星野家弟は幸せな未来を望んでいる   作:通りすがりの邪教徒

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恋リア編、描くの正直大変でした。


兄貴に先を越されました

 

 外は激しい風に窓を打ちつける雨が降るほどの悪天候。石見さんが言ってた天気予報通り、この季節には珍しい台風が東京に接近していた。

 今日は普通に学校もあったけど、台風の影響で午後は全員帰る事になった。有馬さんが事務所に来た頃には、外はこの有様である。

 

 今日は家でゆっくり勉強をするに限る。え? お前が勉強とか珍しいな? アニメばっか観るのが俺じゃあねぇ! ちゃんと勉強もしないと進級できないからね。

 

「バチボコに燃えてるわね。黒川あかね」

「そりゃ……あんな内容放送したら当然ですよね」

 

 そして今ガチの最新話が公開されて以降。黒川さんに対する誹謗中傷の雨も止むどころか、さらに激しさを増していた。まるで、今のこの悪天候のように。

 兄貴は監督のところにいて、そこで雨宿りをしてるとのことだったので、これは天候次第では監督の家で寝泊まりする事になりそうだな。

 

「一昨日の現場で先輩達とこの話しましたよ。黒川さん、大丈夫かな……」

「こういうのって人前に出るようになったら慣れるような物だと思ったけど、結局は人によるんだね」

「皆、自分だけは例外って思いながら、しっかり人を追い込んでるのよ。何の気無しな独り言が人を殺すの」

 

 ひゃぁ〜芸能界ってこういう所怖いんよな。何かやらかせば寄ってたかって、一般人からリンチに遭う。

 事務所で今ガチのことを話していたら、ミヤコさんのポッケから着信音が鳴った。

 

「えっ本当ですか? はい……直ぐに……」

「ミヤコさん、どうしました?」

「アクアが……アクアが……警察のご厄介になったみたい」

「何やってんだアイツぅー!?」

 

 兄貴の予想外すぎる行動に、思わずアイツとか言ってしまった。あっもしかして黒川さんに何かあったのでは? 外は豪雨ということもあり、安全のためにミヤコさんだけで兄貴のところへと車で向かった。

 

「さてと、どうしようかしら。こんな強い雨じゃ家に帰れそうにないかも」

「外も暗くなって来ましたからね。良ければウチで晩ご飯食べて行きますか?」

「そうね。そうさせてもらうわ」

「最悪、ここで泊まっていけば良いじゃん。ね? じゅうくん」

「と、泊まり!? 充瑠の家で……ゴクリ」

 

 まぁ天気の様子次第だな。雨が弱まったらタクシーでも呼んで帰れば良いんだし、泊まるかどうかは有馬さんが決めることだ。

 

 約1時間後、夕飯の支度をしていたらミヤコさんから連絡が来た。案の定、黒川さん関係のことだった。

 黒川さんが歩道橋から飛び降りようとしたところを兄貴が止めて、警察の人に解放してもらったんだとか。

 

 良かった。もしこれで自殺なんてなったら、大変な事になっていた。安堵の息を吐きながら、支度を再開させた。

 

「アンタ、料理出来たのね。もしかしてこれもアニメの影響?」

「ご名答。有馬さんには分かっちゃったか」

「充瑠の事だし、そうじゃないかって思っただけよ」

「じゅうくんって昔から影響されやすいよね〜」

 

 さてと、あとは盛り付けて完成だ。最近覚えた料理だから美味しく出来てると良いな。

 

「こちら、よだれ鶏になります。有馬さん、前に糖質気にしてたっぽいんで、お米は玄米にしましたよ」

「お、美味しそうね。いただきます」

「う〜ん、お肉柔らか〜! タレもピリ辛でご飯に合う〜!」

「美味しっ! アンタ凄いじゃない!」

「お褒めに預かり光栄です」

 

 自分の作った料理を美味しそうに食べてくれるの嬉しいな。

 

「やっぱり、人の作ったご飯って美味しいわよね。両親が田舎に引っ込んでから、寮暮らしで……ご飯はいつもUber頼りだし」

 

 そうだったのか。有馬さん、大変そうだな。同情とかじゃなくて、シンプルにウチに来てご飯食べに来て欲しいって思った。

 有馬さんの性格的に、この誘いは断られるかもしれないから心の中で留めておくけど。

 

「あっ外の雨弱まってるよ!」

「本当だ! 良かったですね、有馬さん。無事に帰れそうですよ!」

「そ、そうね。はぁ……ご馳走でした」

 

 こうして有馬さんは、タクシーを呼んで自宅へと帰って行った。玄関まで送った時すごーく落ち込んでたけど、何かあったのかな?

