PERSONA EPISODE of SHADOW WORKER   作:漆竜 黒鍵 

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 鳴り響く鐘の音、教会は祝福の拍手が鳴り響いている。

 隣に立つ人とブーケを持ってる私。

 互いに笑顔で笑い合い前を向く。

 あー、幸せだなぁ……

「ウチ……いや、私ラビリスは、結婚しま」

 その言葉を言い切る前に目が覚める。
 
 自身のメンテナンスを目的としたカプセル、巌戸台寮に住むことになったんだっけ…。

 というか

「なんちゅー夢見とんのやウチはァああああああああぁぁぁ!!!!!」



総てに翻弄され踠き苦しみ進む愚者、総てを破綻させ抱腹し嘲笑う道化師。 前編

 

 恥ずかしさを忘れる為に一頻り叫んだ。

 

 気は済まないが時計が目に入りその時刻がまだ午前の3時になったばかりだということに気が付き叫ぶのを辞める。

 

「あかんあかん…こんな叫んだらみんなの迷惑になる…」

 

 しかしどうにもまだ落ち着かない、夢による恥ずかしさのせいでもう一度寝るのも難しい…。

 

「お風呂入って気分変えよ…」

 

 そしてバスタオル1枚と着替えを持って部屋、自身の格納スペースから出る。

 

─────────────────────────

 

 巌戸台寮の浴場。

 

 ついこの間まで男しか住んでなかった故に天田と俺、そしてコロマルで自由に入りたい放題だったここも今では女子の入寮ラッシュで明確に男湯女湯の時間を定めている。

 

 未だ日の登らないこの時間帯でもそれは切り替わり続けており、今の時間は男湯。

 

 まぁ表の電光掲示板(先日みつ姉に頼み込んでつけてもらった)でどっちの湯かは表示されてるから間違える奴はもう居ない筈だ。

 

「あーーーーぅ……」

 

 そして俺、玖城樹下は訓練の時の疲れを発散する為に入浴中である。

 

 夜の間にも入浴していたが全く疲れが取れなかったのでもう一度のバスタイム。

 

 顔やら身体やら骨まで達していたダメージも湯に浸かれば幾分か和らぐ。

 

 「1人で何者にも侵されないこの時間は至福のひととき…久しぶりだなぁ………」

 

 しかし流石に逆上せそうになってきている。なんやかんや1時間近く浸かっている。

 

 そろそろ出るか……

 

───────────────────────

 

 ラビリスは自分の部屋から出て浴場の脱衣所で服を脱いでいく。

 

 表の電光掲示板にはまだ男湯となっていたがこんな時間に入るのは私くらいだろう。

 

「まだお日さんも出てない時間帯やし、気にせんでも誰も居らんし入ってこやんやろ。」

 

 そして総ての衣類を脱ぎ、脱衣所の姿見に映る自身の機械の身体。

 

 別にこの身体が嫌だとは思わないが

「樹下くんもやっぱ柔らかい人肌の方がええんかなぁ…」

 

 って、そんなこと考えてるから寝れなくなったのになんで考えるんだろ。

 

 もう早くお風呂に入ろう、そう思い浴場の戸を開けようとしたら戸がひとりでに開いた。

 

 そんな…まさか人が居た?!

 

 男湯の時間になっているということは中に居たのは十中八九男子!!

 

 そしてこの寮には男子は天田くんと樹下くんの二人のみ、さらに言えば天田くんは今夜シャドウワーカーの活動がある為外泊、つまり中に居るのは100%樹下くん!!!!

 

「なんということや…そんなん、

 

 

 

 

 

     ウチにとって最高やないかッッ!!!」

 

 そして戸が開いていく。その先に見えるであろう樹下くんの裸。

あーだめよそんなのっ私…私…!!

 

「もう辛抱たまらん!!御開帳!!!」

 

 

─────────────

 

 俺は戸を開いて脱衣所に入る。

 

 誰もいないその脱衣所で軽く身体を屈伸させてストレッチ…

 

「それにしてもほんとに痩せてきたな…」

 

 今朝、厳密には昨日の朝にもみていた自分の体を眺める。

 食事が取れていないことから来る脂肪の消費、それによって身体が限界まで絞られてきている。

 本来なら健康的にはかなり甚大な自体だが、それとは真逆に身体的な能力は以前よりも高まり、思考や判断力はより研ぎ澄まされている。

 

 自分の身体に何が起きているのか不思議に思っていると、ふと独りでに戸が開いていく

 おそらく脱衣所と浴場それぞれの内圧差から来るものだろう。

 

「本当は引き戸タイプじゃない方がいいんだろうな…今度これもみつ姉に相談しよ」

 

──────────

 

「もう辛抱たまらん!!御開帳!!!」

 

 そう言って焦らす様な戸の開きを無理矢理拡げ中に広がる景色を目を閉じて夢想する。

 目を開けば樹下くん目を開けば樹下くん!!!

