「そこのぼんやりしてるオマエ達。そう、オマエ達じゃ。」
パムはファクター達に呼びかけた。
「オマエ達のことは姫子から聞いておる。いいか新人達、大事なことは一度しか言わんぞ。」
『何でしょうか?』
「うむ。最近「穹と星、ファクターは特別」だと色んなヤツから聞くが、ここは星穹列車じゃ。この乗客なら、誰もが秘密の1つや2つ抱えておる。」
『なるほど。』
「乗車したからには、ここのルールに従ってもらうからな。よく覚えとけ、特別なのはオマエ達だけじゃない。」
『分かりました。要は本人の同意もないのに詮索などの不快にさせる行動はするなということですよね。』
「そうじゃ。オレはパム、ここの車掌じゃ。列車の中で困ったことがあったら、オレのところに来るように。」
「「はーい」」
『分かりました。』
パムはそう言うとドア付近に行き、掃除をし始めた。
「可愛かったね。」
「そうだな。今すぐモフりたい……」
『やめなさい。』
「これからどうするの?」
『そうだな……丹恒さんたちのことが知りたいからパムに聞きに行こうかな。』
「俺も聞きたいからついて行く!」
「私も!」
『なら一緒に聞きに行くか。』
3人はパムに会いにいった……
~~~~
「もう来たのか?社交辞令というものを知らんようじゃな…それで、オレに何の用じゃ?」
パムがそう言うと星が言った。
「なのの部屋はどこ?」
「なの?三月ちゃんのことか?あの子の部屋を知ってどうする?」
「そんなの一つしかない……女子会だよ!」
星が言うと、穹が言った。
「なら俺も美少女に分類するから女子会に入れるな!」
『無理があるだろ。てゆうか、分類って何?』
「ファクターも女子会に入らないの?」
『星は何を言っているんだ?俺は男だぞ?』
「いや……私たちのお母さんだし……」
『他称な!?他称だからそれは!』
「……聞く気が無いのなら掃除を再開するぞ。」
「ごめん、ごめん。ちゃんと聞くから……」
「まったく……ああ、そういえば、オマエ達が三月ちゃんを助けたと姫子から聞いたぞ。」
「まさにパムの言っているとおりだね!」
「ふむ、勇気があるのはいいが、少し無謀すぎる。まあ、それこそ開拓者のあるべき姿なのじゃが。」
「えへへ……それほどでもあるけど。」
『皮肉を言われてるんだよ。』
「三月ちゃんの部屋なら客室車両にある。ただ…あちこちフラフラするのが好きな娘じゃから、部屋にいるとは限らないぞ。」
「じゃあ、次は俺が!丹恒の部屋はどこにあるんだ?」
「丹恒の部屋?ああ、資料室のことじゃな。」
「「資料室?」」
「丹恒は…あそこに居座っているだけじゃ。オレもあれこれ言うのが億劫で、そのままにしておる。」
パムの言葉にファクターは…
(前世のゲームでも聞いたけど、丹恒は列車で唯一の常識人かと思ったら天然なんだよな……まあ、そこもいいけど!)
丹恒のことを考えていた。
「三月ちゃんの部屋はその隣じゃから、ついでに会ってくるといい。」
「じゃ、行こう。丹恒となのの部屋へ!」
「突撃ぃぃ!」
『待て待て、君たち……まだ俺の質問が終わっていないから。』
「そうじゃったな。何か聞きたいことはあるか?」
『そうですね……あれは蓄音機ですか?』
「オマエ、あれを知っているのか?」
「故郷で少し見たことがあります。(ネットでだけどな!)」
「そうなのか…姫子の趣味でな、色んな所からヘンテコなガラクタを集めてきては、修理しておる。あれは少し改造されているようじゃ。」
『なるほど……後で触ってもいいですか?』
「跳躍の時では無かったら好きに触ってもいいぞ。」
『ありがとうございます。俺は特に聞きたいことは今はありません。星や穹は?』
「俺も特に無いかな。」
「私も。」
「列車の跳躍には、もう少し準備作業が必要じゃ。オレは手が離せないから、自分で好きに見て回るといい。安心しろ。列車でのオマエ達の一挙手一投足は、このオレの目から逃れられんからな。」
『気を付けますのでご安心ください。星や穹にも言っておきますので。』
「そうじゃといいがな……」
『あ、そうだ。姫子さん達にも挨拶をしないと。まずは彼女らにお礼を言ってから丹恒さん達の部屋に行こう。』
「「はーい。」」
ファクター達は列車のラウンジのソファーに座っているヴェルトと、姫子に挨拶しに行った。
~~~~
ファクター達はヴェルトの元に向かった。
「ああ、君たちか。気分はどうだ?」
「私は元気!」