 

 

 

 

 

 黒川さん自殺未遂から数日が経過した。教室にてネットニュースを徘徊していたら、今ガチに出演中の未成年女優の自殺未遂に関するニュースが流れて来た。

 ミヤコさんに聞いたところによると、この情報を記者に与えたのは兄貴だと言っていた。これで炎上の火力が多少弱まると良いけど、どうやら一部の層には響かなかったようだ。

 

「これからどうする気だ……?」

「充瑠くん。おはようさん」

「おはよう、みなみさん」

「今ガチのニュース見とるん? 大変やったみたいやね」

「黒川さんは今ガチ続けるみたい。彼女自身はまだ心に傷を負ってて、近頃の撮影は見送る予定らしい」

「お兄さんから聞いたんやな。そう言えばルビーちゃんは?」

「有馬さんと一緒にいるよ。今ガチのこと心配だし、昼休みにでも兄貴に現状を聞いてみるか」

 

 午前中の授業が終わった後に、演者同士で何を話し合ってるのか聞き出そうと思い、噴水のある中庭で兄貴を呼び出して、一緒に昼飯を食べる事になった。

 

「じゃあ、今から公式Twitterに上げる用の動画を作成を皆でしてるんだ」

「あぁ……「俺ら目線の今ガチ」を、答えを求めているユーザーに提供すれば、多くの人が正義だと思い込むからな」

「これだけ注目されてるもんね。世の中の意見を、その動画で逆転出来るといいな。僕も何か手伝うか?」

「別に大丈夫だ。取り敢えず、バズらせのプロが俺たちについてるからな。それに音楽提供もいるし、動画は何とか形になりそうだ」

 

 多分MEMちょさんとケンゴさんの事だな。他にも強力な味方もたくさんいるし、兄貴達だけで何とか出来るかもしれないな。

 

「今日の放課後に皆で集合して作り始めるから、最悪家には帰るのが遅くなるかもしれない」

「気にしなくて大丈夫だよ。黒川さんの事、皆でちゃんと救ってあげてね」

「ああ、分かってる」

 

 

 

 それからまた2日後の休日。今ガチの公式Twitterに動画がアップされ、瞬く間に拡散されて行った。

 その動画を秋葉のカードショップで中学の友人とデュエマをしながら一緒に観ていた。

 

「本当に良かった」

「今ガチの件か……。番組は観てないけど、結構凄かったよな。Twitterで批判してた奴らほとんどが掌禁断解放してたぜ? ネットって本当に恐ろしいよな」

「ああ、今回の件を見習って、番組側も少しは対策して欲しいもんだよ。あのクソ番組がよ!」

「それをTwitterで言ったら、お前の場合だと軽く燃えるんじゃね?」

「そうだな。僕も芸能人の身だから、流石にそんな事言わないけどよ」

 

 僕らが目にしたこの動画は、アップした24時観後には7万4千RTを達成し、黒川さんのイメージを変革すると同時に、今ガチの人気を決定づけるものとなった。 

 

 

 

 そしてそのまた翌日。黒川さんは撮影に復帰し、今ガチの撮影は無事に続行されたと兄貴から連絡が来た。このまま最終回まで頑張れと一応LINEでエールを送っておいた。

 

 その事を、先程まで東京ブレイドの告知ムービーを一緒に撮影していた石見さんに話すと、すごく安心しきった顔をしていた。

 

「良かったね。黒川さんが無事で」

「石見さんが1番心配してましたからね」

「もしかしたら、このまま黒川さんと星野くんのお兄さんが付き合っちゃうかもね? なーんて」

「アッハハ……何かそうなりそな気がしてした。僕もいつか彼女出来ないかなぁ〜!」

「星野くん優しいし顔もイケてるから、女の子に直ぐモテるよ!」

「えっへへ、石見さんにそう言われると自信持っちゃうなぁ〜!」

 

 マジで付き合ったらおめでとうって言おうかな? そう思いながら仕事終わりに苺プロへ帰宅し、またまた数日後。

 

 あれから仕事続きで忙しくて観れていなかった、放置状態の今ガチ。最終話だけ最後まで観たら、キスをする兄貴と黒川さんの映像が流れ、カップリングが見事成立したのであった。

 

 

 【朗報】兄貴に彼女が出来ました。

 

 

「えぇ……マジかよ……。ええな〜青春してんなぁ〜」

 

 僕にも素敵な彼女出来ねぇかな〜。

 





オタクに彼女は厳しいと思います。
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