 

「ウチは今日この日のことを忘れはしない……さぁ目に焼き付けます!!」

 

 しかし目の前には何もいない誰もいない。

 

 そもそもここ数十分程入浴されていた形跡すらない。

 

 強いて言うなら浴場の窓が少し開いており、若干の肌寒さが伝わってくる。

 

   ま、まさかこれは

 

「ちっきしょぉおおおおお!!!内圧差による自動開閉やないかボケェぇぇぇぇ!!!!!」

 

────────────────────

 

「?」

 

 ロビーの厨房で牛乳を飲んでいると数十分前まで居た浴場の方から凄い声が聞こえた気がした。

 

 まぁどうでもいいか、そう締めくくりコップを洗浄して乾燥棚に置く。

 

 そして欠伸をしながら2階に移動する。

 

 そういや天田はラビリスやテレジアが来てからしばらく経って用事の為に外出しており、その日のうちに戻ってこなかったな。

 

 まぁ良いか、さてもう一眠りしますかねぇ…

 

─────────────────────────

 

 それから数時間後

「なんでお姉ちゃんは浴室で叫んでたんですか?」

 

「なんも聞かんといて……お願いやから…」

 

 テレジアが浴室で叫んでいたらしいラビリスに対してそんなことを聞いている。

 

 あの時浴室で叫んでたのラビリスだったんだな。

 

「よぉ、おはよう2人とも」

 

「あ、玖城さんおはようございます。テレジアは本日も機能万全です」

 

 自身の機能的な良好を伝えるテレジア、昨日ラビリス関連でかなり人間的だった気がしたが、やはりまだ人間味が薄い。

 

 そんな妹に対して姉であるラビリスは

「……っ!…お、おはようござしゅ……ございます…はい」

 

 俺から顔を背けて口元を隠している、俺に対して恥ずかしがってるがその理由に心当たりは無い

 

「………、………………玖城さん貴方まさかお姉ちゃんに手を出して」

 

「濡れ衣にも程がある」

 

「樹下くんは出しとらへんよ!?

 ウチがただちょっと一人で舞い上がっ…やなくてなんでもないからほっといて!!!」

 

 そういうと階段へ走ってそのまま3階まで逃げていくラビリス。

 

 逃げるラビリスを追いかける気にならない俺はテーブルの椅子を引き、深く腰をかける。

 

 本日は4月29日。火曜日ではあるものの旧みどりの日、現在は昭和の日と呼ばれる祝日であり俺達学生ももちろん休みである。

 

 綾崎はどうやら友達と遊びに行ったらしく、寮のロビーにある連絡掲示板に書かれていた。

 

 天田はまだ戻ってきてないらしい。

 

「玖城さん、何か食べますか?作りますよ」

 

 とテレジアに聞かれたが

 

「あー、いやいい。

 腹減ってないから代わりに緑茶が冷えてるからそれくれ」

 

「分かりました。

 玖城は今拒食症の症状を患っていますからね、配慮足らずで申し訳ありませんでした。」

 

 …待て今なんて言った?

 

「俺言ってないよな?」

 

「はい、言われておりません。

 しかし昨日食事を摂取しておらず、今も摂取しないという事と、玖城さんの昨年度の身体測定数値と現在、視認範囲内のみですがその差を比較した際重度の栄養失調と思われる特徴がありましたのでもしやと。

 どれ程の期間摂取していないのですか?」

 

「……………」

 

そうか……バレたかぁ………

 

「それ…誰かに言ったか?」

 

 テレジアの方を見れない、視界はずっと天井を移している。

 

「いえ、憶測の域を出ていませんでしたから」

 

 そうか……

 

「……4月7日の夜飯以降、つまりペルソナの覚醒以降何も食べてねぇ…。

 何食っても不快感で吐き出しちまう。流動食ならって思ってゼリーとかも試したが同じだ、何食ってもペルソナで人を殺した時の感覚にリンクする。

 だから今は水やジュース、栄養はサプリメントで誤魔化してる状況だ…他言すんじゃねぇぞ…?」

 

 バレてしまったのはもう仕方がないことだ。

 だが俺はこれを言わないように釘を刺す、が

 

「しかしこの話、せめて美鶴総帥にはお話すべきかと。

 総帥はシャドウワーカー全体を管理しており、貴方のその不調は彼女が把握すべき事案のはず。

 それに何よりも貴方と総帥は従姉弟の関係であり、相談すべきかと「だからこそ!!」

 

みつ姉への説明を推奨するテレジアの言葉を、大声と机を叩く拳で遮る。

 

「……従姉弟で…昔から知ってる家族だからこそ言えないんだよ…、心配かけたくないから…。

 とにかくこれはオフレコだ、それにガリガリになってても今現状倒れそうな感覚は無いし、身体能力も思考能力もこうなる前より高くなってる。

 だからこれは今は心配することじゃねぇんだよ。

 

 ………悪かったな、脅すような形になって。でも本当に大丈夫だからさ、気にすんなよ」

 

 

 ………沈黙が流れるロビー。重苦しくなってしまったな…せっかくの祝日なのに…。

 

「………あー、そうだ」

 

 俺は今思いついたことを口にすることに決めた。

 

「お前もラビリスもずっと寮の中ってのは退屈だろうし……なんなら今から3人でどっか行くか?」

 

 俺とテレジアとラビリス、三人でつるむってのも悪くない気もする。

 

 それにみつ姉もこうなることを望んでるかもしれないと思う。

 

 ラビリスが俺との戦いから刺激を受けたと言っていた、ならテレジアもここに連れてきたということはテレジアにもなにかの刺激を与えることを望んでいると思う。

 

「……良いのですか?私なんかも一緒で」

 

「なんかって言うなよ、そんなこと言うと俺だってやばいこと誰にも明かさないヤバいやつなんだから。

 それに俺はお前ら2人と遊びたいって思ったんだよ。

ほらさっさとラビリス呼びに行こうぜ。巌戸台の楽しみ方を教えてやるよ」

 

