ」

 

「ああ…それでそんな浮かない顔をしているのか」

 

「……なあ、ビルス様。負けたオラがこんなこと言う権利がねぇのはわかっているけどよ…地球を破壊するのはやめて欲しいんだ。

この星は皆んなが暮らす大事な場所なんだ。

だから…頼む!」

 

 

 

敗者が勝者に己が提示した条件の取り消しを要望するなど間違っていると悟空自身も十分理解している。しかし、生まれは違えど幼少期から過ごし、妻や息子、共に冒険した仲間、同じ死戦を潜り抜けて来た頼もしい戦友達が平和に暮らすこの星を壊すことだけはどうしても止めて欲しかった。

だからこそ、悟空はビルスにできる限りの誠意を込めて深く頭を下げる。

 

 

 

「……」

 

 

 

しんと静まり返る中、ジッと返答を待つ悟空。

そして、ビルスは──

 

 

 

「うん、いいよー」

 

「……………へ?」

 

 

 

その場にそぐわない軽い口調であっさりと了承した。

あまりの気の抜ける返答に思わず悟空は目を丸くし間抜けな声を出してしまった。

 

 

 

「い、今なんて…」

 

「だからいいよって言ったんだ。何だ、破壊しても良かったのか?」

 

「いやそうじゃねぇよ! でも何でそんなあっさり…」

 

「…まあ、この際だから言っちゃうとね、別にキミが頼まなくても地球を破壊するつもりはなかったんだよ。ボクが会場で破壊するって言ったのも半分は嘘だったしね」

 

「えええ!!?? なんでそんな嘘をついたんだよ!」

 

「いやね、中々ゴッドが現れないものだから破壊するって言えば出てきてくれるんじゃないかと思ったんだよ。

だから一芝居打ったって訳さ。……それに」

 

「ん?」

 

「キミ達サイヤ人は追い詰めた方が結果を出せると思ってね」

 

 

 

追い詰められたサイヤ人程厄介な人間は居ない。

そのことを彼は教え子から嫌と言うほど学んできた。

故に敢えて嘘を付き、超サイヤ人ゴッドの力を最大限に発揮させる様に仕向けたのだ。

あまりにも期待外れだった場合は容赦無く破壊するつもりだったが、強敵とはいかずともそれなりに楽しむことができたので今回は破壊しないことにしたのだ。

 

 

 

「ま、そんな訳だから安心するといい」

 

「じゃあ………また戦えるってことだよな、ビルス様!」

 

「おいおい…まだボクと戦うつもりなのかい? 」

 

「当ったり前だろ! 負けっぱなしなんてオラの性に合わねぇ。絶対諦めねぇからな」

 

「負けたとは言ってもキミは人間の中では間違いなく強かった方だよ。過去にボクに戦いを挑んで来た人間は何人かいたが、その中でもキミは()()()に強かったと断言して良い。その功績だけで十分だと思うけどね」

 

「二番目!? じゃあビルス様以外にもオラより強ぇ奴がいるってことか!

益々やる気が湧いて来たぞ!」

 

「ハァ…やれやれ。面倒な人間に目を付けられちゃったよ」

 

 

 

地球を破壊しないと知るや否や子供の様に目を輝かせて再戦へ向けて意気込む悟空。ついさっきまで地球の存続を賭けて戦い、誠心誠意で頭を下げていたあの態度は何処に行ったのやらとビルスは呆れるしかなかった。

まさに筋金入りの戦闘馬鹿。それが孫悟空という人間を表すのに最も適した言葉だと理解した。

 

 

 

「ならば楽しませてくれたお礼としてキミに良いことを教えてあげよう」

 

「何だ?」

 

「今ボク達がいるこの世界は"第七宇宙"だ。そしてボクは第七宇宙の破壊神。

宇宙はね、全部で十二個あるんだよ。どうだい、もっと強い奴がいると思わないか?」

 

「…宇宙が…十二個?」

 

「それとウイスって奴がいただろ? 彼はボクの付き人でもあるが師匠でもあるんだ。つまりボクより強い」

 

「……ハ、ハハ…」

 

 

 

第七宇宙、十二の宇宙、そしてビルスの師匠であるウイス。

突然明かされた驚愕の事実に悟空は疲れが滲んだ笑みを浮かべる。

世界とはこんなにも広く、自分は如何にちっぽけな存在か気付かされた瞬間だった。

 

しかし、ここでビルスは更にとんでもない爆弾を投下する。

 

 

 

「それからさっき二番目に強かったって言ったよね? 一番強い人間というのがボクの弟子でね。今もボクの下で修行しているんだよ。因みにキミと同じサイヤ人だ」

 

「え…えええええッ!!!??? サ、サイヤ人がビルス様の弟子ィ!?」

 

「ククク…中々良い反応をするじゃないか」

 

「な、何でサイヤ人がビルス様の弟子になっているんだ?」

 

「…まあ、色々あってね。子供の頃から面倒を見ているんだよ」

 

「……そいつは…そんなに強ぇのか?」

 

「ああ、彼女は強いよ。何せボクとウイスが鍛えてきた人間だからね」

 

「お、女のサイヤ人なんか…。ベジータが聞いたらおったまげるだろうな。

…でもそっか、会ってみてぇな…そいつと」

 

 

 

予想外の爆弾発言に過去一の驚きを見せる悟空。

だが、それとは裏腹に自分達以外にも生き残っているサイヤ人がいることに対する嬉しさと同じサイヤ人でありながら実力にそれ程の差が開いていることに対しての悔しさもあった。

そして何より、破壊神がここまで強いと言い切るそのサイヤ人と実際に手合わせをしたいという気持ちが込み上げてきて仕方がなかった。

 

 

 

「なぁに、機会があれば会うこともあるだろ。

その時は気の済むまで手合わせするといい。ルージュも喜ぶだろうさ」

 

「ルージュって言うんか。なら、その時に備えてオラもっともっと修業しておかねぇとな」

 

 

 

その後、疲弊した悟空を地上まで送り届けたビルスはパーティー会場で暴れた件をブルマ達に謝罪し、次回訪れた時は食べれなかったプリンをご馳走する約束を交わすと彼等に見送られながらウイスと共に悠々と地球を去るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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