「俺も元気だ!」
『俺も元気です。』
「それは何よりだ。」
ヴェルトさんは星に向かって言った。
「どうやら、君は特別な体質をしているらしいな。」
「ふふん!私はスーパー美少女だから!」
『調子に乗るな。』
ファクターは星に窘めた。
「とにかく、なのかを救ってくれてありがとう。」
「こちらこそ、暴走している時に助けてくれてありがとう。」
星が感謝したが……
「いや、俺は君の体内にあるものを一時的に鎮めたに過ぎない…」
ヴェルトさんが深刻な表情で星を見て言った。
「怖がらせるつもりはないが、正直に言おう___それが君の中に存在する限り、「助けた」とは言えない。」
「……そうなんだ。」
「だが…「星核」が君の体内にある以上、気をつけたほうがいい。俺も姫子も、毎回星核を鎮められるとは限らないからな。」
「……。」
「重い話はここまでにしよう。宇宙ステーションの一件で疲れているだろう?跳躍が始まるまで、列車の中をゆっくり見て回るといい。」
「分かった。」
ファクター達はヴェルトから離れてパーティー室*1に向かう階段付近で話し始めた。
「私の体内にある星核は危険な存在だったんだね……」
『星……』
「私はね。宇宙ステーションで倒れている前のことは思い出せないけど、唯一覚えているのが紫色の女の人のことだけなの。」
「……俺もだ。」
「穹も何だ……ならなおさら不可解だね……何でその人のことだけ覚えているのか、
泣きそうになった星にファクターは言った。
『星。一旦その考えはやめてよく聞くんだ。』
「……ファクター?」
「その人が君に……なぜ星核を埋め込んだのかその人に会わないと分からない。だけど、その人のことを覚えているのならよく思い出して……その人は星核を埋め込んだ後、星たちに酷いことをしたのか?」
「……!」
そう言われた星は思い出した……
【選択の機会がある時に、自分が後悔するようなことはしちゃだめよ……】
「全部は…思い出せないけど、その人は私たちに忠告してくれた気がする……」
「俺もだ……」
『……ならその人に会ってどうして星核を埋め込んだのか一緒に聞きにいこう。そのために俺たちは旅をしよう。彼女に会って星核のことを言うのが当面の目標だな。』
「ありがとう……お母さ……じゃなかった、ファクター。」
『……列車内でならお母さんって呼んでもいいぞ。』
「ほんと……『ただし!』!」
『列車の外ではファクターと呼んでくれ。俺たちの関係を疑い、依頼や開拓の邪魔する輩が増えてしまうからな。』
「分かった!お母さん!」
『なぜ、穹……いや、穹もいいか。とにかく、星。俺たちがついているから安心しろ。ずっとそばにいるからな。』
「……本当に…ありがとぉ……お母さぁん……」ポロポロ
嬉しさで耐えられなくなったのか、星が泣いた。
『ほら……ハンカチ持ってくるからそれで拭いて……』
「ん~~……」ゴシゴシ
「あ!おい!それ俺の服!」
『……全く。』
これを機にファクター達はお互いの絆を強く感じたのだ。
~~~~
その後……ファクター達は丹恒やなのかの部屋に訪ね終わった後、パムから跳躍が始まるアナウンスが聞こえたので、列車のラウンジに行った。
すると、3人に気づいたすでにラウンジにいたなのかが言った。
「おっ、来たね!もうすぐ次の駅に行くけど、どう?ワクワクしない?アンタたちにとっては初めての旅だから…ウチの2倍はワクワクしてるんじゃない?」
「準備OK……準備OKだよ!」
「俺もOKだ!」
『そうだな。俺も期待をはせてるよ。』
「おお。気合入ってるじゃん!へへっ、ウチも初めて跳躍する時はドキドキしてたよ。今はすっかりベテランだけどね!」
「なの先輩!私はドキドキしてます!」
「俺も!」
「安心して。すぐに慣れるし、気がついた時にはウチみたいになってるから。」
なのかがそう言うと、星と穹にアドバイスをした。
「まずは、不安の根源を掴むの。」
『いやいや、そんなの掴めるわけ……』
「「うん、掴めた。」」
『掴めんの!?』
「え…!ウチも修得するのに半年もかかったのに……?……やるじゃん。」
『なのかさん!?』
「じゃあ、次は意識を集中させて、すべての不安を、掴んだ一点に集めるの。」
「「うん、集めた。」」
『もうツッコまないからな……』
「センスあるね!最後は__思いっきり不安を引っ張り出して、投げ捨てる!」
「「うん、捨てた。」」