「……はい」

───────────────────

 

 …………そんな

 

 聞くつもりなどなかった、これは偶発的であり意図したものでは無い。

 

 3階の自室から再びロビーへと降りる中で聞いてしまった樹下くんの拒食症の話。

 

 樹下くんはそれを誰にも明かしたくないという…でも

 

「でもこんなん…絶対黙っとったらあかんやん……でも」

 

 でも樹下くんは望んでいない…ならきっと言ったらダメなことなんだと思う。

 だから私はこの話を聞かなかったことにしようと決めた。

 

 きっとこれは間違いだけど、だけど

 

「樹下くんが悲しむ顔は見た無いもん……」

 

 さて、話通りなら今から2人が上に来る。

 

 だから私は何も聞いてないよという風を装うことにする、これが私の新しく犯した罪。

 

 でもこういう罪なら、きっと悪いことじゃないだろう。

 

─────────────────────────

 

 俺はラビリスとテレジアを連れて巌戸台の商店街に来ている。

 

 しかし商店街と言っても普段よく行くはがくれやウミウシ、ワックバーガーや本の虫がある表側ではない。

 

 服屋や食料品、居酒屋、小物を売ってる店等が軒を連ねる中側、又は裏側へと二人を連れてきている。

 

「まさかお前らが服を持ってないとは思わなった。

 とりあえず2人ともそのセーラー服?で着いてきてもらってるけどさ」

 

 そうして二人を見れば2人とも同じ制服。

 

 この辺や月高のものではなくもっと地方の方で使われているものを着用しているのを見る。

 

 やはり人間社会に交わるならある程度服は無いとな。

 

──────────────────────────

 

 巌戸台商店街、衣料品販売店・アプサラス。

 

 店内には所狭しと多くの衣服が並んでいる。

 

「ここは色んな服が集まる店でよ、よく見るものもあればなんじゃこれってやつもある。

 

 ほらこの水着見てみろよ、昭和中期でよく見た貝殻ビキニだぜ?よくこんなの売ってるなって思うよ。」

 

「いやこれ、ホンマに色んな服があんなぁ…」

 

「これは…あまり日用としては適さないのでは?」

 

「んーどれどれってなんやのこれぇ!?」

 

「これは…ドエロだな…」

 

「樹下くんここホンマに普通の服やなん?そういう商品売っとる店ちゃうやろな?」

 

「俺だけじゃなくて天田とかも来てるから割と普通の店のはずだが……これ見ると自信なくなるわ…」

 

「ビキニアーマーって普通売っとらんやろ………樹下くんのエッチ…」

 

「俺悪くなくね!?」

 

 この姉妹はどうにかして俺に濡れ衣を着せたい呪いでも掛かって居るのだろうか?

 

 解せぬ……

 

「あ、これアイギスに似合いそうやな…」

 

「確かに、アイギスには青を基調とした服がよく似合いますからね。」

 

 そう言って2人が見ているのは青を基調としたレース生地のドレス。

 

 あー、確かにあの人に合いそうだな。

 

 だがしかし

 

「末っ子の服を選びたくなる姉心もわからんわけじゃ無いけど、今は自分達の服を探しなっての」

 

 そう言って2人にそれぞれ適当な服を渡す。

 

「……これ樹下くんの趣味?」

 

「玖城さんの好みに着飾れということですか?」

 

「違うわい、お前らに似合いそうだから渡しただけじゃい」

 

 そう言って渡したのは以下の通り。

 

 ラビリスには白のシャツに黒の薄手のジャケットと灰色のデニムパンツ。

 

 ラビリスの銀髪は綺麗で目立つ、ならそれを際立たせるために服の方は黒を基調とすればその銀髪をより強調させると思う

 

 テレジアには茶色の7分丈ボトムスに緑と白と黒、三色のチェック柄のシャツとニット生地のトレーナーを渡した。

 

 赤い髪ってのはみつ姉もそうだが何着てもそれらに負けにくい、なら多少地味な服も赤い髪を持つ人物が着れば通常よりもよく見えるだろう。

 

「んー、なんや意外としっくりくるな。

 あ、このデニムストレッチタイプなんや、やから動きやすいんやね」

 

「なんだか私の服、少年のように見えますね。玖城さんの趣味がよく分かりますね。」

 

「うっせぇわ、気に入ったなら気に入った、気に入らないなら気に入らないでハッキリ言いなさい」

 

 俺の言葉に対して2人は顔を見合せてから俺の方を見る。

 

「似合う?」「似合いますか?」

 

「似合うと思ったから渡したんだが?」

 

「ならうちコレで行くわ」

 

「私もこれで、動きの邪魔にならないので気に入りました」

 

 宜しい、俺は二人の服代を店員に支払う。

 

「ええの?」

 

「使う機会ないから貯まるんだよ、なんやかんやみつ姉の家とか南条の方からのお年玉って金額がやばいから下手に使えないしよ。

 なら貯めたままで腐らせるよりこういう形でバッと使う方が気分がいいんだ。ほら行くぞ」

 

──────────────────────────

 

 さて、次は何処に行くか。

 

 居酒屋は俺の今の状態では絶対だめだし、食料品等以ての外。

 

 そもそもラビリスもテレジアも機械の乙女だ、そっち方面をオススメする意味は無い。

 

 ならこれは選択肢は一つだけだな。

 

──────────────────────────

 

  巌戸台商店街、小物ショップ・サソリの囁き

 

「店の名前は特に気にするな。ここは小物を中心に色んなものが売ってる店だ。

 例えばこんな人形も売ってたりとかな」

 

 そう言って手に取ったうさぎと犬のぬいぐるみを持って見せつける。

 

「あかん樹下くん可愛い」

 

「俺を見てどうすんだよ、商品を見ろ商品を」

 

 そう言えばそれぞれ思い思いの方向へ歩いていく。

 

 そういやカーテンのシャーってなる部分1個壊れてたな……

 

「ここもスウィーティー・アプサラスのように色々売ってますね。」

 

「でもさっきの店と違ってよっぽどなもんはなさそうやねり

 ほら見てやこの人形、可愛い人形さんやねぇ〜ってなんやこれ着せ替えできるんやね」

 

 そう言って人形の服を触って慌てて元に戻すラビリスは顔を赤くして俺に近寄ってきて。

 

「樹下くんのエッチ!!!!」

「濡れ衣も大概にせぇよおんどりゃァ!!!」

どうやらあの人形の服の下が割とリアルに作られてたらしい。

 

「あ…」

 

 そんな俺達を気にせずテレジアは気になる物を見つけたようだ。

 

 テレジアに近づけばその手には4等分に別れる四葉のクローバーのアクセサリーだった。

 

「これおもろいな、四葉のそれぞれが単独でネックレスとかピアスとして使えるみたいやね」

 

「友情とかそういうのを分かりやすく形にしたものだろうな。

 離れててももう一度会えば以前と変わらず友達や親しい中だって言う願掛けみたいなもんだな」

 

「離れてても…ですか…」

 

 そういうとそのアクセサリーを両手で優しく包むテレジア。

 

「気に入ったなら買うか?」

 

「良いんですか?」

 

「良いんだよ、お前もラビリスも今日は俺にもてなされてなさい。」

 

 テレジアからアクセサリーを受け取って会計を済ませれば商品をテレジアに持たせる。

 

「渡したい友達とか大切な人が見つかるといいな」

 

「はい………」

 

──────────────────────────

 

良いなぁテレジア……樹下くんからのプレゼント…………ん?

 

「……………」

 

 なんだろうあの暖簾…丸の中に18の数字がピンク色で書かれた黒い暖簾だ。

 

 気になり足がそこに向かいそうになった時、肩に樹下くんの手が置かれて止められる。

 

「ラビリス、そこは俺らは入っちゃダメなとこよー。あと3年は待ちましょうねー」

 

 気になる……

 

「行くぞこのムッツリスケベ」

 

ンガッ!?そういう奴なの!?

 

─────────────────────────

 

 衣料品と小物類を見ていて携帯の時刻表示を見れば既に正午か…あれ?

携帯のモニターにメール受信を知らせるマークがある。

 

「……ふむ」

 

 どうやらこの後シャドウワーカー関連の訓練があるようだ。

 

 それにラビリスとテレジアにも伝える。

 

「ってことでお出かけはここまでだな。」

 

「樹下くん感想は?両手に花やったんやで?」

 

「ニヤついてんじゃねぇよ」

 

 アホなことを聞いてくるラビリスの額にデコピンを喰らわせて歩き出す。

 

 その後ろに着いてくるラビリスとテレジア。

 

 なんだろうこういうのなんて言うんだっけ?

 

 あ、ヒヨコの刷り込みだ。

 

─────────────────────────

 

 シャドウワーカー活動拠点、訓練ルーム

 

「ということで今日は玖城、綾崎、テレジアによる3人編成での戦闘を経験してもらう。」

 

 俺達の全員が集まった時に真田さんから今回の訓練内容を聞くが

 

「………真田さん、テレジアの武器エグくないっすか?」

 

 俺はテレジアの持っている大変物騒な代物を見つめながら真田さんに耳打ちする。

 

「確かに俺もそう思うが」

 

「これが特別制圧兵装六式の標準武装になります。

武装呼称パンツァーファウスト、正しく大火力のロマンかと。

 それに大型シャドウの掃討、または捕獲を主とした運用を想定されていた私の武器としては適任かと。」

 

「いや過剰でしょ!?」

 

 テレジアの言葉に過剰だと訴える綾崎。

 

 玖城もそう思います、はい。

 

「いえ、対シャドウを想定すれば寧ろ常識の範囲内です。

 さらにこのパンツァーファウストは第二次世界大戦において使われたものと違い弾頭さえ装填すれば再度発射が可能です。

 そしてこのテレジアの肩部と腿部に取り付けられた追加装甲の内側にはその弾頭が各部に4つ、つまり計16のより弾頭を備えております」

 

「過剰やろがい!!!!