「マジ?ウチは一度も成功したことがないのに!で、気分はどう?少しは楽になった?」
「楽になったかも……」
「分からん!」
「まぁ、ウチも成功したことないからね……要は気持ちの問題だよ!」
『そんなんでいいのか……?』
その後、ファクター達はヴェルトに仲間たちのことを聞いたり、姫子に銀河の本質や星神、派閥や運命*2などを聞いた後、パムの指示を聞きに行った。
「遅いぞ!これでやっと揃ったな!」
パムが言うと、星がふと思いついたように言った。
「……あれ?そういえば丹恒は?」
「そういえば……」
「どうせアイツは来ないじゃろう、放っておけ。」
そんなやり取りをしながら3人は跳躍に備えてソファーに座った。
~~~~
~星 side~
(宇宙……銀河列車……星神……)
「はぁ……SF映画の世界にでも召喚されたの?私の体の中に星核とかいう訳の分からないものまで……」
私はそんなことを言いながら天井に手を伸ばしていると……
「星を捕まえてるの?」
なのが私の目の前に立っていた。
「えへへ、ウチもやったことがあるよ~……まあ星じゃなくて__ライトだったんだけどね。」
なのがそう言いながら私の隣に座ると3人に自身についての昔話をした。
「氷の中から目覚めた時、おぼろげに星の光が見えたんだ__だから、思わず手を伸ばしたんだけど、それはライトの光でね。その時、それを列車のみんなに見られたんだよ。超気まずかったな。」
「みんなに見られてた?」
私が尋ねるとなのが答えた。
「そうだよ、何か奇妙な宇宙生物を観察してるみたいだった__でも仕方ないよね。みんな、ウチのことを知らないわけだし。__アンタたちは想像できる?列車に引き上げられる前、ウチは
穹が言った。
「そんなことがあったのか……」
なのが頷くと、続けて言った。
「姫子とヨウおじちゃんと…あともう一人の誰かが、氷を溶かして、ウチを助けだしてくれたんだ。」
「氷にどうやって封じられたの?」
私が尋ねるとなのは言った。
「さあね。昔のことは全然思い出せなくて。ウチが誰なのかも、本当の名前も、どこから来たのかも…全部きれいさっぱり忘れちゃった。「三月なのか」って名前もウチが目を覚ました日にちなんで付けただけ。だからウチは列車に乗って、一緒に旅をしてるんだ。いつか、自分の過去が見つかると信じて……ありゃりゃ、なんか重い話になっちゃったね。」
「ごめん。」
私が謝るとなのが言った。
「大丈夫、ウチが先に言い出したもん。そんな顔しないでよ、星。星穹列車に乗るなんて経験、滅多にできないんだから…あっ、車掌さんだ。」
なのに言われて前に振り向くと、パムが目の前にいた。パムは言った。
「既に列車は宇宙ステーションの安全範囲から出ておる。10分後には跳躍を開始する予定じゃ。
4人はちゃんと座っとくように。揺れには気を付けるんじゃぞ!」
『分かりました。』
「は~い」
ファクターと穹が答えると、なのが言った。
「う…毎回わざわざ言いに来なくていいんじゃないかな、パム?もう長いこと乗ってるんだから~」
『パムが注意しに行くあたり、なのかさんは何か無茶なことをしてるんでしょ?』
「ファクター乗客の言う通り、乗客の三月なのかが毎回自分の限界に挑戦して、転ぶからのう。」
「えへへ、これを「なの転び八起き」という、なんちゃって。」
なのがそう言うと、
「車掌さん、ジュースもらっていい?ありがとう~!」
「跳躍まであと5分じゃぞ!何か飲みたかったら、終わってからにするんじゃ!」
「……だって、喉が渇いたんだもん!」
2人のやり取りを聞きながら、私は穹とファクターに言った。
「楽しみだね。穹、お母さん。」
「ああ、一緒に旅をしような。星。」
『一緒に行こうな。』
「うん!」
そんな風にやり取りをしていると……
《あーああー乗客は座席に戻るのじゃ》
パムのアナウンスが聞こえた。目の前になのが
「私は絶対に転ばない、私は絶対に転ばない……」
ブツブツ言いながら、座席に座らず立っていた。
『なのかさんが怪我をしないといいんだけど……』
ファクターがなののことを心配していた。
《まもなく跳躍が始まる__しっかり準備をするのじゃ!》
そして、徐々に振動が強くなり、パムのカウントダウンが始まった。
《5…4…3…2…1!》
そう聞こえた次の瞬間、列車が青く光ると重力が横向きにかかった。
これにて序章は終わりです。
次回から 第1章ヤリーロ‐Ⅳ編に突入します。