 寧ろそれで倒せない大型シャドウが居ることの方が怖すぎるわ!!!」

 

 真田さんが一度咳払いを行う。

 

「まぁテレジア自身の武器はこの際置いておいて、今回の訓練の内容を説明する。」

 

 そういうと真田さんの手には何やら見慣れない装置がある。

 

 大きさとしては指輪ケース程、そこには時計のエンブレムのようなものがつけられている。

 

「なんすかそれ?」

 

「気になるか玖城?まぁ見ておけ。」

 

 その装置に対して真田さんが自身のペルソナの力を流入させる。

それによりエンブレムだと思っていた時計がその針を急速に回転させ。

 

「っ!?」

 

「えっ……これって」

 

 俺と綾崎が周囲の、いや世界そのものの変化に驚く中、テレジアだけは冷静にそれを分析し答えを出す。

 

「影時間ですね」

 

「そうだ、これはエルゴノミクスの黒服共から奪ったものでな。

 俺も実物を触って動かすのは初めてだが、思った通りこれが影時間を再現する装置だったようだ。」

 

 成程、だからアイツらタイミングを測ったように影時間を発生させることが出来たのかと過去の経験に漸く納得を示せた。

 

「でも真田さん、影時間を再現したからってどうするんですか?訓練なんですよね?なら玖城やテレジアとの連携で誰かと手合わせするとかじゃ」

 

「ああ、だからその誰かを用意する為に影時間にしたんだ。

 今回の訓練はこの影時間が終わるまでの約1時間程、その間にこの施設内にいるシャドウを全て撃破しろ。」

 

「はぁ!?シャドウを全滅させろって……マジで言ってます!?」

 

 この施設内って、こんな広い場所をか!?

 

「安心しろ、お前達が殲滅出来なかった場合俺が責任をもって殲滅する。

 それにお前達3人だけというわけじゃない。

 

 おい、聞こえてるか山岸」

 

真田が何も無い空間に声を掛けた時、俺達全員の脳に声が聞こえる。

 

『はい、聞こえています真田先輩』

 

「ちょっ、なん、どこから聞こえてるのこの声!?」

 

「まさかこれは脳に直接ということでしょうか?」

 

「山岸、随分力をつけたな。通信機器なしで通信出来るとは。」

 

『ありがとうございます真田先輩。3人とは初めましてだよね?

 私の名前は山岸風花、シャドウワーカー所属のペルソナ使いで、作戦間皆のバックアップや情報分析を担当させてもらうね』

 

つまり

 

「この施設内のシャドウの情報をくれるってことっすか?」

 

『うん、そういうことだね。』

 

 そうか

 

「ならどんなのがいるんすか?居場所はこっちでも把握してるんで特徴だけ教えて下さ……なんだよ綾崎?」

 

「いやだって、玖城今場所把握してるって言った??」

 

「はぁ?んなもん分かるだろ?何言ってんだ??」

 

「いやアンタが何言ってんの!?」

 

「玖城さん、私や綾崎さんはシャドウの配置は把握していません。」

 

「はぁ?何言ってんだよ、なんか感じるだろ?ペルソナ着いてんのか?」

 

「いやそんなタマ着いてんのか?みたいなノリで聞かないでよ!?

 私達は今シャドウがどの辺にいるかなんて分かんないし感じないって言ってんの!!」

 

『真田先輩……これって』

 

「あぁ、どうやら玖城は複数のペルソナを使い分けれるだけでなく、お前や美鶴のように感知タイプの適性もあるらしいな。」

 

 ま、まじか……全然知らんかった。

 

 てっきりこいつら二人も大まかに敵が何体居るかわかってるのかと思ってた……。

 

「玖城、一応確認だがこの施設内にシャドウは何体いる?」

 

「……えっと、多分大小全部含めて34、3階に12体、2階に14体、1階に8体ッスね」

 

「山岸」

 

『そうですね、私が感知できてる数と同じです。』

 

「決まりだな。」

 

 そういうと真田は俺の肩に手を乗せて、いやこれ載せたんじゃなくて叩いてるいってぇぇえ!?

 

「すごいじゃないか玖城、大したやつだ。」

 

「……うっす。でも敵の詳細まではわかんねぇっす。

 だから山岸さん、俺らはそれぞれの階層にバラけるんで俺の声をみんなに聞こえるようにして欲しいっす。

 んで出来たら敵の詳細も教えてください。」

 

『うん、もちろんそうするつもりだよ。』

 

「あざます。んじゃ綾崎は3階に、テレジアは1階で俺は今いる2階を担当する。

 ルート案内は任せろ、行くぞ!!」

 

「うん!」

「了解しました」

 

 3階には比較的小型が多い、これは綾崎の広範囲の炎魔法での掃討力が最も適している。

 

「行くよ!オグニイェナ!!」

 

 それを示すように綾崎のオグニイェナの大鎌の回転により拡散する炎魔法マハラギオンによって半数が即座に消滅。

 残りの6体も広範囲を薙ぎ払うことに適したオグニイェナと綾崎の持つ3本の大鎌によって殲滅していく。

 

 ───────────────────

 

 そして1階のシャドウ共、これらは数こそ他の回数に比べ少ないがその全てが比較的大型の反応を持っていた。

 

「さぁ始めましょう。

 対シャドウ特別制圧兵装六式テレジアの力、今こそご照覧ください。

 

  ペルソナ、バートリー!」

 

 テレジアがペルソナ召喚のシーケンスを実行する。

 

 現れるのは古今東西に伝わる数多の拷問器具、それを携え、または背後に付き従わせる血濡れの機械令嬢。

 

 そしてそのうちの一つである猛牛を模した拷問器具、ファラリスの雄牛が急激にその温度を上げ1体目の大型シャドウを飲み込み滅却する。

 

 そして残り7体の大型シャドウの背後にアイアン・メイデンを設置、そこへシャドウを叩き込む為に全シャドウに向けパンツァーファウストを発射。

 

 それによりシャドウ共を飲み込んだアイアン・メイデン全機はその扉を固く閉ざし、周囲にシャドウの体液をまき散らす。

 

 ──────────────────────

 

 そして2階、俺が担当するエリアにいるシャドウは最も数が多く。また種類も様々だ。

 

「山岸さん、全員の弱点を俺の脳に転送してください。」

 

『うん、わかったよ玖城くん。無茶はしないでね?』

 

 何言ってやがる。化け物と戦ってる時点で無茶だろぉが!!

 

 俺は自身の武器であるガンブレードを構えて突進、身近に居たシャドウをその刃で貫きながら尚疾走。

 

 拒食症によって身体はやせ細っていても、この身体の膂力は日に日に上昇を続けている。

 小型中型程度のシャドウならば複数体連なっても尚押し通せる。

 

 そして6体を貫くことに成功した時にその全てを上へ持ち上げて蹴り飛ばす。

 

 宙を舞うそれらを討つのは俺のペルソナ。

 

「来い!!メサイア・影神!!!」

 

 召喚器をこめかみに当てトリガーを引くことでその冥府魔道の救世主であるメサイア・影神が顕現し浮き上がる6体のシャドウを木っ端微塵に切り結ぶ。

 

 そしてその後にメサイア・影神がその姿を光の粒子に変えれば第二のペルソナ。

 

「ルシファー・影神!!」

 

 純白の六羽の翼を携える純白衣装の白髪の男性の姿をしたルシファー・影神を召喚させ再び6体のシャドウをその白光を用いて塩へと転じさせ無力化。

 そして残り2体、全34体の中で特筆して強力なこの二体に対し俺が選ぶ力はメサイア・影神でもルシファー・影神でもない強烈な制圧力を持つ1体。

 

「ペルソナァァァァァ!!」

 

 再びトリガーを握り締め召喚、そこに現れるのは痩躯白貌の悪鬼。

 

「カズィクル・ベイ!!!」

 

 その顕現とともに周囲の床より吹き出す闇、それは即座に杭の形を取り2体のシャドウを捕縛。

 

 それと同時に天井と床が砕ける。上からは綾崎のオグニイェナの大鎌による斬首の一閃、下からはテレジアのバートリーによる拷問器具である三角木馬が飛び出しシャドウを股を起点として割り別つ。

 

 これにより全てのシャドウの制圧を完了する。

 

─────────────────────────────

 

『凄い……もう殲滅完了だなんて』

 

「もしかしたら俺達が影時間で戦っていた5年前よりも強いかもな」

 

『ふふ、そうかもですね』

 

「?何がおかしい山岸」

 

『だって、真田さんが嬉しそうだから』

 

「……まぁそうだな。」

 

 玖城達の成長を見て確かに嬉しく思う。

 

 この短期間で急成長する様は俺達に対する発破にも思えるから此方としても望ましい。

 

 しかしそれ故に

 

「山岸、順平と岳羽はもう来ているのか?」

 

『えっと、2人とももうすぐ着くみたいです。』

 

「そうか、ならかつての特別課外活動部全員が集まれそうだな。」

 

 この後に控えている会議に向ける足が重たくなる。

 

──────────────────────────

 

 訓練が終わり別室で待機していたラビリスとも合流して帰路に着く。

 

「おつかれ皆、風花さんめっちゃ褒めてたで」

 

「私達もさっき直接凄いって言われちゃったよ。なんか山岸さんって雰囲気柔らかいよね」

 

 ラビリスと綾崎の会話を聞きながら岐路を続ける。

 

「そういえば天田さん、今日も寮には戻らないようですね」

 

「らしいな、なんでもすごく大事な話し合いだかららしいが、何話してんだろぉな。」

 

「玖城がすぐ女の子に触るとかじゃない?」

「樹下くんがすぐ女の子の裸見たりとか?」

 

「おやおやおや、テメェらOK上等だ召喚器出せ戦争だ」

 

「皆さん怒られますよ?」

 

 

 ─────────────────

 

 そんな4人の様子を窓から笑顔で見つめている美鶴、しかしその顔はすぐに険しいものとなる。

 

「みんな、集まってもらって済まないな。特に天田、明日は学校だと言うのに本当に済まない」

 

「いえ、気にしてません。それにのほほんと見過ごせる話じゃないですし」

 

「まぁ天田位の歳になると夜更かししてもある程度平気だしなぁ」

「もぉ子供扱いしないでくださいよ順平さん!」

 

「いやぁ悪ぃ悪ぃつい癖で」

 

「順平あんたそういうの治した方が良いよ?いつまでも草野球監督するのもいいけど、そろそろ千鳥との生活考えてちゃんとした職に」

 

「就いてるわ!!今がその職だわ!!人をヒモみたいに言うなよゆかりっち!!」

 

「相変わらずで何よりだ」

 

 部屋にはかつて特別課外活動部として影時間の消滅やニュクス撃退を目的に共に戦った仲間たち。

 桐条美鶴、真田明彦、伊織順平、岳羽ゆかり、山岸風花、アイギス、天田乾が顔を揃えている。

 

「それで美鶴先輩、その……彼と、有里くんと同じ力を持ってるペルソナ使いがもう1人現れたって話ですけど……」

 

 一頻りの談笑の後、ゆかりが美鶴に恐る恐るという体で尋ねる。

 

「……ああ、その通りだ。彼と、有里湊と同じ複数のペルソナを使う能力者は今までに二人、我々の前に現れた。

 

 しかしその中にメサイアという名を持つ有里のメサイアと似たペルソナを持っているものは居なかった。」

 

「え?メサイアと似てるって……それマジだったんすか!?」

 

「順平さん冗談だと思ってたんですか?」

 

「いやだって普通思わねぇじゃん。あんなすげぇペルソナと似てるペルソナがいるなんてよ。」

 

「それは……そうですけど、僕も最初見た時は驚きましたし。」

 

 真田が続ける

 

「そのペルソナ使いの名は玖城樹下、そいつか初めて覚醒したのがメサイア・影神という黒いメサイアだ。」

 

「真田さんが言うとまじなんだって思えるな……。

 でもそれがなんで重要なんすか?ペルソナなんて同じ名前のは珍しくないし、その場合形が違うことなんて……ってそうか、形が似てるんだもんな。」

 

 言いながら順平もその自体の以上に気がつく、見た目も名前も似ているということは何かしらその2人に繋がりがあるということだ。

 

 そしてそこから見るこれから起こり得ることは

 

「かつて有里が来たことによってあの戦い、12体の超大型シャドウとニュクスとの戦いが始まった。

 それと同じ力を持っている樹下がペルソナ使いとして動くことはそれの再来とも取れる。

 私としては可愛い従弟がそのような目に合うことは出来れば避けたかったが」

 

「ちょっ、そのペルソナ使いって美鶴先輩の従弟なの!?」

 

「……ああ、まぁ厳密にはもっと遠縁だが」

 

「そっか……だから私のペルソナで感じた玖城くんのペルソナの反応が桐条先輩に少し似てたんだ」

 

「風花のペルソナってそんなとこまで解るんかよ?」

 

「うん、なんとなくだけど、順平くんのペルソナも順平くんと千鳥ちゃんの2人分のペルソナの反応を感じてるよ?」

 

「……でも美鶴先輩、それがなんで私たちみんなを集める理由に?

確かに有里くんと同じ力に同じ名前のペルソナだからってそれが私達に」

 

 その言葉を待たずして、美鶴が紙の束を机の上に置く。

 

「え?なんですかこれ………ちょっとこれ……」

 

 ゆかりがその紙束を読み進めていく度に顔色が変わる。

 

 その内容を真田と天田、そしてアイギスは把握しているのか皆同じように顔を伏せる。

 

「……美鶴先輩、従弟を犠牲にするんですか?」

 

「そんな訳ないだろ!!!」

 

美鶴の怒声に全員の顔がギョっとする。

 

「済まない、だが天地神明に誓ってそんなことを考えるなどありえない。」

 

「えっと話見えないんだけど、何が書いてあるんすか?」

 

「ニュクス封印の為の生贄の入れ替えだ」

 

 真田の言葉にまだ内容を知らなかった順平と山岸が目を見開く。

 

「そ、それって湊が戻ってくるってことっすか!?

 え?でもそれの為に生贄の入れ替えが必要?いや待ってくださいよそれって桐条先輩の従弟をって事っすよね!?なんすかそれ巫山戯すぎだろ!?」

 

「美鶴、これがどこから送られてきたものかは分かったのか」

 

「いやダメだ、何の痕跡もない。

 グループ内かそれとも外か、何れにせよこんな巫山戯た計画書を私に直接送り付ける輩だ、見つけ次第必ず処刑だ」

 

 これは明らかな宣戦布告とも取れる挑発行動だ、故にこの場の皆が美鶴の怒りに納得する。

 

 しかしその計画書を見つめながら天田が口を開く

 

「……でもこの方法、生贄が玖城って事を除けば有里さんを助けれる方法があるってことを明示してるんですね。」

 

「そうだな、だがその為に玖城を犠牲にしていい理由にならない。」

 

「そうっすね、それにそんな方法で呼び戻したなんて湊が知ったらあいつの事だからその場で舌を噛み切って自殺しちまうっての」

 

 それぞれ意見を言いそして最終的な結論を山岸が述べる。

 

「じゃあ私達はこの計画書の送り主の捜査と、玖城くんの護衛ってことですか?」

 

「護衛はともかく、樹下を見守ってくれるのならそれに越したことはない。

 皆それぞれ自分の都合や予定があるというのに勝手で済まないが、どうかよろしく頼む、私に力を貸してくれ。」

 

 そこに集まった全員が首を縦に振り頷く。

 

──────────────────────────

 

「えっくし!!」

 

 夜空が広がる中、巌戸台寮の玄関の鍵を開けようとした時に唐突にくしゃみが出る。なんだ……?

 

「ちょっと玖城、アンタ風邪ひいたんじゃないでしょうね?」

 

「いやそんなんじゃねぇと思う、多分誰かが俺の悪口を言ってんだと思う」

 

「え?そこ普通噂やないの?」

 

「玖城さんってたまにネガティブですね」

 

「うるへー」

 

 鼻すすりながら再び鍵を鍵穴に差し込もうとして違和感を感じ、後ろの3人を手で制す為に手を後ろに翳す

 

「?」

「?」

 

 しかし意図を汲み取らない綾崎とラビリスが同時に俺の翳した手を二人して握ってくる。

 何してんだこのアホども。

 

「アホかァ!!鍵が開いてんだよ!!鍵がここにあって鍵掛けて出てきてんのに開いてんだよ!!不法侵入者の可能性だよ!!」

 

 語気を強めつつも大声ではなく小声で怒る俺の言葉にギョっとする綾崎とラビリス。

 その中テレジアだけは行動、玄関横の窓から中を覗く。

 

「中に人は居ませんね。」

 

「なら奥にいるか上階に居るかか?」

 

 俺とテレジアが冷静に中に居るであろう侵入者の分析をする。

 

「あ、空き巣ってこと?学生寮に??え、もしかしてそういう類の変質者なんじゃ!?」

 

「変態かはともかくこの寮って桐条系の設備、特にウチやテレジアのメンテナンス装置とかあるから売ればかなりの額に……!?」

 

 そして綾崎とラビリスは事態に対して同様と焦りを滲ませる。

 

「成程、確かにそれは大変ね。

 玖城くんの部屋のゲーム機とか綾崎ちゃんの持ち込んだ洗面キット、ラビリスちゃんやテレジアちゃんのメンテナンス装置なんて狙い目だしね。

 こりゃ空き巣もウハウハって訳だぁ。あ、侵入方法はピッキングって線が濃厚かもねぇ?」

 

「クソ……ピッキングでの侵入の可能性があることを忘れていたっ!」

 

  ん?……あれ?なんか今違和感が

 

「…………番号!!」

 

「玖城?!え?!い、1!?」

 

「に、2ぃ、えなに?!どしたん樹下くん!?」

 

「3……玖城さん一体何を……ってあ」

 

「よーーーんってやべ、バレちった」

 

「誰だテメェ!!!!!!」

 

 本来居ないはずの5人目を発見した俺の第一声は近所迷惑として後日地域掲示板に貼られてたらしい

 

───────────────────────

 

「いやぁごめんごめん、てっきり連絡行ってるもんだとばかり思っちゃてたわぁ!

 もぉみっちゃんも抜けてるとこがあるのは学生時代から変わらないんだもぉん。

 でもさっきの君達の反応とか行動とか……ぶふっ!もぉ君達面白過ぎるわァ、あはははははははは。

 あ、みっちゃんって君らの上役の桐条美鶴ちゃんの事ね」

 

 そう言いながら侵入者改めてシャドウワーカーの1人であり、これから巌戸台寮の寮母という肩書きを持つことになる女性、久遠真千琉はソファに深く座って手に持っている缶ビールを柿ピーをおかずに喉に流し込む。

 

「かァァァァァァ!!!若者を揶揄ったあとの酒は最高だわァァァァァ!!!!」

 

「何だこの大人は……」

 

 俺もあと4年したらこうなるのか?だとしたら大人になりたくねぇよ……

 

「……あ、あの久遠さん……?」

 

「あぇ?んもぉ硬い硬いよ綾崎ちゃん!真千琉で良いよ!私も次から凛ちゃんってぶからさ、でなにぃ?」

 

「え、えと」

 

 綾崎、お前のコミュ力でもこの大人とは相対出来ないのか!?

 

「……んッん!!その、真千琉さんって学校で見た記憶があるんですけど、もしかして売店で働いてませんでした?」

 

「あっれぇ?バレちったわ、うんうんそうだよ働いてる働いてる。

 君達が高等部に始めてきた4月7日にも居て1週間に2、3回位はあそこでパンとか売ってまぁす」

 

 売店の店員…………はぁ!?

 

「待て、アンタあの美人な店員さんか!?」

 

「……何?」

「美人さん……?」

 

 何やら綾崎とラビリスの目が鋭くなった気がするが無視する。

 

 あの店員さんがこの目の前のまるでだらしない女、略してマダオなのか!?そんな馬鹿なことあるかぁ!?

 

そう心の中で絶叫してると俺の肩に手を置く綾崎とラビリス。

 

「……っ殺気!?」

 

 急激に視界が動く、綾崎とラビリスによって勢いよく後ろに引き倒された俺は急な出来事で受身も取る事が出来ずに転倒し後頭部を床に激突させその場で悶絶する。

 

「こんのスケコマシがァ!!見境無いのもいい加減にしろぉ!年上の魅力か!?それともあの豊満な胸かぁ!?あぁ!?」

 

「樹下くんも男の子なんはわかるけどもう少し節操を持った方がええよ!?もういい加減思わせぶりなとかそういうのホンマにええ加減にしいや!?」

 

「何言ってんだテメェらは!!!よっしゃお前ら2人ともまじで一回表出ろや!!戦争じゃぁああああ!!」

 

「ぶっひゃひゃはははははははははははは、あーだめだこの子達マジでやべぇぇ痛い痛い腹が!!胃がよじれブヒヒヒヒャハハハハハハハ!!!!!!」

 

 怒声と笑い声が渦巻く寮内の混沌を見つめるテレジア、その喧騒を気にすることなくコロマルはテレジアの傍にしゃがむ。

 

 無意識にテレジアはコロマルを撫で始め一言。

 

「これが馬鹿軍団、これが呆れという感情……なるほどなー」

 

 




長くなりすぎたので2話に分けることにします。

では今回は新ヒロイン?の紹介

テレジア
基本情報
性別 女性型
機械種 対シャドウ特別制圧兵装六式
外見
髪色 赤髪
目 深緑
装甲メインカラー 水浅葱色
性格・特徴
ラビリスを姉のように慕い、感情的で誤解しやすい。
また本編では綴られてないが優れた集音機能を持っており、三階の自室から一階の浴場のラビリスの叫びを聞き取っている自立式盗聴器。

パンツァーファウストはロマン
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